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「佐賀・家族図鑑」第3話 重富家「ホーローおまる」

佐賀県の南西部、白石町の田畑が広がる穏やかな場所に一件の茅葺き屋根の家。
推定150年のこの家で生活をしているのは重富家だ。

ちなみに茅(カヤ)は特定の植物を指すものではなく、屋根に葺(ふ)くイネ科植物の総称で、
この家の屋根は葦(ヨシ)を使っているのだそう。
家に入ると出迎えてくれたのはこのワンちゃん、名前は「サザエ」で♀(メス)の1歳である。
彼女はとても人懐っこく、侵入者である私に対しても決して吠えることはないが、まだ若いためか
遊ぼう!感がハンパない。

重富家のこの「サザエ」さんへの合図は独特だ。
一般的なおすわりは「カツオ」と合図する。
お手は「タラちゃん」、伏せは「ワカメ」だという。つまり写真の状態は「ワカメ」である。
ただその理由についてはあえて聞いていない。
気になる方は、重富家を白石町で見かけたら聞いてみてほしい。
さて、この家には夫婦と犬の「サザエ」さんの他に新しい命がいる。
6月に産まれたばかりの「しずく」ちゃんだ。

母親になった感想を奥様であるハルさんに尋ねてみた。
すると彼女から興味深い答えが返ってきた。

「私は母親ではなく、しずくさんのサポーターだと思っているんです」
「私は私だし、しずくさんはしずくさん。それぞれしたいことがある。でも彼女はまだうまくできないでしょ。だからそのお手伝いをしているだけ」
『この子は自分より優れている』
これはハルさんが大切にしている我が子と向き合う姿勢だという。
布団が敷いてある畳の部屋に目を向けると布おむつの横にお鍋?のようなものがあった。
ホーローのオマルだという。
「しずくさんは生後2週間からこのオマルでおしっことウンチをするんですよ」

いやまさか。生後間もない赤ちゃんがオマルで排泄?
子供がいない私だが、そんな話は聞いたことがない。
「したいですか?」ってハルさんが聞くと、しずくさんは頷いたり、動いたり唸ったり。
そんなサインを察知して、出すなと思ったら試すという。
そう言いながら、ちょうど起きたしずくさんをホーローオマルに座らせ向き合うハルさん。

「もし出なくてもこれがコミュニケーションになるからいいんです」
しずくさんはハルさんを見つめ何やら話している。

そうしているうちにしずくさんの表情が変わり、部屋の中に可愛らしい音が広がった。

本当に出た。
サザエさんはすかさずホーローの中をチェックしに来ていた。

おむつとオマル、どちらがどうとかではない。
赤ちゃんはおむつに排泄をするもの。そう思い込んでいた自分にとってはとても新鮮だった。

そんなやり取りをご主人の英輪さんは傍で見守っている。(つづく)

ハレノヒ代表

笠原 徹

1975年千葉県生まれ。2003年結婚を機に佐賀に移住後、2015年佐賀市柳町に古民家をリノベーションした写真館「ハレノヒ柳町フォ...

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