『JONAI SQUAREのMONPE』がはじまる! もんぺ用の新しい久留米絣を開発しました!

『JONAI SQUAREのMONPE』がはじまる! もんぺ用の新しい久留米絣を開発しました!

佐賀にもんぺがやってくる!

「なんもなか(=なにもない)」が口癖の佐賀の人たちにこそ伝えたい、地元に眠る地域資源。九州北部の筑後地域を中心に、地域のものづくりと文化を紹介する地域文化商社『うなぎの寝床』の視点で、佐賀周辺の魅力をお届けします。

 

久しぶりの投稿となりました。『うなぎの寝床』の渡邊です。

EDITORS SAGAではお知らせしてきませんでしたが、実はこの2年、私たちが毎年、佐賀ににょろにょろと出没していたのをご存じでしょうか?

......そうです、サガテレビ1階のJONAI SQUAREで開催されてきた、もんぺ見本市! 福岡の伝統的な織物である『久留米絣(くるめかすり)』を伝え、体感してもらうためのイベントです。

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このイベントが今年は『JONAI SQUAREのMONPE』として、また開催されることとなりました!5月14日(土)からサガテレビ1階 JONAI SQUAREでスタートします。

実は今回、このイベントに合わせて、もんぺ用の新しい久留米絣の生地が3つ開発されました!それが、こちらです!!

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どことなく、佐賀らしいストライプ模様だともいえる、この久留米絣の生地。いったいどんな思いで、どんな作り手と、どんな経緯で開発していったのか......。その裏側をご紹介したいと思います。

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うなぎの寝床はなぜもんぺを作っているのか?

そもそも、私たち『うなぎの寝床』が、なぜもんぺを作るようになったのかを、少しご説明した方がいいかもしれません。

私たちが活動する福岡県南部の筑後地方では、江戸後期より久留米絣という綿織物が織られています。最盛期には300件近くの織元があったのですが、現在では20件弱と毎年どんどん減ってしまっている状況です。

かつては日常の着物として着られていたのですが、その需要は減っていってしまい、これからは普段着の洋服として、いかにたくさんの方に魅力を伝えていけるか、着てもらえるようになるかで、存続できるかがかかっているのです。

そのために『うなぎの寝床』で作り始めたのが「もんぺ」なのです。

戦後、農作業着として定着したもんぺを、現代のワークパンツとして再解釈しなおして、老若男女、いろんな方に再び久留米絣を身につけてもらうきっかけになれば、という思いで、地域の織元さんたちと取り組み始めました。

久留米絣は、とにかく通気性のよいやわらかな着心地が、最大の強みだと私たちは考えています。約70年前の「シャトル織機」という織り機で織られる生地は、現代の高速織機では出せない風合いが残っているのです。

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しかし、久留米絣の織元さんに「最大の特徴は?」と聞くと、もしかしたら違う答えが返ってくるかもしれません。なぜなら、久留米絣の絣(かすり)というのは、もともと「柄を作る技法」のことをいうからです。

糸を部分的に"くくって"(縛って)、染めて、解いて、白く残ったところが柄になる。とても難解な設計図をもとに、"くくるところ"を計算し、30にも及ぶ手仕事満載の工程でできあがります。

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とても手間がかかりますが、プリントでは絶対に出せない、かすれたような独特な柄がなんとも言えない味わいを生み出す織物なのです。

庶民の日常に溶け込んでいた「縞(しま)」を再解釈してみた

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しかし、今回、佐賀でのイベントチームの皆さんと一緒に開発した生地は、あえてこの絣(かすり)技法は使わない方法で生み出されました。

というのも、やはり日常着としてきてもらうには、普段ばきしやすい柄でないと、そもそも手にとってもらう機会が減ってしまうから。さらに絣生地は工程がとてもかかる分、値段もどうしても高くなってしまいます。

そこで今回はあえて、筑後地方でも伝統的に織られていた「縞(しま)」模様を再解釈してみよう、というテーマでプロジェクトが進められました。

縞(しま)は、今でいえばいわゆるストライプ柄、ということですが、江戸時代から庶民の日常着として着られていました。昔は地方では特に、自分たちで着るものは、自分たちで織るのが当たり前。女性は機織りができないと嫁にいけないとまで言われていたのです。

たて糸もしくはよこ糸に、さまざまな色を並べることで、作り出される縞模様。その配色や本数によって、柄のパターンは無限大です。

どういうデザインにしようか......と悩んだ時に昔の女性たちが眺めていたのが、家に代々残されていた「縞帳(縞手本)」です。

小さなハギレを貼り込んで見本帳にして、どんな色や本数で作るのか、メモしたりしていました。気に入った柄を見つけて、追加していったりもしていたでしょう。

そうやって家ごと、地域ごとに、代々伝わる「縞模様」がかつては存在していたわけです。世界的に見れば、スコットランドで氏族ごとに柄が異なるタータンチェックなども、似たようなところもあるといえるかもしれません。

そんな、人びとの生活のなかに溶け込み、面白い文脈のある「縞」を久留米絣の織元でも、絣を知ってもらう入り口として作っていこう!という思いもあり、今回の生地開発がはじまったのです。

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オリジナル生地開発の現場に潜入!続きは後編で。

いざ作ろう、ということになると、久留米絣の織元に相談しなければなりません。

今回、ご相談したのは、福岡県筑後市にある『久保かすり織物』さん。数ある織元の中で、久保さんにご相談することになった理由は、工房の中にありました......。

次回、後編では開発してくださった、『久保かすり織物』さんへの潜入レポートをお届けします。どうぞお楽しみに!

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イベント情報

イベント名 JONAI SQUAREのMONPE
公式サイト https://jonai-square.jp/shop/20220513_1065.html
日程 5月14日(土)~6月26日(日)
場所 JONAI SQUARE(サガテレビ1F)

うなぎの寝床
リサーチャー(広報企画)・通訳

渡邊 令

1989年東京都生まれ、ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス(LSE)社会人類学部卒業。その後福岡のポンプ会社で社長秘書を勤めた...

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