佐賀はお茶文化が根付いている地域です。県内にはおいしいお茶を提供してくれるカフェが多く、より私自身の生活にとって馴染み深いものになったように思います。
そんなお茶をより愛おしく感じさせてくれたのが、有田町にある「紅と香」。オーナーさんがじっくり丁寧に淹れてくれるお茶、そしてスコーンをはじめとするおかしは、「お店に行ってよかった」「今日はとってもいい日だったな」という余韻をいつまでも感じさせてくれました。
お茶をもっと近くで、もっと身近に
細長いレンガ造りの建物で、入口に真っ白なのれんがかかっています。
店内は白を基調とした統一感のある清潔なデザイン。美しく洗練された雰囲気でありながら、温もりも感じます。
季節のスイーツメニューは2~3か月ごとに変わります。どれもお茶とのペアリングにぴったりなものばかり。
余韻が残る、幸せ時間
紅と香の特徴は、目の前でお茶を淹れてもらえること!
見て、香って、味わう......、まるで一種の体験のような感覚でお茶を楽しめるのです。茶器をお湯で温めたり、茶葉を蒸らしたり。手間暇かけて丁寧に淹れていただきながら、品種の特徴や生産者のお話を教えてもらえます。
お茶を淹れてもらう際は、茶葉の香りが変化していく様子も観察できました。まずは乾燥している茶葉の香りをかぎます。その後は蒸らし終えたとき、さらにお茶を淹れた後の香りも楽しんで比較できるのです。使用する茶器は全て透明。茶葉から抽出されたお茶の色がはっきりとわかるので、視覚的にもお茶を比べられるよう工夫されているのも素敵です。
左から緑茶、烏龍茶、紅茶。
今回はお茶の飲み比べ(緑茶、烏龍茶、紅茶)をオーダー。緑茶はすっきりとした香味とまろやかな甘さがありました。飲んだ後に呼吸をしたり会話をしたりしていると、口の中でふんわりと香ります。他のお茶にはない余韻を楽しめるのが最大の特徴。佐賀・長崎のアイデンティティである、最も古い釜炒り製法で生み出された緑茶です。
手前が緑茶、左奥が烏龍茶、右奥が紅茶です。色味がそれぞれ異なり、美しい。
烏龍茶はとっても衝撃的でした。お店に行く機会があればぜひ飲んでみてください、おいしくてびっくりするはずです。一般的な烏龍茶とは違って渋みを感じず、飲んだ後に口内がしっかりと潤います。口に含むと鼻がクンとあがるような品の良い香りが広がるのがたまらない!ペットボトルの烏龍茶とは別物。これが「本物の烏龍茶」なのだそうです。
本当においしかったので、こちらの農家さんのお茶をちゃっかり購入。羊羹を食べながら飲むのがマイブーム。
紅茶は嬉野の"太田重喜製茶工場"で生産されたもの。お茶を飲み込むと、発酵させた茶葉が上品に香ります。雑味や尖った苦みがなく、透き通るようなルビー色も美しい。質の良い和紅茶に感動しました。
なんて美しいお茶菓子たち......。思わずため息が出てしまうほど、華やかで品のあるお茶菓子です。
お茶の飲み比べは、有田焼きの陶器に入った小さなお菓子の盛り合わせがセットになっています。芋羊羹、金柑の蜜漬け、和三盆+苺ジャム。蓋を開くと桜の花びらでおめかしされたお菓子が目に入り、喜びで胸いっぱいになりました。自分を甘やかしているような贅沢気分!
お茶に欠かせない焼き菓子もご紹介。まずは季節の桜スコーンです。紅と香のスコーンは、なんとおからが50%も含まれています。水分量が多いので一般的なスコーンのパサパサ感はゼロ。中には桜餡も隠れていて、大豆の風味を感じる和テイストな焼き菓子です。
米粉のウィークエンドは、レモンの酸味がしっかりある、甘酸っぱいお味。生地はしっとり食感で、口の中の水分が奪われません。ピスタチオやレモンピールがあしらわれた表面も可愛らしく、お茶を飲みながら眺めているだけで嬉しい気持ちに。
お茶との対峙、心に訪れる平穏と優越感
お店で取り扱われているお茶は、オーナーさんが農家へ足を運び、実際に飲んで厳選したもの。農家でのお茶の製造にも関わっているほか、オリジナルのスペシャルティーを自作・販売するなど、さまざまな形で活動をしています。
オーナーさんは「お茶文化は崇高なものと捉えている方が多いです。茶道のように道徳を学ぶのも良いのですが、自分自身がお茶とどう関わっていくかも大切にしてほしいと思っています。まずは目の前にあるお茶と対話をするような感覚で、じっくり向き合ってみていただきたいです。」と話していました。
難しいことは考えず、ただ素直にお茶と対峙する。歴史や作法を知ることに専念するよりも、目の前のお茶のことを考え、香りを感じ、味わう。それだけで良いのかもしれません。
最後に
紅と香は「お茶を淹れる、それは小さな平和活動」をテーマとしています。実は取材前、「お茶と平和活動がどのように結びつくのだろう?」と不思議でした。スケールの大きなワードに感じていましたが、オーナーさんと話しながらお茶を味わっていくうちに、なぜ平和活動という言葉が使われたのかが理解できました。
仕事の不安や人間関係のストレス。目の前にあるお茶と向き合っているだけで、不思議とマイナスな感情から距離を置けたような感覚になっていたのです。お茶の香りや味を楽しんでいる自分に酔いしれる。そんな気持ちになるだけで、心に平穏が戻ってきました。これこそが、オーナーさんが考える「小さな平和活動」なのです。
店舗名 | 紅と香 |
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住所 | 佐賀県西松浦郡有田町上幸平1丁目4-5 B棟 |
営業時間 | 木~月 10:00~17:30 |
定休日 | 火・水 |
駐車場 | あり(店舗斜め前) |
公式SNS | Instagram:@koutokou2023 |
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