「女性が消防士として働く」って、どんな感じ?
消防や救急というと、「男性の職場」というイメージを持つ人も多いかもしれません。実際に男性職員の割合が高いことも事実です。
では、その中で働く女性たちは、どんなきっかけでこの仕事を選び、どんな毎日を過ごしているのでしょうか。
今回集まったのは、佐賀県内の消防本部で働く5人の女性職員です。
入職3年目の若手から勤続20年のベテランまで、年齢もライフステージもさまざま。消防の仕事を選んだ理由や実際に働いて感じたこと、仕事のやりがいやこれから目指したい姿について、率直に語ってもらいました。
座談会メンバー
大塚 千暖さん(杵藤地区広域市町村圏組合消防本部)
入職3年目。予防係として書類審査や防火指導、温泉旅館などの立入検査を担当する。消防隊・救急隊も兼務しながら、救急救命士資格の取得を目指している。
樋渡 桃香さん(伊万里・有田消防本部)
勤続6年目の救急救命士。消防一課消防係に所属し、統計調査や消防団業務を担当する一方、24時間勤務で救急車や消防車にも乗務する。元自衛官。
中尾 幸恵さん(唐津市消防本部)
勤続13年目。研修広報係として職員研修や公式SNSの運営、消防統計などを担当する。10年間の現場経験を経て、現在は組織を支える立場で活躍している。
岡 望さん(佐賀広域消防局)
勤続18年の救急救命士。現在は日勤救急隊として救急車に乗務しながら、3人の子どもを育てる母でもある。子育てと現場活動の両立に取り組んでいる。
福島 美沙子さん(鳥栖・三養基地区消防事務組合)
勤続20年の救急救命士。総務課で表彰や福利厚生、研修、条例等の改廃などを担当する。日勤救急隊も兼務し、現場と事務の両面から組織を支えている。
ギャップあり!? 入職前のイメージと実際のところ

皆さんが入職される前は、職場にどんなイメージがありましたか? 実際に働いてみて感じたギャップがあれば教えてください。
大塚さん-
私は、入職前は「消防といえば体育会系」というイメージがありました。実際には、訓練や出動の時は想像通りの力強さがありますが、それ以外は皆さんとても穏やかで優しいんです。
私の部署では職員のための食事づくりもするのですが、男性の先輩たちは料理がとても上手で手際も良くて。料理経験がほとんどなかった私にも丁寧に教えてくれて、「ギャップ萌え」じゃないですけど、皆さんの人間的な魅力を感じました。
樋渡さん-
私はもともと自衛隊にいたので、男性が多い環境には慣れていました。驚いたのは、男性職員の皆さんが細やかに気を遣ってくれること。重い荷物を持とうとすると「持つよ」と声を掛けてくれるんです。もちろんありがたいんですが、「私も持てますよ」と思うこともあって(笑)。
なので、自分でできることは自分でやりますし、難しい時は素直にお願いするようにしています。そうやってお互いにコミュニケーションを取りながら、今はちょうどいい距離感で働けています。
中尾さん-
私が入職した時は、先輩女性職員がお二人とも産休・育休に入っていて、実質的には私一人だったんですが、周りの職員も気さくに接してくれて、自然と馴染むことができました。今思えば、消防学校生活での半年間も女性一人だったという経験が、馴染めたきっかけにつながっているのかもしれません。
岡さん-
私、佐賀広域消防局で二人目の女性職員だったんです。今は女性職員用のスペースやシャワー室も整っていますが、当時はまだそういう設備がなくて。仮眠室もなかったので、救急待機室の一角で訓練用の人形の隣で寝たり(笑)。今振り返るとびっくりしますが、本当に環境は変わったなと思います。
福島さん-
意外というか嬉しかったのは、男性職員の皆さんが、女性だからではなく一人の職員として接してくれたことです。皆で協力して、困った時はみんなで支え合う。性別ではなくチームとして動いている感覚が心地よかったですね。
24時間勤務ってどう? メリットとデメリット

消防の働き方の特徴の一つが24時間勤務です。皆さんも経験されているそうですが、実際どうですか?
岡さん-
私が一番メリットに感じていたのは、平日に自由な時間を使えることですね。隔日勤務をしていた頃は、非番の日にスノーボードやダイビングに出かけていました。平日は道も混まないし、人も少ない。趣味を思い切り楽しめるのは大きな魅力でした。
一方で、救急隊は夜間の出動も多いので体力的にはけっこう大変。若い頃はなんとか乗り切れていましたが、今はちょっときついかも(笑)。
中尾さん-
たしかに健康面を考えると、日勤は良いなと思います。規則正しい生活ができますしね。
でも24時間勤務は一年分の勤務予定が分かるので、プライベートの予定が立てやすいんです。有給休暇を組み合わせれば5連休になることもありますし、旅行もしやすい。平日に銀行や役所へ行けるのも意外とありがたいですね。
大塚さん-
私も、自分がやりたいことに時間を使いやすいところが好きです。ジムに行ったり買い物に行ったり、人が少ない時間帯を選べるのは快適ですね。逆に、平日休みが多い分、職場が違う友人と予定を合わせにくいのは少し悩ましいところかも。
樋渡さん-
趣味を楽しむには、24時間勤務は意外と向いていますよね。私は登山やマラソンが好きなのですが、連休も取りやすいので、思いきり体を動かした後にしっかり休んでから次の勤務に臨めるんです。
実際に登山で鍛えた体力が救助活動に役立ったこともあって、趣味で培ったものが仕事にもつながっていると感じます。
福島さん-
私は子育て中、平日に家のことを進められるのが助かりました。24時間勤務で疲れて帰っても、その次の日は休みなので「今日は休んで、明日やろう」と切り替えられるんです。大変なこともありますが、メリハリをつけやすい働き方だと思います。
結婚、子育て──ライフステージの変化と働き方
結婚や子育てなど、ライフイベントを迎えた時はどのように働き方を選んできましたか? 職場の制度を利用した経験もあれば教えてください。
岡さん-
私は3人の子どもがいるのですが、子育てをしながらも「現場に戻りたい」という思いがずっとありました。ただ、当時は日勤というと総務や予防など、現場を離れた部署が中心だったんです。
そんな時に全国の事例を調べてみると、日勤救急隊を導入している消防本部がたくさんありました。
そして今年4月、佐賀広域消防局においても日勤救急隊の運用がスタートし、復職と同時に希望していた部署に入ることができました。子育てと両立しながら、一番やりたかった仕事ができているのは本当に嬉しいです。
福島さん-
私は2人目の子どもを出産した後に育児休業を取得し、復帰後もしばらくは短時間勤務で働いていました。最初は時間になったら帰ることに少し申し訳なさも感じましたが、無理をしない働き方を選んで良かったと思っています。
また、私たちの職場には年に一度、勤務形態や配属の希望を申告できる制度があります。私自身も今、希望していた日勤で毎日勤務をすることができていて、職員の声をしっかり受け止めてもらえる環境だと感じています。
中尾さん-
私は結婚を機に、勤務地の唐津市から小城市へ引っ越しました。本来であれば居住地の条件がありますが、特例という制度を利用して小城市から通勤しています。
子どもが生まれてからは保育園の送迎との兼ね合いもあり、時短勤務を利用しています。また、不妊治療をしていた時期には、夫と生活時間を合わせるために日勤へ変更してもらったりもしていました。制度があるだけでなく、それを使いやすい雰囲気があることも大きいですね。
大塚さん-
私はまだ本格的に制度を利用した経験はなくて。ただ、生理休暇などは今後一番身近なものになるかもしれないなと思っています。
体調が優れない時には、上司が出動の少ない隊へ配置を調整してもらえることもあります。女性専用の仮眠室もあって、体調が悪い時に少し休めるのはありがたいですね。
樋渡さん-
私は生理痛がかなり重い体質で、体調が厳しい時もあります。ただ、そういう体の悩みは人によって違うので、理解を得るのが難しいと感じたこともあって。なので、制度を整えるだけでなく、気兼ねなく活用できる環境づくりも大切なんだと感じています。
まだ私自身も道を切り拓いている途中ですが、これから入ってくる後輩たちが「働きやすいな」と感じられる職場にしていけたら嬉しいですね。
それぞれの想いを胸に、あの日憧れた姿へ

皆さんがこの仕事を選んだきっかけと、これから目指したい姿を教えてください。
岡さん-
私は小さい頃、スポーツ中にケガをした時に手当てをしてくれた看護師さんに憧れたのが最初のきっかけでした。それで看護の学校へ進んだのですが、実習を経験する中で、自分は病棟よりも現場で人を助ける救急の仕事がしたいんだと気付いたんです。
だからこそ、どんな現場でも一歩踏み出せる人でありたい。そして、体を助けるだけでなく、患者さんやご家族の心にまで安心を届けられる救急隊員になりたいと思っています。
中尾さん-
私が消防を目指したきっかけは、子どもの頃に目撃した交通事故でした。その時に活動していた救急隊の姿がとても印象に残っていて、高校卒業後は救急救命士の専門学校へ進学し、資格を取得して消防へ入りました。
今は広報や職員研修などを担う部門で働いていますが、消防の仕事は現場だけで成り立っているわけではないんだと実感しています。これからは、自分が経験してきた現場を支える立場として、組織に貢献していきたいです。
大塚さん-
私が消防士を目指したきっかけは、中学生の頃に母が救急車を呼ぶ場面に立ち会ったことでした。その時に来てくださった救急隊員の中に女性職員がいて、「かっこいいな」と思ったんです。
実は、その時に母を助けてくださった方が今は同じ職場の先輩なんですよ。当時のことをお話しして、「あの時助けてもらったんです」と伝えました。
今の目標は救急救命士の資格を取得すること。できることの幅を広げて、もっと多くの人を助けられるようになりたいです。
樋渡さん-
私は、東日本大震災の報道を見たことをきっかけに、「人を助ける仕事がしたい」と思うようになりました。
その後、双子の姉が突然倒れたことがあったんですが、自分には何もできなかったことが悔しくて。「大切な人を助けられる力を身につけたい」という思いが、救急救命士を目指すきっかけになりました。
将来的には航空隊にも挑戦してみたいと思っています。航空隊もまだ女性が少ない分野ですが、男性も女性もいることで、患者さん一人ひとりに合わせた対応ができると思うんです。これからも自分らしいキャリアを模索しながら、いろいろなことに挑戦していきたいですね。
福島さん-
私も進路を考えていた時に、「誰かの助けになる仕事がしたい」と思ったのが原点です。そんな時に知人から救急救命士という資格を教えてもらい、その道を目指すことになりました。
今は総務課の業務に携わっており、以前とは違う役割を担っています。これからは「縁の下の力持ち」として、現場で頑張る職員たちを支える存在でありたいです。
私たちが今働きやすいと感じられるのも、先輩たちが道を切り拓いてきてくれたおかげです。そして、もちろん時代が変われば、新しい課題も出てきますよね。だからこそ、今度は私たちが次の世代のために少しずつ環境を整えて、そのバトンを渡していけたらいいなと思っています。
コラム:私のカバン・引き出しの中

普段はなかなか見ることのない、消防職員のカバンや引き出しの中。座談会のあと、「何が入っているんですか?」と聞いてみると、それぞれの人柄が見えるアイテムが次々と出てきました。
まず目を引いたのは、引き出しの中に入っていた握力トレーニング器具。かなり本格的なタイプで、日頃から体づくりを意識している様子がうかがえます。
続いてカバンの中をのぞかせてもらうと、キャラクター付きの絆創膏や虫刺され用のパッチを持ち歩いている方が。「ついつい母親目線で選んでしまいます」と笑います。子どものミニカーがなぜかいつもカバンに入っている、という方もいて、思わずほっこり。
昇任試験に向けた勉強道具を持ち歩いている方もいました。試験対策の本だけでなく、自分で録音した学習データを通勤中に聞いているそうで、その熱心さが印象的でした。
ぬいぐるみやキャラクター付きのボールペンを忍ばせている方は、救急現場で子どもたちを安心させるためだと教えてくれました。
ポーチからハンドクリームやリップクリーム、日焼け止めが次々と出てきた方も。「これだけじゃなくて、日焼け止めは常に4本くらいあります」とのことで、「日焼け対策には本気です!」と、皆さんの笑いを誘っていました。
仕事への思いや家族とのつながり、ちょっとしたこだわりまで。カバンや引き出しの中には、その人らしさがしっかり詰まっていました。
最後に
今回お話を聞いていて印象的だったのは、皆さんが女性としてというより、一人の消防職員として真っすぐに仕事と向き合っていることでした。
現場で人を助けたいという思いを持ち続ける人。子育てと両立しながら働く人。現場を支える立場で力を発揮する人。それぞれが自分らしい道を歩んでいます。
消防の仕事は決して楽しいことばかりではありません。それでも、自分に合った働き方を選びながら目標に向かって挑戦を続ける皆さんの姿は、とてもいきいきとして見えました。
今回の座談会を通して感じたのは、働き方にも生き方にも正解は一つではないということ。
「こんな働き方もあるんだ」「こんな未来もいいかもしれない」
そんな新しい可能性が、皆さんの背中の向こうに見える気がします。

| 佐賀広域消防局 | 公式Instagram:@sagakoiki.fd_119 |
|---|---|
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| 杵藤地区広域市町村圏組合消防本部 | 公式Instagram:@fd_kito119 |
| 鳥栖・三養基地区消防事務組合 | 公式Instagram:@tosumiyaki.fd |
| 伊万里・有田消防本部公式サイト | こちら |
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