皆さん、こんにちは! 2023年5月から唐津市に住んでいる、コピーライターの北村朱里と申します。出身は北海道札幌市です。
唐津初心者の私が「唐津ってどんなところ?」を知るべく気になるスポットに出向き、会いたい「人」にお話を伺います。その人の思いや考えを通じて見えてくる、唐津の魅力を皆さまにお届けてしていく企画です!
最近なにかと話題になるお店にやってきた
2回目となる今回は、「唐津に雲丹(うに)パスタのお店ができたらしいよ」「気になってるんだよね」と、私の周りで何かと話題に上がるお店へ行ってきました。
その名は「青天堂(せいてんどう)」。地元企業の株式会社BLUE DESIGNが運営されています。
「株式会社BLUE DESIGN」とは...
佐賀県唐津市原に本社を置き、注文住宅などの建築、店舗デザイン・公共工事・庭事業まで手掛ける設計事務所。宿泊や福祉の分野にも挑戦し、まちづくり会社をめざす。代表取締役 栗原孝太郎さんは経営セミナーに登壇するなどさまざまな情報発信を行う。
提供:株式会社BLUE DESIGN 撮影:© Nacása & Partners Inc. FUTA Moriishi
こちらがお店の外観です。レンガ造りが印象的ですね。
提供:株式会社BLUE DESIGN 撮影:水田秀樹
事前に調べたところによると、この建物は「唐津出身の偉人をオマージュ」したのだとか。いったいどういうこと? 後ほど詳しく聞いてみましょう。
ランチコース「唐津雲丹パスタ」をいただきます
提供:株式会社BLUE DESIGN 撮影:水田秀樹
こちらが店内です。今回は取材のため特別に開店前から中に入れていただきましたが、オープンしてからは次々とお客さんが訪れていました。
ランチメニューは「唐津雲丹パスタ」のコース1種類のみという潔さ。ウニの量で「翠(すい)」「碧(あお)」「群青(ぐんじょう)」の3コースに分かれています。いちばんウニが多い群青は15~20gほど使われているそう。贅沢ですね!
今回は、まん中の「碧」をオーダーしてみました。
最初に、七山の天然水でつくったスパークリングハーブウォーター、佐賀の黒米と唐津野菜をワサビドレッシングでいただくサラダが運ばれてきます。
そしてこちらがメインの雲丹パスタ! 目の前で雲丹ソースをかけて仕上げてくれます。濃厚で甘みがあるけどそれだけじゃない、奥行きを感じる味です。
添えられている黄色い調味料は柚子胡椒です。濃厚なクリームに混ぜるとさわやかさがプラスされてまた違った味わいになりました。
しかし正直、唐津のウニがこんなにおいしいなんて私まったく知りませんでした。唐津の豊かな海が育むウニ。いったいどんな思いでこのお店ができたのか、ますます気になります。
デザートは玄米ほうじ茶アイスです。蓋を開けるとアイスが登場。好みでほうじ茶の粉をかけていただきます。濃いほうじ茶がアイスと合う~
ランチは、唐津雲丹パスタ「翠(2,800円)」「碧(3,550円)」「群青(5,000円)」の3コース。
金・土・日は予約制でディナーのフルコースやパーティーコースも提供されているそうです。気になる方はお店にお尋ねくださいね。
代表・栗原さんに聞く! 青天堂へつながるルーツと唐津が秘めた可能性の話
さて、いよいよ「唐津に雲丹パスタだけのお店をつくった人」こと、株式会社BLUE DESIGN 代表取締役 栗原孝太郎さんにお話を伺います。オープンした理由、唐津への思い、たっぷり聞きますよ!
唐津がキライだったけど......
ー株式会社BLUE DESIGN (旧:株式会社孝和建設)の二代目社長でいらっしゃる栗原さん。お生まれは唐津なんですよね?
栗原さん(以下栗原):そうです、この青天堂やBLUE DESIGN本社がある「鏡(かがみ)」という地域で生まれ育ちました。唐津市中心部からは離れたエリアで、今でこそ西九州自動車道の唐津インターチェンジができてお店や住宅が増えましたが、僕が子どもの頃はただただ田んぼが広がるのどかな場所だったんですよ。
ー知らなかった。今となっては想像がつかないですね。子どもの頃はどんなふうに過ごしていたんですか。
栗原:外遊びやスポーツもしましたが、いちばん多かったのは家でゲームですかね。流行っていたものは一通りハマりましたよ。特に好きだったのはロールプレイングゲーム。主人公がこれから海に出ていく!みたいなロマンというか、ワクワク感が好きだったんですよね。
ー楽しい子ども時代だったんですね。お友だちもいっぱいいたんでしょう?
栗原:途中まではそうだったんですが、小学校6年生に「挫折」しまして。ずっと友だちだった子たちから、急に無視されるようになってしまったんです。
修学旅行もひとりぼっちでしたからね。もちろん僕にも悪いところはあったと思いますし、最終的には先生が気づいてくれて仲直りできたんですが。
当時はとても辛くて、初めて人の心の痛みというものを知りました。
ーふるさと唐津のことはどう思っていましたか。
栗原:正直、キライでした。特に理由があったわけではないのですが、子どもだったから「田舎ってダサい」みたいな感じですかね。都会に憧れて、中学受験をして福岡に行きました。そのまま大学まで福岡にいて、それから東京へ。
ーさらに都会へ出ていったんですね。東京では何をしていたんですか。
栗原:大手広告代理店に就職しました。仕事も都会暮らしもとにかく楽しくて、すごく満喫していたんですが、あるとき上司になった人とどうしても合わなくて。どんどん辛くなって、仕事は好きなのに、頑張りたいのに頑張れない。やがて東京での暮らしそのものに疲れを感じるようになりました。
そんなときに思い浮かんだのが、ふるさとの風景だったんです。都会にはない、たぶん他にはどこにもない、美しい唐津の海が僕を優しく迎えてくれるイメージが頭の中に広がって。それで、ああ、帰ろうかなって、思ったんですよね。
唐津の景色の中で、唐津の「宝物」を味わう
ーこうして帰郷され、家業を継ぎ、会社を成長させ、いろいろ事業を展開されてきた栗原さん。
今回、初の飲食事業として「青天堂」をオープンした理由は?
栗原:よく人から「唐津でおすすめのランチはありますか?」と聞かれるじゃないですか。もちろんいいお店は既にたくさんあるのですが、ちょっと今までにないというか「何それ⁉」と驚かれるような変わったお店をつくりたかった。
ウニって唐津の豊かな海が育む「宝物」だと思うんですけど、イカなどと比べて注目されていませんでした。それってもったいないし、ウニを獲る海人(あま)さんたちだって悔しいですよね。そこにスポットを当てて新たな観光名物をつくれたら、それこそがこのまちの魅力であり価値になると思ったんです。
ー唐津のウニの魅力、唐津そのものの魅力がここから発信されていくのですね。お店の建物は「唐津の偉人をオマージュ」したと聞きましたが、どういうことなんでしょう?
栗原:うちは建築会社ですから、当然カッコイイ店構えにはしたかった。でもそれだけでなく、唐津の海の宝物を提供する店なら、唐津ならではのストーリーが感じられないとダメだと思ったんです。いろいろ考えていたら、辰野金吾氏のことが頭に浮かびました。東京駅などを設計したことで有名な近代建築の巨匠ですが、唐津出身なんですよ! これって唐津の僕たちがものすごく誇れることじゃないですか!
ーおお!「東京駅丸の内駅舎」といえば、一万円札にも印刷されていますよね。すごいことだ!
栗原:それで正式に辰野家に許可をいただき、辰野氏の建築物の象徴とも言えるレンガ造りで魅せる外観が誕生したというわけです。
ー内観にもこだわりがあるのでしょう?
栗原:僕「白砂青松」という言葉が好きで。松原と青い海、空に囲まれた大地の風景を表現している素敵な言葉だと思うんです。まさに唐津ですよね。そんなイメージで、外構には緑の植物と真っ白な石などをあしらい、窓からそれを眺めながら食事をしていただける設計になっています。
ー唐津の景色の中で唐津を味わう、ってことかあ。ここには唐津の宝物がつまっていまますね!
チャレンジャーとともに新たな唐津をつくっていきたい!
ーそんな栗原さんが今思う、唐津の魅力を教えてください。
栗原:唐津って大きなポテンシャルを持っていると思うんです。歴史と文化があって、ルーツに思いを馳せられる深みがある。もしかして豊臣秀吉もこの松原を見ていたのかな、とか、松浦佐用姫はここで愛する人を見送ったのかな......とかね。
ーどんどん空想が広がっていく。ロマンがありますよね。
栗原:僕、仕事で全国あちこち出張したりして、いろんなまちを見て思うんですが、人口が増えていくのは「便利なまち」ではなく「おもろいまち」なんですよ。で、おもろいとは何かと考えたときに......ボヘミアン指数って知っていますか? 人口に占めるアーティストの割合のことなんですけど、これが地域の人口増加を考えていくうえで重要になると、あるまちの人から教わったんです。アーティストに限らず、いろんな特徴や個性を持っていたり、常識のレールに乗りきれなかったり、そんなちょっとはみ出した感じの生き方を"多様性"として受け入れるうつわのあるまちが、これからは盛り上がっていく。唐津にもそんな可能性が大いにあると思うんです。
僕自身も過去にはいじめられたりエリート路線から外れたりしましたけど、今この唐津で、おもろい人生を歩んでいると言える。だからもし今、辛い思いをしている人がいるのなら言いたいんです。「おまえは人の痛みを知ったやん? だからぜったい人を傷つけるようなことはしないやん?? そんなおまえはこれからこのまちでおもろい人生を送って、チャレンジして、すごいリーダーにもなれるかもしれんよ!!」って。
ーわあ、勇気がわいてくる。
栗原:唐津はとてもいいまちですが、他にも魅力的なまちが多い今、いつまでも同じ磨き方、見せ方をしていては埋もれてしまいます。新たなチャレンジャーを増やして、その人たちとともに、新たな磨き方、見せ方、そして魅力そのものをつくっていく。それが僕のめざしているところです。
ー今後が楽しみです! 最後に......唐津がキライだった栗原少年が大人になり、今、その思いにどんな変化がありましたか?
栗原:感謝できるようになりましたね。唐津というまちの風土、包容力、そして支えてくれる人たちに。こうして事業を運営したり、新たにお店をオープンしたり、今やっていることのすべては唐津だからこそできたと思っています。なんかね、本当に今「唐津、ありがとうございます!!」という気持ちです。
最後に......
ロールプレイングゲーム好きで、人間関係に挫折した経験を持つ少年が、ふるさとに背を向け、やがて戻ってきた。そのとき、唐津の変わらぬ景色がまったく違った印象で目に映ったことでしょう。
唐津の魅力をかたちづくるのは、その原石を見出す人の「心の目」なのではないかなと思いました。唐津の空、海、大地のような大きなうつわで多様な考え方や生き方を受け入れ、いろんなモノやコトをおもしろがる。やったことがなくても挑戦してみる。その糸口を捉える心の目を、私もいつも持っていたいなと。
唐津の風景と空っぽになった青いお皿が、「きみにはまだ気づいていない可能性があるよ」「このまちにはもっともっと誇れる宝物があるよ」そう語りかけてくれているように感じました。
店舗情報
店舗名 | 青天堂 |
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住所 | 佐賀県唐津市原1392-3 |
営業時間 | ランチ 11:00~15:00(L.O14:00) ※金・土・日は予約制でディナー営業あり(時間は公式HP・公式SNSで要確認) |
定休日 | 毎週水曜日 |
座席数 | 22席 |
駐車場 | あり |
公式HP | https://seitendo-bluedining.my.canva.site/ |
公式SNS | Instagram @seitendo_bdg |
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