佐賀県にゆかりのあるクリエイターや、佐賀県で活躍するクリエイターが集まる「佐賀デザイン会議」
「佐賀をより良くするために何かできないか?」と佐賀県出身のクリエイター4人が発起人となり、2016年にスタート。
これまでは、クリエイターが集まる佐賀県人会のようなものとして東京で開催されてきたこのイベントですが、2023年8月31日に佐賀県で初開催されました。
個性豊かな参加者による1分間プレゼン
「佐賀デザイン会議」では、まず参加するクリエイターによる1分間の自己紹介プレゼンが行われます。
この日は約40名のクリエイターが登壇。
事前に準備したスライドを用いて、自身の経歴や作品紹介など、思い思いのプレゼンが行われました。
スライドは1枚。フォーマットはないので自由にプレゼンを行う。
ときに笑いもあり、あっという間の1分間。
イラストレーターやフォトグラファー、建築士......。クリエイターと一口に言っても活動の幅は多種多様。
佐賀にもこんなにたくさんのクリエイターがいらっしゃるんだと気づかされるプレゼンでした。
「勝手に」が佐賀を面白くする
今回「佐賀デザイン会議」の発起人の1人である、株式会社ワークヴィジョンズ代表取締役の西村浩さんに「佐賀デザイン会議」の在り方についてお話しを伺いました。
「佐賀デザイン会議」のコアとなるものは「勝手にプレゼンFES」だと西村さんは話します。
「勝手にプレゼンFES」とは......
佐賀に縁のあるクリエイターたちが、地元に対する思いから企画アイデアをプレゼンする場。
「佐賀でこんなことができたら面白い!」というクリエイターならではの自由なアイデアを、知事や県職員に対してプレゼンテーションを行う。
「自腹で交通費を払ってでもプレゼンしたいというクリエイターが、自由にアイデアをプレゼンする。
クリエイターはあくまで勝手にプレゼンしているだけなので、公平性や平等というものは気にしないでいいし、主催者側もすべてのクリエイターに声を掛けてプレゼンの場を設ける必要もない」
勝手に面白いアイデアを話し、それを聞きに来た佐賀県知事や県庁職員が「面白い」と思ったら実現に向けて動いていくことが「佐賀デザイン会議」の理想形だそう。
この日も、東京から駆け付けた方も多数いらっしゃいました。
この「行政発」ではなく、「クリエイターの発言を行政が拾う」という仕組み。
佐賀県のみならず、全国の自治体でこのモデルを参照してほしいと西村さんは語ります。
クリエイターが集まる場で行政から地域の課題を投げかけ、クリエイターに提案してもらい、お互いが協力して解決へと導いていく。
行政だけではなかなか出づらいアイデアが生まれることで、より良い地域づくりへと繋がっていきそうです。
佐賀での開催に求められること
このイベントを開催していく上で「大事なのはクオリティーのコントロールと、クリエイターに本当にやる気があるのか見極めること」と西村さんは話します。
「ここに来れば仕事につながると思う人が増えると、個々の営業活動になってしまい、これまでの『佐賀デザイン会議』の流れが変わってしまう。そうではなく、やはり『勝手にプレゼン』のように、できるできない関係なく自腹でもプレゼンしたいという、本当に佐賀のことを想って面白いことを考えている人に集まってほしい」
アイデアのクオリティーを保ちながら、佐賀を良くするために提案したいという人材が集まってくる状態をつくることが今後の「佐賀デザイン会議」の課題とのこと。
今回の佐賀での初開催について「佐賀の課題を解決することに責任を持って取り組む。ときには自分もリスクを負うかもしれないが、結果、自身の活躍の場を得られるようになる。ここに参加している若い人たちが今後どう行動していくのか楽しみ」と、感想を話されていました。
「さがデザイン」が生み出す、佐賀の新しい姿
佐賀県庁内には佐賀らしいモノやコトをデザイン視点で磨き上げ、さらに県庁内の各課をつなぐハブとしての機能を担う「さがデザイン」という部署があります。
県庁各課とクリエイターとを結ぶ中核として「心地よい佐賀の実現」を目指す、地方自治体としては珍しい存在です。
「佐賀デザイン会議」は、この「さがデザイン」をきっかけに始まったとのこと。
今回のイベントでも、この数年の「さがデザイン」の事業が紹介されました。
農業とデザインを掛け合わせた施策である「SAGA AGRI HEROES」では、選ばれた5つの農家のブランディングを4年間にわたりサポート。明確に売り上げを増やすことを目的とし、期間途中の3年目にして5つの農家すべてで目標を達成。2022年度には「グッドデザイン賞」も受賞しており、今年から2サイクル目に入る取り組みです。
そして、飲食店の店先を利用した「SAGA ナイトテラスチャレンジ」。新型コロナウイルス対策としてソーシャルディスタンスが求められる中で、社会実験として行われました。
この社会実験ののち、国土交通省は道路占有許可基準を緩和。
佐賀県発のこの施策は全国的に大きな注目を集め、全都道府県でも実施されるようになりました。
今後の活動としては、佐賀市にある市村記念体育館がリノベーションされ、体育館ではなくクリエイティブの発信拠点とする計画が進行中だそう。
日本ではあまりない施設になるのではということで、こちらも今後の動きにも注目です。
【開催レポート】市村記念体育館が生まれ変わる!公開会議「ICHIMURA Future Design Meeting vol.1」
最後に......
初の佐賀開催となった「佐賀デザイン会議」
クリエイターの皆さんに直接お話を伺うと「こんな面白いことをされているんだ」という今まで知らなかった取り組みや、日々の活動で感じている想いについて聞くことができ、新たな発見や学びが多くありました。
中でも印象的だったのは、西村浩さんの「佐賀には面白いクリエイターがいっぱいいるから、何か事業をやるときには、そのクリエイターに相談しながらやると佐賀らしいことができる!という文化が根付くことで、佐賀はより面白い、より豊かなアイデアが生まれる。」という言葉。
人口減少が進み、行政だけでまちづくりを行うことが難しくなっているのは佐賀県だけの問題ではなく、これからは自分たちの手でよりよい地域づくりを行っていくことが求められています。
「佐賀デザイン会議」も、より魅力ある佐賀を自分たちの手でつくっていくという大事な役割を担っていると感じました。
この活動を通して、今後もあっと驚く、そして世界に誇れる佐賀県となることに期待です。
EDITORS SAGA編集部 志満