県道48号線沿いの小さな羊羹専門店『高木羊羹本舗』。
お店の前に車を停めると、笑顔の好青年が出迎えてくれた。
"幻"の果実を使った、ここだけの羊羹
『高木羊羹本舗』という名前を羊羹の中でも珍しい『黒いちじく羊羹』でご存知の方もいるだろう。
1本の羊羹に2つの黒いちじくを使った『黒いちじく羊羹』。甘すぎず、フルーティーでねっとりとした中に独特のイチジクのつぶつぶ感があり、食感も楽しいこの羊羹は、『高木羊羹本舗』の主力商品の1つともいえる。ここで使われている黒イチジクは、国内でも限られた生産者しか栽培しておらず、市場にも出回らないというまさに"幻の黒イチジク"。
佐賀県で唯一栽培するという唐津市浜玉の農家から直接仕入れており、他の羊羹にはない特別な羊羹だ。
祖母から孫へ繋ぐ小城羊羹の老舗
創業約95年になる『高木羊羹本舗』。こぢんまりとしたお店のガラスケースには、可愛らしいパッケージの羊羹が並ぶ。
店内では上品で朗らかな笑顔の店主・高木ユキ子さんと「いらっしゃいませ」の声。
おしゃべり好きの名物のお母さんであるユキ子さん。彼女のファンも多く、常連のお客さんがよく足を運ぶという。お客さんとの距離が近く、商品の話だけでなく、日常の話に花を咲かせることも多い。
今まで50年近くユキ子さんと社員の女性2人で営んできたが、社員の方が3年前に退職され、現在は孫である純平さんと2人でお店を切り盛りされている。
小さい頃から、ユキ子さんの羊羹づくりを見て育ったという純平さん。ユキ子さんが一人で切り盛りするようになったのを聞き、以前勤めていた会社を辞め、お店を継ぐことに決めたそうだ。
純平さんがお店を継ぐことに対し、ユキ子さんは嬉しい反面、それまで羊羹は一人で作り、作ることができなくなった際はお店を締めるつもりでいたため心配の部分が残るようだ。今では純平さんが羊羹づくりを満足にできるようになるまで、見守っていきたいと、話してくれた。
実際にお店に立つようになって、思った以上に体力を使うことを実感した純平さん。
接客や取材中は朗らかで、まだ19,20歳という若々しさとあどけなさを見せる純平さんだが、羊羹を切り出す作業になると、スッと真剣な職人の顔になるのが印象的だった。
「羊羹づくりって実は、かなり力がいるんです。羊羹の粘りもあって切り離すのに体力が必要で。グラム数も正確さが要ります。結構集中しないといけなくて」。
手作業で一つひとつ丁寧に作る高木羊羹。ユキ子さんや先代のこだわりも受け継ぎつつ、黒イチジクを使った新商品の開発も考えているそう。
デザインの力で新たな風を
純平さんがお店に立つようになり、パッケージも新しくすることに。
現在のデザインを手掛けたのは『ユキヒラ・デザイン』の長尾さん。佐賀県を中心に活躍するデザイン事務所だ。
長尾さんの存在は『高木羊羹本舗』にも大きな影響を与えたという。
「長尾さんの丁寧な仕事や、他とは違ったお店に寄り添った考え方に、"この人だ!"と思いました」とユキ子さん。
1年ほど、打合せを重ねながら進めてきたという、『高木羊羹本舗』のブランディングは、『黒いちじく羊羹』を柱に、商品の整理やパッケージのデザインの見直したそう。
「ユキ子さんや純平君の想いや気持ちを大事に、まずは聞き取りを丁寧に行いました」と長尾さん。他店舗と被らないよう、小城をはじめ、各地の羊羹を取り寄せ、パッケージデザインの見比べや味比べをしたという。その丁寧な仕事ぶりに、ユキ子さんも惚れ込んだとそうだ。
出来上がったパッケージは版画をモチーフにしたモダンで品のいいデザイン。その中にも若い世代にも好まれるようポップさを兼ね揃える。
若い純平さんが継ぐことから、若い世代にも手に取ってもらえるようにという想いも込められ、羊羹を通して話のツールになるように心掛け、デザインしたそうだ。
「出来上がったデザインは、統一感もありつつ、他には無いデザインで、このパッケージで売り出すことを考えるとワクワクしました。このパッケージで『黒いちじく羊羹』や今回新たに作った『こまか切り羊羹』を知って頂くきっかけになればいいですね。この羊羹、コーヒーや紅茶にも合うんです。若いお客さんにも、ぜひ食べていただけたらと思います」と純平さん。
羊羹の味はもちろん、祖母と孫という独特の空気感に自然と顔もほころぶ『高木羊羹本舗』。
手土産やちょっとしたご褒美に足を運んでみてはいかが。
店舗情報
店舗名 | 高木羊羹本舗 |
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住所 | 〒845-0001 佐賀県小城市小城町自在265-3 |
公式SNS | Instagram:@takaki_youkan |
詳細 |
【TEL】0952-73-3360 【OPEN】9:00~19:00 【CLOSE】第1・第3水曜日 |
地図 |
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EDITORS SAGA編集部 相馬