大町のご当地グルメ「大町たろめん」。最近では『どぶろっくの一物』や『絶飯ロード 出張編』、『マツコ&有吉 かりそめ天国』でも取り上げられ、一躍時の人ならぬ、時の飯となっている。
正直、なぜ今までEDITORS SAGAで取り上げなかったのか不思議な話だが、満を持して今回「大町たろめん」について紹介したい。
「大町たろめん」とは
戦後の高度経済成長期に炭鉱の町として栄えた大町町。そこで働く炭鉱マンに愛されたのが麺料理「たろめん」。
見た目はちゃんぽん。しかし、スープは牛骨と鶏ガラベースで、麺はうどん麺を使われている。
具材はサイコロ状に切った豚の頭肉に海老、キャベツ、玉ねぎ、にんじん、キクラゲと具沢山!さらに、ショウガも加わり、濃厚でありながらさっぱりいただける新感覚の逸品だ。
復活麺というように、たろめんの歴史は一度、2000年の『たろめん食堂』の閉店と同時に幕を閉じた。
しかし、大町町のまちおこしの一環として行われた『大町町ちゃぶ台プロジェクト』で、昔大町で食卓を彩った一品として上げられ、10年ぶりに復活を遂げたという。
今回、当時のことやたろめんについて詳しく伺うため、たろめんを提供されている『家族庵』の鈴山 謙介さんに話を伺った。
家族が憩う和風レストラン『家族庵』
国道34号に面して建つ『家族庵』。1985年にうどんやそばを提供するお店として創業。「おじやうどん」をはじめとするうどんやそば類や丼物、定食、日替わり御膳など豊富なメニューで、地元の人たちをはじめとしたお客さんの舌を楽しませている。いわば「和風レストラン」だ。
店内は、高い天井に立派な梁がかかり、畳が敷かれた座敷席とテーブル席の2種類がある。店舗の裏を線路が走っているため、電車が通るたびに風が吹き込み、何とも言えない懐かしい感覚を覚える。
「『家族庵』は、私が中2の時にオープンしたのですが、当時は名前に疑問というか、違和感がありましたね、同級生にいじられたり(笑)。でも、今思うと『家族庵』って一度聞いたらなかなか忘れない名前でしょう?印象に残るという意味では、これもまた良かったと思っています」と話すのは、2代目の謙介さん。
お客さんの層は様々。家族で来店される方や若い世代、そして近所のおばさまたちの憩いの場ともなっている。遠方から足を運ぶ方もいるそうで、遠くは青森からのお客さんもあったそうだ。
人気メニューは、おじやうどんとかつ丼、そしてたろめんだ。
そんなたろめんの提供を始めたのはここ13年ほどだそう。
復活を待ち望む声を糧に
たろめんのオリジナルは『たろめん食堂』のもの。
実は、『たろめん食堂』のたろめんを食べたのは、小学生の時に友だちに連れられて行った1度きりだったと謙介さんは言う。
「おじさんたちが煙草を吸いながら、お酒と一緒にたろめんを食べている。そのインパクトが強くて、怖いという気持ちと、当時野菜嫌いで、スープも塩辛く感じた鈴山少年には、大人の食べ物過ぎて、正直あまり得意ではなかったんですよ(笑)」と謙介さんは当時を振り返る。
そんな苦手意識を持っていた謙介さんが、今や『大町たろめん運営協議会』の会長を務めているという。キッカケは謙介さんが青年会の副会長であったことから。
「たろめんの復活に向けて、『たろめん食堂』の大将の山本さんにレシピを聞き、作ったたろめんを青年会や当時を知っている方たちと何度も試食会をしました。そこでは酷評の嵐。味はもっとパンチがあった、まろやかだった。野菜の切り方が大きい、小さい。肉の切り方が違う......といった対局の意見もあり、何が正解か誰もわからない。1年くらい構想に時間がかかりましたよ」と謙介さん。
それでも、あきらめなかったのは「たろめんの復活を待ち望む声」があったからだそうだ。
「10年前の味なんて誰もはっきりと覚えているのは難しい。ほとんど食べたことが無い自分だから、みんなのフラットに意見を聞けて、吹っ切れた部分もあったと思います。そんな時、塩辛いと思ったスープに食材を混ぜて煮込んでみたら、すごくまろやかなスープが生まれたんです。食材を煮込むことでそれぞれのうま味がスープと混ざり合ったんでしょう。あ、これだって」。
そこで、ついに待ち望んだ完成が見えたという。
その後も、食材の大きさ、生麺か乾麺か、どのくらい茹で置くかなど研究し、現在のたろめんが生まれたそうだ。
三者三様のたろめんへのこだわり
あくまでオリジナルは『たろめん食堂』のもので、スープや使う食材は一緒だが、お店によってこだわりがあり、味に違いがあるというのもたろめんの特徴だ。
ちなみに『家族庵』のたろめんは、12時間以上炊き込んだスープにみじん切りのショウガを使われている。ショウガを嚙んだ時の爽やかな香りとスープがよく合う。スープを飲むにつれ、身体がポカポカしてくるのを感じる。ついスープまで飲み干してしまった。
麺は神埼で作られているうどんの乾麺を使用。それは『たろめん食堂』も神埼の麺を使っていたからもあるそうだ。茹で置きの時間も気を遣い、スープとの絡みを大切にされている。
「うちのたろめんは、今の人たちの口に合うように、まろやかなスープにこだわって作っています。食材は一緒でも、3店舗どこもこだわりを持って作られていますよ。たとえば『さんゆうし』さんは、『たろめん食堂』によく足を運ばれていたそうで、オリジナルの味をかなり再現されていたり、『福母食堂』さんは、スープにパンチがあったりとお店によって三者三様。それもたろめんの楽しみ方と言ってもいいですね」。
たろめんと家族庵のこれから
「テレビやYouTubeで取り上げられたりしていただいて、県内の認知は感じます。最初は女性のお客さんの口に合うか不安な部分もありました。"炭鉱マンの食べ物"でしたからね。ですが、美味しいと言って食べていただけて、そういった声がやはり作り手にとっては嬉しい。もっと若い方たちに知ってもらって、多くの人に食べていただきたいですね」。
これからも地元の方々と一緒に大町とたろめんの貢献に努めたいと話す謙介さん。その背中には、優しさの中に地元である大町を思う気持ちと、職人としての厚みを感じた。
ぜひ、一度大町でたろめんを味わってみてはいかがか。
スポット紹介
店舗名 | 家族庵 |
---|---|
住所 | 大町町大町上大町978−1 |
その他 |
【OPEN】 【CLOSE】 【駐車場】 |
地図 |
|