皆さん、こんにちは! 2023年5月から唐津市に住んでいるコピーライターの北村朱里と申します。出身は北海道札幌市です。
唐津に来て1年経ったとはいえまだまだ初心者。そんな私が唐津のことをもっと知るべく気になるスポットに出向き、会いたい「人」にインタビュー。その人の思いや考えを通じて見えてくる、唐津の魅力を皆さまにお届けしていきます!
唐津市町田にやってきた。マチダじゃないよ。
JR唐津駅から南東に1.5km、国道204号線神田バイパス沿いの敷地内にある『モノの譲渡会 唐津』。住所は「唐津市町田」で、読み方はチョウダです。ちなみに神田もカンダではなくコウダ。はいこれテストに出ます。
私は唐津に来てからずっと、ここは何だろうと気になっていたのです。ついに全貌が明らかに!
『モノの譲渡会 唐津』とは......
不要になったモノを引き取り、必要な人に譲ることでゴミを減らしモノを循環させるための拠点。モノには値段をつけず、譲り受ける人が価値を決め、募金してもらう仕組み。整理収納アドバイザー・整理収納教育士の山﨑千寿さん率いるボランティア団体が運営している。2019年に活動を開始し、2022年に現在の拠点をオープンした。
『モノの譲渡会 唐津』ってどんなところ?
エントランスをのぞくと、代表の山﨑さんが迎えてくれました。なんだかホッとする笑顔~!
中にはこんなにたくさんのモノたちが! ワクワクしてきました。
家庭などで不要になったモノとのことですが、どれもとってもキレイ。モノとそれに込められた人の思いを大切にされていることが伝わってきます。
ジャンルやサイズ別に整理されています。少しでも選びやすいようにという思いやりにあふれているなあと感動。
この拠点と活動について、さっそく山﨑さんに聞いてみました。
素敵なモノがたくさんありますね! 譲りたいモノがある時はここに持って来たらいいのですか?
山﨑さん(以下、山﨑):はい! 譲りたい方は事前にインスタグラムでご連絡の上、こちらに持ち込んでいただいています。
持ち込めるモノの種類などは決まっているんでしょうか。
山﨑:特に種類は限定していません。古くても使えるものであれば大丈夫です! ただ、大人用の古着はこれまでなかなか循環しなかったこともあり、現在は受け入れ対象外としています(子ども用古着、大人用の新品服はOK)。それと、冷蔵庫や洗濯機といった大きな家電は保管しておくスペースがないため、インスタグラム上でマッチングを行い引き取り手が決まってから持ち込んでいただくようにしています。
モノを見てみたい場合はどうしたらいいですか?
山﨑:インスタグラムでオープン日時をお知らせしていますので、それを見てご予約なしで来ていただいてOKです。初めての方も「何かいいものあるかな~」と宝探し感覚で気軽に来ていただきたいですね!
モノに値段はついていないんですよね?
山﨑:はい。ただ、モノを大事にしてほしいという気持ちと、作り手への敬意、そして社会の中での良い循環につなげたいとの思いで、譲り受ける人が価値を決め、その額を募金していただくという仕組みにしています。児童養護施設や子ども食堂への寄付、被災地支援などに役立てています。
どんな方が来られますか?
山﨑:小さなお子さんのいる親御さん、掘り出し物が好きな方などがよく来られます。ありがたいことに常連さんも増えてきました。唐津市内だけでなく県内いろいろなところ、遠くは長崎からも来ていただいたりしています。
ーすごい! これからもますます広がっていきそうですね。
代表・山﨑さんに聞く! 活動のルーツと故郷・唐津に思うこと
ここからさらに、山﨑さんに迫っていきます。モノの譲渡会を始めたきっかけ、唐津への思いなどたっぷりお聞きしますよ!
帰省で号泣。そして唐津を「知らなかった」ことに気付く
山﨑さんは生まれも育ちも唐津ですよね。どんな子どもでしたか?
山﨑:鏡という地域で、自然いっぱいの環境で暮らしていました。町内に男の子しか住んでいなくて、私も外で泥だらけになって遊んでいましたね。
ー活発というか、元気なタイプだったんですかね。
山﨑:元気も元気、周りのどの子よりも元気(笑)。元気すぎて、虫をつかまえて男の子に見せて驚かせるとか、そんなことばかりしていましたね。あとは、仲の良い子がイジワルされているのを見たら黙っていられなくて、本人より先に私が言い返しに行ったりもしていたなあ。
心優しくてアツい子だったんですね。そんな山崎さんも大きくなり、一度は唐津を離れたそうで。
山﨑:体育教諭になりたくて、専門的に学べる名古屋の大学に進学しました。ハードな授業や厳しい上下関係の洗礼を受けて、最初はしんどくて早く唐津に帰りたくて。初めての帰省で、福岡空港から地元へ向かう筑肥線の窓から唐津城が見えた時は、人目もはばからず号泣したのを覚えています。
ーああ、ホッとしたんですね。
山﨑:でも、だんだん慣れるにつれて都会暮らしが楽しくなってきちゃって。大学を卒業してももう少しいたいなと思い、そのまま現地で就職しました。でもね、このまま都会に染まるかと思いきや、2年くらい経った頃に心境の変化があって。
何があったのですか?
山﨑:阪神淡路大震災です。名古屋も少しでしたが揺れて、経験したことのない恐怖と孤独を感じました。「あれ、ここで私に何かあったときに本当にそばにいてくれる人っているのかな?」って。そんな時、父が病気になったこともあり、やっぱり唐津に帰ろうって決めたんです。
ー大切な人たちの"そばにいる"ことを選んだのですね。
山﨑:縁あって体育教諭として再就職できたのですが、配属されたのが地元なのにぜんぜん知らない町だったんです。町名の読み方もわからなかったんですよ! 唐津で生まれて長く住んでいたのでだいたいのことは知っているような気がしていたけれど、知らないことってまだまだたくさんあるんだなあと。もっと知りたいと思い、唐津のいろんなところに足を運んでみるのが好きになりました。
周りの人の支えが、活動を前進させてくれた
整理収納アドバイザーになったきっかけは?
山﨑:あるとき病気になり、体育教諭の仕事を続けられなくなってしまったんです。泣く泣く辞めて自宅で療養していた時に、ふと「これからの暮らしを考えたら、家の中の物を減らしてスッキリさせたほうがいいんじゃないかな?」と思い立ちました。やってみたらとても気持ち良くて! それから整理整頓や片づけの楽しさに目覚め、本格的に学ぶようになったんです。
ーわあ、とても前向き!
山﨑:資格をとって整理収納アドバイザーとして仕事をするようになり、いろんなお宅に訪問して片づけをお手伝いしてきました。整理整頓して、片づけて、不要なものを捨てると気分爽快! お客さんは喜んでくれるし、私も嬉しい......んですけど、ちょっと心に引っかかることがあって。
どんなことですか?
山﨑:まだ使えるモノなのに捨てていいのかな? 本当にこれでいいのかな? って。でも具体的にどうすればいいかはぜんぜんわからなくて、モヤモヤしていました。そんな時、印象的な出来事があって。
あるお客さんが「お雛様を手放したいな」と言いました。そのとき私はたまたまお雛様がほしい方を知っていたので、ご紹介したんです。そうしたらどちらの方からもすごく喜ばれて! 今まで生きてきてこんなにも感謝されたことってあっただろうか、と思うくらいとても嬉しい気持ちになったんです。
こういうことをもっとできないかなと思っていたところに、たまたま仕事で行った市外の公民館で、たくさん物が並べてあって何かしているのを見かけました。聞くと、近所の家庭で不要になった物を持って来てもらい、必要な人に譲る会をしているのだと。「これだ!」 と思いました。
ーモヤモヤの解決策が見えてきましたね!
山﨑:唐津に戻って「今日こんなことがあってさ、私もできたらいいんだけどね」なんて友人に話していたら「それなら、私が主催しているイベントに出店したら?」と言ってくれたんです。
ーそうして『モノの譲渡会』がスタートしたんですね。
山﨑:最初は内輪だけで小さく始まりましたが、だんだん広がっていって、モノが増えて自宅で保管しきれなくなってきたんです。そうしたら「倉庫を貸そうか?」と言ってくれる人が現れ、さらに手狭になった時には「この建物を使っていいよ」と言ってくれる人がいて。それが今のこの拠点です。建物は無償で貸してくださっていて、什器などもすべて譲っていただいたもの。あとは自分たちでDIYしたりして、この場所を作り上げていきました。
ー山﨑さんと仲間の皆さん、そしていろんな方の思いが集まってできた拠点なんだ。
山﨑:やりたいことを周りに話していたら、力になってくれる人が増えて、ここまで来れて......本当にありがたいです。
ーきっと日頃から山﨑さんの存在に助けられている人がたくさんいて、そんな山﨑さんが困っているんだったら力になりたいっていう気持ちが、皆さんの中に自然と湧いているんだろうなあ。
モノと人の心がめぐる。「唐津のいいところ」を見つけて伝えたい
活動を続けて5年。今、山﨑さんが感じていることは?
山﨑:モノの価値観って、本当に人によって違うんだなということです。誰かが不要だと思うモノでも、他の人の価値観では貴重なモノになったりして。
ーここにいると、物事を多角的に見る力が養われそうですね。視野が広がりそう。
山﨑:あとはやっぱり、モノと出会えて喜んでいる人の顔を見るのがとても嬉しいです。さらに、ここではモノだけでなく人と人のやり取りも生まれている。子どもの服やおもちゃから子どもの成長の話になったり、いいモノを見つけて盛り上がったり。
モノを介して会話が生まれ、人のつながりができて、ゆるやかなコミュニティがかたちづくられている。それを見ているとね、なんだか私も優しい気持ちになれるんですよ。
ここには優しい空気があふれているのを、私も感じます。最後に、今の山﨑さんの唐津への思いを聞かせてください。
山﨑:唐津って、本当にいいところだと思うんです。自然や食、歴史や文化も素晴らしいですし、人がいい。県外から来た人に「唐津の人は優しいね」ってよく言われます。
一方、Uターンしたばかりの私がそうだったように、唐津の人も知らない唐津のいいところもまだまだたくさんあると感じます。例えば子どもが大きくなって一度唐津を離れたとしてもまた戻ってきたくなるように、私たち大人が唐津の魅力をもっと知って、もっと伝えていかなきゃいけないなって。子どもたちに、唐津を「将来を過ごす場所」として選んでもらえるかどうかは、大人にかかっていると思うんです。
ーああ、そうですね。自分にできること、私もやっていきたい。
山﨑:私たちが唐津を好きで、こうやって唐津で楽しく活動しているところを見せていたら、子どもたちも自然と「唐津って楽しく過ごせる土地なんだ!」って思ってくれるんじゃないかな。この活動を未来につなげていくためにも、これからも皆さんに支えていただきながら楽しく活動していきます!
ー「楽しんでいる人の笑顔」が何よりその土地の魅力を証明するものになるんだな。山﨑さん、ありがとうございました!
最後に...
ちょっぴりいたずらっ子で周りを驚かせるのが好きな、心優しい元気いっぱいの少女。大人になった今もときおり少女のような微笑みを覗かせながら、モノの循環を通じて人と人の関わりを楽しく生み出している。『モノの譲渡会 唐津』には、宝探しのようなワクワクがいっぱい! 今日も山﨑さんは大好きな唐津で、未来へつながる笑顔づくりを仕掛けている。
店舗名 | モノの譲渡会 唐津 |
---|---|
住所 |
佐賀県唐津市町田637 |
営業日時 |
不定期(Instagramで要確認) |
公式SNS | Instagram @mononojoutokai.karatsu |
駐車場 | 有り |