「稼げる農業」の仕組みをつくり、地域の課題解決の糸口に。 『かしま自然農園株式会社』代表 奥 正好さん【SAGAローカリスト】 PR

「稼げる農業」の仕組みをつくり、地域の課題解決の糸口に。 『かしま自然農園株式会社』代表 奥 正好さん【SAGAローカリスト】

「やりたい」が「できる」に変わる地域へ。

佐賀県には、「やりたいこと」を追い求め、周りの人たちを巻き込みながらカタチにしている『ローカリスト』たちがいます。
6年目を迎えた『SAGAローカリストアカデミー』も個性豊かな面々が揃い、一味違う景色を見せてくれそうです。

そんなローカリストの活動とそれぞれが暮らす地域の素晴らしさについて綴っていきます。

第1回目は、『かしま自然農園株式会社』代表 奥 正好(おく まさよし)さんの活動をお届けします。

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"ここなら何かできる"。直観で移住を決意

農業は未経験。縁もゆかりもない場所で、しかも周りの誰もやっていない"そば栽培"を始めた奥 正好さん。驚くほど大胆なこの挑戦をはじめたきっかけは、いったい何だったのでしょうか。

「当時は福岡でWEBサイト制作やECサイトの運営サポートなどを行っていたんですが、クライアントの一人から、『鹿島に耕作放棄地があるんだけど、観に行かない?』と声をかけられたんです。雑談の中の流れで、こちらも『農業いいですね~』なんて話していたら、その2日後に本当に現地に連れていかれて(笑)。その時はまさか本当に自分が農業をするとは思っていませんでした」

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もともと田舎の風景が好きで、60歳くらいで仕事をリタイアしたら田舎暮らしもいいなあ、と憧れのようなものはあったそうですが、予定がかなり前倒しになったと笑います。

「みかんの耕作放棄地だったこの畑に来て、ふと振り向いたら、畑の向こうにばーっと有明海が広がっていて。何とも言えない開放感があって、それを見た時に、"ここなら何かできるかも"と感じました」

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心配より、"ワクワク"のほうが強かった

奥さんは初めて畑を訪れた3カ月後には法人登記を行い、移住の準備を始めます。もともとみかん畑で水はけのいい土壌。その中で農業初心者にも育てられるものをあれこれ調べた結果、「そば栽培」に取り組むことに決めました。でも、周りはみかん農家ばかりで、当初は農業委員会の方や集落の方にも「えっ、そば!?」と驚かれたといいます。

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「もちろん不安はありましたが、それよりも何かできるかもしれないというワクワクの方が強かったですね」と話す奥さん。

集落の方など周りからの支えを受けながら、コツコツとそば栽培に取り組み、移住3年目を迎えた現在は、そば粉を使ったスイーツ専門店『Tora&Shika』の運営やそばの手打ち体験、商品開発やネットショップでの販売など活動を広げています。

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※農業委員会とは......農地法に基づく売買・貸借の許可、農地転用案件への意見具申、遊休農地の調査・指導などを中心に農地に関する事務を執行する行政委員会として市町村に設置されています。

そば粉スイーツで、新たな利益の仕組みや雇用を生み出す

栽培したそばのプロダクトである「そば粉スイーツ」は、美味しくてヘルシーだと評判で、県内外のさまざまなイベントへの出店も行うほどの人気です。

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「最初はSNS映えすることなどを考えていましたが、事業としては卸売りの方が拡大しやすいので、そちらにシフトしました。商品は売れるもの・冷凍できるもの・日持ちするものであること、価格も卸売りを前提に設定しています。新たな仕入れ先や卸先も見つかり、厨房も業務用機器を入れて改装しました。現在は妻と2人で製造・販売を行っていますが、これから需要が増えれば従業員を雇って供給数をあげることで、利益増や雇用の創出にもつながると考えています」

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ビジネスモデルを構築し、地方が直面する課題を解決

そして今、奥さんが目指しているのは「地方の課題を解決するためのビジネスモデル」を構築すること。

「例えばみかん農家が1軒辞めてしまうと、約3万㎡の土地が耕作放棄地になってしまいますが、僕が今そば栽培をしているのはその10分の1の3000㎡。毎年少しずつ耕作放棄地を開拓していっても、焼け石に水です。だったら〈稼げる農業の仕組み〉を考えてひとつのビジネスモデルとして確立すれば、農業を辞める人が減り、耕作放棄地の増加も後継者問題も解決できて効率がいい。ノウハウがあれば未経験者も挑戦しやすいし、応用して各地方の課題解決を図ったり、移住者増を目指すことも可能です」

現在は農作物の販路確保、栽培・収穫・加工のシステムなどを構築中で、そばの他に規格外の地元のみかんを買い上げて商品開発や販売を行うといった事業にも取り組もうとしています。

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こうした活動の根底には、移住当初からお世話になっている地域の皆さんに、自分ができることで恩返しがしたいという気持ちがあるそう。
自らが構築した新たなビジネスモデルが鹿島から全国へと広がり、地方の抱える課題解決につながることを目指して、奥さんの挑戦は続きます。

プロフィール:奥 正好(おく まさよし)
1986年福岡県生まれ。2020年に鹿島市飯田七曲地区に移住。同年に「かしま自然農園」を立ち上げ、みかん畑だった耕作放棄地でそば栽培をスタート。農業未経験ながら、これまでに培ってきたリサーチ力や人脈等を活かし、そば栽培に加え、ネットショップやそば粉スイーツのカフェ運営、キャンプサイト運営や古民家再生事業サポートなど幅広く事業を展開。地方が抱える課題解決の糸口を探りながら、その仕組みづくりに努めている。

かしま自然農園株式会社(そば粉のスイーツ専門店Tora&Shika)

住所 鹿島市飯田丙352-3
公式サイト https://kn-farm.co.jp
公式SNS Instagram:@toratoshika.soba

文章:亀井 玲奈
写真:藤本 幸一郎
編集:相馬 千恵子

EDITORS SAGA編集部

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