「気づいたことからやればいい」"当たり前"が"当たり前"になっていく世界へ PR

「気づいたことからやればいい」"当たり前"が"当たり前"になっていく世界へ

「誰もが安心して出かけやすい佐賀」をみんなでつくるプロジェクト『さがすたいる』。
今回は、視覚に障がいのある中島正太郎さんのお出かけに同行してきました。

中島正太郎さんの物語

佐賀県庁に勤める中島正太郎さんは、43歳。
19歳の時に「網膜色素変性症」と診断され、徐々に視力が低下していきました。

当時、海上自衛官として仕事していた中島さん。艦内にある赤色灯の中で作業しているときに視野に違和感を覚え、先輩に相談したところ「よく見えていないんじゃないか」と言われたことが診断を受けるきっかけでした。

網膜色素変性症とは 

目の内側を覆っている網膜という組織に異常をきたす遺伝性、進行性の病気。暗いところで物が見えにくくなったり(夜盲)、視野が狭くなったりするような症状を最初に起こす。そして病気の進行とともに視力が低下していく。網膜色素変性症の原因となる遺伝子変異は多くの種類があり、それぞれの遺伝子変異に対応した網膜色素変性症の型があるため症状も多彩。 
3,000人~5,000人に1人の割合で発症すると言われる。

IMG_9842.jpg

現在は、佐賀県庁に勤務され、時には『さがすたいる出前講座』で小中学校生に向けて講話をされたり、視覚障がいの見え方を知ってもらうワークショップにも参加されています。

IMG_9846.jpg

ワークショップで作られたというデコレーションサングラス。かけてみると......、

IMG_9847.jpg

小さな穴が開いています。この穴にクリアファイルを数枚挟んだ先に見える景色が中島さんの視界なのだそう。

見えないからこそ、見える世界 

視覚障がいと一言で言っても、見え方や歩き方、おでかけの際に困ることや嬉しいことは、人それぞれ全く違います。中島さんの場合、周りが見えないために、歩行中に横から追い抜かれると、突然人が現れるようで驚いたり、電柱を通り過ぎる際に、距離感がつかめず少し肩が当たったりします。また、車が歩道に駐車しているとぶつかりそうでとても不安と感じるそうです。

IMG_9860.jpg

おでかけするときは、サングラスと白杖を持って出発。歩くときは、いったん遠くの景色を記憶して、後は記憶した景色を頼りに計算しながら、時には"勘"で、白杖で障害物がないかを確認し歩いています。段差がある時には、段差に白杖を沿わせて、段差の幅や高さを確認して歩いているそうです。

ちなみに、横断歩道を歩く際は、音が鳴る信号機の"音が飛んでくる"方向に向かっているとのこと。音で判断し、横断歩道を渡るか歩道を歩くかを決めているそうです。

音が鳴る信号機の設置場所は限られているので、白杖を持った人を見かけたら、必要な時は「青になりましたよ」などと声をかけてもらえたら助かるそうです。

日常に欠かせないスマートフォンの便利な機能

また普段の生活についてお聞きするとスマートフォンを愛用されているとのこと。ダークモードにして画面の背景を暗くすることで目に入る光の刺激を減らし、文字は最大まで大きくしているそうです。

IMG_9849.jpg

一般的なSNSも使用されています。アプリの設定で送られてきたメッセージを音声で読み上げてくれます。

また、よく使用されるというおすすめアプリも教えてもらいました。『Be My Eyes』は、リアルタイムの通話を通じて、ボランティアの方が視覚障がい者のサポートができる無料アプリです。ユーザーが支援依頼を行うと、複数のボランティアに通知を送信。対応できる方が通話に応答してくれる仕組みです。

『Seeing AI』は、マイクロソフト社が開発したiPhoneの無料アプリです。ダウンロードして「短いテキスト」「ドキュメント(文書)」「通貨」「色」「ライト」「風景」「人」「製品」の8つからメニューを選び、対象にカメラをかざすと、表示した人・物・文字・風景・色などをAIが認識し、音声で説明してくれます。
中島さんが「さがすたいる」のチラシを写真で読み込むと......? 

IMG_9851.jpg

なんと、すぐに音声が読み上げが開始!しかも、音声の読み上げを聞くと、よくありがちな「不自然な日本語の読み間違え」がほとんどないのです!

IMG_9850.jpg

また、人物にカメラを向けると「女性1人、1m先にいます」なんて認識してくれるのにも驚きです。

スマートフォンを使っていると、目が見えているのではないかと勘違いされることもあるそうですが、こうした技術の進歩があることも暮らしやすさに繋がっているそうです。

安心して通えるお店『グラスオニオン』

中島さんがよく訪れるお店があります。佐賀市にあるイタリアン料理のお店『グラスオニオン』です。ここも『さがすたいる倶楽部』の登録店です。

大きくて丸いチーズの上でパスタを和えて作るカルボナーラをはじめ、目で見て楽しく、味わいも絶品の様々なメニューを取り揃えています。中島さんのおすすめは「スペアリブ赤ワイン煮込み」だそう。

中島さんと『グラスオニオン』のオーナーである髙松さんは高校生の時に知り合いました。一緒の部活に入るなど、共に青春を謳歌したようです。

IMG_9877.jpg

髙松さんが中島さんから目の病気のことをカミングアウトされたとき、ショックな気持ちと、振り返ってみるとあの頃から兆候が出ていたのかなと納得する気持ちもあったそうです。

「見えていた時も、見えなくなっても、仲は何も変わらない」と髙松さん。社会人になった今でもその関係は続いています。

IMG_9917.jpg

『グラスオニオン』のうれしいサポート

『グラスオニオン』では、中島さんのような視覚障がいのある方に対して、様々な工夫を凝らした接客をしています。 

例えば、お店のどの場所に座るかを細かく説明することです。中島さんは目がほぼ見えないため「奥の方に座ってください」と言われても、奥の右側か左側か分からなかったり「空いてる席に座ってください」と案内されても、どこが空いている席か分からなかったりすることがしばしば。そんなときに「右奥の席に場所をお取りしています」といった細かな声かけや、時には手を引いて案内されるそうです。

またカトラリーやお皿などの配置を細かく説明したり、カトラリーを落とした際には、直接手に渡すなどの工夫もされています。

その他にも、入口に段差があるため、手を握って昇り降りのサポートや、車いすユーザーが来店される際は、段差を上るお手伝いもされているとのこと。

IMG_9902.jpg

さらには、イタリアンのお店にもかかわらず、フォークよりもお箸の方が使いやすい人のために、お箸をおいてあるという、私たちにも嬉しい配慮がちりばめられています。

そんなお店作りをされているのは、髙松さんの「気持ちのいい人間関係を作りたい」という想いから。障がいの有無に関わらず、だれでも来てほしい、構えずに遠慮せずに来てほしい、と話します。

私たちにできること 

「障がいを持っているから、目が悪いから、迷惑をかけてしまう......というのは、考えすぎ! こうしてほしいと、伝えてくれるからこそできることがある。 遠慮しなくていいんです!お互いに気遣いと思いやりの心があれば、気持ちの良い人間関係はできます。 言語が違って、お互い話せなくても伝わることもある。 だからみんな、考えすぎたり、構えすぎなくていいと思います!」 と髙松さん。

目に障がいのある中島さんは「まずは、挨拶をして声をかけてほしいですね。『大丈夫ですか?』と声を掛けられると『大丈夫です』と答えてしまう方も多いと思います。 そんな時は『お手伝いできることはありますか?』『どこに行かれますか?』という問いかけをしてもらえると、答えやすくなると思うんです 」と言います。

多様な人たちが暮らすこの街で、お互いへのほんの少しの気遣いや思いやり、困ったときは声をかけ合うなど「"当たり前"が"当たり前"になる」ことで、もっとお出かけしやすい佐賀になっていくと感じました。

この記事を通して、視覚障がいのある方の世界について、少しでも理解を深め、何かアクションを起こすきっかけになれば嬉しいです。 

IMG_9892.jpg

施設情報

グラスオニオン

店舗名 グラスオニオン
住所 佐賀市松原2丁目2−2
営業時間 Lunch...12:00~14:30(lo.14:00)
Dinner...平日 18:00~10:00(food lo.21:00)
     金土 18:00〜last(food lo.24:00)
定休日 日曜日
電話番号 0952-22-1071
公式サイト https://www.instagram.com/glassonion_saga/
地図

文章:徳永 眸
編集・写真:相馬 千恵子

さがらしい、やさしさのカタチ

さがすたいる

トイレが広々としている、段差がない、お店の人がやさしく声をかけてくれる…… まちに出かけたときに、そんなやさしさに気づくことがあり...

このEDITORの他の記事を見る

ページの先頭に戻る