羊羹を自由の象徴に。新しい"ものづかい"は、あなたの想像力次第。(ニューノーマル「おもいやる」編)

EDITOR'S コラム 有田町 知るイベント暮らす

羊羹を自由の象徴に。新しい

羊羹を自由の象徴に。新しい"ものづかい"は、あなたの想像力次第。

「良いものだけど、使えない」そんな本音に向き合ってみよう。

なんもなか(=なにもない)」が口癖の佐賀の人たちにこそ伝えたい、地元に眠る地域資源。九州北部の筑後地域を中心に、地域のものづくりと文化を紹介するアンテナショップ「うなぎの寝床」が発見した、佐賀の知られざる魅力を紹介します。

この半年間にわたり、佐賀の新しい"ものづくり"と"ものづかい"のあり方を考えてきた、「ニューノーマル」と名付けた運動に携わっています。伝統工芸やものづくりを使う上での「新しい普通」になりうる、佐賀らしいライフスタイルを考え、提案するプロジェクトです。

「佐賀」とだけ聞くと、ものづくりのイメージはあまりないかもしれませんが、佐賀は、有田・伊万里・唐津などの世界的に有名な焼き物はもちろん、ガラス、和紙、木工、刃物など、実はたくさんのものづくり産業に溢れています。

とはいえ「良いものとはわかってるけど......使えない」と本音では思っている人も多いのではないでしょうか?そんな人たちにも、佐賀のものを、地元のものを使ってもらうにはどうしたらいいのか?あーでもない、こーでもないと考えてきました。

その中で気づいたことは、作る側だけではなく、使う側にももっと想像力と工夫が必要だということ。

そこで、羊羹を食べまくってみたり、唐津焼をみんなで使い回してみたり、温泉でくつろいでみたり。私たち自身が「使い手」側に立って、楽しみながらいろいろ試した実験を通して、気づいたことをご紹介したいと思います。

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有田にあるセレクトショップ「bowl店長の高塚さんにお話を聞いた

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有田焼のクラシックなお盆や器。さあどうやって使う?

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伝統的な桶(おけ)もワインクーラーに変身する

"ものづかい"の創意工夫は、使い手次第。他人任せは楽しくない。

ニューノーマルは、作り手だけではなく、プロの使い手・売り手・伝え手など、ジャンルを超えてさまざまなプレイヤーに一緒に考えてもらいながら、「あそぶ」「おもいやる」「たべる」「くつろぐ」「はたらく」「いろどる」の6つのライフスタイルごとに進めてきました。

「おもいやる」研究会を率いていただいている、有田のセレクトショップ「bowl」の店長・バイヤーの高塚裕子さんは、使い手側である私たち消費者にもっと「創意工夫」の意識を持って欲しいという思いで、商品のセレクトやディスプレイをされています。

いまやメディアやSNSは情報で溢れ、商品にも「こんなライフスタイルが素敵」とか「こういう使い方が正解!」などの情報が付随しているものも多いです。でも本来、物には使い方の制限はありませんし、正解もありません。こうやって使ったら素敵かもしれない、あの料理に合わせてみよう、こういう場面で使おう、などと想像力を膨らませるのは、使い手自身です。

流行が画一的だった時代ではなくなった現代において、左右をみても、みんな違うライフスタイルを送っています。「一番の売れ筋商品は?」と聞いたところで、それが自分自身の生活に合うかどうかは別問題です。ものを作ることと同じくらい、ものを使うことも、クリエイティブな「思考」が存在するのだと、私自身も今回あらためて気づかされました。

そんな"ものづかい"の創意工夫や想像力を、どうやって実感してもらえるのか。今回ニューノーマルでは「おもいやる」というテーマで、佐賀の方にとってはおなじみの「小城羊羹」を題材に考えてみることにしました。

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羊羹が八百屋さんに並んでいたら......?

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羊羹をいろんな切り方してみました

羊羹解放運動、やってみたら、自分自身が自由になれました。

皆さんは普段から羊羹は食べられるでしょうか?私自身は実はちょっと苦手です。味は好きなので、一口なら美味しくいただけるのですが、たくさん食べるとちょっと重たく感じてしまいます。丸々一本お土産などでいただいてしまうと、食べきれる自信がありません。

しかし今回、bowlの高塚さんは「羊羹を解放してあげましょう」と提案してくれました。八百屋さんで買う人参のように、スーパーで買うお肉のように、どうにでも調理・加工することのできる「自由な素材」として捉えてみることにしたのです。

まずは羊羹の切り方から。サイコロ切り、短冊切り、角切り、乱切り、薄めスライス、型抜きなど、いろいろな切り方を試してみました。そうすると、一気に羊羹の違う姿が想像できるようになりませんか?

サイコロ切りの羊羹は、たとえば朝ごはんのグラノーラに入れてみたら?薄めスライス羊羹は、たとえばバターと一緒にパンに挟んで焼いてみたら?角切り羊羹は、夜のおもてなしパーティのときのおつまみとして、クラッカーとクリームチーズと合わせてみたら?

......かなりの量の羊羹をみんなで試食し(若干食べ過ぎて気持ち悪くもなりながら)、いろいろな食べ方を研究し、これは美味しい!と思えるメニューがいくつか誕生しました。これはあくまでも私たちが考える「羊羹を〇〇してみたら?」の仮想現実ですが、そこには羊羹だけにとどまらない、"ものづかい"のヒントが隠されていると思います。

「こう使わないといけない」「こう食べないといけない」という固定概念から、私たち自身がまずは自由になること。羊羹を、砂糖と小豆と寒天からできている、黒くて甘いかたまりの素材として捉え直し、形や使い方や楽しみ方を、もう一度自分自身の頭で考え直してみること。何より、それがとても「楽しいこと」であることに、今回私は気付くことができました。

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羊羹バターサンド。美味しいです。

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羊羹グラノーラ。甘さ控えめなグラノーラにぴったり。器は有田焼。

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羊羹をクラッカーで。クリームチーズ、粒胡椒、マスカルポーネ、ドライイチジクなど、おいしい組み合わせをたくさん発見。

羊羹で人間関係を練り直そう!変幻自在のつなぎ役。

ちなみに「羊羹」というのは、「羊」の「羹(あつもの)」と読んで字のごとく、もともと中国では羊の血を煮こごりのように固めた料理であったこと、皆さんご存知だったでしょうか?それが点心として、禅宗とともに日本に渡ってきて、精進料理として肉の代わりに豆を使うようになり、茶文化とともに砂糖を加えて菓子として食べられるようになったことで日本の羊羹は生まれました。

小城市の名産「小城羊羹」は、江戸時代に海外と唯一交易のあった長崎・出島とつながる長崎街道、通称「シュガーロード」沿いにあったこともあり、当時盛んに輸入されていた「砂糖」が手に入り、独特の菓子文化が発達したことから、多くの羊羹屋さんが生まれたといいます。

まさに、羊羹は佐賀と海外との交易を通し、生まれたお菓子なのです。そしていまでも手土産の定番として、人と人との関係をつなぐ役割があります。いろんな形に変容できる羊羹だからこそ、おもいやりやおもてなしのシーンの中で使いこなせる「余白」があるのかもしれません。でもこれは、羊羹だけにとどまらず、どんなものや技術であっても、同じはずです。

包み方や渡し方なども、まだまだ、いろいろな可能性があると思っています。これから2月の展示会に向け、さらに面白い「仮想現実」の提案ができるように準備していますので、お楽しみに!

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サイコロ切りした羊羹。自由に素材として捉えたら?

まとめ

こんなものづかい"の実験を、佐賀のあちこちで行なっている、ニューノーマル。私が改めて気づいたことは、人に頼らず、自分自身の思考や感覚を磨き、もっと楽しんでモノを使っていいんだ、ということでした。より上手な人たちに学びながら、まずは試してみることが、自分の自信に繋がるのかなとも思います。

そんなきっかけをより多くの方に感じてもらうべく、2月には佐賀県内各地で展示会とイベントを多数開催します!今回紹介した羊羹のメニューなども、実際に食べていただける会場やイベントもありますよ。

伝統的なものづくりと地域文化を、もっと現代の暮らしに取り入れてみたら......?」今までの固定概念を一度崩し、あらためて足元を見つめ直して、佐賀独自の豊かな暮らしを創造していくきっかけを体験してもらえるはずです。ぜひご参加お待ちしています!

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bowlでは期間中ニューノーマルの展示企画展や、「有田のおもてなし羊羹バー」を開催します!

ニューノーマル 展

会期:2019年2月1日(金)▷ 2月11日(祝・月) 入場無料

メイン会場:佐賀県庁1F県民ホール

住所:佐賀県佐賀市城内1丁目1-59

WEB:http://new-normal.life/

●販売について

販売会場:JONAI SQUARE

住所:佐賀県佐賀市城内1丁目6-番 10号 サガテレビ1F

●ワークショップ・トークイベント

2.1 金 オープニングトーク 佐賀の『ものづかい』―つかい手が生み出す、新たなものの可能性―

2.2 土『たべる』唐津焼のモリモリ盛り付けパーティ

2.3 日『あそぶ』世界で一つだけの隠れ家づくり ―佐賀の素材をあそびたおそう―

2.8 金『くつろぐ』温泉宿でつくるオリジナルお香

2.8 金『おもいやる』有田のおもてなし羊羹バー

2.9 土『いろどる』紙とくらしと植物と ―足元の草花でくらしにいろどりを―

2.10 日『はたらく』 佐賀を耕し食べる会 ―プチ菜園生活のススメ―

2.11 月・祝 / クロージングトーク ものづかいから見る、未来のデザイン

FB:https://www.facebook.com/NewNormalSaga/

Insta:https://www.instagram.com/newnormal.saga/?hl=ja

うなぎの寝床
リサーチャー(広報企画)・通訳

渡邊 令

1989年東京都生まれ、ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス(LSE)社会人類学部卒業。その後福岡のポンプ会社で社長秘書を勤めた...

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