さまざまな方にとってやさしいお店を紹介している佐賀県の「さがすたいる」のウェブサイト。その登録掲載店で、鹿島市にカフェとコインランドリーを一緒に運営し、地域とつながりを作っているという施設があると聞き、お伺いしました。
自然に交わり、広がっていく場所
鹿島バイパスと国道444号線に挟まれた立地。鹿島乙丸郵便局の向かい側にある『多機能型支援センターそら』の一角に『そらのカフェ』と『そらのランドリー』はあります。『社会福祉法人みらいのそら』が就労継続支援B型の新しい形でオープンし、どなたでも利用できるお店です。
『そらのカフェ』に入ると、天井が吹き抜けになっていて開放感に包まれます。
予約をしていたので、席に着くと、日替わりランチプレートが運ばれてきました。
この日のメニューは鶏肉のトマトクリーム煮をメインに野菜を中心とした副菜やスープ。ご飯は三穀米です。手間暇がかかっているお料理で、味つけやボリュームにも大満足でした。
カフェでのランチは、前日までの完全予約制で日替わりメニュー(税込700円)のみ。ドリンクはコーヒーや自家製レモンスカッシュなど、別に注文できます。
センター長の宮﨑恵子さんは「就労の利用者さんの給食が、とてもおいしくて、これをランチに提供しようという流れになりました。また、これをお弁当にしたら、テイクアウトというニーズに合い、注文や配達が増えて、近隣の会社の方や近所のお年寄り、ご病気で外出をしづらい方などが注文してくださいます」と話します。
栄養士さんが工夫を凝らした献立をもとに地産地消を意識したヘルシーな手作りのお弁当は次第に評判を呼び、カフェの認知度も上がってきたようです。
カフェにはコインランドリーが併設。洗濯乾燥機や2段式乾燥機、靴洗い・乾燥機もあり、マルチ端末で管理されています。画面上で精算してランドリーを操作できるほか、ポイントが貯まるお得なプリペイドカードもあります。
『社会福祉法人 みらいのそら』の理事長・寶泉玲子さんによると、キーワードは"地域"。
カフェやランドリーが地域の中に自然と溶け込んで、まず、利用者さんの個性を知ってもらうことを願ってスタートしたと言います。理解してもらう前に"知ってもらう"ことが大事。近隣の方には「こういう個性の利用者さんがいるんだ」と知ったうえで、積極的に関わってもらえていると感じるそうです。
ここで就労支援のお仕事のマッチングにつながった例も!毎日お弁当を配達している近所のラーメン店から、清掃のお仕事を依頼されたり、施設で作った雑貨を近くの郵便局で販売してもらえるようになったという例も。知っていくことで理解が進み、お互いにいい協力関係が生まれているようです。
働く姿が安心と喜びに
この日は、カフェに通う女性・峰松恵さんと孫の虹太くんの姿もありました。峰松さんは『そらのカフェ』の一番の応援者です。家族も多いためランドリーにはよく訪れ、その間にカフェも利用しているとのことです。
「雨の時にはここに来て、ランドリー回しながら、買い物して戻って来て。スタッフさんもいて清潔感があって利用しやすいですよ。自分の日常の中にあって、安心できる場所です」。
虹太くんは「こうちゃん」と呼ばれ、みんなのアイドル的な存在。連れて来ると遊んでもらい、カフェのソフトクリームが食べられるのも楽しみにしているそうです。
「ここでは、その人の特性に合わせて働かれているみたいです。何でもきちんと貼らなくては気が済まないという特性がある人は、シールを貼る作業を担当していたり。自分にあった仕事というのがいいなあと思います。私はみんなが働く姿を見ているだけで嬉しいです」と峰松さん。
峰松さんがここに来られているのは、お店の利用だけでなく、自身のリフレッシュの場であり、そして「障がいを持っている人たちが街なかでも自立していけるように、こういう取り組みが進んでいけば、とてもいい世の中になる」そういう思いがあるからです。また、お孫さんたちには「どんな人々とも垣根をつくらない子どもになってもらいたい」という願いがあります。
『みらいのそら』さんが、カフェとランドリーを始められたのも、就労支援施設の利用者さんの得意なことに合わせて、仕事の選択肢が増やせることを狙っているそうです。
一歩踏み出して気づいたこと
昨年は新たな悩みにもぶつかりました。比較的若い年齢の利用者さんが多い事業所に、半身が不自由な65歳の方の就労の利用申込があったとのこと。迷いもありましたが、11月から受け入れ、今では仲間として一緒に働かれているそうです。
「『若い人の声を聞いたり、活動している様子をみたりするだけで元気になる』とその方が話しているのを聞いて、わたしは受け入れることでお互いが吸収できることがあることを改めて感じました。利用者さん同士の会話は他愛ない会話かもしれない。でもそれを聞いてもらえるだけでもお互いの存在の尊さがあると思いました。これからは、いろいろな人が混じり合う多様性の時代。一つ踏み出してよかったなと思っています」。
宮﨑さんは教員として教育現場に長年携わり、退職後、現在の福祉の世界へ。「知らない用語や初めての経験も多く、新鮮で楽しい」と話します。多機能型支援センターのリーダーとして働く宮﨑さん。先生がみんなに温かく語りかけるような話し方、きっと利用者さんにとっても伝わりやすいと思います。
就労支援の利用者さんは20人の定員に対し、今年4月で8人になる予定。地域に根ざしたこの拠点では、何らかのハンディをお持ちの方も生き生きと働く姿があります。青空のような明るい気分になれるカフェやランドリーに足を運んでみませんか。
まとめ
最初は認可外保育園からスタートした『社会福祉法人みらいのそら』。細やかに子どもたちに目を配る中で、児童発達支援や放課後等デイサービスの施設が生まれ、今ではこの『そらのカフェ』『そらのランドリー』など、就労継続支援B型事業所を含む多機能型支援センターも運営されています。
事業は多岐に渡るようですが、「全部つながっています」と理事長。それを聞いて、利用者さんが幼少期だけでなく、大人になっても選択肢を持って働ける、未来に広がる場があると示す運営の方の責任感や優しさを感じました。
「これならできる」「これならやってみたい」と思える仕事の事例がどんどん増えて、だれもが地域の中で働きながら関わり合える世の中になっていけたら。カフェやコインランドリー、そしてソフトクリーム。皆が立ち寄りたくなるこれらを拠点に、この地域の方と一緒に『みらいのそら』を作っていかれると地域全体がもっと楽しくなると思います。
施設情報
そらのカフェ・そらのランドリー
住所 | 〒849-1304 佐賀県鹿島市中村1990 |
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詳細情報 |
TEL:0954-68-0235 <そらのカフェ> <そらのランドリー> |
地図 |
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ライター 髙橋香歩