【嬉野茶時】美しき伝統文化を伝えるプロジェクトの舞台裏

【嬉野茶時】美しき伝統文化を伝えるプロジェクトの舞台裏

嬉野茶時(うれしのちゃどき)とは

佐賀・嬉野の土地で何百年もの間、脈々と受け継がれている歴史的伝統文化「嬉野茶」「肥前吉田焼」「温泉」をつなぎ、時代に合わせた新しい切り口で表現するプロジェクト。

春夏秋冬、それぞれの季節で「嬉野茶寮」「嬉野晩餐会」「The Tea Salon」と題し、空間を変えて3つのもてなしをする予定だが、今回はそのうちの「嬉野茶寮」の打合せの現場、いわゆる裏側に潜入してきたのでご紹介したい。

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御園井氏の練り切り技術

嬉野茶寮(うれしのさりょう)とは

佐賀県嬉野市の嬉野川沿いに佇む温泉宿「和多屋別荘」で嬉野の若手茶農家7人が丹精を込めて育てたお茶を自らの手で淹れ、接客し、サーヴする特別な喫茶空間。
会場では、お茶だけでなくメルヴェイユ博多の小岸明寛シェフと鎌倉 創作和菓子 手毬の御園井裕子氏制作の嬉野茶寮オリジナル甘味も楽しめる。
【8月25日から27日までの3日間のみ】

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御園井裕子氏の甘味

御園井裕子(みそのいゆうこ)氏は神奈川県鎌倉市にある「手毬(てまり)」という創作和菓子店の作家さんである。王様のブランチやぴったんこカンカンなどのTV番組をはじめ、トラーベ・アートフェスティバル(北ドイツ)やJAPAN EXPO(パリ)で練り切りの実演を披露されるなど、日本だけでなく海外でも活躍されている。今回、嬉野茶寮の打ち合わせのために嬉野市に足を運ばれていたので、練り切りというものを拝見させてもらった。

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道具がきれいに並べられていて、その本数と種類の多さに驚かされる。

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はじめは、型に入れられるのか?と思っていたが、このカラフルなまん丸のあんからすべて手作業で形作られていくらしい。あんは求肥とあんこを混ぜてできているので、しっとりした独特の感じ。

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みるみるうちにできあがったのだが、まるで魔法のよう。

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まさに芸術。側にいた嬉野茶時メンバーも「すぐに食べられてしまうのはもったいない。」と、和菓子の美しい造形に魅了されていた。

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こねる技術やパーツを作る技術などももちろんだが、花びらなどの細部を作る技術が特に秀逸だった。紫の花弁となる部分が濃かったので、「どのようにされたのですか?」と聞くと、伸ばしたところに下地の濃い色が出るよう、こねる段階で色味を計算しているという。
熟練の技と感覚によるパフォーマンス。これはぜひ、多くの方に見ていただきたい!

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御園井氏の練り切り実演は1日15個限定と希少なため、間近で見たいという方は公式サイトから予約をお勧めする。
ここまで、練り切りを紹介したが、御園井氏監修の錦玉羹(きんぎょくかん)と水まんじゅうのセットを選ぶこともできる。試食させていただいたが、とても美味しく、カラフルで涼しげな夏らしい一品だ。

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お茶農家さん達のパフォーマンス

打ち合わせの現場に行くと、見たこともないようなグラスがたくさん並べてあり、お茶農家さん達と旅館のオーナーさんが何やら真剣な顔で話し合いをしている。
「ウェルカムドリンクのグラスの選定」について、「最適なお茶の分量」や「グラスの形状」など活発な議論が交わされていた。すべてはお客さんにおいしくお茶を飲んでもらうため。

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当たり前のことのように感じるかもしれないが、このイベントでは、お客さんに提供することを考えているのは『お茶農家』さん達である。本来、お茶農家さん達の役割は、お茶を育ててから製茶と呼ばれるいわば袋詰めまで。あとは、卸売り業者に卸したり、出荷したりするだけだ。本来、お茶農家さん達がこうしてお客さんの顔を浮かべてグラスを選んだり、お客さんにふるまうために丹念にお茶を淹れたりすることはそうそうない。

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嬉野茶時は、丁度1年前から始まったのだが、このプロジェクトに向けて、作法やサービスの極意なども学んだらしい。

お茶を生産し、お茶のことを一番よく知っている人がお茶を淹れ、提供までする。こういう機会は滅多に味わえない。種類も豊富で煎茶から青ほうじ茶、ゆず緑茶などのフレーバー茶まで甘味と一緒に選択できる。お茶農家さん達のパフォーマンスを楽しむと同時に、ぜひ、お茶の話を聞いていただきたい。

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いろいろな垣根をなくすこと

『嬉野茶時』というプロジェクトを始めたきっかけ―

「中心人物がいないところがこの嬉野茶時(のいいところ)。嬉野は、お茶と温泉と焼き物の街。100年後1000年後にまだまだお茶の地であって欲しいし、旅館であって欲しいし、焼き物(吉田焼)の有名な地であって欲しい。本当は、生産者や旅館同士は競合するところだけれど互いを尊重し合っています。そんないろいろな垣根をなくすというのがここ1年でさらにわかってきました。今はお茶農家も7人だけど、増やしていきたいと思っているし、さらに県を超えて八女茶や静岡のお茶とのブレンドでコラボ企画もありえる。やりたいことというよりもそれは義務だと思っている。時代に合わせて色々な方に提供して、(後世に)バトンを渡すこと。嬉野の伝統産業を残していく、それが嬉野茶時です。」(副島園 副島仁さん)

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(お茶農家さん達の写真)

まとめ

嬉野茶時の裏側を覗かせていただいた。参加している方たちからは、地元のためにという想いがひしひしと伝わってきた。御園井氏もこの取組みに共感され、全国に広めるべきと協力されている。何より皆さんが楽しそうにされているのが印象的で、御園井さんの言葉を借りれば「懐の広さ」を感じた。受け継がれる伝統産業と素敵な人たちがいる嬉野。皆さんも嬉野茶時にぜひ足を運んでみていただきたい。

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イベント情報

『嬉野茶時』うれしの晩夏 2017
嬉野茶寮
会場:和多屋別荘(サヴール・ドゥ・スイメイ)
住所:〒843-0301
佐賀県嬉野市嬉野町下宿乙738
TEL:0954-42-0210
日時:8月25日(金)〜27日(日) 11時〜18時
WEB:https://www.ureshinochadoki.com/banka

※記事では御園井氏の甘味をご紹介したが、
世界各地のミシュランのお店を渡り歩いた経験を持つ「小岸明寛シェフ」の甘味も用意されている。
嬉野の大地を表現した21層からなる茶層と、嬉野市ナカシマファームのうれしのフロマージュ
(フロマージュブラン)を使用した、9果実のフロマージュスフレグラッセが登場。


EDITORS SAGA編集部 中村美由希

EDITORS SAGA 編集部

編集部

今までなかなか紹介されていないような佐賀の隠れた魅力や新しい情報をお届けするべく日々、奮闘中!...

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