【ビッグワン】佐賀駅前にあるラーメン店。「ただいま」を言いたくなる、ずっとそこにある味。

【ビッグワン】佐賀駅前にあるラーメン店。「ただいま」を言いたくなる、ずっとそこにある味。

発展を続ける佐賀駅の北口に、創業40年経った今でも姿と味を変えず、そこにあり続けるラーメン店「駅前ラーメン・ビッグワン」。その変わらない味に「ただいま」を言いたくなる。夕方の駅裏に光る優しい朱の看板が「おかえり」と帰路につく私達を出迎えるようだ。そのラーメン屋特有の朱色の看板とスープの香りが、私の足を自ずとお店に向かわせるのだった。

まずは券売機で食券を購入

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入店後、まずは券売機で食券を購入。席に着いたら、食券を置いて注文完了だ。野菜ラーメン、特製ラーメン、券売機には気になるメニューが連なる。いつか制覇したい。漢字表記だけではなく、カタカナ表記もあり、小さな配慮に優しさを感じる。

食欲をかき立てるカウンターからの景色

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コの字カウンターからは厨房の様子をうかがうことができる。
大将が手際よく麺を切る姿と、厨房のこの雑多な様子はラーメン店ならではの景色だ。この様子が食欲をかき立てる。
カウンターから外を覗けば、丸い扉の向こうで帰宅途中のサラリーマンや寄り道を楽しむ学生たちの姿をうかがえる。この日常に溶けこんだお店では、待ち時間すらなんだか心地良かった。

店内で流れるラジオと大将やお母さんとお客さんとの会話、店の外から聞こえる人々の生活音。その全てが耳に優しい気がした。「ありがとう!」その声の方に目を見やると、大将とお母さんが退店するお客さん一人一人に丁寧に声を掛けていた。その声で一気に店内に活気と暖かさが溢れるようだった。

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丸い扉が可愛らしい。外では岐路につく学生やサラリーマンの姿がうかがえた。

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麺の硬さや味の甘辛を調整できるとのこと。

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マイルドであっさりラーメン。玉子が更にその魅力を引き立てる。

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佐賀ラーメンは元々久留米ラーメンから派生したものと言われている。しかし「駅前ラーメン・ビッグワン」は従来の佐賀ラーメンと比較してかなりあっさりとした味わい。
ここで頂いたのは、「玉子入ラーメン」。玉子を完全に溶いてしまう前に、少し崩した卵黄をしっかり中太麺とスープに絡ませればそのマイルドさを加速させる。豚骨だしを感じつつ、あっさりした味わいが玉子で更にマイルドに。

さくさく食べられるこのラーメン、平日の日中はお昼休憩中のサラリーマンに支持されているとのこと。仕事のお昼休憩に食べても胃もたれせずさくっと食べられるようにと、お客さんのニーズと健康志向に沿った味付けにしていると、大将の野田光基さんは語った。

シャキシャキ食感が楽しい!野菜ラーメンが美味しすぎる。

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佐賀県出身のお笑い芸人のはなわさんのYouTubeにて佐賀ラーメンが紹介され、その後生卵入りが特徴の佐賀ラーメンが浸透し、「駅前ラーメン・ビッグワン」でも「玉子入りラーメン」のオーダーが多くなったとのこと。この「玉子入りラーメン」の影に、実は隠れた大将一押しラーメンがあると教えてくださった。今回はそちらのラーメンを紹介したい。

大将一押しラーメンは「野菜ラーメン」だ。

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オーダー後、厨房では野菜を炒める音が響く。その音と香ばしい香りだけで、完全にパブロフの犬状態だった。運ばれてきた野菜ラーメンには、野菜がこんもりと盛られ、豚肉とカマボコが彩りを添えていた。とはいえ素朴なビジュアル。そのシンプルさが私の期待値を上げる。

大将によると、ベースのスープにスパイスを加えることで味に変化を持たせているそう。確かにスタンダードなスープと比較すると、少し濃いめでちゃんぽんに近い味わい。野菜の旨みもしっかり効いている。もやしとキャベツのシャキシャキとした食感がたまらない。濃いめの味付けと、もりもりの野菜で、ボリューム満点の一品だ。がっつりお腹を満たしたい時に一押し。是非ご賞味頂きたい。

別日には餃子も注文。薬味はネギと、ごまラー油と、ニンニク。ごまラー油には七味を加えて更にピリ辛に仕上げているそう。自分で薬味を好み通りにカスタムできるのが嬉しい。

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焼き目がこんがりで美味しそうなビジュアル。

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いなり寿司もあり。いくつかショーケースに入っていたが、気づいた時には最後の1つに。人気なのだろう。

親から子へ、引き継いだ変わらない味

創業昭和58年。約40年続いている「駅前ラーメン・ビッグワン」。元々大将のお父さんが佐賀駅付近のビルでゲームセンターを営んでいたが、近くに新しいビルが建つことを知り、商売敵が入る前にと場所を押さえ、そこでラーメン屋を開業したのが始まりだった。当時お父さんはゲームセンターの営業があったため、お母さんが厨房に入ることに。職人を雇い入れラーメン作りのノウハウを学んだとのこと。その当時の苦労は絶えなかったと、お母さんが静かに語ってくださった。

「同じ味を保つことがすごく難しかった。当時は夜も眠れない程に大変だった。それでも、家族と店、従業員さんの生活を守る為に努力しました。その苦労があったから、今があるんですよ。」

言葉数こそ少ないが、ゆっくり紡ぐその言葉の一つ一つに何十年分の苦労の重みを感じた。そうして、また接客に戻ったお母さんの背中は小さかった。それなのに、「いらっしゃい!」「ありがとう!」の声の張りに驚かされる。

丁寧にカウンターを拭き上げるお母さんの姿と仕草にお店への愛を感じた。

味を引き継ぐことの難しさ

「同じ作り方を試しても、作り手が違えば絶対味が変わってしまう。作り手が違うのに、同じ味を再現するのは本当に難しいことだったよ。」

そう語るのは二代目大将の野田さんだ。10代で厨房に入り、お母さんからその味を引き継ぐが、上記にもあるように同じ味の再現に至るまでに長く苦労したそう。

「骨の炊き時間や火加減一つでも味は変わってしまう。その要領をつかむのも全て経験で習得した。自分の個性を出さず、忠実にその作り方に従うことが大事だった。昔と同じ味だね、そう言われてやっと成長を感じていたよ。でも、客層やニーズ、時代に沿って少し味をあっさり志向に変化させたけど、ベーズは母から引き継いだ味だよ。」

そう語りながら、手際よく麺を切る野田さんの背中越しの表情はなんだかいきいきとしていた。老舗ラーメン店の40年の変わらない味の背景には、親子それぞれの苦労と努力があったのだ。

最後に

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佐賀に来て初めてできた友人からおすすめされたのが、「駅前ラーメン・ビッグワン」だった。「学生のとき帰省したらここのラーメンを食べて、あー帰ってきたなーって感じてたよ。」その一言がなんだか忘れられず、後日一人で来店。店内の様子は、初めて来たのにどこか懐かしかった。ラーメンは想像していた佐賀ラーメンの味よりずっとあっさりで本当に美味しかった。これが佐賀ラーメンか!「うっま。」思わず声がこぼれていた。

長年愛される老舗ラーメン店「駅前ラーメン・ビッグワン」。ずっと愛されているあっさりとした味わいのラーメンを是非ご賞味頂きたい。

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店舗名 駅前ラーメン・ビッグワン
住所 佐賀県佐賀市駅前中央1丁目13‐16東高ビル
営業時間 11時~22時
日曜定休
地図

ライター

葵井

1998年生まれ、熊本県出身。 就職をきっかけに佐賀県へ移住。 散歩しながらフィルムカメラで写真を撮る事が趣味。 広い水田、空が...

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