2022年3月13日(日)、『さがすたいるフェス』のイベントの1つとして『レッツさがすたいるトーク』が行われました。
今回は「佐賀からまきおこすやさしさのムーブメント」をテーマに、"誰もが暮らしやすい、人にやさしいまちにしていくために私たちにできること"を、ゲストや参加者、動画の視聴者とともに考えていくというもの。
ゲストとして、佐賀県知事・山口 祥義(やまぐち よしのり)氏、『〇〇な障がい者の会』会長・内田 勝也(うちだ かつや)氏、障害福祉サービス事業所『PICFA(ピクファ)』施設長・原田 啓之(はらだ ひろゆき)氏、『OK COFFEE Saga Roastery』オーナー・福山 徹(ふくやま とおる)氏が登壇。ラジオDJなどでお馴染み、サトユミ☆さんの司会進行のもと、登壇者4名がフリートークをするという形式で行われました!
"みんなハッピーになってほしい" それが『さがすたいる』の原点
まずは、山口知事より『さがすたいる』への想いや、取り組みに至った経緯について話が始まりました。
「佐賀で言えば81万人が生活していて、1人1人に個性がある。"みんなハッピーになってほしいなぁ"っていうのが『さがすたいる』の原点。例えば、性別、年齢、国籍、障がいの有無など、いろんな人が共存していると思うんですが、みんながそれぞれの姿で自然な形で支え合ったり、盛り上げていったりと、そんな社会を作れないかなとずっと思っていたんです」(山口知事)
そして何よりも大事なのが、「ソフト面」と山口知事。例えば、障がいを特別なものとして捉えるのではなく「それぞれの個性にしたがって、自然と助け合うような、そういうスタイルがまちの中でできれば」といいます。段差をなくすなどの「ハード面」の整備ももちろん大事だが、「みんなの気持ちの中にお互いに支え合うやさしさが自然な形でできたら素晴らしい」と。
「『さがすたいる』は、みんなで少しずつ毎年、毎年作りあげていければいいなって思っています。『もうちょっとここ工夫したら』とか言って。『もっとみんなが楽しめるように』っていうのがポイント。チャレンジですね! 肩の力を抜いてやってみて」(山口知事)
知識を覚えるのではなく、困っている人たちがいたら自然と助ける。気軽に声をかけ合える雰囲気ができることを願っています。
ゲストによる自己紹介。『さがすたいる』に対する想い
『〇〇な障がい者の会』会長/内田 勝也氏
生まれつき、骨がもろく骨折がしやすい「骨形成不全症」という病気を持って生まれ、これまで150回を越える骨折と20回を越える手術を繰り返しながら、車椅子での生活を送っている内田さん。 "障がい"をマイナスではなくプラスに捉えて、何か活動をしていきたいという思いから、2013年に市民活動団体『○○な障がい者の会』を立ち上げます。障がい者の情報発信という形で毎週月曜日の夜7時からラジオ放送も行っています。
「ハート」と「ハード」。この2つのバリアフリーをどんどん広げていきたい。
内田さんは、市営バスの乗車体験会を共同で取り組んだり、花火大会をみんなで見るといったイベントも開催。外出が厳しい現状だが、当事者も外に出る機会を作りたいという。
「みんなが笑顔で暮らせるために、『ハード面』のバリアフリーも、もちろん大切ですが、『ソフト面』も重要。私は、『ハード』と『ハート』、この2つのバリアフリーをどんどん広げてほしいと思います」(内田氏)
現在、県と一緒に『さがすたいるプロジェクト』の活動を行っているという内田さん。自分たちの目線で感じたことなどを伝え、"みんなで一緒に暮らしやすいまち"を作っていきたいといいます。
障害福祉サービス事業所『PICFA』施設長/原田 啓之氏
2017年に、『医療法人清明会鹿毛医院』内に就労継続支援B型の施設『PICFA』を立ち上げ、施設長として勤務。利用者の創作活動が、「アート」だけでなく「人生」にも広がるよう活動。様々な企業等とのコラボや、観光デザイン等、多岐にわたります。『PICFA(ピクファ)』の名の由来は、「picture(絵画)」と、「welfare(福祉)」の造語。"アートを仕事に、福祉的な支援もする"。病院の中にできた、日本で初めての障がい者施設だといいます。
福祉施設が、地域の「資産」になるような動きを障がい者施設で出来たらいい
知的障がいの兄を持ち、親の苦悩を見ながら育ったという原田さん。高校のときはソフトテニス部で日本一になったそう。
「テニスで進もうと思っていたんですが、当時からボランティアとかに行くと楽しくなかった。"何のための、誰のためのイベントなのか"って。全然ワクワクドキドキしなかったので、福祉の道に飛び込んだんです」(原田氏)
現在、『PICFA』は、ローソンのコーヒーカップのデザインも手掛けており、売り切れになるなど全国的にも話題になりました。また、精神障害、自閉症、知的障害、ダウン症のある人たちが壁画にもチャレンジしているといいます。
「ハード面が揃っていれば、全部がまかなえるかというと、そうじゃない。いろんな人がソフト面を理解してくれたら、たぶん環境が変わると思います。福祉施設が地域の『資産』になるような動きを障がい者施設でできたらいいなと思って活動しています」(原田氏)
「OK COFFEE Saga Roastery」オーナー/福山 徹氏
吉野ヶ里町出身で、祖父の代から続く『株式会社アイテク』の代表取締役を務める福山さん。2019年、会社の事業の1つとして『OK COFFEE Saga Roastery』をスタートします。人と人の縁を繋ぐことを目標に、吉野ヶ里の町おこしに向けて活動しています。
人が集まる場所を作りたい。吉野ヶ里町、それがひいて佐賀の力になると信じてお店を運営している
吉野ヶ里駅前の人が少ない現状をなんとかできないか、85年間、吉野ヶ里町で仕事をして行く中で、100年続く恩返しをしようと思った福山さん。"人"と"人"をつなげることも大切にしています。
「美味しいのは当たり前。心を満たすサービスが一番大切」と語る福山さん。今の時代、口コミやSNSで輪が広がるといいます。
「インスタなどのSNSを通して、お店の温かさや、人によったハートフルなインスタを投稿することを心がけています。僕たちに会いにきて、そして、吉野ヶ里町、それがひいて佐賀の力になると信じて、まちおこしの壁としてお店を運営しています」(福山さん)
ゲストそれぞれの『さがすたいる』との関わり方
『〇〇な障がい者の会』会長/内田 勝也氏
自分との"違い"を見て、何でだろうと思うことがすごく大事
内田さんは、『さがすたいる出前講座』で本年度20校の学校を訪問。小学生や中学生、高校生に「誰もが暮らしやすいまちってどういうことだろうか」と問いかけるといいます。
「私としては、自分との"違い"を見て、何でだろうと思うことがすごく大事だなと思っています。そのため、"なぜ自分が車椅子に乗っているのか"を話しています。これまでの出来事や車椅子で大変なこと、"こういうサポートがあったら嬉しいな"ということを織り交ぜながら約1時間話しています」(内田氏)
子どもたちの素直な反応が何より嬉しいと内田さん。『出前講座』の最後には、ハートの形をした付箋紙に思いを書き綴ってもらう『ハートのバリアフリー行動宣言』の取り組みを行っています。
「高校生が『1人ひとりの優しさが大事、誰かのことを思って行動することが大切だと分かりました。困っている人がいたら迷わず声をかけていきたい。笑顔あふれる社会を作っていきたい』と書いてくれていて、本当に嬉しかった。また、ある商業施設に行ったら、『さがすたいる出前講座』のお礼をしゃがんで自分と同じ目線で中学生が言ってくれて。『さがすたいる出前講座』がそんなアクションにつながっているだと感じています」(内田氏)
また、さがすたいるリポーターとしても活動を行っている内田さん。これまでに、飲食店やアクセサリーショップなど、さまざまなお店を訪問しています。
「1番大事にしているのは、お店の人との対話の時間を作ること。障がいの当事者に"どうしたらよいのか"聞くのが難しい部分があると思います。アクセサリーショップでは、車椅子は「高さ・段差・狭さ」で困ることに気づいてもらえて嬉しかったです。飲食店では、メニューをとってもらったり、グラスを握りやすいものに変えてくれたりなど。こんな"ちょっとしたこと"が私たちにとって大きな喜びになります」(内田氏)
内田さんは、そういった"嬉しかったできごと"を多くの当事者にも感じてもらいたいとの思いから、『さがすたいる』のWEBサイトにて発信。同じような人たちが"ここに行きたい"と思うきっかけになればと願っています。
障害福祉サービス事業所『PICFA』施設長/原田 啓之氏
"福祉のまち"と語らなくてもできるまちに。『さがすたいる』は失敗できる場、メンバーを知ってもらえる場
『PICFA』として、2021年と2022年に『さがすたいるフェス』に参加している原田さん。2年連続、イベントに参加して感じたこととは。
「山口知事が"福祉のまち"とあまり言わないところが良いって思っていて、それを語らなくてもできる、そこが佐賀らしい"やさしさのかたち"だと。佐賀らしい"やさしさのかたち"=『さがすたいる』っていうのがしっくりくるんです」(原田氏)
実は、『さがすたいるフェス』のロゴは『PICFA』が制作したもの。ロゴに秘められた想いも伺えました。
「いろんな丸が描かれているんですが、角がとれたものが集合していくと最終的に、歩きやすかったり、触れやすかったり、そういったものにならないかなと思って。『SAGA STYLE』というローマ字は、逆にめっちゃとがっている。尖っているものが悪いかというとたぶん悪くない。そうではなく、知らなくて差別されるのが嫌。知ってもらってから差別されるならちょっとしょうがないかとも思う。知ってもらったら意外と角が取れる。そんなかたちで『さがすたいる』とつながっていけたらと思います」(原田氏)
アートが得意な人だけでなく、"いろんなひとたちと、いろんな形で、いろんな絵を描く"ことに重きを置いている原田さん。その根底にある考えとは。
「"自閉症の人って意外に話せるんですね?""こんな大きなパフォーマンスできるんですね?"って言われたりします。なんかそういうのを試してもらっている、失敗できる場所を実は『さがすたいる』に提供してもらっています。そこでメンバーを知っていただき、"そんな障がい特性ならこんなところに気を付けたら、もうちょっと社会歩けますよね?"とか。自閉症の人もお酒を飲むので、"お酒を飲める環境をどうやったら作れるかな"など。そういった人たちが増えることを、『さがすたいる』と今、取り組ませてもらっていると思っています。そんなソフトな部分をしっかりやっていきたいです」(原田氏)
『OK COFFEE Saga Roastery』オーナー/福山 徹氏
『さがすたいるゼミ』で対話の大事さに気付いた
『さがすたいる倶楽部』のお店としてWEBサイトでも紹介されている『OK COFFEE Saga Roastery』。お店づくりで気をつけていることとは。
「コーヒーって幸せをもたらしてくれると思うんです。家族や友達、カップルで、そんな時間を楽しんでもらいたいと考えています。小上がり席やビーズソファなども設置し、"長居してください"と逆にお願いしているほど。ゆっくりとした時間を過ごしてほしい。だからお店には飲み物やチョコしかありません」(福山氏)
2022年の2月には『さがすたいるゼミ』にも参加したという福山さん。ゼミで、どういうことを感じたのでしょうか。
「障がいをお持ちの方に店にきてもらい、自分も車椅子を体験。"お店のこの小さな段差、こんなに高く感じるのか"という衝撃がありました。健常者とっては、小さなステップに使えるけど、足元の悪い方や、目元の悪い方には不安定すぎることもわかりました」(福山氏)
そこからすぐに改善につなげたといいます。また、障がいを持っている方に「ここはどうですか?」と聞くことができ、対話の大切さにも気付いたそう。
佐賀県知事/山口 祥義氏
みんなが参加しやすいイベントを。徐々に進化していくのが『さがすたいる』
山口知事は、自分の体験談として、小学生の頃に外国人に声をかけれなかったという話をしました。
「子どもの頃にいろんな人とふれ合う場があったら、とっても素晴らしい。お互いに気持ちがあってもそういう場がなかったらなかなか一緒になれない。いろんな機会を作っていくことが大事。原田さんの『関係するアート展』もすごく素晴らしかったです!」(山口知事)
この中で、原田さんは「関係性がどんどん広まっていけば、作品を通して知ってもらえる」と言っていました。
「障がいをお持ちの方もそれぞれに個性がある。その人を見つめて、マッチングしてあげないと。例えば、毎日同じ仕事じゃないと不安、単純な仕事をコツコツしたいなど。お互いに仕事をシェアしていくことが大事。また、多くの人がまちに出てきてほしいと思う。家の中にいて、苦しんでいる人が佐賀の中にもまだいらっしゃるので、少しずつでもいいから出かけて、まちの中でみんながハッピーになれたらいいなと思う。」(山口知事)
去年の『さがすたいるフェス』で、車椅子の体験もしたという山口知事。そこで感じたこととは?
「楽しみながら車椅子体験もできる謎解きイベントに参加しましたが、自然と楽しく学べた。あんな仕掛けがあればみんな入りやすい。いつのまにか理解者に、仲間になっていくと思う。それが徐々に進化していく、まさにこれが『さがすたいる』。みんなで作っていく。たぶん違うだろっていう人もいる。でもこれもチャレンジだから。そしたら少しずつ工夫していけばと思います」(山口知事)
『佐賀さいこうフェス』にも参加している『PICFA』の原田さん。
「最初は周りのみんなも"何者か?"という感じで、どう関わっていいのか分からない雰囲気があった。だけど、あんまり福祉を説明したくない。そうなると福祉の押し売りになってしまうから。内田さんみたいに全員が全員、明るい人とも限らないんだけど、その時にこちらから声をかけるか、待つかというところが、日本人の恥じらいのいいところ。だけど、そんな時に誰かがひょいと持ち上げてくれたり、代弁してくれるということは、"教育"ではなく"教養"の部分。知ることで変わるというところが大切だなと思います」(原田氏)
自分と違った視点を持つことが大事。それぞれの活動の中で気付いたこと
『〇〇な障がい者の会』会長/内田 勝也氏
たくさんやさしさをもらっているので、そのやさしさをバトンでつなげていきたい
車椅子以外で知らないこともまだまだ多いと話す内田さん。視覚障がいの方やLGBTの方、聴覚過敏の方など、それぞれの当事者の想いを知ることが大事だといいます。
「やっぱり最終的にはハードでは解決できない、ハートの部分で補っていくことが大事。飲食店で困っていたときに店員さんにお願いする場面もたくさんありますが、2回目行った時に、前回お願いしたことを覚えていてくださって、こちらから言わずにしてくださったり、自然な優しさが、まさに佐賀らしいやさしさだなと思います。こういう輪が広がればいいなと。私もたくさんやさしさをもらっているので、その優しさや笑顔をバトンでつないでいきたいです」(内田氏)
内田さんは、個人でバルーンアートにも挑戦し、子どもたちにプレゼントする取り組みも行っているそう。そこで、子どもたちが喜んでくれて、混ざり合うことで生まれるものがたくさんあるといいます。
会場内や入り口には、内田さんと『SAGAN COFFEE FESTA』出展者の「ティキティキ」さんが一緒に準備したというバルーンアートが飾ってあり、華やかにイベントを彩っていました。
障害福祉サービス事業所「PICFA」施設長/原田 啓之氏
トライアンドエラーを繰り返しながら"失敗"も楽しむ。"失敗"と思わないことも大事
「意外と地域に向けた活動は何もしていない」という原田さん。「施設が楽しければ、いろんな人が入ってきてくれるだろう」という思いがあります。
「施設に、お茶を飲みにきたり、作業場で子どもが卓球をしたり。ハンディキャップのある人と卓球をするっていうのも、うちのメンバーの仕事にしています。東京や近所の人が絵を買いに来たりもする。そこから人とつながったりもします。『ここめちゃくちゃ楽しいけど、この人たちってどこに障がいがあるの?』と聞かれることもあるんです」(原田氏)
福祉系の人より、いろんなジャンルの人が訪れるという『PICFA』。一般の人のほうが興味があり、何か関わりたいと思うのだそう。
「当事者に何か関わらないといけないと思う人が多い。例えば、内田さんの車椅子を押さないといけない、とか。それだけではなくて、内田さんの車椅子を派手にデコレーションする人がいてもいい。得意な人が得意な形で関わってくれたら大丈夫。1から10を全部1人でしなくてよくて、得意な部分を埋めてくれたら、いつの間にか10になっている。そういうことを、障がい者施設でトライアンドエラーを繰り返しながら楽しんで続けています。失敗も楽しむ。また失敗を失敗と思わなければ、失敗ではない。思い込みも大事かなと思います」(原田氏)
『OK COFFEE Saga Roastery』オーナー/福山 徹氏
当事者にはなれない。知っているからこそできるやさしさがある
『さがすたいるゼミ』でゴロッと考え方が変わった、今まで見えていなかったものが見えてきたという福山さん。この経験は、障がいのある方だけについてだけでなく、健常者の方へや、家族や友達など、どんな方とのコミュニケーションでも同じだといいます。
「困っているときに手を差し伸べる。でもその原因が分からない、自分で体験したことがないから、控えている部分があると思います。なので、困りごとがあるんだっていうのをまず知ることが大事。当事者にはなれない。知っているからこそできる少しのやさしさがあると思います。気付こうとする意識が大切」(福山氏)
『さがすたいるゼミ』で気づけたことで、お店のメニューも文字を大きくしたという福山さん。気づいたから、どこに落とし込んでいこうかを考えるきっかけになったそうです。
佐賀県知事/山口 祥義氏
みんなが心地良くなることが大事。幸せだなっていう瞬間を共有できるように
山口知事は、『さがすたいる』が始まってから県庁職員も大きく変わったといいます。
「『さがすたいる』になってから、みんなで一緒に楽しもうって感じになった。そうなると、何が生まれるかというと、例えばLGBTの方に何かしてあげよう、犯罪被害者の方に何かしてあげよう、自然とそういう風な方向になっていく。役所もとても健全になるし、公務員も県民。自分の姿が自然な形で出てくるのがいいなと思います」(山口知事)
ここで、知事が『肥前さが幕末維新博覧会』のグッズを手に。こちらのデザインは、『SAGA2024 国スポ・全障スポ』の佐賀選手団のユニフォームにも使用されているそうです。
「"維新博"のハンカチ、すごく気に入っているんです。みんないろんな動きで、いろんな形をしていて。そういう人たちがみんな参加してほしいねっていうのが、"維新博"のコンセプトだから。そうやってみんなが『さがすたいる』という形で、みんなが心地良くなる。自然と幸せっていう瞬間を共有できるようになればと思います」(山口知事)
良い関係を築くために大切なこと。心地よい関係作りに必要なこととは
障害福祉サービス事業所『PICFA』施設長/原田 啓之氏
いつか「さがらしい、やさしさのかたち」の「やさしい」がいつか抜けてくれる時がきたらいい
障がいは「特性」であって、それぞれの「個性」があると原田さん。その中でどう支援していくかが重要だといいます。
「障がいのある人たちと、町や人をつなげていくときに、いつか『さがらしい、やさしさのかたち』の『やさしい』がいつか抜けてくれる時がきたらいいなと。厳しさ、悔しさ、いろんなものが必要。優しさだけでなく、次のところで関わってもらう関係性を。福祉施設なので、楽しいことをサービスとして提供すれば正解だと思いますが、全部が楽しいと次のステップがない、くやしさ、悲しみ、怒り、いろんな五感を体験しながらやれるといいな」(原田氏)
『PICFA』では、町民の人たちとの交流もあり、80歳のおばあちゃんが、20歳のダウン症の子を叱ることもあるのだそう。
「それぞれに関わる人の個性、当事者の個性を理解しながら出せるのか。それが今、『PICFA』の関係性を作る上で一番やっていること。信頼関係があれば、その上の段階にいけると思います」(原田氏)
『OK COFFEE Saga Roastery』オーナー/福山 徹氏
声かけとコミュニケーションが何よりも大事。人生に寄り添えるお店を目指す
店のおばちゃんと交流しながら駄菓子を買う、"昔ながらの商店"が理想と話す福山さん。コミュニケーションが減っているのではないかと感じるそう。
「スタッフやお客さん、みんなとできるだけ話したいと思っています。個人によった接客がすごく大事。だからオペレーションは組めない。マニュアルではできない。そうすることで、自然と何度も通いたくなる、スタッフに会いに行こうとなるのではないかと。"おばちゃんに会いに行こう"とみんなでワイワイしていた、あの頃の感覚を味わってもらいたいと考えています」(福山氏)
『OK COFFEE Saga Roastery』では、木製のドアを"自動ドア"と呼んでいる。それは、お客さんが来ると必ずスタッフが開けることで、"お迎えしている"という気持ちを届けているのだそう。
「何かきっかけがなきゃ話せないとかではなく、心地良いから自然と会話が始まる空間づくりが僕たちにできることなので。人生に寄り添えるお店を目指しています」(福山氏)
『〇〇な障がい者の会』会長/内田 勝也氏
受け身だけじゃなく、私たち当事者も発信していくことが大事
「声かけというのは受け身だけでなく、自分から誰かにお願いするというところもすごく大事」と内田さん。障がい当事者として思うこととは。
「どういうことが困るのか、気づきにくい部分もあるので、自分から声かけできる人を増やしていければと。私たち当事者も発信していくのが大事だと思います。ベクトルは同じように、自分が受け身なだけじゃなくて、自分からも言うことを大事にしたいです」(内田氏)
また、手伝ってもらったときに「ありがとうございます」など、"感謝の気持ち"を伝えること。ここからまた同じように困りごとを抱えている人にも声かけしやすく、つながっていくのかなと話していました。
「声かけがしやすい、声かけし合う。そういう関係性のある社会が、佐賀らしいやさしさ、佐賀にとって、みんなにとっての暮らしやすいまちかなと思います」(内田氏)
佐賀県知事/山口 祥義氏
ウェルカムな姿勢が大事。人が自然と入りやすいような雰囲気を作る
本当に"ウェルカム"なのかどうかでスタートが決まると、山口知事。
「どうアプローチするのか、最初はなかなか難しいですよね。"ウェルカムです"っていう雰囲気を作ってあげたい。『声をかけてくれれば良かったのに』と終わらないように」(山口知事)
その中で、県立美術館・博物館前の話に。以前は、生垣がいっぱいあり、段差だらけだったという美術館と博物館の前のスペース。段差をなくすなどして、人が自然と入りやすいようにしたといいます。
「行政とか役所が、無理に『こうして使って』というのではなく、みなさんが自由に使ってくださいと思っている。そこで自然的に起きることが美しい、素晴らしいことも多いので、出会いも含めて。それをどんどん広めていこうと考えています」(山口知事)
作り込まないことが大切。自然と『さがすたいる』で、交流が生まれると信じています。
「県庁って"県民の幸せ事務局"、僕はそこの事務総長。そのお金をどう使っていくのかを一生懸命に考えて仕事をしています。本来は一緒にいて仲間。そんな風に、仲間になっていけたらみんながハッピーになれるかなと思います」(山口知事)
『さがすたいる』を広めていくには......
『〇〇な障がい者の会』会長/内田 勝也氏
人の優しさがすごく大事な部分になっていく。人がキーワードに
「障がいのある人や高齢者、子育ての中の方など、いろんな当事者がいる。その思いを他人事ではなく、自分ごとでとらえていくのが大事」と内田さん。
「今、何不自由なく生活している人でも、自然と歳をとって何か困りごとを抱えたりとかあるかもしれない。また自分の大事な人がそういう状況になるかもしれない。そんな時に、暮らしやすいまちって何かと考えたときに、やっぱり人の優しさというところがすごく大事な部分になっていくと思います。人がキーワードになる」(内田氏)
2024年に佐賀で行われる国スポ・全障スポについての話も。
「全国から人がきて、その時に、佐賀の人たちってすごく温かいねって思ってもらえたらいいなと。佐賀で受けた優しさをそれぞれの地に持ち帰ったときに、自分ごととして、何かアクションを起こしてもらいたい。それが佐賀から全国につながっていくと思います。笑顔の花が佐賀県内、まち中に咲くような取り組みをしていきたいです」(内田氏)
障害福祉サービス事業所『PICFA』施設長/原田 啓之氏
福祉はハンディキャップのある人や高齢者だけのものではない、みんなの"幸せの権利"
大学生の頃のエピソードを交えて、「ハードが全部整わなくても、ハートの部分、ソフトの部分をしっかり持ていればやれないところはないんだ」と気付かされたという原田さん。
「僕は、アートという媒体を使っているが、今後、もし何か佐賀県で何かできるとしたなら、2024年国民スポーツ大会で何か関われたらいいなと。アートの力と福祉の力で」(原田氏)
例えば、小学生やいろんな人たちがベンチなどに絵を描いて、企業や家具メーカーも巻き込んで、佐賀を明るくしたいといいます。
「福祉って実はハンディキャップのある人や、高齢者だけのものではない。みんながもっている"幸せの権利"。みんなが幸せにならないといけない。それをそれぞれどう考えるかっていうものを追求できるような、県であり、市であり、個々が幸せを追求してくれたら、いろんなことがスムーズに回り始めると思います。みなさんがそう考えながら、町を、県を、見てくれたらいいなと考えます」(原田氏)
『OK COFFEE Saga Roastery』オーナー/福山 徹氏
お互いに街をサポート、オススメしあえる佐賀県でありたい
「自分の住んでる町を自分でよくしたい!これはほかの地域でも当てはまると思う」と福山さん。
「僕も今、吉野ヶ里町を舞台に挑戦中。『OK COFFEE Saga Roastery』を開業したことで、周りにも店舗や事務所が出来たり、少し変化が起きた。自分がこの町を良くするんだっていう気持ちは、少しずつ広がっていくと実感しています」(福山氏)
また『さがすたいるゼミ』を受けて、もっともっと自分に出来ることがあると気付いたそう。
「お互いにオススメの町をサポート、オススメしあえる佐賀県でありたいです。僕はあくまで吉野ヶ里町ですが、そこを軸に佐賀県が良くなれば。みなさんは違う市町村だと思うので、その土地で自分が何か出来ることを少し考えていければ、いろんな形で『さがすたいる』の心が広がっていくと思います」(福山氏)
ロゴに込めた想い。そして、今後の『さがすたいる』について
佐賀県知事/山口 祥義氏
いろんな社会課題解決のキーワードを表現。『さがすたいる』が満ち溢れている世界に
最後に山口知事より、『さがすたいる』のロゴに込めた想いについて話がありました。
「真ん中にある青色の『S』には、スタイル、サポート、シェア、サステイナブル、ソーシャルなど、いろんな社会課題解決のキーワードを表現しています。ハートがちょっと横に傾いているのは、みんなのちょっとした手助け、ひと押しでハートにしよう!そんな想いを込めています」(山口知事)
これまでやってきたことをまとめたという『さがすたいる』のリーフレットの紹介も。リーフレットでも『さがすたいる』を知ることができます。
そして、今後の『さがすたいる』にかける願いとは。
「ちょうどいいタイミングで2年後、全障スポが開催されるので、全国からたくさんの人がやってきたときに佐賀らしい形でお迎えしたいです。そのためにもハードとソフトをしっかりと準備していきたい。"このまちは心地いいね、自然と声をかけられて"と思ってもらえるように。『さがすたいる』が満ち溢れていてほしいです。全障スポは通過点、『さがすたいる』はずっと進化させていきたい、幸せの形なので。みんなで楽しく盛り上がっていければと思いますので、宜しくお願いいたします」(山口知事)
最後に......
開催場所が『JONAI SQUARE CAFÉ』(サガテレビ1階)ということもあり、和やかな雰囲気の中で行われたトークイベント。客席には、事前抽選による17名の参加者が集い、障がいのある方ない方、幅広い層の人たちが足を運んでいました。
県知事、障がい当事者、福祉に関わる者、事業者と、それぞれ違う立場のゲストが語り合った約1時間30分。1つひとつの言葉に重みと温かみがあり、こういう人たちとともに佐賀に暮らしていることを幸せに感じました。今回、紹介しきれなかった話も多いので、ぜひ動画もチェックしていただければと思います。佐賀に"やさしい風"が吹くことを願って。
『さがすたいるトーク』の動画はこちら。
レッツさがすたいるトーク 「佐賀からまきおこすやさしさのムーブメント」
ライター:原 安紀子