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「佐賀のいいもの」でつながるカフェと生産者が生み出す相乗効果 PR

ふらっと一人で入ってコーヒーを飲みながら本を片手にくつろげる。体にやさしい野菜中心のランチも頂ける。佐賀市立図書館内に2006年秋にオープンした『カフェ パンゲア』は、佐賀ではそれまであまり見られなかった「ごはんも楽しめるカフェ」の草分け的存在です。

お店の料理に使われている野菜の一部は、佐賀市にある就労支援施設『スローWORK大和』で作られたもの。汗水流して育てられた野菜が毎週カフェへと届けられています。

「さがらしい、やさしさのカタチ」を合言葉にした佐賀県の取り組みの一つ『さがすたいる』の登録店でもある『カフェ パンゲア』の店長・野村里恵さんと、『スローWORK大和』を運営する『NPO法人スローLIFE』理事長の松本康平さんにお話を伺いました。

「佐賀でたべる、つくる、くらす」をコンセプトにしたカフェ

今回訪れた『パンゲア』は佐賀市立図書館内にあるカフェ。

オーナーの清田祥一朗さんが海外のカフェに影響を受けて「佐賀でもおいしいコーヒーが飲めるカフェを」と起業。その後、佐賀市内に『トレス』など現在は全3店舗を経営、多くの人にとって居心地のいいカフェとして定着しています。

「当店のイチオシメニューは日替わりランチです」と話す野村さん。メインの料理のほかに副菜やサラダがついて、野菜が一番多く摂れるので、よく注文いただいているそうです。

コンセプトは「佐賀でたべる、つくる、くらす」。地元佐賀の生産者さん、加工業者さんの製品を積極的に使用したり、店内で販売したりもしています。『スローWORK大和』の野菜は副菜のほか、「大葉のチーズケーキ」など、デザートにも登場することもあるとか。

採れたて野菜が入荷する日に合わせて図書館を利用する常連さんもいらっしゃるそうです。

どの地域の食材でもインターネット上で手に入りやすい時代ですが「お取引は直接お話をして、相手をよく知ったうえで」という、いわば「顔の見えるお付き合い」と「佐賀のいいもの」を大事にするお店です。

毎日私たちの口に入る食べ物がどう作られているか、意識する人も増えてきました。10年ほど前、オーナーの清田さんは、『スローWORK大和』の農薬を使わない野菜づくりのことを知り、興味を持って松本さんと対面。そこから交流が生まれ、野菜の仕入れも始まりました。福祉的な取り組みだからという理由ではなく「いいものだから」という視点で選ばれています。そこにあるのは、お互いが対等で何でも率直に言い合える関係性です。

「スローさんのお野菜を買われるお客さまの中には、やっぱり味が違う、美味しい、と言って買い続けている方もいらっしゃいます」と野村さん。

安心な方法でつくられた野菜を使った料理を食べる、体が喜び、心も元気になる、また体にいいものを選んで取り入れていく、そのいい循環が「たべる、つくる、くらす」のコンセプトにも表れています。

季節の野菜の宝庫!多彩なお野菜を作るワケ

嘉瀬川の堤防から見渡せるのどかな一帯にある、佐賀市大和町東山田の『スローWORK大和』は『NPO法人スローLIFE』の就労継続支援B型事業所です。利用者さんと職員さん合わせて約40名が露地栽培で農業に特化した活動を行っています。

ここで育てられた野菜は、市内の飲食店を中心に卸されているほか、グループホームで使う食材としても届けられています。また、カフェやスーパーなど佐賀市内のお店の一角で商品として取り扱うお店も増えています。かぼちゃのマークのシールが目印です。

特徴としてはまず広大な畑で農薬や化学肥料を使わずに栽培しているということ。そして、作物の種類も豊富。例えば、バジル一つとっても、一般的なバジル以外に「レモンバジル」「シナモンバジル」「紫バジル」と多彩なラインナップ。季節の野菜の宝庫です。

年間300種類ほどの「少量多品種」の栽培、さぞかし大変だろうと思いますが、松本さんは「お客様からのご要望に応えるのと、こちらもたくさんある方が楽しめるのと、"両面"がある」と言います。農業だけで作業をしている就労支援の施設としては、利用者さんが毎日いろんな作物を収穫できたら楽しいかな、と計画的に少しずつ時期をずらして作付けするのだそうです。そうすることで、常時作業を創出することもできます。

このように双方にやさしい目線を持ち、そして農業を生業とする農家さんとも共存できる方法を考えられ、こうした独自性が保たれているのだと分かりました。

後日、畑を訪ねてみると、草刈りをしたり、収穫したり、野菜を洗ったり、それぞれに作業に打ち込む利用者さんの姿が見られました。水が好きな人、機械を動かすのが好きな人など、それぞれの特性にも合わせた作業も。室内ではしっかりとチェックして袋詰めする職員さんがいて品質を高める連携も行われています。

地元の人に安全・安心な野菜を食べてもらいたいとの想いからくるその品質が評価されて、今ではお取引の飲食店も増え、またそのつながりから、加工品などの開発などへも取り組まれているそうです。

お互いに心地よい配慮とやさしさについて

『パンゲア』ではお店のスタッフさんたちと研修の一環で取引業者さんの農場や工場を見学に行くこともあるそうです。「先日はスローさんの畑に行った」という野村さん。そこでもいろんな発見があったり安心につながったりすると話してくれました。

「利用者さんやスタッフさんが挨拶してくれて、わたしたちと同じように、協力して働きながら育てているんだと思いました。普段、できあがってるお野菜を見ることはあっても、こんな育ち方をしてるんだというのは見たことがなかったし、楽しかったですよ」

野村さんの前職はホテル業界で、「障害をお持ちの方への接客方法」という研修を企画したことがあったそうです。視覚に障がいのある方や、足が不自由な方、車椅子ユーザーの方にどのような接客をするかという話を講師の方に聞く中で一番印象的だったのは「最初はいつもと同じように接客してください」という言葉だったと言います。

「障がいのある方も『いろんなところに行きたい』気持ちでここに来ていて、最初から障がいを持っている前提での扱いはされたくないということがあります。『いらっしゃいませ』とお席へご案内する際も『何かお手伝いすることはありますか?』と聞いて、手助けが必要であればこちらからサポートするくらいで、意識をしすぎない、接客で他の人と差別化しないと教わりました」と野村さん。

『パンゲア』には車椅子利用の方も多くいらっしゃいます。そのお一人の接客の時に手が届きやすいよう、レジのトレイを前に差し出すと「届くから大丈夫ですよ」と断られたこともあったそう。障がいがある方に対して過度に何かしてあげなくちゃと意識しすぎだったかも、と振り返り、自然体な接客を心がけているそうです。

「一般の方がお手伝いしすぎる必要はなく、同じように接してもらうのが基本的にはいいと思いますし、実はそういった障がいをお持ちの方たちは、『こういう部分を手伝ってほしい』って言われますよ。お店側が過度に対応する必要はなく、気に掛けてくれたらいい」と、社会福祉士である松本さんも専門的立場からアドバイスしてくださいました。

福祉に関わる仕事は、当事者の方たちと一緒の時間を過ごしたり、暮らしたりというところが楽しかったから始めたという松本さん。

お話を聞いて、さまざまな立場の方が、お互いに配慮しすぎることなく、心地よく過ごすためには?と考えさせられました。一人ひとりが想像してみることで「心のバリア」が少し解けるかもしれません。

佐賀の産品を使いその魅力をも伝える『カフェ パンゲア』と、佐賀の空の下で安心の野菜を作り続ける『スローWORK大和』。一見、接点が薄そうなカフェと福祉施設ですが、色々な関わり方ができ、お互いに行き来し、気持ちを通わせ合うことで、地域が元気になる相乗効果を生み出しています。

施設情報

店舗名 カフェ パンゲア(cafe pangaea)
住所 佐賀市天神3-2-15 佐賀市立図書館1F
公式SNS Instagram:@cafepangaea
詳細

【OPEN】
火~土......10:00~18:00
日・祝......10:00~17:00

【CLOSE】
月・図書館休館日

地図
施設名 スローWORK大和
住所 佐賀市大和町東山田4474
公式サイト https://www.slou-waork-yamato.com/index.html
詳細 【TEL】0952-62-7133
地図

文章:髙橋 香歩
写真:髙橋 香歩・浦郷 慧人

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