地域の魅力はその土地で暮らす人たちの思いが混ざり合い、溶け込み、形成されています。
自分のために、家族のために、そして地域のために、何ができるのだろう。
「やりたい」と思い描いた夢は共感を呼び、一滴の雫が大きな波紋となって地域に、そして人の心に広がっていきます。
ローカリストと呼ばれる地域のプレイヤーは正解の無い地域づくりに挑戦している人々。
3年目となる2020年。今年のローカリストはどんな地域の形を想い描いているのでしょう?
第5回目は、『ぺぺんち』の吉田誌子さんの活動をお届けします。
子どもたちが、育ち合う姿を優しく見守る。
吉田誌子さんは、佐賀市内で『ぺぺんち』を運営しています。
「ここは、私の祖母の家なんです。『ぺぺ』は私たちが呼んでいた祖母の愛称。祖母が入院して、小さい頃によく遊んでいたこの場所に人がいないことが寂しくて、再び人が集う『ぺぺんち』として使い始めたんです」
小学校教諭、塾の経営という経歴を持ち、2人のお子さんの母親でもある吉田さん。「勉強以外でも子どもの成長に関わりたい」との想いから、試験前のみならず学校の長期休みにも『ぺぺんち』でたくさんの地域の子どもたちを迎えます。
「学年も学校も違う子どもたちが集まると、普段、ひとりっ子の子どもに兄弟ができたり、末っ子の子どもがお兄さんになったり。子どもたちにとって、学校や家庭では味わえない空気を感じることができる場所になっています」子どもたちが出会い、いっしょに過ごすことで、子どもたちは『育ち合う』と、吉田さんは言います。そんな子どもたちの姿を、今日もやさしく、あたたかく見守ります。
私、地域活動の旗は、掲げていません。
実は、第1回と第2回のローカリストアカデミーに一般の参加者として足を運んでいた吉田さん。そこで出会った自然養鶏を営む『本間農園』の本間さん。
当時、吉田さん自身も命の大切さを学ぶワークショップを構想中で、その縁で『いのちの寺子屋』というワークショップを本間さんと一緒に『ぺぺんち』で開催。子どもたちと庭で鶏をさばいて、食べるという体験をしました。
そして今回、ローカリスト選出の知らせがあった当初、戸惑いを感じたと言います。「私には地域活動という意識はありません。お断りしようと思ったくらいです。だけど、子どもの成長に寄り添うことは、人を育てること。子どもたちが社会に出て活躍することを考えれば、それは立派な社会貢献です。楽しんでやっていることが結果、地域活動になっているんじゃないかな?と思ってお受けすることにしました」と、そのときの気持ちを素直に話してくれました。
小さなコミュニティで、広い世界を知る。
『おばあちゃんち』のような気軽に人が集まれる雰囲気を持つ『ぺぺんち』には、子どもだけでなく、大人たちも集います。
編物教室や鍵盤ハーモニカ教室、子育てお茶会などを楽しむことで「小さいコミュニティが増えてほしい」と吉田さん。
「ここに来る子どもたちに、いろんな世界があることを伝えたいと思っています。例えば、学校がその子に合わなくても、他できっと、その子が生きやすい場所はある。自分に合った世界や考え方に触れるきっかけになれば」その言葉通り、『ぺぺんち』はいつも、肯定感や幸福感で溢れています。
身近な人の幸せが叶う場所でありたい。
当初は、コミュニティスペースとしてスタートした『ぺぺんち』。
シェアスペースとして料金をとっていた時期もありました。
「人を集め、コミュニティスペースとしてビジネスを成立させようとしたときもあります。だけど、ここは私の大切な場所。知らない人が来て、家具や建具が傷付くと、祖母に申し訳ない気持ちになっていました。現在は、大々的に利用を募っていません」
だから、今『ぺぺんち』に集まるのは、吉田さんの友人やお子さんの友人たち。そこから、友人の友人とつながって、じわじわと手の届く人の輪が広がっています。
「地域活動という大きなことは考えていません。ただ、身近な人たちの生活が少しでも向上すれば、それでいい」と吉田さん。ビジネスにとらわれることなく、身近なところから始まる幸せが、やがて地域へつながることを教えてくれました。
プロフィール:吉田 誌子
佐賀市生まれ。大学卒業後、一般企業での勤務、小学校教諭、塾の経営、子育てを経て、2018年に祖母の家を「ぺぺんち」として使用開始。これまでの経験から得た教育観から、勉強以外で子どもたちの成長に関わりながら、様々な出会いや経験を通して子どもたちが「育ち合う」姿を見守る。子どもが自分らしく生きる力を身につける場所づくりを模索中。
情報
ぺぺんち
住所 |
〒840-0042 佐賀県佐賀市赤松町10-12 |
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公式サイト | https://pepenchi.jimdofree.com/ |
https://www.facebook.com/pepenchi/ |
イベント
SAGAローカリストアカデミー開催
生まれた場所、移り住んだ場所、愛する場所。
その地域に「こうなって欲しい」その地域で「こんなことしたい」
そんな想いを抱いていたら、地域づくりは、もう、はじまっているのかも知れません。
3回目を迎えるSAGAローカリストアカデミーは、
地域づくりを楽しむローカリストたちと、その魅力や可能性を共有できる機会です。
ひとりでできないことも、みんなの共感や協力があれば、できそうな気がする。
さあ、「やりたい」が「できる」に変わる瞬間を一緒に。
【東部会場】2020年9月26日(土) SAGA CHIKA 13:00-16:30
【西部会場】2020年10月10日(土) 漬蔵 たぞう 13:00-16:30
※新型コロナウィルス感染症の発生状況等により、開催方式・スケジュールなどが変更になる場合があります。
詳細
公式サイト | https://www.sagajikan.com/sagalocalist/ |
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申し込み | https://www.sagajikan.com/sagalocalist/inquiry/ |
文章:岡 優一
写真:藤本 幸一郎