女性が働くということ・2 「『助け合う』の輪が広がれば、みんなが笑顔で子育てできる」江口みゆきさん

女性が働くということ・2 「『助け合う』の輪が広がれば、みんなが笑顔で子育てできる」江口みゆきさん

ライフスタイルや価値観が多様化した現代社会、女性たちは仕事や家庭とどう向き合っているのだろうか。この連載では、"女性と仕事"をテーマに、県内に住む女性たちの声を拾っていく。悩み満載の日常のヒントは、今を生きる女性のなまの声にあるかもしれない。

第2回にご登場いただくのは、佐賀市内2か所で習字教室を運営する江口みゆきさん。2歳から小学生まで3人のお子さんを育てながら3か所の子育てサークルの代表を務め、さらには佐賀市の母子保健推進員としても活動している。
こう書くとエネルギッシュな女性と思われるかもしれないが、ご本人はいたって温和で柔らかい印象だ。活動の源泉は何か、お話をうかがった。

江口みゆきさん
こんなことしています:習字教室の運営/子育てサークルの運営/佐賀市母子保健推進員
家族構成:夫・長男・次男・長女・母・弟と7人暮らし
担当する家事:できる人ができることを行うスタイル
息抜きの方法:夫や友人とのコーヒータイム(保育士時代にいただいた、写真入りマグカップがお気に入り)/マルシェ出店(『お名前つむぎ詩ボード』を制作しています)

ママが過ごしやすいように過ごせたら、子どもも笑顔になる

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資格を活かして習字教室を運営

習字教室は母と一緒に運営しています。
もともと保育士をしていたところ、結婚を機に退職し、第1子・第2子の出産の合間に、同居する母の習字教室を手伝っていました。3人目の子どもが生まれ、一時期、育児がしんどく感じられたんです。しんどさを軽減しながら我が子と過ごす方法をいろいろ考えました。母とも話し合って、2人で習字教室を運営していくことに決めました。母は掛け持ちしていた事務の仕事を辞めて習字教室に専念。私も「手伝う」だけでなく、本格的に関わることにしました。そうすることで、自分たちが過ごしやすいように過ごせるかもしれないと考えたんです。そして今、とても充実した日々を送っています。

習字教室は4歳から83歳まで幅広い世代の生徒さんが在籍しておられます。実力が伸びる時期と伸び悩む時期があるので、生徒さんの様子を見ながら声かけをしています。また、習い事は楽しくないと続かないので、いろんなお楽しみをこちらから提案しています。春休みにクレープパーティをしたり、七夕かざりをつくったり。母の日に向けてお母さんへのお手紙を描いてもらった時は、「どんなことに『ありがとう』って言いたい?」と子どもたちに問いかけました。保育士時代の経験が活きていると感じます。

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原動力は「今できることをしたい」

だんだん自分の時間がとれるようになったので、子育てサークルの運営に携わるようになりました。「高木瀬あいあい」「北川副ぷくぷくfriends」「北川副ぷくぷく赤ちゃん」の3か所です。「高木瀬あいあい」は前任者から代表を引き継ぎました。そして、居住している北川副で友人と一緒に「ぷくぷくfriends」を立ち上げたのは去年のこと。「ぷくぷく赤ちゃん」は今年2月にスタートしました。近所には子育て世帯が多く、育児を気楽に語り合える場所が必要だと思ったんです。

その他、去年から母子保健推進員として赤ちゃん訪問をしています。子育てサークルに参加できるのは、まあまあ元気な人。一人で子育てして疲れ切っている人は、出てくる元気がないんです。その上、「サークルには一人で行きづらいな」と悩んでいたりする。だから、「私、このサークルにいるからおいで」と声をかけて、外に出るお手伝いをしていきたいんです。一度サークルに参加できたら「楽しかったし他のところも行ってみようかな」と行動範囲が広がって好循環が生まれます。

我が子はまだ幼いので、「今そういうことをしなくていいんじゃない?」と言われることもあります。でも、現役で子育てしている私だからこそ共感して寄り添うことができると思っています。

私がいろいろ活動できているのって、やっぱり家族に助けてもらっているからなんですよね。主人と2人で子育てしていたら、とてもそんな余裕はなかったと思います。同居している母と弟、そして同居に賛成してくれた主人に感謝です。

「初めて」尽くしの日々とうれしい出会い

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保育士からママへ

保育士をしていたのは、もともと子どもが大好きだったからです。結婚し出産して、いざ自分が子育てをすることになったら「初めて」のことばかり。「保育士やってたんだから大丈夫だよね」と言う人もいたけれど、保育士時代は24時間体制で子どもを見ていたわけではありません。たいへんな思いをたくさんして、「子どもが笑顔になるにはママが笑顔でなければ」と気づいたんです。それで、ママたちを支えたいという思いが芽生えました。

私自身、ママ友ができたことが支えになりました。おにぎり作って児童館に持って行って一緒に食べて「また明日ね」と帰宅する。そういうことで、たいへんな時期を乗り越えられました。あまり意識していなかったのですが、それは実はお互い様みたいです。今、私をいろいろ助けてくれているママ友にお礼を言うと「前に私が助けてもらった分だよ」って笑顔で返してくれます。本当にありがたいです。

ママたちとの縁が世界を広げてくれた

我が家でコーヒーやお菓子を楽しむ時間を、お友達のみんなは「みゆきカフェ」って呼んでいます。「今日、みゆきカフェ空いてる?」とか「次のみゆきカフェ、いつする?」とか気軽に提案してもらって、リラックスタイムをつくっています。

ママ友が増える過程で驚いたのが「それぞれ特技がある」こと。ネイルができる人、編み物ができる人、アクセサリーを作れる人。できることをそれぞれ持ち合って、交流が広がるほどに、「次は骨盤底筋ストレッチを練習しよう!」という感じで新しい企画が出てきます。家にいながらどんどんコミュニティが広がっている感覚です。

先日、お友達がつぶやくのを聞いてハッとしたのが、「1人で10のことができる人よりも、ひとつのことしかできない人が10人集まったほうが、子どもの育ち的にはいいんじゃないの」という言葉。すごく納得しました。できることをできる人がやって、補い合う。そういう、たくさんの人で子どもたちを見守る環境をつくっていくのも私の役目だなと思っています。

今は社会が「助け合う」「補い合う」という、人間の原点に戻っている印象を受けます。助けてもらえる自分でいたいなって思いますし、「助けてくれてありがとう」という気持ちを忘れたくない。できることは返していきたいとも思っています。

選択肢と視野は広く持っていたい

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子育ては長丁場で、ひとつ悩みが解決したら新しい悩みが生まれます。歯磨きを嫌がる時期が終わったらトイレトレーニングがあるという具合に。でも、それもまた楽しい。自分以外のことで悩めるのは、すてきなことですよね。

子育てしつつ好きなことに打ち込んでいるから、我が子にも好きなことをやってみてほしいって思います。好きなことを仕事にできたら尚いいな、と。

私自身は最近エステの勉強を始めました。あんまり無理して頑張ると生活のバランスが崩れるので、週1回のゆっくりペースで学んでいます。いつかママ友たちに提供できたらいいなと思います。他にも、主人の趣味であるゴルフを私も始めようか検討しています。

ある意味、「自分」というものがあんまりないみたいです。「この映画を絶対に見る!」というより、友達に誘われて一緒に楽しむのが好きなタイプ。映画そのものというより、その人と一緒に過ごす時間のほうに価値があると感じるんです。「絶対したい」も「絶対だめ」もない。自分に合わなかったらやめたらいいし、選択肢も視野も広く持っていたいと思っています。

教室名 日本習字 みせん教室
公式Instagram

日本習字 みせん教室: @misen.123

子育てサークル「高木瀬あいあい」「北川副ぷくぷくfriends」「北川副ぷくぷく赤ちゃん」 :@miyukitty77 

開成作文堂

伊藤 恵子

佐賀県佐賀市在住のライター。平成の大合併後に佐賀市となった、山中の集落で自然物と戯れながら育ちました。学生時代を除いてずっと佐賀に...

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