みんなが心地よく暮らせる、佐賀らしい人にやさしいまちをつくっていこうとする佐賀県の取り組み『さがすたいる』。自分の住んでいる地域に、またはちょっと足をのばした先にこんなお店があったんだ、このお店はこういう面で来店者に配慮されているんだ、などと参考になるWEBサイトもあります。
今回は、車いすユーザーがよく集まるお店と聞いて、『創作居酒屋 カミーノ』さんへ。オーナーの西村祐二郎さんと、カミーノさんをよく利用する車椅子ユーザーの中尾彰宏さんにお話を伺いました。
中尾さんは『さがすたいる』リポーター『○○な障がい者の会』のメンバーで、ご自身では『一般社団法人すまいサポートさが』の代表などを務め、佐賀の街なかを車いすで活発に動き回っています。
自然な応対が心地よく
『カミーノ』をオープンして14年目になる西村さん。
高校時代はラグビーに打ち込み、卒業してからはバックパッカーとして海外を放浪していたこともあり、店名はスペイン語で"道"という意味で名付けました。6年間は佐賀大学のそばで営業、その後現在の場所へと移転し、今に至るそうです。
1階はテーブル席とカウンター、2階は40人ほど収容可能なお座敷です。
"誰でも気軽に寄れる大衆居酒屋"というコンセプトで、カウンターの上を見上げると、料理の名札がずらり。小城のマジェンバとお酢でむせるにヒントを得て作った焼きそば『むしぇんば』という独創的なメニューもあります。
中尾さんと西村さんは佐賀JC(青年会議所)の仲間でした。数年前までは、1階は今のようなテーブルではなく、カウンターと小上がりのみ。その頃からここに通う中尾さんは、こう振り返ります。
「バリアフリーじゃなかったけど、2階や小上がりに上がったりするのを手伝ってもらえるし、来店しやすかったということで利用し始めたと思います。車いすの友人ともあの店は行きやすい、と情報を交換していました」。
西村さんにお話を聞くと「お客様には、できることはできる、できないことはできないと言います。それは車椅子でもそうでない人でも変わりません。ただ、言いやすい雰囲気になってるから言えるんだと思います」と特別なことはしていないという様子で一貫しています。
常連の体が不自由なお客様には、ビールジョッキにストローを予め挿して提供する、食べやすいようにカットするなど、気づいたことはサポートするというスタンス。スタッフも徐々に気づくようになって、笑顔で「どうしたらいいですか?」などの声かけが行われているそうです。
その"自然さ"が、お客様にとって心地よいものになるのだろうと思います。
当事者の方々のアクション
別の車いすユーザーのお客様から"折り畳み式のアルミスロープ"が持ち込まれ、そのままお店において帰られました。いわば"スロープの置き土産"です。その後、その方だけでなく中尾さんを始め、さまざまな方に活用されています。
仲間の車いすユーザーも増えて、カウンターには仲良く3、4人分の車いすが並んで食事する光景も見られるとか。
スロープや手すりが設置され、体が不自由な方にも利用しやすい施設や店舗は多々あります。一方、個人のお店では、建物の改装まで手が回らない、というところも多いはず。
珍しい例ではありますが、段差のあるお店でもこうして当事者の方々のアクションがあって利用しやすくなるというのは新しい発見です!
また、西村さんは小上がりだったスペースを改装し、テーブルに入れ替え、半個室のような形で案内されています。車椅子の方以外に、膝の悪いお年寄りなどにも喜ばれているそうです。
受け容れる懐(ふところ)の広がりを
中尾さんは「俺らは他の人が頼まないことを頼むので気を遣うけれど、そういうことも気を遣わずに言えるような雰囲気がある。なんというか『受け容れてくれる懐(ふところ)』がある」と『カミーノ』の魅力を分析します。
一方で「そんなにハードルが高いお店ってないんじゃないかと思う。入口とか入りにくかったりするけれど、声をかけ合ったり、入れますか?って言ったら対応してくれるお店もたくさんありそう」と西村さん。
「日本人は、助けてって言われたら、9割くらい?ほとんどの人が助ける。逆に助けてって言えるかっていうと1、2割くらいの人しか言えないみたいです」と中尾さん。
障がいをもつ当事者でありながら、自分がまず動いて、周りの当事者の方々を元気にする活動を進めていらっしゃいます。
「これまで通り楽しんでもらえるように、お互いにもうちょっと声かけあうとか、分からないことはもちろん聞いて、お互いしっかりコミュニケーション取れればいいと思います」。
特別なことはせず、これからも、どんなお客様にも笑顔になってほしい、と西村さんは話します。
まとめ
"気軽に寄れる大衆居酒屋"という『カミーノ』のコンセプトは、そこに「どんな人も」という気持ちが込められ、『さがすたいる』のコンセプトととてもマッチしています。
お店に通いながら、行きやすさ、居心地のよさを感じる中尾さんの思いも心からの気持ちであることが伝わりました。
それぞれの立場のことを分かり合おうとする「受け容れる懐」が自然に広がれば、その雰囲気づくりは、きっと佐賀らしいやさしさにつながっていくでしょう。
施設情報
創作居酒屋カミーノ(camino)
住所 | 〒840-0811 佐賀県佐賀市大財1丁目4-19 |
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公式SNS | Instagram:@camino_saga |
詳細 | 【OPEN】18:00~24:00(L.O 23:30) 【CLOSE】毎週火曜日 |
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ライター 髙橋香歩