「一日で絵付けから焼成、持ち帰りまでできる唐津焼の体験、やってみません?」
そう知り合いから声を掛けられたある日。
通常の陶芸体験のイメージは、絵付けやろくろ回しを体験し「それでは後日お送りしますね!」と当日は楽しみに帰宅、そして「私のこと、忘れてたでしょ?」と言わんばかりにポストに不在票が入っているという流れがテンプレだと思っていた私。それが1日で完結するだと?! 2つ返事で、紹介された『UNAラボラトリーズ』のツーリズムに参加しました。
美しい景色を臨む窯元『健太郎窯』
佐賀市から車を走らせ1時間弱。
着いたのは、唐津湾を見下ろせる高台にひっそりと佇む美しい工房『健太郎窯』。
『健太郎窯』は唐津焼の俊英ともいわれる作家・村上健太郎さんが2008年に開いた窯なのだそう。
唐津焼の材料となる粘土や釉薬のすべてを周りの山で採れたもので自作。材料に適した温度や焼き方を研究してこられ、そこで通常2日かかる窯焼きを半日で行える独自の土を開発されました。
個性が出る絵付け体験
絵付けする器はあらかじめ素焼きされた平皿、コップなど3種類の器の中から2つ選びます。
絵付けに使う釉薬は山で採れた鉄から作られたもの。
この鉄の塊を山で探し、粉末状に。水に溶かして使います。
最初に試し描きをして、絵付けをします。なかなか描きなれない筆を使った絵付けに苦戦を強いられます(笑)。
絵柄だけでなく、釉薬の濃淡でもそれぞれに個性が出る絵付けに焼き上がりが楽しみです。
今回取材に同行した先輩の作品。デザイナーとのこともあり、う、上手い......。
自分たちで積み上げて作る薪窯作り
絵付けの後は、薪割りと薪窯作り。
不慣れな斧のずっしり感と形に少し緊張しながらの薪割り。
薪に刃を当てて差し込み、その後はコンコンッと振り下ろすと、パコンと乾いた音を立てて割れました。
薪は燃えやすくするため、極力細く割っていきます。
薪の準備ができたら、次は耐火レンガを積み上げての薪窯作り。
体験用に組まれた土台にまず、先程割った薪を入れます。
その後、絵付けした作品を入れ、木炭で蓋をします。
そして、レンガ積みと木炭入れ繰り返し、1mほどまで積み上げます。
そして1,200℃で焼き上げる
積み上げた後はいよいよ火入れ。
釜口から火を入れ、しばらくするとモクモクと白い煙が。
白い煙の出所を塞ぐように、粘土を隙間に詰めていきます。
この作業がなかなかクセになる!
一つ隙間を埋めると、また別のところからモクモク、そこを埋めるとまた別のところからモクモクモク......。
全て埋めきると1,200℃になるまで、火を燃やし続けます。
煙の色が白から透明になるのが一つの目安になるそう。窯の温度が上がるまで、縁側やギャラリーでしばし休憩です。
健太郎さんの作品でいただく、お茶体験
窯の温度が1,200℃に到達したら、今度は温度が低くなっていくのを待ちます。
その間に、健太郎さんより簡易的なお茶の入れ方を習いました。お茶を嗜む際に必須と言っていいほど焼き物は大切!健太郎さんが作られた茶器の中から好きな作品を選び、お茶を入れます。
こちらも不慣れなお茶の所作ながら、日本人ならでは"侘び寂び"を味わえる時間。
お茶をたてた後には、唐津の銘菓「松露饅頭」と共にいただきました。
唐津湾を臨む健太郎窯からの絶景に日々の喧騒からの離脱し、心が洗われます。
いよいよ作品のお目見え!
窯の温度が落ち着いてきたら、窯からの取り出しです。
落ち着いたとはいえ、熱を帯びた窯から作品を取り出すのは緊張します。
火ばさみで作品を挟み、水の入ったバケツに勢いよく浸けます。水に浸けるとジュッという音を立て、蒸気と灰が舞います。
バケツから引き上げると、グレーと茶色の独特な色に焼けた作品が登場! 中には焼く過程で割れてしまうものも。また置いた場所や向きによって、2つとない焼き上がりを見せます。
作品が冷えた後は、飲み口や触り心地を整えるため、ヤスリで丁寧に削っていよいよ完成です。
参加された皆さんの作品と並べてみると、さらに個性が感じられますね。
数々の非日常の体験と個性豊かな作品と絶景とが味わえる1日。
ちょっぴり贅沢な大人の休日を過ごすことができました。
ツアー紹介
唐津焼の俊英・健太郎窯で薪窯作りと焼成体験(4〜5時間)
公式サイト | |
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開催日 |
月〜水、金〜日 10:30〜 |
予約受付締切 |
体験10日前まで |
所要時間 |
4〜5時間 |
スケジュール |
10:25 10:30 12:30 14:00 15:30 |
地図 |
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