私たちが暮らす地域。その魅力は、文化や歴史、産業だけでなく、そこでの暮らしを楽しむ人々の想いによって作り出されています。佐賀県には、自分の"やりたい"ことを追い求め、人々を巻き込みながら、地域の魅力を高めている人達がいることを知っていますか?
そのような人々を「ローカリスト」と呼び、連載でお知らせしてきました。
2019年9月に県東部地区のローカリストが集まり、参加者と共に地域づくりについて考える「ローカリストアカデミー 」を開催。
ローカリストとネクストローカリストたち(アカデミーの参加者たち)がアイデアを出し合い、地域づくりの第一歩を踏み出す活動「お試し地域づくり」を考え実際に"やってみる"ことに......
ローカリストによって地域の課題や活動の目的は様々。地域づくりに興味を持つネクストローカリストたちとローカリストの交流から生まれた佐賀県各地で広がる地域活動をお届けします。
「しろフェス」
第2回目は、「さくらむすび〜桜結〜」代表を務める林美保子さんのお試し地域づくり活動「しろフェス」。
さくらむすび〜桜結〜は『白石町から結びたい』をモットーに白石町を盛り上げたい"しろいし女子"がイベント・ワークショップなどの活動を通じて色々な世代の方と世代間・地域間交流を目的として様々なイベントを開催している団体です。
年に一度のマルシェを中心に、白石町で子どもたちだけでなく、大人も楽しめる活動を行っています。
そんな林さんたち「さくらむすび~桜結~」の皆さんと、ネクストローカリストの皆さんが、一緒になって実施した、お試し地域づくり活動「しろフェス」。
白石町の"しろ"にちなみ、真っしろな新米やしろい具材の豚汁、しろいあんこの水ようかんを作って食べる......
ドレスコードも"しろいものを身につける"と、しろづくしの一日をレポートでお届けします。
お試し地域づくり活動
しろフェスのテーマは『白石で遊ぶ・白石を発信・食でつながる』
ローカリストアカデミーで、お試し地域づくり活動の企画をした際に挙げられていたテーマです。
ローカリストアカデミーではしろフェスを開催するにあたり、活動の課題点と解決方法についても話し合われていました。
1: 移動手段は?
車がない学生さんやご年配の方でも来場しやすいように『乗りあわせ活動』を事前告知・実施したい。
2:参加人数を増やしたい
町内・町外からいろんな人に来てもらうために、白石以外でも告知をする。
告知はネクストローカリストが持つ繋がりを活用したい。
3:発信をどうするか?
現在(ローカリストアカデミー時点)はFacebookでの発信のみ。
インスタグラムで参加者がタグ「#しろフェス」を付けて投稿することで発信してもらう。
アカデミーを通して林さんが一番大きな収穫になった、と語ってくれたのが課題1「学生さんの移動手段」についてでした。
佐賀県に長く住んでいるとつい忘れがちになってしまうのが、すべての人が車を持っているわけではない、ということ。
他県から佐賀の学校に進学してきた人は遠方(佐賀市外)や駅から遠い場所で開催されるイベントには興味があっても、なかなか足を運びづらいということに初めて気づかされたそうです。
「若い人は地域づくりに興味がないからあまり参加しない」ということではなく、参加したくとも難しい......
ならば、一緒に地域づくりに取り組む仲間で助け合ったらどうだろう?というところから、今回のしろフェスでは、車を持たない参加者を迎えに行き会場まで向かう「乗り合わせ活動」が企画・実施されました。
活動の様子
当日は、雲ひとつない穏やかな秋晴れの中、どこまでも美しく広がる白石の街並みを一望できる陽光寺で開催されました。
心地よい日差しの中、お米、豚汁、しろあんの水ようかん、白石でしろいものを楽しむ、しろフェスがいよいよ始まります。
ご飯をみんなで食べるために、まずは器作りから!
陽興寺の裏山にたくさん生えて困っている、という竹を使ってご飯を炊き、さらに器やお箸も作ります。
普段、刃物に触れることのない子どもたちに、のこぎりやナイフの使い方を教えるネクストローカリストの姿もありました。
お米を炊くために必要な水も、近くの縫ノ池(ぬいのいけ)に湧き水をみんなで汲みに行きました。
秋も深まり、水も冷たく感じる時期でしたが、子どもたちは元気に湧き水を汲んでいました。
おいしい湧き水を飲むことができるこの場所も、今回のしろフェスでふれることのできた白石の魅力の一つです。
お米を炊く準備ができたらいよいよ、薪に火をつけます。
薪もこの日のためにあらかじめ乾燥させておいた竹を割って使いました。
途中、火が弱くなってしまい子どもたちがたくさん薪を足すも余計に火が消えかかってしまう......というトラブルが。
そんなときに大人たちから「火が燃えるには何が必要だと思う?」という問いかけが。
実体験の中から子どもたちに学んでもらう、という一幕もありました。
ご飯を食べる、という目的は一つですがそこまでの過程はとても自由なのがさくらむすび〜桜結〜流の楽しみ方。
器係と水くみ係の役割分担も自然に「じゃあわたしはこっちをやるね」と決まっていきます。
参加したネクストローカリストたちも、自分にできることを見つけながら、思い思いの形で楽しみながらしろフェスを盛り上げていきます。
[ 白石町のしろい食材で作ったしろ豚汁 ]
[ ネクストローカリストがこの日のために準備したしろあんを使った水ようかん ]
出来ることを出来る人が出来る時にやる。
そんな助け合いの輪がどこまでも広がっていきます。
小さな子どもたちもたくさん参加していたしろフェス。
大きなお兄さんお姉さんたちが小さな子どもたちの面倒をみて、それを大人たちが見守るという光景。
子どもが減ってしまい、また外遊びの機会も減ってしまった最近ではあまり見られなくなってしまったものかもしれません。
ネクストローカリストの声
当日参加したネクストローカリストは4名。
年齢も職業もバラバラのネクストローカリスト達。
さくらむすび〜桜結〜のスタッフや、他の参加者たちと自分が持つスキルや知識を交換しながら竹取りや器作り、料理に子供の遊び相手......
決まった役割にとらわれず、交流を深めていた彼らにアカデミーやしろフェスに参加しての感想と、これから自分で取り組んでみたい地域づくり活動について聞いてみました。
福田亜紗美さん(佐賀市)
福田さん -
自然がたくさんある中、空の青さと美味しい空気、温かい人達に囲まれ、幸せな時間を過ごすことができました。
子どもたちも走り回り、楽しんでいて佐賀市中心部でこれはなかなか体験できないと思います!
やってみたい地域づくりは現在模索中ですが、今後は地域の高齢者も巻き込み子どもたちが気軽に立ち寄れ、かつ高齢者が活躍しつつお小遣い稼ぎもできるようなお店があったらいいな......と思っています。
子育てをされる中で、子どもたちにも人とのつながりの大切さを知って欲しい、と考えるようになったという福田さん。 さくらむすび〜桜結〜のメンバーに学生時代の友人がいらっしゃったりと、子育てやお仕事の話を交わしながら、楽しく真剣にしろフェスを満喫されていました。
岡垣貴憲さん(佐賀市)
岡垣さん -
普段はあんこ屋として参加させていただいているマルシェなどのイベントとは違って、みんなでいろんなことに取り組んで、関わっているみなさんが楽しみながらともに助け合っていて良いチームだと思いました。
今後は(微力ですが)楽しいことで地域づくり活動をやってみたいと思います。
しろフェスではあんこ屋の経験を活かし、"しろい水ようかん"づくりに関わった岡垣さん。
地域の人と上手に関わり、参加者だけでなく自分たちも楽しんで、最後にはみんなが笑顔になったのがよかった、としろフェスを振り返ります。
諸岡佑亮さん(鹿島市)
諸岡さん -
(今日の活動を振り返って)竹とお米さえあれば生きられる!
林さんの活動は昔あった"輪と場"ができているなと感じました。
最初は小さな火だけど、一旦ついてしまえばどんどん大きくなって地域を動かすようになると思います。空き家や休耕田など、使われなくなったものをつないで人が集まる場を作る活動を地域でやってみたいと思っています。
技術の先生をされていた経験を活かし、今回のしろフェスでは竹加工を積極的にされていた諸岡さん。
子どもたちに道具の使い方を指導したり、「せっかくだからお箸も竹で作っちゃおうよ」と、アイディアと技術力でしろフェスを引っ張っていただきました。
西原美結さん(佐賀市)
西原さん -
初めての白石町でしたが、住民の方々は皆さん仲がよく、とても居心地のいい町だなという印象を持ちました。
(林さんが)さくらむすびの方とお話されていたり、参加者の方との交流を深めているのを見て、こんなに大好きに思われている白石町が羨ましくなりました。地域づくりについて考えるには、その町の押したい所・課題に感じているところをしっかりと分析して、今までより単位で町を見ていけるといいんじゃないかな?と思いました。
自分が大好きな町をもっと素敵にしていきたいですね。
佐賀大学でデザインを勉強している西原さん。
社会に出る前に地域の課題を解決できるようなことができないかな、と考え今回のアカデミーに参加されました。
終わりに
とにかく印象的だったのが、林さんを始めとするさくらむすび〜桜結〜のメンバー達が自然体なこと。
お互いの長所も短所も受け入れて、自分の役割をすぐに理解しそれぞれが動いていきます。
何をするにも決して無理をすることはなく、全員で助け合うからこそそんなイベントでも楽しく終えることができるのだろうなと感じました。
「特別なことでなくても、そこでしか出来ないことを楽しんでやるのが白石での地域づくりだと思うんです」
そう明るく話してくれた林さん。
最初、来たばかりの頃は、「なんでこんな田んぼばかりのところに来ちゃったんだろう」と後悔していた彼女だからこそ、白石の楽しいところをたくさん見つけて人との繋がりを広げてこられたのではないでしょうか。
そうして地域について考える人の繋がりが広がっていけば、"やりたい"が"できる"に変わる地域になっていくのかもしれません。
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EDITORS SAGA編集部:廣津みなみ