【唐津焼って、日常使いできますか?】佐賀のものづくりを生活に取り入れる運動、はじまる。(ニューノーマル「たべる」編)

EDITOR'S コラム 唐津市 暮らす

【唐津焼って、日常使いできますか?】佐賀のものづくりを生活に取り入れる運動、はじまる。(ニューノーマル「たべる」編)

地域のモノを無理なく生活に取り入れるには?佐賀発、モノの「地産地育」運動。

「なんもなか(=なにもない)」が口癖の佐賀の人たちにこそ伝えたい、地元に眠る地域資源。九州北部の筑後地域を中心に、地域のものづくりと文化を紹介するアンテナショップ「うなぎの寝床」が発見した、佐賀の知られざる魅力を紹介します。

すっかり久々の更新になってしまいました。改めまして、うなぎの寝床の渡邊です。よろしくお願いします。実はいま、うなぎの寝床では、佐賀のものづくりに携わるみなさんと一緒に、新たな挑戦を行っています。

これまで、作り手の技術・歴史・背景などを伝えることで、一人でも多くの方に地域のものづくりを知ってもらいたい......という思いで活動してきました。もちろん、その情報を伝え続けていくのは、とても大切です。しかし、どんなに「すごいな」「良いな」と思っても、実際にその商品を買い、自分の生活に取り入れられるのか?というのは別問題だったりしますよね。

そこで、今回佐賀県庁さんに機会をいただき取り組んでいるのが、「ニューノーマル」という活動です。直訳すると「新しい普通」。どうやって県民の皆さんに、地元のものを使ってもらうのか?どういうライフスタイルの中だったら使えるのか?「たべる」「はたらく」「いろどる」「あそぶ」「おもいやる」「くつろぐ」の6つのライフスタイルを切り口に、考えています。

佐賀県内あちこちで展開している活動の中で、出会った物や人、考えたことなどをお伝えしていきたいと思っています。まずは「唐津焼を日常に」をテーマに取り組んでいる「たべる」研究会のご紹介です。どうぞ!

20180907_01.jpg

選りすぐりの有田焼・唐津焼をはじめとした陶磁器の展示販売を行う専門店「ギャラリー壱番館」さんにて。

ちょっと敷居が高い、唐津焼。家で使っている人はどれくらいいるんだろう。

突然ですが、皆さんのおうちの食器棚には、どんな器が並んでいますか?私自身は、いろいろな窯元さんやお店で見つけた焼き物や作家物の器、素敵だなーいつか揃えたいなーと思いながらも、今はちょこちょこと買ったりするくらいで、とりあえず一人暮らしを始める時に安く買った器や、実家からもらってきた器などが雑然と並んでいます。

九州や佐賀の方だったら、家にある有田焼や唐津焼などを昔から使っている、という方も比較的多いかもしれません。しかし食器棚の奥にしまいこんであったり、特別な時だけに使ったり、ちょっと古臭い感じがしていたりする方もいるのではないでしょうか?

そこで今回、佐賀の陶磁器産地の中でも、土物で作家性が強く、料亭や茶器などちょっと敷居の高いイメージのある「唐津焼」に焦点を当て、現代の「たべる」ライフスタイルとの相性や、取り入れるハードルを下げるためにはどうしたらいいのか?ついて考えていくことにしました。

そんな私たちの、あーでもないこーでもない議論に柔軟にかつじっくりと耳を傾けてくださったのが、唐津の窯元である、健太郎窯の村山健太郎さんです。第一回目のたべる研究会の会場をご提供いただき、ものづくりの現場や作り手の思いを教えていただきました。

20180907_02.jpg 登り窯を前に、唐津焼の素材や作り方について教えてくれている、村山健太郎さん。

20180907_03.jpg

健太郎窯のギャラリー。凛とした佇まいと質感。晴れている時は唐津湾が見下ろせる。雨でも素敵。

何を残し、何を捨てるのか。唐津焼らしさを生む、アイデンティティとは。

唐津出身である村山健太郎さんは、大学でデザインを勉強するうちに、陶芸の道を志すようになり、唐津焼の川上清美さんに師事したのち、2008年に独立して窯を開きます。土も釉薬も主に天然原料にこだわり、唐津焼の伝統を踏襲しながらも、さまざまな素材や質感の実験をしながら作陶を続けています。

今回、健太郎さんをはじめとした唐津焼の作家の皆さんとお話ししている中で考えさせられるのは「そもそも唐津焼に日常使いは必要なのか?」という点です。

事実、唐津焼は高級料亭や茶道具などの需要がしっかりとあり、唐津焼に向き合うそれぞれの個性や作家性が、価値を高めている重要な要素です。大量生産ではないので割れても補充できない場合が多いですし、重ねてスタッキングすることも難しいので、食器棚の場所をとります。落として割ってしまうのでは無いか?と思うと、取り扱いも慎重にならざるを得ません。

そんな唐津焼を、現代的な「日常」の用途に合わせて作っていくのも、なんだか違和感があります。使う側の使いやすさばかりを追求していってしまったら、それはもはや「唐津焼」ではないのではないか?と。

それはまさに、健太郎さんが投げかけてくれた「唐津焼の何を残し、何を残さないのか?」という問いに集約されていて、唐津焼に限らず、どんなものづくりであっても考えていく必要がある問いだと考えさせられました。

20180907_04.jpg

まずは土をこねて、ろくろ等で形を作り出す。ひとつひとつ手作業。

20180907_05.jpg

焼きあがった器たち。自然の一部のよう。

日常に使えるかは、使い手の意識ひとつ。土地そのものが生活に溶け込む意味。

それでも今回のプロジェクトでは、「日常」というテーマに取り組む必要性や意義は、あると思っています。健太郎さんをはじめとして唐津焼の窯元さんたちも、最終的には本来の唐津焼らしさや古唐津を知ってもらうきっかけとして、しっかりと動線を使った上で、使うハードルのようなものを下げていく必要は感じていると話してくださいました。

これはある意味、作り手側の課題ではなく、使う側がどこまで創意工夫して使えるのか?だったり、伝える側がどういう提案ができるか?次第だったりもします。要は、使う側の意識次第でもあるのです。

たとえば、スーパーで買ってきたお寿司。パックのまま食べるのではなく、一手間かけて唐津焼のお皿に乗せるだけで、一気に高級感が増します。パスタや洋食などの料理も、意外によく合いますし、朝ごはんのヨーグルトやフルーツをのせても綺麗です。

何よりも、唐津焼は「土」でできています。いま生きる土地そのものから生まれたモノが、生活の中に溶け込み、存在しているということこそが、ある種の豊かさや美しさを生むのではないかと感じています。そういう意味では、何も特別なことではないのです。

20180907_06.jpg 唐津焼や他の器を、日常生活でどうやって使っているか、それぞれ共有しながら議論。

20180907_07.jpg 唐津「hanaはな家」で唐津焼の器でいただいたランチ

まとめ

そんなわけでニューノーマル「たべる」研究会では、「唐津焼らしい唐津焼」をどう日常で使っていくのか、リレー形式で使い回して記録・実験をしながら、食のプロデュースを行うフードコーディネーターの山倉あゆみさんと一緒に、広くみなさんへ提案できる方法を模索しています。

いままで、作り手の皆さんの思いや背景、歴史や技術にとても興味があった私ですが、このニューノーマルの活動を通して、一消費者としてどうモノを解釈しながら使うのか?という点についても、新たな発見を日々しています。

より多くの皆さんに、そんな気づきの機会や地域のものづくりを取り入れるきっかけを持ってもらえたらと思っています。今後はワークショップや展示イベントなども行なっていく予定ですので、ぜひ興味のある方はチェックしていてくださいね!

Photo credit(All photos): 藤本幸一郎

ニューノーマルHP : http://new-normal.life

うなぎの寝床
リサーチャー(広報企画)・通訳

渡邊 令

1989年東京都生まれ、ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス(LSE)社会人類学部卒業。その後福岡のポンプ会社で社長秘書を勤めた...

このEDITORの他の記事を見る

ページの先頭に戻る