「やりたい」が「できる」に変わる地域へ。
佐賀県には、「やりたいこと」を追い求め、周りの人たちを巻き込みながらカタチにしている『ローカリスト』たちがいます。
6年目を迎えた『SAGAローカリストアカデミー』も個性豊かな面々が揃い、一味違う景色を見せてくれそうです。
そんなローカリストの活動とそれぞれが暮らす地域の素晴らしさについて綴っていきます。
第3回目は、『たいようアウトドア』代表、古川 陽進(ふるかわ ようしん)さんの活動をお届けします。
唐津、北海道、四国、海外で築いたガイドの礎。
白砂青松、風光明媚。豊かな自然に包まれる唐津を表すのにぴったりの言葉です。
そんな唐津を中心にSUPツアーなどを企画、運営する『たいようアウトドア』の古川 陽進さん。唐津に生まれ、自然を遊び相手に少年時代を過ごし、18歳で札幌の大学へ進学します。
「北海道は、大学の入学式がある4月でも雪が積もっていました。スニーカーしか持っていなかったので、歩くのも必死。すごいところに来てしまったな、とも思ったけど、北海道はきれいなものもたくさん見せてくれました」
北海道時代は、仲間と道内を自転車で旅するなど青春を謳歌したと言います。
大学卒業後は、アウトドアガイドの資格を取得し、夏は四国の川でラフティングガイド、カヤックインストラクター、冬は北海道の雪山でガイドを務めます。その後、オーストラリアへ。ここではガイドをしながら、プロとしてのラフティングも開始。
帰国後は、アウトドアブランドメーカーに就職しますが、5年ほどで退職。と、同時に国内のプロラフティングチームへ。家族には熱意を伝え、賛成を得ます。
「この頃には、結婚して子どももいました。よく説得できたな、と思います」と笑います。
競技者を引退、そして、約20年ぶりに唐津へ。
過酷な練習を乗り越えて、約4年間の在籍中には世界大会で優勝するなど、輝かしい成績をおさめます。
そして、次のステップへ。プロチームを退団します。
「これから先、アウトドアのガイドをやろうと思ったとき、川なら四国の吉野川が有名だし、東京なら奥多摩のあたりは都心からも1時間くらいで来れちゃうんで、そういった場所を拠点にビジネスをするには可能性はめちゃくちゃあったんです。いくつも『一緒にやりませんか?』という誘いもあったんですが......」
それでも、唐津を選んだ古川さん。九州には、海外や沖縄のようにガイドにお金を払って遊ぶという文化がまだ根付いていないと言います。ライバルが少ないからこそ、そこを切り拓いていくことに可能性を感じた古川さん。幼い頃に、自然への愛着を育んだ場所へ。約20年ぶりの唐津での暮らしがスタートします。
「アウトドア未開拓」というチャンスを活かす。
2015年に帰郷し、2016年に『たいようアウトドア』を開業しました。海でのSUPを中心に、川下り、サイクリングなどのアクティビティを提供しています。
唐津の海は、表情豊か。穏やかな内海もあれば、力強さを感じる外海もあります。「これだけのポテンシャルの高い自然がある唐津は、やっぱりおもしろいな、と思います。しかも、やる人が少ないので、ほぼ貸切です」
それでもはじめの頃はSUPへの認知が低く、ボードに立って水面を進む姿を漂流していると間違われたことも。古川さんは、旅館とコラボして宿泊プランのなかにSUPを組み込んだりして認知を高めていきました。
アウトドアブームの先へ、本当に伝えたいこと。
今では、隣の福岡県をはじめ、県外から古川さんのツアーに参加する人も増えたと言います。
「お客さんの『こんなにきれいな海で、こんなに楽しい体験があるならもう海外に行かなくていい』って声がいちばん嬉しいですね」と古川さんは言います。
また、私生活では4児の父でもある古川さん。「勉強も大事ですが、世界がどうなるかわからない今こそ、魚を釣るとか米を育てるとか、子どもたちには生きる力を身に付けて欲しいですね」と語る古川さんは、ビジネスとしてのアウトドア以外にも、地域の子どもたちに農業や火おこし体験教室を実施しています。
「せっかく今、アウトドアブームがきているので、そこからもう一歩踏み込んだ自然と共存するとか、環境を守ることとかの大切さを伝えたいですね」と、未来を見据えて話す古川さん。SUPなどの体験を入口に、本当の意味での「アウトドアの聖地」になる日は、そう遠くはないようです。
プロフィール:古川 陽進(ふるかわ ようしん)
唐津市に生まれ、大学進学を機に北海道へ。卒業後は、四国や北海道でアウトドアガイドを務める。プロのラフティング選手としても世界大会で優勝するなど活躍。2016年には『たいようアウトドア』を唐津で開業。唐津をアウトドアの聖地するべく、SUPや川下りツアーを企画・運営する他、環境保全や子どもたちへの海遊び、野遊びの楽しさを伝えることにも力を入れている。
たいようアウトドア
公式サイト | https://sun-outdoor.jp/ |
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公式SNS |
Facebook:たいようアウトドア |
文章:岡 優一
写真:藤本 幸一郎
編集:相馬 千恵子