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溢れるゾンビランドサガ愛!第2の故郷・佐賀を満喫する米国出身教師の想い スティーブン・ニューエンさん

待ち合わせの時間。取材場所に現れた彼は、黒ジャケットを羽織り、赤いベストに青い蝶ネクタイという個性的ないでたちをしていました。

「これが僕のユニフォームで、仕事中もこれを身に着けています」

どこかで見たことがあるファッションだなあと思っていたら...

「これ、『ゾンビランドサガ』に登場するキャラクター・巽幸太郎のコスプレなんです」

ゾンビランドサガといえば、ゾンビになった7人の女の子が佐賀を舞台にアイドルとして活躍するアニメ作品で、劇場版『ゾンビランドサガ ゆめぎんがパラダイス』が2025年10月24日に公開されたばかり。

日常生活でも「ゾンサガ」の世界観を満喫しているこの男性は、佐賀市在住で米国出身英語教師のスティーブン・ニューエンさん。

「僕がゾンサガにハマったのは、佐賀県のことが大好きで、佐賀にまつわるものなら何でも応援しようと思っているからです」

声を弾ませたスティーブンさんは、天真爛漫な笑顔を浮かべながら「佐賀愛」を宣言しました。

彼がそこまで佐賀に魅せられるのはなぜか。来日してちょうど10年になるというスティーブンさんに、これまでの足跡と佐賀への熱い思い、そして将来の夢に至るまで、存分に語っていただきました。

「日本激推し青年」が佐賀に来るまで

僕、普通に日本人と間違えられるんです。それもそのはずで、僕はアジア系アメリカ人。1995年1月25日にカリフォルニア州で生まれましたが、両親がベトナム出身の移民2世です。

家庭内はベトナム語、外では英語を話すので、多文化共生の生活環境で育ったといえます。幼少時代から日本の漫画やアニメに触れ、日本のポップカルチャーへの関心を深めていきました。

高校時代にはコスプレを楽しむようになり、ロサンゼルスで毎年開催されるアニメコンベンション「アニメ・エキスポ」で披露しました。はい、すでに今の僕の片鱗が見えますね(笑)。

そんな僕が初めて来日したのが、2015年5月。在学していた南カリフォルニア大学が提携している明治大学の短期留学生受入れプログラムに参加したんです。これでますます日本の文化や日本の人たちの魅力にハマり、将来は日本で英語教師として働くという「志」が明確になりました。

大学を卒業後、ALT(外国語指導助手)として日本で就職することになり、大好きな国での生活に胸が躍りました。しかし赴任先に決まったのは縁もゆかりもなく何の知識もなかった、九州のとある県だったのです。

佐賀に魅了される日々

2017年7月、佐賀空港を降り立った僕は、初めて佐賀の地を踏みました。そこで感じた衝撃は今でも鮮やかに記憶に残っています。

晴れ渡る青空のもと静かで澄み切った空気に包まれた、辺り一帯に広がる田園風景。それは見慣れてきた賑やかしい大都会とは打って変わった、日本の古き良き、美しく厳かなアナザーサイドでした。すぐに新天地・佐賀を気に入った僕は、「この土地で新たな人生が始まるんだ」と胸が高鳴ったものです。

ALTとして佐賀の小中高生に英語を教える一方で、ここには「さが榮の国まつり」や「佐賀インターナショナルバルーンフェスタ」など魅力的なイベントが多いことがわかり、積極的に参加するようになりました。生来のアウトドア好きも手伝い、「さが桜マラソン」や「鹿島ガタリンピック」にも果敢に挑戦しましたよ。

また、佐賀の人や佐賀在住外国人との交流の場を作りたいと2018年に「Saga Conversation Community」というサークルを設立、月2回の会合を行っていました。その後休止したのですが、仲間たちが2022年に「SAGA勉(佐賀国際関連勉強会)」を新たに立ち上げ、週1回の開催となり貴重な国際交流の場になっています。

佐賀での生活に深く溶け込み、老若男女を問わず多くの「さがんもん」の方々との関りを楽しんできた僕でしたが、世界中を震撼させたあの混乱に否応なく巻き込まれることになります。

コロナ禍で人生の岐路に立つ

2020年に端を発した新型コロナウィルスの蔓延は、僕の人生にも少なからぬ影響を与えました。

世間が暗く沈みがちな中で行動範囲はおのずと狭められ、人々との交流の機会が激減してしまいました。そして僕は今後の人生における重要な選択を迫られます。

このまま日本にとどまり続けるか、アメリカに帰国して仕事に就くか。

僕が選んだ決断は、日本滞在延長でした。

2021年4月、僕は九州大学大学院に進学しました。専攻は自然人類学。日本の弥生時代の研究に取り組み、発掘調査に励んだりと学業は充実。日本の歴史や文化、自然を幅広く学んだことで、「将来的には日本に骨をうずめたい」との思いが着実に深まってきました。

2年後に大学院を修了した時、また人生の分岐点が訪れます。今度は、大学に残り博士課程に進むか、もしくは英語教師として再就職するか。僕が下した決断は、再就職でした。

何も分からなかった前回就職の際とは違い、今度は一切の迷いもためらいもなく、大好きな佐賀を勤務地に選択しました。こうしてコロナ禍もようやく明けつつあった2023年4月、弘学館中学校高等学校に赴任。佐賀を満喫する日々がふたたび訪れたのです!

行政にも認められ「アンバサガ―」に!

久々に佐賀に戻ってきた僕ですが、相変わらず素敵な「さがんもん」に恵まれ、有難く思っています。これまでお世話になっていた方々との再交流があり、新たに親しくなった人たちとの出会いもあります。

時の流れを感じるのは、かつて教えていた生徒たちとの再会です。ALT時代の教え子たちの同窓会に招かれることがあり、大人になった彼らの成長ぶりに驚かされるんです。中には結婚して子どもを抱えた教え子もいて、自分も年を重ねたものだなあとしみじみします(笑)。

そんな中、佐賀市が市内在住の外国人に市の魅力を発信してもらう「公認国際観光アンバサダー」を募集していることを知り、早速応募しました。その結果、今年の6月にめでたく認定を受け、7月12日に佐賀市役所にて坂井英隆市長から認定証を授与されました。

具体的な役割は、インスタグラムやX(旧ツイッター)などで、佐賀市の魅力を伝える写真や文を発信すること。要するに、佐賀ライフをありのままに楽しむ姿を伝える、ということです!

ゾンサガを見守り続ける

最近の大きな出来事と言えばやはり、109シネマズ佐賀で行われた「ゾンサガ」最新作の初日上映と舞台挨拶に足を運んだことです。

全国からコスプレを身にまとったファンが大勢来場し、出演声優陣が舞台に上がった時は興奮最高潮でしたね。

僕が思うゾンサガの素晴らしさは、第一にストーリーのユニークさ。主役の女の子たちはゾンビでありながらその言動は人間らしさに満ちていて、度々ふりかかる試練は人間社会のリアリティに溢れており、彼女たちの喜怒哀楽につい共感してしまうんです。それでいてSFっぽい非日常的な迫力シーンも満載で、何度見ても飽きることはありません。

そして何と言っても佐賀県全域が舞台で、見慣れた景色はもちろん全く知らなかった穴場まで登場し、物語に彩りを添えること。佐賀がいかに隠れた魅力を秘めているのかを全国、いや全世界に発信してくれて、感謝しかありません。

僕も一ファンとして、これからもゾンサガを力の限り推していきます!

将来は佐賀に「永住」したい

初来日から今年で早10年。佐賀に根を下ろした今、永住権の取得を視野に入れるようになりました。佐賀で働き、リタイア後も佐賀で過ごしたいとの思いが沸き上がってきたんです。

僕からすると、佐賀県が「魅力度ランキング」で最下位争いをしているのが信じられません。佐賀は「Hidden Tresure(隠れた宝物)」に溢れています。これから、そんな宝物をどんどん発掘していきたい。

国際交流もこれからも積極的に展開したいですね。でも僕一人でできることには限度があります。国際感覚を持つ人を佐賀で増やしたいし、いずれは彼らにバトンを渡していきたい。僕にはできないことができる人材はきっといるし、佐賀の魅力を高めてくれると期待しています。

実際に、ここ数年で佐賀は活気がみなぎり、上り調子なのをひしひしと感じます。これまで目立たなかった葉っぱたち(Behind Leaves)が、光を浴びて輝きだすって、素晴らしいこと。Behind Leavesをそのまま訳すると、「葉隠」です!
新たな時代の葉隠精神の先駆者に、僕はなりたいですね。

まとめ

終始笑顔を絶やさず、熱く語ってくれたスティーブンさん。
これほど佐賀を愛し、佐賀での日々を心から満喫する外国出身者がいることは、佐賀県民の一人としてとても誇らしいことです。

地元民にはない独自な視点を磨きつつ、佐賀に新鮮な風を吹かせてくれる唯一無二の存在。佐賀で活躍するスティーブンさんのこれからの歩みに、目が離せません。

公式SNS Instagram:@steve_sensei_saga_senpai

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ライター

オカモト

フリーの物書き。佐賀市在住。これまで、ネットメディア記者、取材ライター、ウェブライター、コラムニスト、ブロガー、YouTubeシナ...

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