昭和レトロな商店街を紹介する「中央マーケット」探訪。
今回は、本当は教えたくない!知る人ぞ知る激渋な定食Barを紹介します。
誰もが一回は憧れる?!映画や小説に出てきそうなお店
「マスター、いつもの」
自分しか知らないような行きつけのBarができたら言ってみたい、憧れのセリフの一つです。
カウンター6席のみ、メニューは無し。
中央マーケットの看板が掲げてある西入口を進むと右手にある、見逃してしまいそうなほどひっそりと佇むTERRY'S。映画や小説の世界に入り込んだような、店内の狭さと独特な雰囲気。まさに、憧れたものが現実に現れたようなお店です。
メニュー無しのランダム定食
このお店にあるのは基本、定食(コーヒーorコーラ付き)600円、コーヒー300円、その他ビールなどのドリンクのみ。
入店するとカウンター奥の厨房からひょっこり、物静かでダンディなマスター、テツさんが顔を出します。
「定食ですか?」聞かれるのはその一言だけ。「定食」と答えると、すぐ厨房に戻り、静かに作り始めます。
定食はなんとランダム!お客さんの雰囲気を見て決めているそうです。
分かっている範囲だと、定食は揚げ物をメインにおそらく10種類くらいあります。本人も正確にはあまり把握していないのだとか。
この日の定食のメインは、豚をシソとチーズで包んで揚げたもの。それにご飯、スープ、スパゲッティの4品が出てきます。
丁寧に切られた千切りのキャベツに優しいスープ、スパゲティは昔ながらのケチャップ感が絶妙です。そしてメインの揚げ物はソースをつけていただきます。豚とチーズに爽やかなシソの香りが絡み合って、ご飯が進みます!
出てくる定食は誰でも食べやすいメニューなので、何が出てくるのかワクワクしながら待つのが、このお店の楽しみの一つです。
そしてお味の方も、あっと言う間に完食してしまうほど文句なしの美味しさです!
そして食後には、本を読みながらコーヒーで一息。これがTERR'Sスタンダードではないでしょうか。
フライヤーが一面に貼られた天井
ドリンク付きのランダム定食が600円で頂けるというのは最大の特徴ですが、店内にも気になるものが。
まずはぜひ、上を見上げていただきたいです。天井一面に貼られているフライヤー!
TERRY'Sでは、お客さんが持ってきたイベントのフライヤーを置いてくださいますが、終わったイベントは入れ替わり立ち替わり、天井に貼られていきます。
「この前来たお客さんは、10年前に自分達が企画したイベントを見つけたみたいで、懐かしい〜と話していたよ」とテツさん。
貼られたフライヤーの数だけ、思い出が詰まった天井なのですね。定期的に入れ替わっているので、ぜひチェックしてみてください!
積み上げられた本の秘密
店内のいたるところに、積み上げられた本があります。村上春樹、伊坂幸太郎が並んでいるゾーンも......!
読書が趣味のテツさん。本は月に20冊くらい読んでいて、一回読んだ本は基本読み返さないと言います。現代の作家のものは大体読んでしまったため最近は時代小説を読んでいるとか。読み終えた本はどんどん積み上げられています。
ジャズと歴史のTERRY'S
20代の頃は全国のジャズ喫茶・バーを巡るほどジャズ好きだったというテツさん。30代で始められたTERRY'Sの店内では常にジャズが流れています。
初めは唐人町で7〜8年。その後『中央マーケット』に場所を移し、30年以上になるそうです。
そして、気になっている方もいらっしゃると思いますが、このお店にメニューが無いのは、単純に大変だからだそう。
「若い頃は、メニューもあって定食以外にもサンドイッチとか色々出していたけどね。一人だからバラバラに注文されると大変で。歳をとったら追いつかなくなってしまったから定食一本にしました」
今では逆にランダム定食が楽しみな部分ですが、サンドイッチ、気になりますね......
約40年になるお店には、やはりお客さんとのエピソードも沢山あると言います。
「昔からお店によく来ていたカップルが結婚して、今度はその子供も来るようになったりね。その子も今度結婚するみたいで」
テツさんは遠い目をしながらクールに、でもしみじみと言います。
一つの家族をずっと見守っているマスター。このエピソードもまるで映画や小説の話のような素敵な話です。
お店の歴史と天井のフライヤー。佐賀の人々をずっと静かに見守ってこられた事が分かります。
知る人ぞ知る名店は、ちょっと疲れた時に定食とコーヒーでホッと一息ついたり、積み上げられた本を静かに読んだり、「心のよりどころ」的存在です。
本当は教えたくなかった!けど、落ち着きたい気分の時に行きたいお店です。
店舗情報
TERRY'S
住所:佐賀市呉服元町2-2
営業時間:12:00〜24:00
店休日:日曜日・祝日