子どもの頃からずっと食べてきたお菓子。
生まれ育った場所から離れても「また食べたいなぁ」と思うお菓子。
みなさんは"ふるさとのお菓子"といえばどんなお菓子を思い出しますか?
嬉野には、地域の人に愛され続けるお菓子があります♪
1933年創業 末廣屋菓子舗
国道34号線沿いに店を構える『末廣屋菓子舗』は、1933年に和菓子店として創業。
現在は3代目の富永 正樹さんと、妻・しのぶさんが夫婦二人三脚で営む洋菓子店です。
店内には25種類のお菓子のうち、お茶や抹茶を使ったお菓子が8種類並びます。
看板商品は2007年に皇室献上菓子にも選ばれた『ひき茶ふりあん』!
端はサクサク、中はしっとり。煎茶の風味と、抹茶の美しい緑は一度食べると忘れられない味。
一日1,000個焼き上げているという「ふりあん」はひき茶のほかに、チョコや紅茶、コーヒーなど種類があります。贈り物やお土産として、幅広い年代に愛されています。
「ここのひき茶ふりあん、世界一おいしいね!」
こんな素敵な感想を言ってくれる小さなファンも。
"オシャレな四角い焼き菓子"との出会い
富永 正樹さんは東京の専門学校で和菓子・洋菓子を学び、卒業後は東京の洋菓子店で3年間修業。
修業先のお店で、正樹さんは"オシャレな四角い焼き菓子"と出会い、そのおいしさに衝撃を受けます。
「このお菓子に、嬉野のお茶を入れて作りたい!」
佐賀に帰ってから、さっそくお菓子作りに取りかかります。
今では、お茶や抹茶を使った焼き菓子はたくさんありますが、その当時(約35年前)は珍しく、『ひき茶ふりあん』は1日10~20個売れればいいほうでした。
しかも課題がたくさん。
『ひき茶ふりあん』の生地はとても繊細。
ちょっとでも焼きすぎると鮮やかな緑が出ないため、細かくオーブンをチェック。
ほんの数秒でもタイミングを逃せば、表面が茶色に。
長年の勘で焼き上がりを見極めます。
オーブンから出したら、嬉野のシンボルマークの焼き印を。
もう一つの課題は変色。
焼きたては緑でも、透明の袋に入れてお店に並べておくと数時間後には表面が茶色になってしまいます。
数年間かけていろいろと研究し、今では包装紙に和紙が用いられています。
「いつ食べてもおいしいね」と思ってもらえるように、今でも研究は続きます。
大切なことを学んだ修業時代を忘れずに
そんな末廣屋菓子舗に2021年、新しいお菓子が誕生しました♪
西九州新幹線開業日である2022年9月23日、嬉野市では新たに「嬉野温泉駅」が誕生します!
「新幹線開業を盛り上げたい」と作られたのが新商品『嘉東嬉野(ガトーうれしの)』。濃厚な抹茶タルトです。
佐賀の「が」と東京の「とう」で、修業していた時の初心を忘れないという思いがこもったこだわりのネーミング。
正樹さんにとって東京での修業時代は「人生の中で一番大切な時期だった」といっても過言ではないそう。
修業先は菓子職人もお店に出て、お客さんと接することを大事にされているお店でした。
修業前は、どちらかというと人と接することは得意ではなかった正樹さん。接客の経験もほとんどありませんでした。
一人での店番中、一度に数名を対応しなければいけないという状況になり、ちょっとした失敗をしてしまいます。
その経験から、職人もお菓子作りだけなくお客さんとのコミュニケーションを大切に。気持ちのこもったお菓子作りと接客をしないとお客さんには伝わらないということを学んだそうです。
嬉野を楽しんでくれて、私も嬉しい
接客を大切にしているのは、妻・しのぶさんも同じです。
『末廣屋菓子舗』に来てよかったな、と思ってもらえるようにお客さんと積極的に会話をすることを心がけています。
温泉街の近くにある末廣屋菓子舗には、旅館に宿泊されたお客さんもよく来店されます。
「いいお湯だったよ~!」と、言ってもらえると、しのぶさんも嬉しくなるそう。
そして店内には『末廣屋菓子舗』のお菓子だけでなく「嬉野の素敵なお店を紹介したい!」という思いからハンドメイド作家や嬉野のお茶農家の商品も並んでいます。
しのぶさんからお店を紹介されたお客さんが、実際にそのお店を訪れることもあるとか。
次回来店時「あのお店行ってきたよ!すごくよかった!」と感想から始まり、話に花が咲くそうです。
お店から近い場所にある嬉野温泉商店街では、大小さまざまなイベントが開催されます。
しのぶさんはイベントがあればお客さんにチラシを渡して宣伝。「商店街の情報をいろんなお店で共有して、商店街みんなでお客さんをおもてなし したいですね。」と笑顔でお話されていました。
嬉野でしか体験できないことを体験してほしい
正樹さんは、これから先について熱い思いを語ってくださいました。
「今はインターネットなどを使って、全国さまざまな地域のおいしいものやほしい商品をすぐに取り寄せられる時代。そんな時代だけど、お客さんはもう一度行ってみたいと思ったら、その場所に行きますよね。嬉野でしか体験できないことを体験して、嬉野でしか食べられないものを食べて、嬉野でしか買えないものを買って。そして、もう一度嬉野に行きたいなとリピーターになってくれれば嬉しいです。お客さんが食べて、口コミで友だちに広めてくれたり、友だちを連れてきてくれたり。その縁も大切にしていきたい。嬉野には三つの産業(お茶・温泉・焼物)があります。嬉野のお菓子もひとつの産業として、そこに名を連ねるように頑張っていきたい。嬉野の菓子店は各お店でそれぞれ特徴のあるお菓子を作っています。嬉野に来たら、ぜひお菓子屋さん巡りを楽しんでほしいですね。」
ふるさとの味と、あったかい笑顔
嬉野を離れた人に「何を送ってほしい?」と尋ねると「末廣屋のふりあんを送ってほしいな~」という返事が来て、買いに来たよ~というお客さんも多いそうです。
その懐かしい味に、嬉野の風景と富永さん夫婦の笑顔が浮かぶんでしょうね。
長年愛されているお菓子は、作り手の愛情だけでなく、お客さんの愛情でも支えられています。
私自身、末廣屋菓子舗に行くとお菓子選びより会話が長くなることがあります。
今回取材をしてみて、この居心地の良さの理由が分かった気がしました。
うれしの元気通信のYouTubeチャンネルでも、紹介しています!
富永さんご夫婦のあったかい笑顔に癒されてください。
店舗名 | 末廣屋菓子舗 |
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住所 | 嬉野市嬉野町下宿甲4059-1 |
電話 | 0954-42-0539 |
営業時間 | 8時~18時 ※毎週水曜日は定休日 |
駐車場 | 店舗そばにあり |
地図 |
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