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女性が働くということ・3 「"楽しい"から学びを始めたら、どの子もぐんぐん伸びる」野田ワカナさん

"女性と仕事"をテーマに、県内に住む女性たちの声を拾っていく連載の第3回目。

今回ご登場いただくのは、佐賀市巨勢町でモンテッソーリの教室「こどものわ」をオープンした野田ワカナさん。作業療法士として働きつつモンテッソーリ教育を勉強し、20249月に念願の教室を開いた。現在も週12回の勤務を続けながら、教室の運営と育児をこなしている。忙しい中、夢の実現に向かう背景にあるものは何だろうか。

「聞いたことはあるけどよく知らない」という人が多いであろうモンテッソーリ教育の特色や魅力も語っていただいた。

野田ワカナさん
こんなことしています:モンテッソーリの教室「こどものわ」経営/作業療法士として整形外科に勤務
家族構成:夫・長男・長女・母と5人暮らし
担当する家事:母と分担
息抜きの方法:我が子の挽いてくれた豆でコーヒーを飲むこと

育児しながらの学び、そして教室の開設。葛藤はあったけれど

「もっと知りたい。学びたい」につながった、子育て中の経験

自己実現したい気持ちと、家族と向き合いたい気持ち。バランスをとるのが難しいといつも感じます。自分のやりたいことを実践するために、家族に迷惑をかけることも多いんです。でも、他のお母さんから「お母さんが楽しんでいる姿を我が子に見せるのも、決して悪いことではないよ」という話を聞いて、前向きに毎日を過ごせています。

最初の子どもが生まれてからモンテッソーリ教育を独学し始めたのですが、モンテッソーリ教育の手法や考えかたに助けられることが何度もありました。幼児はいたずらや困った行動がたくさんありますよね。水を出しっぱなしにしたり、ティッシュを引っ張り出したり。我が家では、除湿機に線香を入れられたことがありました(笑)。「何やってるの」「だめだよ」って大声を出しそうになる場面です。でも、「だめだよ」と言う前に、少し引いて子どもを見てみる。それをモンテッソーリ教育から学びました。大人には"困ったいたずら"にしか見えないことでも、子どもは"やりたい"と思ったことを実践して、自分で自分を成長させているんです。そして、その行動に至る子どもの意図に気づくことができたら、親は子どもの1番のサポーターになれると思います。

子どもは、"夢中になれるもの"を差し出されると、すごく集中して取り組みます。そしてやり切ると満足するんです。その経験を繰り返すうちに子どもの気持ちが落ち着いて、次のステップアップの動作に進んでいきます。それを知ることで心の余裕ができて、子どもに怒るのでなく、"待てる"場面が増えました。「モンテッソーリ教育を学んでよかったな」と思います。

子どもはそれぞれ"集中してやり出す時期"があります。ある日突然、文字や数字を読み始めたり、国旗や文化に興味を示し始めたり。それまでちょこちょこ小出しで"種まき"してきた事柄に、子どものほうから飛びついてくる感じでした。我が子のそういう成長の瞬間を、モンテッソーリ教育を通じて実感できたのはうれしかったですね。

夜が無理なら朝。子育ての合間に勉強

モンテッソーリ教育を本格的に学び始めたのは第2子が生まれてからです。資格取得を目指して、夜、子どもが寝てから通信教育で勉強しました。子どもと一緒に寝落ちしたら、翌朝早く起きて勉強しました

資格の勉強にはお金も時間もかかります。子どもが小さくて家から離れられないので、すべて在宅で学べる講座を選択しました。カナダ発の講座なのでテキストもテストもすべて英語(笑)。言葉の微妙なニュアンスを読みとるのが難しいなど大変なことはいろいろありましたが、モンテッソーリ教育についてちゃんと知りたいという気持ちで頑張りました。

「楽しい」「おもしろい」から始まる学びは本当に楽しくておもしろい!

"観察"から始まる、その子にぴったりの学び

モンテッソーリ教育は、"子どもの自発的な伸びる力を活かす"のが基本です。お着替えの時など、親はつい口を出してしまいますよね。「違う、違う」と言いそうになるところ、あえて待ってみます。子どもが間違ってもいいので、集中している様子を観察します。観察すると、子どもが分類したり識別したり順序だてしたりして行動できているか見えてくるんです。

最近は"おうちモンテ"がはやるなど、モンテッソーリ教育を実践するおうちも増えています。もちろんいいことなんですが、親御さんに心の余裕がないと実践が難しい面もあります。"子どもが夢中になれるもの"を準備するだけでもけっこう大変ですよね。だから、「こどものわ」を利用してモンテッソーリ教育を体験していただき、お子さんに変化があれば「家でもやってみようかな」と実践していただく。そういう方法を試していただけたらと思っています。

"種まき"の大切さ。手や体の動きが理解とつながって

「こどものわ」ではモンテッソーリ専用の教具や手作りの教具を用意しています。

他にも、モンテッソーリ教具ではありませんが、子どもの五感を刺激する感覚遊びとしてセンサリープレイも取り入れています。

センサリープレイとは、子どもが口に入れても安全なものを利用して掴む、混ぜる、移す、分けるなどの指先の感覚と運動スキルを高めていく遊びです。

例えば、重曹やクエン酸に色をつけたもの【写真の左奥】、蝶型のパスタに食紅などで色をつけたもの【右奥】、レジンで作ったもの【手前】などです。

教室で体験してくれた子は、これらをお皿に盛って「はい、どうぞ」とお店やさんごっこを楽しんでいました。お皿ごとに色味を変えて、「これは秋のお皿」と表現したり。お玉ですくう練習もしていましたよ。重曹とクエン酸は水をかけたらシュワシュワするので喜んでくれました。触るだけでおもしろいし、想像力も伸びます。楽しみかたは子どもによってそれぞれです。そして、遊びはどんどん発展していきます。その様子を観察して、子どもの興味のありかを見つけ出していくんです。

教具の話ではないんですが、5歳の女の子が部屋のカーテンの奥に時計を見つけて、すごく関心がありそうだったので時計のワークをやってみたんです。じゅうたんを広げて時計のコーナーを作って、数字のかたちも観察してもらって。「これは"3"だから、3回ジャンプしてみよう」と提案したら、楽しそうに「123!」と跳ねてくれて。動きをとり入れることで、数字が感覚として身に着いていきます

1・2歳は日常生活からの学びに重点をおいていて、手を使った活動がメインです。36歳になると文化のワークも行います。

日常生活のワークでは、例えば教室にコーヒーのコーナーを設けています。興味を示した子どもには、本物のコーヒー豆を挽いてもらうんです。手や肩を動かして、上半身のバランスを使う力も養われます。お母様が同席されていたら、飲んでいただいて。自分の行動で相手が喜んでくれるのは、子どもにとってすごくうれしいこと。そんな経験を積み重ねることが後々とても素敵な結果につながるんですよね。お花を活けるコーナーでは、プラスチックじゃないガラス製の花立てにちゃんと活けてもらいますよ。ものが壊れないように大切に扱う練習にもなります。失敗したり、汚したり、ものを壊したりしてもOK。教室では、自分で選んで自分でするのが基本です。自分で選んだことだから責任感も伴うし、結果が自分にはね返ってくるんですけど、その経験がプラスになるんです。

6歳の子に文化のワークをした際は、ちょうど中秋の名月だったので月の満ち欠けをテーマにしました。「月の満ち欠けってどういう風にできるか知ってる?」と問いかけて、本人が地球の役になって、小さなボールを月に見立てます。ライトを当てると、ボールに光の当たる部分と影の部分ができます。地球と月の角度、太陽光の当たりかたで月の満ち欠けが起きることに気づいてもらえます。

他にも、クッキー部分の片方をはがしたオレオを月に見立てるワークもやりました。白いクリームが月の光っている部分です。クリームいっぱいだと満月、それをナイフで削っていくと黒いクッキー部分が現れて、月が欠けていく様子がイメージできる。ナイフで削るなど手を使った作業を入れると、子どもの興味をぐっと引き付けられます。そこで得た知識をいったん忘れてしまっても、 "種まき"したことは後々も関心事として子どもの中に残って、力を伸ばすきっかけとなってくれるんですよね。

いろんな学びかたがあることを子どもたちに知ってもらいたい

いろんな学びかたがあることを体得できたら、その後の人生に良い影響が出ます。「楽しい」「おもしろい」で伸びていったほうが絶対にいいんです。

教室は月2回で月謝11,000円。安くないと思われるかもしれませんが、お子さんに合った学びを提供する"オーダーメイド"の少人数レッスンです。お迎え時に教室でのお子さんのご様子をお伝えし、公式LINEでその日のお写真をお送りして活動の内容を簡潔にお伝えします。親御さんのご家庭でのお困りごとにも、LINEなどで個別対応しますよ。

私自身、今後も勉強を進めて、いずれ小学生まで受講できるようにしたいと思っています。興味のあるかたは、無料体験を実施していますのでぜひご利用ください。オヤモコモ(佐賀市西魚町)で体験教室も行います。Instagramをチェックしてみてくださいね。

インタビュアーの声
お話をうかがって気づいたのは「子育てでは『観察』の過程は抜け落ちがち」ということ。乳児期は身の周りの世話でせいいっぱい。幼児期は「登園に間に合うように食べさせなきゃ」「歯磨きの後は着替えを指示しよう」と考えつつ家事をこなし、口を出したり手助けしたり。......たいていの家庭において、子育てってそんなものではないでしょうか。とにかく自分が動く、頑張る。でなければ一日が始まらない、終わらない! 子どもをじっくり観察する余裕なんて、残念ながらほとんどないですよね。知識のある第三者の目で子どもを見てもらい、子どもの興味のありかや力の伸ばしかたを見つけてもらうのは、とても良い方法だと思いました。子育てに悩んでいるご家庭、子どもの力を無理なく伸ばしたいご家庭におすすめです!

教室名 モンテッソーリの教室「こどものわ」
公式サイト https://saga-monte.com/
公式Instagram https://www.instagram.com/kodomonowa_monte/
対象年齢 生後6か月~6
2歳まで11時間(個別)
36歳は11時間15分(2人まで同時に対応可)
※生後6ヶ月〜1才代までは初回と第2回は様子見のため45分
料金 11,000円/月(月2回)

開成作文堂

伊藤 恵子

佐賀県佐賀市在住のライター。平成の大合併後に佐賀市となった、山中の集落で自然物と戯れながら育ちました。学生時代を除いてずっと佐賀に...

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