県民に佐賀の素晴らしさや郷土のよさを知ってもらいたいと、佐賀県が2018年から制作している『佐賀日めくりカレンダー』。
過去のできごとや豆知識、著名人の格言など、365日全てのページが佐賀にまつわる情報でうめつくされたこのカレンダーは、書店等で販売されるほか、県内の全ての中学校・高校の教室に設置されています。
EDITORS SAGAでは昨年、2021年版『佐賀日めくりカレンダー』の制作現場に潜入。カレンダーができるまでの様子を4回に分けてレポートしました。
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デザインや印刷の方法について解説した、昨年の【「佐賀日めくりカレンダー2021」制作レポート】シリーズに続き、今年も制作現場に潜入! 2022年のカレンダーの完成までをお届けします。
今年は、内容やコンテンツ作りに注目! 『佐賀日めくりカレンダー』の魅力のひとつが、365日全てのページに詰まった、佐賀にまつわる読み物コーナーですが、2022年版からさらに充実するとのこと。これらの情報はどこから集められ、どのように読み物コーナーが作られているのでしょうか?
気になる制作の裏側をレポートしていきます!
今年から新たに加わったコーナーは3つ!
毎日ひとつずつ『佐賀』を知ることができる、読み物コーナー。昨年までは5つのコンテンツで構成されていました。
「KENMIN QUIZ」......県民からの応募を元に制作された佐賀クイズ
「豆知識」......知って得する!? 佐賀の小ネタ
「今日の格言」......佐賀の偉人による格言・名言・深イイ言葉
「今が旬」......季節折々の旬な特産物紹介
「今日の一首」......佐賀にゆかりのある旬歌
2019年版からおなじみだったこれら5つに加え、新たに3つの企画が追加されることに。新たに加わることになったのがこちら。
「佐賀弁講座」......佐賀弁のルーツや歴史の紹介と特徴的な例文による実践編
「SAGADATEBASE」......データや統計から明らかになる県の特徴や県民性
「企業図鑑」......佐賀の特色ある企業紹介
県内の中学校・高校や施設に置かれることから、彼らの身近にある『佐賀弁』や、友達同士での話題になるような『県民性』についてのテーマ、そして県内での仕事に興味を持つきっかけになればといった思いから『企業紹介』の3つが追加されたそう。
中でも新たな試みだったのは『佐賀弁講座』。しかもこのコーナー、実は佐賀の高校生のアイデアから生まれたのです。
佐賀弁を若い世代に伝えたい!高校生たちの思いから生まれた『佐賀弁講座』
『佐賀弁講座』を企画したのは、佐賀西高校の千住千夏さん、藤井七海さん、田中佐弥さんの3名からなる『語り隊』。
佐賀弁に興味を持ち、調べていくうちに「もっと若い世代に佐賀弁の面白さを伝えたい」と感じるようになった3人は『語り隊』を結成。佐賀の魅力を活かした企画で競い合う高校生の企画コンテスト『第4回佐賀さいこう!企画甲子園』に出場し、佐賀弁を次世代に伝承するための企画をプレゼンし、最優秀企画賞に輝きました。
この『語り隊』のプレゼンの中にあったアイデアのひとつが『佐賀弁カレンダー』の制作。アイデア実現のため『佐賀日めくりカレンダー』とのコラボレーションが決定したのです。
そうして、365日分のうち15ページ分を『佐賀弁講座』として、企画・編集・執筆を『語り隊』の3名とともに作り上げていくことに。初の高校生との共同企画ということで、例年とは異なる制作がスタートしました。
そんな新企画『佐賀弁講座』の完成までの様子や感想を、日めくりカレンダーの編集者と、『語り隊』のみなさんに伺いました。
新企画『佐賀弁講座』はどのようにつくられた?
『語り隊』と共に新企画『佐賀弁講座』をつくるのは、『佐賀日めくりカレンダー』の制作を行うTISSUE Inc.の編集者・篠原繭さん。
高校生のアイデアを実際の誌面に仕上げていくために、まずは何をしたのでしょうか?
篠原さん -
『語り隊』の3人と打ち合わせをしたのは、2021年の4月末。彼女たちは現在高校3年生の受験生でもあるため、夏以降は受験勉強に集中できるよう、6月までにページを仕上げることにしました。さらにコロナ禍の制作ということで編集会議は全てオンラインで進めます。
まず、3人にとって初めての出版物の制作だと思うので、最初の会議では、カレンダー全体の方針の「読んだ人が『へぇ!そうなんだ!』と感じられるような、気付きのある内容にすること」や、編集の基本的な「調査をするときは出典や参考元を明確にすること」を伝えました。
こうした説明を受け『語り隊』の3人は、カレンダーに掲載できそうなネタを集めるために、これまでの調査でわかっていることを振り返ったり、より多くの情報を手に入れるべく身近な人への聞き取りや図書館でのリサーチを開始。面白いと感じた項目は、出典元や取材対象者の情報とともにオンライン上の表にまとめていきました。
『語り隊』がまとめた資料を元に、編集会議を重ねます。膨大なリサーチ内容から「純粋に面白いと思ったのはどれか?」「みんなに紹介したいと思う項目は?」と、カレンダーに掲載するトピックを絞っていきます。
篠原さん -
掲載する内容を絞ったあと、『語り隊』は内容に対してより深く知るための追加調査を続けました。
佐賀弁のルーツやその理由、具体的にどのように使われていたか、など文献での調査だけではわからなかったことについては佐賀弁に詳しい音成日佐男先生を訪ね、取材を実施。
彼女たちの熱心さと調査量には、音成先生も驚いていました。
たくさんの調査と取材を終え、やっとカレンダーに掲載するテキストの制作に入ります。カレンダーの読み物コーナーとして掲載できるのは1ページあたり約100文字。『語り隊』の3人の知識をギュッと濃縮し、初めて読んだ人にも面白さが伝わるように、短く分かりやすくまとめる作業が求められました。
篠原さん -
文献リサーチ、構成、取材、記事制作......と、このようなプロセスで『佐賀弁講座』のテキストがやっと完成しましたが、この作業はまさにプロのライターや編集者と同じ。
学校や部活動、受験勉強に並行してそれらをやり遂げた『語り隊』のみんな、よくがんばりました!
こうして『佐賀弁講座』の15ページが完成!
地域ごとの特色やルーツ、そして『語り隊』の3人が面白いと思ったフレーズを使った実践講座まで、佐賀弁の知識や魅力がギュッと詰まった新コーナーが誕生したのでした。
『語り隊』に佐賀弁への思いをインタビュー
最後に佐賀西高校『語り隊』の3人に、佐賀弁のどんなところに魅力を感じて、なぜ残していきたいと思ったのか、そしてカレンダーの制作についての感想を聞きました。
田中さん -
"佐賀のいいところ"と言って思い浮かぶものは、有田焼とか佐賀海苔とかの形のあるものだと思うのですが、"まだ知られていない佐賀の良さ"を探す中で、形のない『佐賀弁』に注目しました。調べると奥深くて面白く、"佐賀のいいところ"のひとつとして知ってもらいたい、大切にしたいと思うようになりました。
今回調べるうえで、たくさんの大人の人たちと佐賀弁をツールにコミュニケーションを取ることができました。「こんな佐賀弁知ってる?」とか「こんな面白いのもあるよ」と教えてくれる。方言の良さって、そこに住んでいるからこそ感じられる地域や人との繋がりが現れているところだと思います。そういう意味でも、これからもずっと残していきたいな、と感じました。
千住さん -
方言は親近感があって、とっても暖かい存在です。おじさんやおばさんと話していると、その丸みのある言葉に「なんだか安心するな」と感じます。自分たちの世代はあまり佐賀弁をあまり使わないけれど、こんな暖かい佐賀弁を、自分たちの活動を通してちょっとでも残していけたらという気持ちではじめたので、カレンダーという形にできてうれしいです。
いつもの学校での調べ学習では、調べた本やインターネットの内容をそのまま引っ張ってきてしまっていたけれど、今回は自分たちがどう伝えたいのかを考え、表現し直すことが必要でした。すごく難しいことだったのですが、カレンダーの制作を通してそのような力がついたと思います。
藤井さん -
カレンダーの制作や、その元となった企画甲子園のプレゼンを準備していく中で感じたのは、自分たちが面白いと思ったり、効果的だと考えていても、それを聞いた人、見た人には伝わらないことも多いということです。人に何かを伝えるためには、自分たちの考えていることを客観的に捉える必要があるということを学びました。
方言のような形のない文化は、資料というよりも、人から人へ受け継がれていくものだと改めて感じています。昔に比べ、現代は人との関係が離れているなと感じることも多いし、さらにコロナ禍でいろんなことがオンラインになってしまったりしている中でも、方言のように、人から人へ繋がって受け継がれていくものを残していきたいなと思います。
さいごに
形のない『佐賀弁』に佐賀の魅力を見つけ、広めていきたいという思いから行動に移した3人。活動を通して上の世代から教えてもらった佐賀弁は、同世代・下の世代に伝えていくことができる。そんな『語り隊』の思いが込められた『佐賀弁講座』が加わり、パワーアップした『佐賀日めくりカレンダー』は鋭意制作中! 11月から発売開始予定です。
制作レポートは引き続き『佐賀日めくりカレンダー』の完成まで続きます。
次回は今回紹介できなかったコーナーについて詳しく紹介! どうぞお楽しみに。