子育て真っ最中の人や障がいのある方など、誰もが暮らしやすい佐賀県にしたいという思いでまちづくりに取り組む『さがすたいる』。「さがらしい、やさしさのカタチ」を軸に情報を発信する『さがすたいる』のWEBサイトでは、この想いに賛同してくれた登録店の紹介をしています。またお店側も目印のステッカーを貼って協力するなど、社会参加の動きが活発になっています。
今回は美肌の湯として全国でも有名な嬉野温泉にある旅館『初音荘』へ。お子様連れに特化した宿で、「さがすたいる登録店」でもあります。『初音荘』の広報・杉原さんと、家族5人で実際に宿泊された「さがすたいるリポーター」の片桐さんにお話をお伺いしました!
お宿自ら"お子様連れに向けた仕様"にシフトチェンジ!
お子様を連れて温泉旅館に行くとしたら......? 「他の宿泊客に迷惑をかけないか」とか「子どもが館内で楽しめるか」とか、何かと気がかりなことが多いパパ・ママたち。
『初音荘』は、お子様連れにグーンとクローズアップしたおもてなしを提供する宿で、なんとお子様連れであふれているそうなのです。
杉原さん -
"お子様の笑顔に必ず出会える宿"というところをすごく大事にしています。ご家族で一日過ごし、来てよかったなと思っていただける、大切な旅の1ページが増えるというような宿をめざしています。
そんな『初音荘』の中に入るとお子様連れにやさしい数々の工夫がありました。
チェックインの際に選べるお子様用の浴衣は80cmのサイズから準備されています。オムツ用のバケツも借りることができ、離乳食も選べるなど「赤ちゃん連れで手ぶらで来られても対応できるように、たくさん準備しています」とのこと。乳児との宿泊でも安心感がありますね。
フロントのすぐ隣にはキッズルーム『ちいさなえほんのもり』があり、多彩なおもちゃと共に絵本が充実。この本棚の一部は、宿が呼びかける「みんなで繋ぐ子育てバトンの輪」による絵本です。これらの絵本には元の持ち主からのメッセージや、絵本を読んだ人のコメントも綴られ、絵本を介した交流が生まれることで、お子様の笑顔につなげています。
また、『Hatsu-co(はつこ)』というお子様専用の通貨を渡すというユニークなサービスも提供(2022年10月現在は一部の特典として)。お子様はコインを使って駄菓子やジュースなどと交換。「初めてのお買い物体験」もできる楽しみもあります。
昔は客層を限定しない温泉宿だったそうですが、今は「お子様連れに特化しています」と言い切る、その変化のきっかけは何だったのでしょうか?
杉原さん -
嬉野温泉には家族連れがゆっくり過ごせるような旅館がなかなかないというところに着目して、それならばお子様が120%満足して楽しんでもらえる宿に転化しようと方針を決めたのが始まりです。
"美肌の湯"で有名な嬉野温泉の泉質はとろとろの弱アルカリ性。赤ちゃんの温泉デビューにも安心して楽しんでもらえるようにと、こちらの大浴場の洗い場には特殊な畳が敷かれ、座った時に冷たくない、転んでも安全性が高いというやさしさのカタチがありました。
ベビーバスやおむつ交換台、ベビーソープも用意するなど、従来の良さはそのままに、ソフト面でどれだけ楽しんでもらうか、にこだわっているそうです。
「さがすたいるプラス補助金」を活用して購入された赤ちゃん用のいすなども充実!
「お互い様」の空気感で親も子も安心
片桐さんは子育てを父親側からも広めている任意団体『いまパパ.(いまりパパネットワーク)』の代表です。夫婦で子ども3人を連れての宿泊はいかがだったでしょうか。親目線のリアルな感想を話してくださいました。
結果として「4回温泉に入った」「ご飯もゆっくり食べられた」という片桐さん。7歳、5歳、2歳のお子さんをそれぞれ見ながら楽しめたということは「忙しくなりすぎず過ごしやすかったおかげ」と振り返ります。
片桐さん -
宿に来てから、本当に子育て中の人しか見ないんですよ。
ご年配の方もいらっしゃいましたが、お孫さんと一緒でした。だからお子さんが騒がしい、言うこと聞かないとか、みんな分かった上で泊まっている感じがしましたし、お互い様の空気感もあります。
夕食時には手ごねのハンバーグなど手間ひまをかけたお子様用料理が登場。また、食事の後には子どもたちが喜ぶイベントも。ワクワクするようなお楽しみが用意され、おばあちゃん世代の仲居さんがそれぞれ上手に誘導して盛り上げています。子どもが集中して食べて遊ぶことにつながる、大人もゆっくり食事の時間をとれる、子育て世代と同じ目線から宿の配慮は、とてもありがたいことでしょう。
「子どもを笑顔にしたい」の共通した思い
館内を歩いていると、どのスタッフさんも明るく挨拶をしてくださいます。何か小さなことでも気づいたらお声かけが行われているようです。
片桐さん -
全体的に子どもからもスタッフさんに話しかけやすい雰囲気がありました。例えば、調味料を借りる時でも、ふだんは自分からスタッフさんに話しかけない長女が自分で言いに行ったりしたんです。
15年前から働く仲居のカヨ子さんにもどんな接客をされるかお話を伺いました。
カヨ子さん -
お声かけはもう、しょっちゅうしています。お食事の際も一つのテーブルばかりじゃなく、全部平等に回って。その大人の方、お子さんにも一人ひとりにですね。
"みなさんに喜んでもらえるように"を一番に考えて、じゃんけんする時もお子さんを励ましたりヒントをあげたりしながら、勝たせてあげようって一生懸命です(笑)。勝ってもらったら一緒に喜んだり、お母さんともお話ししたりしますね。
宿で自然にコミュニケーションを取れる雰囲気、それはスタッフさんの自主性によるものが大きく、ただ共通しているのは「お子様の笑顔」への思いだと分かりました。
また約10年介護職を経験された片桐さんは、バリアフリールームに宿泊し、十分な広さがあるトイレや、浴槽にも手すりがついている大浴場などいろいろな嬉しいポイントを発見!
「ある程度歩ける方なら旅行も可能だと思います」と言い、3世代一緒の旅行や、障がいのあるお子様や保護者さんがいるご家族での宿泊もできそうだというご感想でした。
理想の家族旅行についてもお尋ねすると
片桐さん -
親がゆっくりするためではなく、子どもたちがどうしたら喜ぶかっていつも考えて決めています。
バリアフリー対応や設備が整うことも大事ですが、やはり『初音荘』に泊まって、"子どもの笑顔"っていう同じ目的があるところがよかったですし、そういう受け入れ先だとまた行きたくなりますね。こういう施設であれば、パパ目線で企画したお子様連れ団体旅行なども実現できそうですね。
と熱く語ってくださいました!
最後に
『初音荘』ではスタッフさんの、お子さんやパパ、ママへのエールを込めたやさしさのカタチが感じられました。
「お子様連れ歓迎」とはっきりと表明することで、宿泊を検討する全ての人にも分かりやすく伝えています。
宿泊に限らず、お店や施設の中にもこうした応援や宣言が広がって、お出かけに対するハードルが、うんと低くなれば、子育て中の人も心強いと思います。子どもたちの笑顔をイメージしながら日々改善を重ねながらお宿を経営される『初音荘』。このような取り組みを考え続ける施設があるということも、地域で安心して暮らせるまちの実現につながりますね。
施設情報
旅館 初音荘
店舗名 | 嬉野温泉 旅館 初音荘 |
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住所 | 嬉野市嬉野町岩屋川内甲340-1 |
公式サイト | http://hatsunesou.co.jp/ |
公式SNS | Instagram:@ryokan_hatsunesou |
詳細 |
【問い合わせ】0954-43-3238 【休館日】月・火(祝日の場合は翌日) |
地図 |
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文章:髙橋 香歩
写真:相馬 千恵子、一部、片桐さんよりご提供