【環境芸術の森】"インスタ映え"必至の佐賀の新名所に行ってみた。

【環境芸術の森】"インスタ映え"必至の佐賀の新名所に行ってみた。

「本当にこの道で合っとる?」
JR唐津線に沿う旧203号線、牧瀬の交差点から車で10分ほど進み、人家もまばらなクネクネした山道に不安がよぎります。
ところどころに立つ目的地の看板が、道に誤りがないことを教えてくれますが、それでもなんとなく不安は拭えません。
脇道に入ってからたかが10分ほどのドライブですが、「やっと着いた!」という安堵とともに、美しい緑に眼が惹き寄せられました。

そこは、「環境芸術の森」
最近ではInstagramやtwitterといったSNS発信で全国的にも知られるようになった、唐津市厳木(きゅうらぎ)にある作礼山(さくれいざん)の中腹に広がる森です。

20190612_h1_02.jpg[もともとは杉山と茶畑だった約30haの私有林。県内最多の1万本以上のもみじが植えられている。]

紅葉の名所として知られ、10年ほど前から秋だけ特別公開がされてきましたが、2018年からは新緑の季節にも一般公開されるようになりました。
その自然と調和した森の美しさが知られるようになり、国内のみならず、現在では韓国や中国といった海外からも人々が訪れています
(関連記事:佐賀県内紅葉No.1の本数!リフレクションが美しいと噂の場所は厳木だった!!

この森を約40年かけてつくられたのが、鶴田正明さん(83歳)です。
鶴田さんが育んできた森を案内していただきながら、この森をつくられたきっかけや想い、見所などを伺いました。

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[「環境芸術の森」代表 鶴田正明さん。]

「くやしい」思いが生涯をかけた森づくりへ

唐津市内で造園業を営んでいた鶴田さんは、1980年の12月に当時高校2年生だった次男を亡くしました。
倒れた当初は日射病と言われましたが、その後も高熱が続き、佐賀県内や福岡などさまざまな病院に診せても、「原因は不明」。とうとう17歳という若さで帰らぬ人となりました。

「とにかく、くやしかった」
当時の思いを鶴田さんはこう語ります。
苦しむ息子に何もできなかった親としての憤り、息子を奪った原因不明の病への怒りは、やがてひとつの答えにたどり着きました。
最終的に人間に必要なのは、きれいな空気。そして、空気をつくり出すのは森である
それが、鶴田さんの森づくりへの第一歩でした。

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[森では東屋やベンチなど、ゆっくりと散策を楽しむための工夫が凝らされている。]

森の完成系を知っているのは森そのもの

荒廃していた杉山と茶畑を購入し、奥様と2人で少しずつ手を入れ、山の再生に取り組み始めました。
もともとは誰かに見せるためではなく、ひたすらに「昔の森を取り戻す 昔の川を取り戻す 昔の海を取り戻す」ためにすべての資産をそそぎこみ、1本また1本ともみじを植えていきました。

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[環境芸術の森では、一年中もみじが楽しめる。緑と赤のコントラストが楽しめるのはこの季節ならでは。]

40年の間には、資金難などで何度も「もう無理かもしれない」ということがあったと言います。ですが、そのたびにさまざま人との出会いが鶴田さんたちの窮地を救い、「環境芸術の森」として成長していきました。

産業廃棄物を活用して建てた「風遊山荘」から見る森の景色は圧巻のひと言で、造園家としての鶴田さんの「自然流の庭づくり」の集大成とも言えます。

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[「風遊山荘」2階からの眺め。]

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[「風遊山荘」外観。]

森を案内していただきつつ、池の中央の岩などの配置の見事さをお伝えすると、「自然の庭は計算できない。最終的に残ったものが完成品」と鶴田さん。
大きな岩などの位置はまったく動かさず、庭木はある程度植える位置を決めたらのびのびと育てているそうです。

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[池の中央や奥に見える巨石は、もとからあったものをそのまま配置。]

森づくりは人づくりから

近年では、地元の厳木高校の生徒が年に数回清掃ボランティアに来てくれるほか、小学生が自然観察に訪れることも
生き物にとって森は力」であることを子どもたちにも伝えています。

案内を終えた鶴田さんは、「私の仕事はひとまずここまで。あとは息子の仕事。しっかりやってほしい」と晴れやかに笑っておられました。

森の入り口にある塀にはこんな言葉が書かれています。
百年のごみをひろい家をつくり 百年の石くずをひろい地をつくり竹林を切り拓く もみじの種をひろい三十年かけて広葉樹の森が生まれた お客さんも心に種を蒔いてお帰り下さい 生るために

森では四季折々の美しさが楽しめますが、これからは紫陽花も見頃を迎えます。
心に植える種をもらいに、環境芸術の森へあなたも行ってみませんか?

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情報

環境芸術の森

住所:佐賀県唐津市厳木町平之667
アクセス:長崎自動車道「多久IC」より車で約20分
     西九州自動車道「唐津IC」より車で約40分
問い合わせ先:0955-63-2433
関連URL:http://mori.tsurumatsu.com/

入場料金:
大人・高校生・・・・・500円
小・中学生・・・・・・・200円
幼児・・・・・・・・・・・・・無料
団体20名様以上・・・400円
風遊山荘(休憩所)は春と秋の特別公開期間中のみ開放
営業時間:9時~16時
定休日:なし
駐車場:普通車50台、バス15台
ペット:同伴入場可能(迷子にならないよう、ご注意ください。)
Googlerマップ:こちら


文章:池田愛子
写真:中村美由希
画像提供:@ane.yu_1(TOPの写真)

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池田 愛子

編集者・ライター・唐津ゲストハウス 少女まんが館Saga館主 佐賀県唐津市出身。出版社勤務を経てフリーランスに。2017年に唐津市...

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