有田戸矢かぶ 〜ハートのかたちの伝統野菜〜

有田戸矢かぶ 〜ハートのかたちの伝統野菜〜

有田町地域おこし協力隊の高橋です。すっかり寒くなって、かぶのおいしい季節がやってきました。有田の伝統野菜「有田戸矢かぶ」、今年はもう食べましたか?

有田矢かぶ

町の南端に位置する「戸矢」地区。有田戸矢かぶはその戸矢で古くから守り継がれてきた伝統野菜です。葉はギザギザしていて、肥大した根の上半分の表面が赤紫色、下半分は白色で、鮮やかなコントラストを生み出します。ソフトボール大の中かぶで、断面がハートのかたちになるのが特徴です。11月〜1月下旬まで収穫され、有田町内の数店舗のお店で取り扱いがある他は、イベントなどでPRをかねて販売されることもあります。

大蛇退治伝矢かぶ

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今から800年以上昔。弓の名手、鎮西八郎為朝が、この地方で暴れまわる大蛇を退治したという伝説が残されています。その時放った矢が跳ね返り、家の戸にささったのが「戸矢」という地名の由来だそう。2本目の矢は大蛇の頭に命中。その血は戸矢の畑まで流れていき、もともと白かったかぶの土から出た部分だけを赤紫色に染めたのだとか。これが戸矢かぶのはじまりとされています。

有田矢かぶの会

そんな謂れのあるほど昔から土地に根付いている戸矢かぶ。昭和35年頃には約30aの栽培が行われていましたが、その数はどんどん減少していきました。戸矢かぶだけでなく各地の伝統野菜が衰退していった背景には、時代とともに均一な形や安定した収量が見込める野菜が求められるようになり、その需要に応えるF1品種が普及するようになったことがあるようです。そんな中、伝統野菜を守りたい、有田に名産品を作りたいとの想いから、平成22年に戸矢地区の有志6名で「有田戸矢かぶの会」を結成。現在は会員5名で生産、採種、加工、販売を通して戸矢かぶをPRされています。

有田戸矢かぶの会の松尾啓子さんに畑でお話を伺いました。

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種を引き継ぐ

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9月。会員の方々による種まきの様子。

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今でこそ冷凍庫、冷蔵庫があるのが当たり前で、種の保存もできるようになりましたが、そんなものがない時代から現代に引き継がれてきた貴重な種。「よう引き継いでこらしたと思うごたんよね (今までよく引き継いでこられたと思うんですよね) 」と、話す松尾さんも幼い頃から戸矢かぶを食べていたのだそうです。戸矢かぶのような野菜は「固定種」と呼ばれ、長い年月をかけて土地の気候や風土に合うように選抜、淘汰されてきたもの。一世代限りで安定した品質の野菜ができるF1品種と明確に違うのは、できた野菜から種を取ればまた同じように野菜ができるというところです。以前、種を調べてもらったところ、かなり交配が進んでいたそうで、それを会員の方々が7年かけて安定させてきました。それでもたまに水菜のような葉が出てきたり、人参のような形になったりすることがあります。

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地道に、形の良いものだけを他の畑に移して、ネットで保護し、種を取ることを繰り返して品質の安定を図っています。そのため、会員以外の方から戸矢かぶの種を譲ってほしいと言われてもお断りしているそうです。

もっと身近に

これまでは、「有田戸矢かぶ」加工品開発にも意欲的に取り組まれていて、ふりかけや漬け物を作ってこられました。「為朝かぶら」もそのひとつ。菊の花のように切れこみを入れていく工程もひとつひとつ手作業なので大量生産はできません。やさしい甘みとクセになるやわらかい食感。ついつい手が伸びてしまいますよ!

「為朝かぶら」四季ありたにてお買い求めいただけます。

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守り継がれる伝統野菜

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できた野菜から種を採ってまた野菜を作って...この繰り返しが何十年、何百年と続き、守り継がれてきた伝統野菜「有田戸矢かぶ」。作る人が途絶えて種がなくなれば簡単に姿を消してしまいます。そんな中、今に至るまで戸矢かぶは大切に守られてきました。その地道な努力と次なる挑戦を今後もぜひご注目ください。

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(現在、ピクルスの商品化に向けて絶賛試作中!完成をお楽しみに〜!)

情報

有田戸矢かぶの会

お問い合わせ電話番号:090-4989-3123

ファームステーション四季ありた

「戸矢かぶ」や「為朝かぶら」のお買い求めは、棚田米や地元の野菜がたくさん並ぶ四季ありたまで。

所在地:佐賀県西松浦郡有田町仏の原丙756

営業時間:午前9時〜午後6時

定休日:日曜日、盆休み、年末年始

電話:0955-46-4700

まちづくりNPO法人

灯す屋

有田町を拠点に活動している、まちづくりNPO法人。 空き物件の活用や移住・定住のサポートなどを通して、まちの未来にあかりを灯します...

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