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木の温もりに包まれた森・川・海そして人をつなぐ施設|佐賀県水産会館【さがの木と暮らすvol.10】 PR

県内の森林のうち、約7割がスギやヒノキの人工林である佐賀県。佐賀の山で木を植え、育て、伐り、また植えることで佐賀県の自然や林業、木材産業の活性化に繋げようと、県内で様々な事業の輪が広がっています。

佐賀県の森川海を守る「森川海人っプロジェクト」

佐賀県は豊かな森林や川、有明海を有しており、私たちは森川海の恩恵を受けて日々生活しています。

2017年7月に発生した九州北部豪雨をきっかけに、同年10月に立ち上がったのが「森川海人っプロジェクト」。このプロジェクトでは、県民一人一人に森川海のつながりや、その管理の重要性などについて知ってもらい、保全活動などの行動促進につなげていこうという想いが込められています。

今回は「森川海人っプロジェクト」への賛同をきっかけに、佐賀県産の木材を使って建設された「佐賀県水産会館」について、インタビューとともにご紹介します。

木の温もりを感じる「佐賀県水産会館」

建物の老朽化に伴い、2023年4月に建て替えられた「佐賀県水産会館」。
佐賀県有明海漁業協同組合をはじめ、佐賀県の漁業を支える諸機関が入居しているほか、一般の方も利用できる直売所「まえうみ」や「JFギャラリー」が設けられた施設です。

新しくなった水産会館では、多くの場所に佐賀県産の木材が使われており、木の温もりを感じられる作りになっています。

ー県産木材をふんだんに使用したきっかけを教えてください。

佐賀県有明海漁業共同組合様(以下、県有明海漁協様):私たちは「森川海人っプロジェクト」の一環として、植樹や下刈りを行う「漁協の山」という取り組みを行っています。この取り組みには「海の源は森」であるとの思いがあり、豊かな海には豊かな森が欠かせないという考えがあります。そういった考えのもと、新しい水産会館には森との繋がりが感じられるよう佐賀県産の木材を可能な限り使用しました。

施設を訪れると、まず目に入るのが1階エントランス部分の装飾。様々な部分に木材が使われているため、入ってすぐ木の良い香りを感じることができ、訪れた方からの評判もいいそうです。

ー一般の方でも利用できるスペースと、そのポイントを教えてください。

県有明海漁協様:1階の直売所「まえうみ」では海苔をはじめとする有明海の海産物を多数販売するほか、そこから繋がる2階の「JFギャラリー」もどなたでもご利用いただけます。
「まえうみ」側の外壁に設置された外部ルーバーと「JFギャラリー」の天井ルーバーには県産木材を使用しており、一般の方もご覧いただけますので、お越しの際は是非注目していただきたいです。

※直売所「まえうみ」と「JFギャラリー」はオープンに向けて現在準備中(オープン日は未定)。「まえうみ」は現在、佐賀市光2丁目819-1にて営業中です。

※ルーバー:羽板(はいた)と呼ばれる細長い板や羽板状の部材を平行に複数並べたもの。外部からの目線や日光を遮る用途や、照明器具やエアコンなどを隠す用途として用いられる

※直売所「まえうみ」と「JFギャラリー」はオープンに向けて現在準備中(オープン日は未定)

設計者から見た、県産木材を使った建物の良さ

ここからは水産会館の設計を担当された、三原建築設計事務所の三原さんにお話しを伺います。

ー佐賀県水産会館の設計に際し、大切にしたいと思った依頼主の想いを教えてください。

三原建築設計事務所・三原さん(以下、三原さん):県有明海漁協様は「森川海人っプロジェクト」に賛同されており、森・海・川が人の生活と大きく繋がっているというお考えをお持ちでした。今回、新しい水産会館にも佐賀県産の木をふんだんに使いたいという想いを強く感じましたので、その想いをベースに建物の設計へ反映しました。

会議室や役員応接室にも県産木材が使用されている

ー今後この施設をどのような方に利用してもらい、どんな施設にしていってもらいたいですか。

三原さん:組合の方たちが利用しやすいということを前提に、地域の方々にも親しまれる施設であり続ければと思います。1階の「まえうみ」は国内外問わずいろんな方がいらっしゃるので、目に触れるものに県産木材を使うことによって、佐賀県のこと、さらには「森川海人っプロジェクト」のことを知っていただくきっかけになるのではと思っています。また2階の「JFギャラリー」については地域の方々と組合の方が一帯となって、ともに使ってもらえるようなスペースになればと思います。

ー県産木材を多く用いられていますが、自然素材や木造建築の魅力を教えてください。

三原さん:やはり、温かさや柔らかさという心地よい空間ができていくところが一番の魅力ですね。建築業界でいうと木造のビルや建物も増えている印象があります。そもそも日本には木造の建物しかなかったので、日本人の気質にも合っている気がします。老若男女問わず、どの世代からも好まれるという点も木造建築のメリットのひとつだと思います。
また、幼児向けのおもちゃやこども園などの施設にも木が使われていることが多いと思いますが、子どもたち含め、人が手に触れたときに優しいことも魅力だと感じています。

ー水産会館に木材を用いるにあたり、特にこだわったポイントはありますか。

三原さん:まず、エントランスの壁には木材を並べて上空から見た海苔養殖の網をを表現しました。

1階は店舗が入るため光が入らないように設計にしなければならなかったのですが、冬至と夏至の入射角を計算し、どの時季でも光が入らない角度で木材の外壁ルーパーを設置しました。一方で、佐賀市街地方面から向かってくる際には道路から店舗内が見えるようにしており、気軽に立ち寄りやすい雰囲気になるよう工夫をしています。

ほかにも、館内のサインマークや階数の案内表示など細部にも木材を使用し、全体的に木の温もりを感じられるようにしました。

設計者としての思いとこれから。

ー普段、設計をしていく上で心がけていることはありますか。

三原さん:心がけていることは施主様の思いを十分に理解し、対話型で思いに寄り添いながら設計していくことです。話し合いながらお客様の思いを形に落としていく、みんなで一緒に作っていくという"寄り添う設計"を行っていきたいと思っています。

ー建築する立場から、建物を利用する一般の方へ伝えたいことを教えてください。

三原さん:例えば、建物にベンチやテラスがあった場合、一度座ってみたり見てみたりしてほしいなと思います。なぜかというと、そこから見た視線の先の世界を想像して設計しているので、もしかしたらそこに座る・立つことで見える新しい世界があるかもしれないからです。これを体験していただくと、設計者が考えているところや想像した世界を一緒に見ていただけるのではないかと思っています。

最後に

佐賀県産木材を用いて建てられた「佐賀県水産会館」。
佐賀県有明海漁業協同組合の方、そして設計を担当された三原建築設計事務所の方それぞれに木材や建物に込められた想いを伺うことで、身近な木材や木の温もりとともに、そこに携わった人々の温かみも感じられました。

作り手の工夫や想いを探しながら施設を利用してみると、いつもとは一味違った景色を楽しめるかもしれません。

皆さんもぜひ木の温もりに包まれた佐賀県水産会館を一度訪れてみてはいかかでしょうか。


Word:中島彩香

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