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みんなが心地よく過ごせる「おもてなし」について考える! R4レッツさがすたいるトークvol.1|前編 PR

9月14日、『R4レッツさがすたいるトークvol.1』が江北町のみんなの公園で開催されました。会場には約20人が集まりYouTubeからも同時配信。オンラインで多くの方がリアルタイムで参加しました!

今回は「みんなが心地よく過ごせるおもてなしとは?」をテーマに、MCのサトユミ☆さんの進行のもと、車いすで世界中を旅しながら各国の接客を肌で感じた三代達也さんと、接客業のプロとして多くのお客様への接遇をしてこられた鳥谷憲樹さん、野田恵さんが対談しながら、それぞれの立場でのおもてなしの形を聞くことができました。

今回のゲストの皆さんも自己紹介!

三代 達也(みよ・たつや)さん:車いすトラベラー

茨城県日立市出身。車いす生活16年目の33歳。18歳の時、バイトの帰り道にバイク事故で車と正面衝突、首の骨を折り、脊髄を損傷し、麻痺が残る。28歳の時、旅好きが高じて単独で約9ヶ月間車いすで23ヶ国42都市以上を回り、世界一周達成。帰国後はメディアへの掲載・出演多数。車椅子だから"こそ"の旅の魅力について、全国で講演などを行う。

「旅の目的として、それまでの車いす生活では、電車に乗ること、坂道を上ることなど何をやるにも怖かった。でも経験していくと、階段を上っていくように少しずつ自信がついてきて、こんな風にだれかの一歩につながる旅にしたいと思いました。一人でできること、できないこと、あえて体験したその旅行記を書いたり、バリアフリー情報を発信したり。例えば"沖縄なら行けるかも""世界のこの場所なら行けるかも"という一歩に繋がってもらえたら」と話す。

鳥谷 憲樹(とりや かずき)さん:trattoriYa Mimasaka オーナー

武雄市山内町出身。大学中退後、服部栄養専門学校を卒業。東京目白にある『フォーシーズンズホテル椿山荘東京』に入社し、メインダイニング『イル・テアトロ』に配属される。父の他界やHRSサービス技能コンクールU-30での優勝や東日本大震災も転機となり退社。1年間のイタリア修行に赴く。Uターン後は仕事の傍ら、近隣市町村の各種プロジェクトに参画。祖父母が遺した庭園を受け継ぎ、2016年12月に『trattoriYa Mimasaka』をオープン。

「イタリア料理店から来たと言うと料理人と思われますが、私は接客と経営を専門として起業しました。イタリアでの1年修行でイタリア人の幸せをつぶさに見て地元に帰りました。20年ほどサービス業をしていますが、佐賀県でのサービスマンの地位はまだ高くないので、自分たちの思い、技能、この仕事で役立てることなどをアピールし、次の世代にも憧れてもらえるような仕事であることを発信していきたい」と話す。

野田 恵(のだ めぐみ)さん:佐賀県コスメティック構想推進室

佐賀市出身。2011年『全日本空輸株式会社』に入社。客室乗務員として、お客様に安心して快適な空の旅をお楽しみいただけるよう、お客様のフライトをサポートする業務に従事。現在は、佐賀県とANAとの連携企画『SAGĀNA Project(サッガーナプロジェクト)』で、佐賀県へ出向中。

「佐賀県をANAと一緒にさらに盛り上げていこうというプロジェクトの一環で、佐賀県庁はじめ町役場などにグループ会社から10数名の社員を受け入れていただいて、佐賀県のみなさんと頑張っています。コスメティック構想推進室に配属され、その情報発信のほか、佐賀の美味しい野菜や植物などが有名な化粧品会社の原料にも採用されており、化粧品の原料関連の業務を担当している」と話す。

第一部:それぞれが感じる心地よいおもてなしについて

今回のテーマにある「おもてなし」はよく使われる言葉ですが、一口に言ってもさまざまなイメージがあり、きっとそれぞれが感じる心地よいおもてなしがあるはず。本題について世界を旅して来た三代さんからトークが始まりました!

笑顔に加え、笑声(えごえ)があると心地いい!

三代さん

健常者、車いすユーザーも心地いいおもてなしはそんなに変わらないと思います。
世界中で一番好きな国どこですか?と聞かれたら「タイ」と答えます。凸凹道も多い、バリアフリーでないけれど、結論でいうと、「人」です。

人がいい国はそこら中にあって、その中でも僕が行った30カ国くらいの国で群を抜いてよかったのが、タイの人の「笑顔」なんです。微笑みの国って言われているのがタイ。車いすで手伝ってもらうことも多いんですが、対面した時に真顔なのか、スマイルをベースに応対されるのかでは話しかけやすさが全然違います。

また、世界の話で言うと、日本人は目の前に車椅子の方が困っている時「これは声をかけていいものだろうか?」と1、2秒考えると思います。まず頭で考えて、じゃあどうしようかなと動く。

海外で僕が出会った人は考える前に体が動いてる人たちが多かったです。

良くも悪くもだと思うんですけど、障がい者であることを忘れるくらい普通にコミュニケーションがとれたっていう、コミュニケーションのしやすさ、壁の少なさっていうのが僕の中の心地よさです。

日本に帰ってくると、人からの目の色が違うというか、フィルターがかかって僕のことを見てるなっていうのを少し感じるところもあります。

サトユミ☆さん

「心地よいおもてなし」というと、建物や公共交通機関の整備、移動のしやすさなどを先にイメージしてしまいますが、実はそこではないということですね。

三代さん

そうですね。やはり人との接し方、あとは、僕が前にテレマーケティングで電話の仕事をしていた時に、世界とは限らずいいなあと思ったのは、「笑顔」ではなく、「笑声(えごえ)」を意識してと言われたのが、「心地よいおもてなし」で、すごくそうだなって。

僕の場合、車いすを押してもらうので、表情を見ながらしゃべるより、後ろの人が押しながらしゃべることの方が多い。

顔が見えないので、その声が楽しそうだったら楽しくされているように思えるし、疲れてそうにしゃべられていたら、本当は疲れてるのに申し訳ないなと思っちゃうので「君といるのが楽しいんだよ」っていうような声でしゃべってくれる人って素敵だなと思います。

穴を発生させない接客を重視

サトユミ☆さん

鳥谷さんのお店は『さがすたいる倶楽部』にも登録をされていますが、『さがすたいる』のやさしさのカタチについてどんなところを工夫されていますか?

鳥谷さん

おもてなしの本に書いてあるような特別なことではなく、「穴を発生させない」ことです。例えば、お客様が飲食店に入って、ドアを開けた時に店員が誰もいない。そういうちょっとした「穴」があると思います。

「勝手に座っていいのかな」「食べようと思ったけれどフォークがない」「トイレはどこ」などそのような穴を速やかにふさぐ、その穴が起きる前に先回りすることです。それをとことん積み重ねることがおもてなしとしてはまず大事なことかなと思っています。

そして、経験からくる予測もあるけれど、「おもてなしの心」だけではどうにもならないので、絶対的なスピードが必要であることも意識します。

「目の前にいる方にこんなサプライズをして差し上げたい」と思っても、何かやらなきゃいけない業務や宿題が山積みになっていたら、サプライズをする余力がないんですよね。だからそういう気持ちがあるなら、まず自分がやらなきゃいけない「宿題」をさっと終わらせる、「絶対的なスピード」がおもてなしの前段階で必要ですね。

サトユミ☆さん

サービスマン、接客のプロとして大切にしていることは何ですか?

鳥谷さん

自戒の念を込めて意識するのは「惰性で仕事しないこと」です。7割の力でも仕事はできます。でも、その油断が後々大きなやけどになって返ってきたりします。

例えば、誕生日のプレートを毎日提供しますが、それを僕らがポーンと日常のワンシーンで済ませてしまうと、お客様とこちらで温度差が出てしまいます。それはおもてなしでなく、作業になってしまいます。

気づきの3ステップを繰り返す

サトユミ☆さん

野田さん、客室乗務員として意識していたことについて、ANAの理念などを含め教えていただけますか?

野田さん

「すべてのひとに優しい空」というユニバーサルなサービスポリシーが会社として策定されていて、文化・国籍・言語・性別などにかかわらず、誰もが利用しやすいサービスを基本に提供しています。数千人いる乗務員だけでも、クルー自身のバックグラウンドが様々で、それぞれの個性とか経験っていうところがおもてなしに生かせているかなと思います。

また、ANAで「気づきの3ステップ」と言っていますが、
・何かお客様に対して気づく
・その気づきをもとに行動する
・行動して終わり。ではなく、それに対して確認する、満足度を確認する
この3ステップを徹底していくことで、私自身ももちろん気をつけています。例えば、寒そうにしているお客様がいらっしゃり、声をかけてみたら本当に寒そうで、機内の温度を上げたら終わり。ではなく、その後お客様に「ちょっと上げてみたんですけど、今どうですか?」と確認をしてみるとかですね。

また、お客様からストレートにリクエストがある場合と、日本の方では一つのリクエストの奥に隠れたご要望がある場合が多いかなと思います。

お水一つでも「何のためだろう?」と考えます。すごく暑そうにしていらっしゃり、「じゃあ、ちょっと氷を入れておしぼりを一緒にお持ちしよう」とか「お薬を飲まれるのなら常温の水の方がいいかな」とか、お子さんがいらっしゃって水でも溶けるミルクを作ろうとされているのであれば「こちらでお湯を入れてお渡しした方がいいかな」とか「飲むための水ではない、何かこぼしてしまってシミを消したい」とか。そういうご要望があるかもしれないっていうところを、言葉通り受け取るだけではなく、お客様の表情や接したときの感じから、"本当の意味"で読み取るように心がけています。私自身もまだまだだなと思うんですけれども、この仕事は何十年やっても毎日勉強ですね。

三代さんは「特に海外だと言葉足らずになってしまうので、"I want you ○○(○○してもらいたい)"だけで、その相手側が「お前ここに行きたいんだろう」と案内してくれるパターンがある。まさに本当にその通りだなって思いました」とCAさんの洞察力に共感した様子!

野田さんも「普段から気をつけているんですが、さらに感染症対策など条件として加わってくると、目をキョロキョロさせて、頭をフル回転させてお客様の仕草一つ一つの行動に目を向けているかなと思います」とコロナ禍でのお話も交えて補足されていました。

さらに、トークは進み、コロナ禍で少しずつ変化してきたことにも触れられました。

「お互い様」の気持ちが醸成

鳥谷さん

おそらく旅行業界も、飲食業界もダメージを多く受けました。
当店においては、生き残るためにはどうしようと知恵を絞ったときに、お客様にお願いすることが増えました。

できるだけ予約してほしい、コースを予め決めてほしいとか、こちら側の事情というものをできるだけ発信して、お互い様っていう相互理解を持つことで、お互いに過ごしやすいようにしていこうとする空気感が生まれたのは、コロナがもたらしたプラスの面の一つだと思います。

ファンの方の温かい応援とか感情のやり取りもよく見えるようになってきました。そういう意味では佐賀に帰ってきて飲食や接客をやっててよかったなという感じるシーンが増えたと思います。

コミュニケーションで解決できる

サトユミ☆さん

三代さんは世界各国を旅した中で、接客とかおもてなしを受けて、それぞれ違うこともありますよね。

三代さん

コミュニケーションの取り方が若干違うくらいで、そう変わらないかもしれません。

基本的にまず見る、僕が車椅子に乗ってるってことに気づく、この人は何が必要なのかなって多分0.5秒くらいで考えて「May I help you?」と来てくれる。「お手伝いできますか」と聞いた後はこちらが説明して対応してくれる。車椅子が原因で断られるっていうのは正直一度もなかったです。「おもてなし」という概念ではなく、彼らにとって障がいというのはただのオプションの一つなんですよ。

そもそも「おもてなし」と僕たちが考えてきたことが、海外の人からすると、ただのコミュニケーションでなんとかなるよっていうような世界観を毎日味わってきました。おもてなし以前の問題で、コミュニケーションだけで解決できるというのが僕の答えかもしれません。

第一部のまとめ

三代さんからは、世界一周の旅で海外には「おもてなしというより意思疎通」が一般のコミュニケーションとして当たり前にあって、日本を見つめ直すことにもつながるお話。そして、鳥谷さん、野田さんからはそれぞれ真摯にお客様に向き合いながら、常に接客を一括りにせず対応されている様子がわかり、接客を職業とする方にも、それ以外の方にも大変参考になるお話を聞くことができました。

第二部では「心地よいおもてなしのために必要なこと」をテーマに行われたトークをご紹介します。

お楽しみに!


文章:髙橋 香歩
写真:相馬 千恵子

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