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この風景を未来まで残すために。 穏やかな風が吹く中山間で描いた夢。『株式会社ちぎりファーム』取締役 園主 生島 陽子さん【SAGAローカリスト】 PR

「やりたい」が「できる」に変わる地域へ。

佐賀県には、「やりたいこと」を追い求め、周りの人たちを巻き込みながらカタチにしている『ローカリスト』たちがいます。
6年目を迎えた『SAGAローカリストアカデミー』も個性豊かな面々が揃い、一味違う景色を見せてくれそうです。

そんなローカリストの活動とそれぞれが暮らす地域の素晴らしさについて綴っていきます。

第2回目は、『株式会社ちぎりファーム』取締役 園主の生島 陽子(しょうじま ようこ)さんの活動をお届けします。

荒廃する故郷を見て、芽生えた使命感。

「子どもの頃から見てきた景色が、なくなっていくのが耐えられなかったんです」と話すのは、『ちぎりファーム』で園主を務める生島陽子さん。

生島さんが幼少期に駆け回って遊び、現在の活動の拠点とする基山町の園部地区は、自然豊かな土地。のどかな中山間地域では、古くから自然の恵みをいかした営みが続いています。

「私の祖父母は、この地区で柿農家をしていました。祖父母や自然からいろんなことを学びました。今でもはっきりと覚えている思い出です」

しかし、高齢化が進み、この地区にも耕作ができない土地が増えてきたと言います。現在は地区全体で協力し、管理をされていますが、さらに高齢化が進み、これから5年10年後はどうなってしまうのか。当時、2人目の子どもの育児休暇中だった生島さんは、思い出の場所が荒れていく寂しさと、子どもたちの未来のこと、地域のこれからのことなど、様々なことを考えるように。

そして、たどり着いたのは「私がなんとかしなければ」という使命感にも似た想い。模索しながら活動を始めるのでした。

試行錯誤しながらスタートした活動。

まず、生島さんが考えたのが「地区に人を呼ぶこと」でした。

「人が足を踏み入れれば、鳥獣被害が減り、その土地は生き返ると信じて。これ以上、荒廃しないように、とにかくたくさんの人に来てもらうことを考えていました」

そうしてスタートしたのが『くつろぎマルシェ山麓基山』というイベント。2019年11月、JR九州ウォーキングに合わせて開催しました。マルシェの内容は、地元の方々が作る食事に、ハンドメイド作家さんの出店、ミュージシャンの演奏など。そして、園部地区の良さを堪能できるように、里山の風景に向かって椅子やテーブルを配置しました。多くの人がゆったりと流れる時間を楽しみ、園部地区が賑わいました。

生島さん自身、初めてのことで慣れないことも多く、大忙しの初開催だったと言います。マルシェはその後、年2回開催を継続中。回を重ねるごとに生島さんの想いに共感する地元の人も少しずつ増えていくことになります。

愛着ある風景を守るために、米農家へ。

生島さんは、2022年から新規就農者として米づくりを本格的にスタートさせます。

「園部地区は、献上米を生産していた時代があったらしくて、この地区の歴史と農業は切っても切れない関係なんです。でも、農家さんのほとんどが75歳以上で引退する人も増えているのが現状です」と話す生島さん。

棚田があって、カエルやセミが鳴いて、汗を流す農家の姿がある。秋には収穫を祝い、みんなで食卓を囲む。そんな景色を引き継ぐため、新たなチャレンジをスタートさせたのでした。もちろん、簡単にはいかないことばかりですが、初収穫を迎えたときの喜びは格別だったと言います。

進むべき道は、この土地が教えてくれる。

生島さんが生産する『ちぎり米』は、農薬・化成肥料を使用していません。

また、今後は農業体験や棚田のオーナー制度をつくるなど、挑戦したいことがたくさんある、と生島さん。一過性の賑わいも大切ですが、長い時間をかけて根付いた文化をしっかり引き継ぐ覚悟が感じられます。

2019年の活動開始からこれまで、ただひたすらにまっすぐ突き進んできたように見える生島さん。

「私は、計画的に物事を進めるというよりも、直感で動くタイプなんです。ただ、動くときの指針になっているのが、これをやったら土地が喜んでくれるかどうかということ。土地を愛し抜いて、先人たちの教えや知恵も大切にしながら活動を進めていきたいと思っています」

基山愛に溢れる賛同者も増え、里山で描いた夢が、地域を変えようとしています。

「この土地が喜ぶような100年続くものをつくりたい。例え自分が死んでも続くものを残していきたいですね」と目標を語る生島さんの長く、熱い挑戦ははじまったばかりです。

プロフィール:生島 陽子(しょうじま ようこ)
基山町に生まれ、大学卒業後は、鳥栖市の福祉施設で勤務。2人目の子どもの育児休暇中に、故郷の風景がなくなってしまう危機を感じ、現在の活動をスタートさせる。基山町園部地区の自然を満喫できるマルシェを開催するなど精力的に動くなか、2022年には新規就農者として農家へ。園部の棚田やその周辺に根付く文化や景色を守るために、米づくりに力を注いでいる。 

株式会社ちぎりファーム

住所 基山町園部1651-2
公式サイト https://www.tigirifarm.jp/
公式SNS

Instagram:@tigiri.farm

Facebook:ちぎり倶楽部(応援コミュニティ)

X(旧Twitter):@tigiti_farm


文章:岡 優一
写真:藤本 幸一郎
編集:相馬 千恵子

EDITORS SAGA編集部

SAGAローカリスト2023

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