お祝いの席やパーティなどで出てくる、串に刺さったおしゃれな料理。
みなさんはこの料理の名前を知っていますか?
それは、スペイン発祥の「ピンチョス」と呼ばれるグルメ。手軽につまめて見た目も可愛いと、日本でも広く楽しまれるようになった料理です。
そして今回、このピンチョスを日本に初めて広めた"スペイン料理の巨匠"が、佐賀の食材を使った一夜限りの特別なピンチョスを振る舞うイベントが開催されました!
佐賀の食材は、どんな一皿に生まれ変わったのか──。
完成したピンチョスとともに、イベントの模様をお届けします!
スペイン×佐賀のコラボが実現!その背景とは?
佐賀県では近年、食を入り口に"その土地の魅力"を感じてもらう旅『ガストロノミーツーリズムツーリズム』を推進しています。
訪れた土地ならではの食を楽しみ、その背景にある文化にふれることで、佐賀の魅力をより深く知ってもらおうという取り組みです。
さらに、佐賀県はスペインとの交流を深めており、同日に佐賀市内で行われていた「スペイン・ゴヤ賞映画祭 in SAGA」に合わせて、今回のイベントを企画。
「食を通じた文化交流」を目的として、佐賀県産食材とスペイン料理のコラボレーションが実現しました!
会場は佐賀市の「ARKS CAFE」
ピンチョスを日本に広めた第一人者ジョセップさん
今回のイベントに登場したのは、スペイン料理界を牽引するトップシェフ、ジョセップ・バラオナ・ビニェスさん。1991年の来日以来、スペインのピンチョスを日本に初めて紹介し、その魅力を広めた第一人者として知られています。
大阪万博ではスペインパビリオンのグルメ総プロデュースも担当するなど、世界を舞台に活躍するすご腕のシェフなんです!
イベントで料理を振る舞う、ジョセップ・バラオナ・ビニェスさん
そんなジョセップさんが、佐賀の食材をどう料理するのか、期待が高まります...!
佐賀の恵みがぎゅっと詰まった"絶品のピンチョス"を紹介
ジョセップさんが佐賀の食材で完成させた、ピンチョスとアラカルトは全7種類。
きれいに盛り付けられたその見た目は、どれも食べるのが惜しいほどの美しさです!
<ピンチョス>
- 椎茸のアヒージョ風クレープ包み/ 原木椎茸(せふりん農園)
- 蓮根のヒルダ/ 白石れんこん(黒木農園)
- エビ・カニ・マヨネーズ/ 芝エビ(長運丸)・竹崎蟹(祐宝丸)
- 佐賀豚のピンチョモルノ/ 田嶋豚(田嶋畜産)
- 柿と生ハム/ 生ハム(田嶋畜産)
- ジョルディ/ トマト(アグリッシュ)
<アラカルト>
- 竹崎牡蠣のフリット/ 竹崎牡蠣(海男)
「竹崎牡蠣のフリット」
新たな蓮根の食べ方に驚き!「蓮根のヒルダ」
佐賀県白石産のれんこんが、グリーンオリーブと合わせたピンチョスに大変身!
煮物やきんぴらなど、和食の印象が強いれんこんですが、ピクルスにするとシャキシャキとした食感にオリーブの風味が重なり、これが意外なほど相性抜群。
ワインと合わせれば思わず「もう一つ」と手が伸びる、クセになる味わいです。
香り高い原木椎茸の風味が広がる「椎茸のアヒージョ風クレープ包み」
続いての一品は、片手でぱくっと楽しめるクレープ仕立てのピンチョス。
とはいえこちらはスイーツではなく、クレープの中には佐賀県産の原木椎茸をペースト状にした、アヒージョ風のフィリングが包まれています。
椎茸の肉厚な食感もほどよく残されており、香りが口いっぱいに広がりました。
濃甘なフルーツトマトがアクセント!「ジョルディ」
黒い見た目と味わいとのギャップに、思わず「これはなんですか!?」とお客さんが一番驚いていたのが「ジョルディ」。
ジョセップさんを代表する一品で、まろやかでほのかな甘みを持つ黒オリーブを細かく刻み、揚げパンと組み合わせたピンチョスです。
今回はそこに、唐津産フルーツトマトの濃厚な甘みをアクセントとしてプラス。黒オリーブのまろやかさにトマトの華やかな風味が重なり、ひと口ごとに味の変化が楽しめます!
(左から)「エビ・カニ・マヨネーズ」「佐賀豚のピンチョモル」「柿と生ハム」
そのほか3種のピンチョスも佐賀の食材を主役にした味わい。
馴染みのある食材が、これまで食べたことのない調理の仕方でピンチョスへと変身し、味わったお客さんも大満足の様子でした!
スペイン料理の巨匠ジョセップさんが語る、佐賀食材の魅力とは
今回使われた食材は、旬の野菜、牡蠣、豚肉、柿、調味料まで合わせて8種類。
ジョセップさんは、佐賀県産食材の"質の高さ"に感動したと言います。
ジョセップさん -
佐賀の食材は、味、香り、見た目、その全てが素晴らしいですね。生産者の方がどれほど丁寧に育てていらっしゃるか、よく伝わってきます。
たとえば、原木椎茸は見たことがないほど形が美しく実もしっかりしているし、竹崎牡蠣も殻いっぱいに身が詰まるほどの大きさで、本当に感動しました。食材が送られてきた際には、思わず私のお店に来てくれたお客さんにも見せたほどでしたよ!
イベント会場には生産者の方も訪れ、熱心に調理法を語り合う場面も見られ、ジョセップさん自身新たな発見もあったようでした。
さらに、メニューづくりにはこんな思いも。
ジョセップさん -
この食材の良さを最大限に活かしたい。一方で、スペインらしさや私らしさもしっかり表現したい。その両方への思いがあったので、実は少し緊張しました。
軽やかな前菜からメイン料理まで、一品ごとの温度やバランスにも変化をつけながら、"どのピンチョスにどの佐賀の食材を合わせたら、一番魅力を引き出せるのか"を、パズルを組むように考えながらメニューを工夫しました。
有田焼の器に並んだピンチョスはまるでアート作品のよう!
ワインやサングリアと一緒に。賑わう会場の様子
会場の「ARKS CAFE」には、スペイン好きから食通の方まで、幅広い層のお客さんが足を運びました。
ピンチョスに合わせてセレクトしたワインや、佐賀産フルーツを使ったサングリアも人気で、みなさんペアリングを楽しみながら会話も弾んでいる様子。お客さんからは、「どのピンチョスもの味が活かされていて、ついついワインが進んでしまう美味しさです!」という声も聞かれました。
食後にジョセップさんへ直接声をかける方も多く、「本当に美味しかったです!」と笑顔で伝える姿が印象的でした。
ジョセップさん -
人も食材も土地も、佐賀って最高にいいところ!ますます佐賀を好きになりました。絶対にまたイベントしたいです!
食を通した異文化交流
佐賀の食材は、世界で活躍するトップシェフから見ても質の高い、素晴らしいものばかり。
完成したピンチョスを味わったお客さん自身も、スペイン料理というこれまでになかった異なる視点を通して、地元の食材の魅力や底力を改めて実感しているようでした。
「食」は、異文化の交流を深めるだけでなく、地元の価値を再発見する力を持っている──そんな佐賀の食材の可能性を示してくれる機会となりました。