佐賀市「古着屋MALiiNGA」古着を通じて、人と人を繋ぐ場所。

佐賀市「古着屋MALiiNGA」古着を通じて、人と人を繋ぐ場所。

店の入り口に立つ、可愛らしい古着を身につけたトルソーになんとなく目が引かれる。それが纏った明るい色味のデニムは、もうじきやってくる春を思わせるようだった。

その傍に立つ看板には、店長吉村さんの「古着屋MALiiNGA」への想いが綴られている。「歴史を纏い、そして繋がる」の文字。古着の面白さを熟知し、そして古着を通じて人と人が繋がることの魅力を知っている彼女だからこそ、掲げられるテーマなのだろう。

「古着屋MALiiNGA」名前に込められた思い

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店名の「マリンガ」とは、本来はモンゴル語で「麻」という意味。衣類に使用される様々な繊維、その中で最も古い歴史を持つのが「麻」だそう。そして「MALiiNGA」の真ん中2つの小文字の「i」は、2つ続ける事で、人と人が隣り合っている様子を表しているそう。歴史的背景を持つ古着を通じて、人と人の繋がりが生まれて欲しいという想いを持って名付けた店名だと、吉村さんは語った。

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品数もジャンルも豊富なラインナップ。
お気に入りの一枚を探す、宝探しの様な時間を。

店内に入ると、その品数に対しての美しいレイアウトに驚かされる。ラックにかかるハンガーの向きも、間隔も一定で揃えられている。「以前お世話になった古着屋のオーナーからの教えなんです」と話す吉村さん。お店に並ぶ古着が、いかに大切に丁寧に管理されているかが、レイアウトからも伝わってくるようだった。

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古着のジャンルも豊富で、アメカジからドレッシーなものまで揃っている。多様なジャンルを置くことで、お客様の価値観が広がるお店でありたいと吉村さんは語る。お客様からも新しい発見が多いという声を頂くとのこと。価値観が広がるお店であることは、「古着屋MALiiNGA」ならではの大きな強みだと感じる。

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(春らしい爽やかなカラーのシャツが並ぶ)

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物腰柔らかい吉村さんが営む「古着屋MALiiNGA」は、古着屋の独特の雰囲気や、新規客が入りにくいと感じる要素が全くないのも魅力だ。古着に挑戦したいけど、なかなか足が向かない方はぜひ一度、訪れて頂きたい。

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(アクセサリー等の小物も充実)

古着との出会いと、オープンまでの経緯

吉村さんと、古着との出会いは学生時代だった。辛く大変な時期にある古着に出会い、その一着を身につけることで気分が明るくなり、辛い時期を乗り越える糧となったと吉村さんは語った。更に古着の魅力を知るきっかけになったのは、友人に勧められて訪れた、とある古着屋のオーナーとの出会いだった。そこで古着の一着一着に、歴史やストーリーがあること、その背景に基づく付加価値が生まれること、それこそが古着の面白さであり魅力だと学んだそうだ。

卒業後は、オンラインショップでの古着の販売を行うようになったそう。2023年3月には初めてのPOPUPを行う。これが実店舗を持つきっかけになる。POPUPでお客様と対面することで、そこでしか得られない生の声や笑顔に触れ、実店舗を持つことの魅力を知ったそう。そして実店舗を持つことで、古着を通じて人と人が繋がる場所を作りたいという思いに突き動かされ、開業への挑戦を決めたそう。

そして2023年9月30日、10回のPOPUPを経て、晴れて「古着屋MALiiNGA」のオープンを成し遂げたのだ。

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「お店のオープンは、家族が肯定してくれて、協力をしてくれているからこそできたことだと思います」そう語る吉村さんにとって「古着屋MALiiNGA」は、自分一人ではなく、家族と一緒に作り上げたお店なのだ。「協力してくれる家族に応えられるように、自分にできることは頑張りたいです。家族の為にと、自分を鼓舞することができています」と語った。

本音で古着とお客様に向き合う接客。

お客様の声や笑顔が一番のモチベーションになると吉村さんは語る。

「お客様の要望を、古着を通じて叶えられたと実感した時に、お店をやっていて良かったなと感じます」と話す吉村さんの表情はなんだか朗らかだった。このように吉村さんはお客様の悩みや要望を傾聴し、それらに共感しながら、お客様それぞれに適した提案をされている。このお客様へ寄り添ったこの接客スタイルもまた、1つの魅力だと思う。

「古着初心者のお客様や、色んな系統のお客様にも提案ができるように、古着以外のジャンルについても勉強しています。ハイブランドもファストファッションも、世間でのトレンドも......」自分の価値観も広がりますし、と吉村さんは続けた。向上心を持ち、学び続ける姿勢は、月並みの言葉になるが、素直に尊敬してしまう。

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本来であれば、接客はお客様に商品を買って頂き、売り上げに繋がるものであれば問題ないと感じる。しかし、彼女の場合、古着にもお客様にもリスペクトと愛がある。お客様と古着の出会いの為に、言葉を選びながら本音で接客。こんな愛のある接客があったのかと驚く。

「古着が本当に似合うのか不安になることもあると思います。そんな時は、大丈夫!ちゃんと似合ってます!自信をもって!と、伝えるようにしています」本音で接客をする吉村さんからのこの説得力のある後押しに、きっと背中を押された人もいるだろう。吉村さんの持つお人柄だからこそできることだと感じた。

夢は古着と出会った場所、高知県でのPOPUP

いつかは高知県、もしくは県外でのPOPUPを果たしたいと語る吉村さん。今後の大きな目標の1つのだそうだ。高知県は吉村さんが古着に出会い、助けられ、その魅力を知った、とても思い入れのある場所だ。在学中、専攻していた分野ではなく古着の道を選択した、人生の分岐点となった場所。そんな場所でのPOPUPは彼女にとって、大変感慨深いものになるだろう。

古着の面白さを詰め込んだ店長オススメの古着紹介

ここでは、店長吉村さんが選ぶ古着の魅力を詰め込んだオススメ商品を2点紹介したい。

70's adidas ATP Track Jacket Made in USA

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ATPとは男子プロテニス協会を指す。本商品は本来、テニスをする際のスポーツウェアとして約50年も前に製造されたもの。そして製造されてから現在にかけて、同じモデルの商品を数々のプロテニス選手や国内外の著名人が着用したとされている。このバックグラウンドにより、高い付加価値がついたのが本商品である。歴史の長さと、様々な著名人が着用することによって生まれた古着への付加価値。価値の理由を探ることで暴かれる古着の過去と魅力、古着の面白さを詰め込んだ一着である。

Hand-Painted Native Design Denim Jacket

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製造されたのは90年代とされているが、はっきりとした製造年はわかっていない。このインパクトのある目玉と周りの小さな星達は誰かによって描かれたイラストだ。しかし、いつ、誰が、何の為に、イラストを描いたのかは全て謎のままなのだ。誰が、何故デニムジャケットに目玉のイラストを......何を意味しているのか......。経緯やストーリーを考えさせるこの一着は、私たちに想像する楽しみをくれるのだ。

最後に

「これからも、お客様の価値観を広げるお店であり続けたいです。その為に自分自身も様々な分野にアンテナを張って学び続けたいです」と吉村さんは語る。

取材時、とても気さくにお話してくださった吉村さんだが、実は人見知りという側面を持っているとお話してくださった。だからこそ、お客様との距離感を大切にしているそう。「お客様の様子を窺って、必要なら声をかけるようにしています」とお話する吉村さんは、いつもお客様の立場に立つこと、相手に共感することを忘れない。過去に感じた古着に関する悩みですら、お客様に寄り添う為の要素として、今でも心に留めているようだった。

吉村さんのお人柄だからこそ、古着を通じた「人と人が繋がる場所」が築けるのだと思うし、唯一無二の場所になり得ると感じる。そんな「古着屋MALiiNGA」へ是非一度訪れて頂きたい。

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店舗情報

店舗名 古着屋MALiiNGA
住所 佐賀市兵庫北3丁目10-24
営業時間 14:00~20:00
定休日 火曜
駐車場 あり
公式サイト http://maliinga.official.ec
公式SNS Instagram:@maliinga_vintage
地図

ライター

葵井

1998年生まれ、熊本県出身。 就職をきっかけに佐賀県へ移住。 散歩しながらフィルムカメラで写真を撮る事が趣味。 広い水田、空が...

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