自転車ポータルサイト『佐賀サイクリングクラブ(SCC)』で5つの新しい「寄り道コース」が誕生しました。そこで今回はコースを監修された『Bike is Life』代表の山田大五朗さんにお話を伺います。
福岡県出身の山田さんは自転車のプロを目指して21歳でフランスへ。エクス・アン・プロヴァンスのチームに2シーズン所属されたのち、帰国後マウンテンバイク(MTB)のプロ活動をスタート。ワールドカップ3年連続日本代表選手、国内の24時間耐久レースで優勝されるなど、まさに自転車のエキスパート!
レース引退後は福岡県朝倉郡に『Bike is Life』の店舗を構え、オリジナル自転車の販売や自転車レンタルのサブスクサービスを展開。また小中学生向けのバイクスクールや、サイクルツーリズムのコーディネートも手がけています。
そんな山田さんが「寄り道コース」を設計されたときの思い、実際に佐賀を走ってみての感想などを話してくださいました!
それぞれの町に特色があり、満足できるコースになりました。
- 山田さん
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今回『SCC』の「寄り道コース」を設計するときに感じたのは、佐賀には史跡や伝統文化がたくさん残っているということ。サイクルツーリズムは走っている途中で学びや発見があったほうが旅の満足度が上がります。そういう点で佐賀はとてもコースをつくりやすかったです。「寄り道コース」は5つともテーマが明確ですし、僕自身も満足できるコースができました!
ふだん自転車に乗らない方にも楽しんでいただけるよう「寄り道コース」の難易度は低めに設定しています。佐賀は「佐賀平野」と呼ばれるくらい平らな道が多く、自転車はとても走りやすいですよ。ただ「嬉野コース」に関してはコース途中に上り坂がありますので、やや中・上級者向けかもしれません。
- 山田さん
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サイクルツーリズムを考えるとき、僕はインバウンドも意識しています。
「佐賀市コース」は江戸から幕末維新期の歴史を感じられますし、『カフェ欒(まどい)』は店内の雰囲気がとても良く、日本人はもちろん海外の方も喜んでくれそうと思ってコースに組み込みました。「肥前浜宿コース」の『祐徳稲荷神社』は、もともとタイなどからの観光客が多く訪れている場所ですし、酒蔵通りの歴史ある町並みも国内外の方に喜んでいただける景観だと思います。
「唐津コース」の「海沿いの道」はとても魅力的ですよ。走っていると虹の松原と砂と海と空だけの景観になり、まるで異世界に来てしまったような気分になります。「嬉野コース」はお茶の歴史やおいしい入れ方を学んだあと、足湯や日帰り温泉に入れるので最高です!実際に嬉野温泉に泊まるのもいいですね。「大詫間コース」は佐賀空港から出発するコースですので、イメージ的には空港に降りてホテルへ行く前に「有明海の絶景を楽しんでほしい」と思って設計しました。
サイクリングには自由がある。自転車を楽しむ文化を広めたい。
- 山田さん
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自転車の旅には「自由」があります。自分のタイミングで「動く」「止まる」ができるのは大きな魅力でしょう。
移動手段としては車のほうが速いですが、自転車のスピードで走ると思いがけない絶景や素敵なお店を発見することも多いんです。自転車は「人生を豊かにしてくれるもの」だと僕は思っています。
- 山田さん
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日本において自転車は「安価な移動手段」というイメージ。でもヨーロッパなどの海外では趣味のひとつとして自転車文化が息づいています。自転車でツーリズムをしたり、いろいろな町で開催されるレースに参加したり。自転車に乗っているだけで、みんな話しかけてくれますし、そこで仲間ができることもあります。
また海外では1台の自転車を長く楽しむ文化があります。自転車は整備すれば何十年も走ることができる「環境に優しい乗り物」なのに、日本では放置自転車などの問題も起きている。僕はそういう状況を少しでも改善したいと思っています。
『Bike is Life』では自転車のサブスクリプションサービスを行っています。佐賀県もサブスクのエリアに入っていますので、興味がある方はぜひ利用してください!
人と人とのふれあいが、自転車の旅の思い出になる。
- 山田さん
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僕自身いちばん印象に残っているのは、タイのバンコクで参加したサイクルツーリズム。観光地をめぐるのではなく、路地裏の住宅地や市場をめぐって現地の人々のリアルな暮らしを体感できるものでした。その中でいちばん感動したのが、現地の子どもたちが挨拶してくれたり手をふってくれたこと。佐賀のツーリズムにおいても、そのように人と人とのふれあいが自然に生まれたら嬉しいです。
佐賀を訪れる人はもちろん、佐賀にお住まいの方にもおすすめできるコースになっています。
僕もそうだったのですが、意外と自分が住んでいる町のことを知らない......ということもあります。知れば知るほど自分のふるさとに愛着が湧いてきますし、佐賀県は自転車文化が息づくポテンシャルを感じます。
ぜひみなさん自転車で「寄り道コース」をめぐってみてください!
文章:森 ごう
写真:相馬 千恵子、浦郷 慧人
写真提供:山田 大五朗様、西鉄エージェンシー様
編集:相馬 千恵子