皆さん、こんにちは!「あか」こと、北村朱里です。
唐津に移住し、3年目に突入しました。少しずつ人とのご縁が増え、まちに根を張り始めているような気がしています。
そんなある日、以前取材させていただいた呼子のクラフトビール醸造所「Whale Brewing」の近藤所長から「呼子にかき氷の新店がオープンしますよ!」との嬉しいお知らせが。
さっそく、メディア向けの試食会に、カメラ片手の「あお」こと平野蒼と一緒に参加してきました!
「甚六果実店」にやってきた
提供:甚六果実店
日本三大朝市のひとつ、呼子朝市通りに2025年5月、かき氷専門店「甚六果実店」が誕生。店名は、江戸時代に呼子で捕鯨を担っていた鯨組の当主・中尾甚六さんに由来しています。古民家を活用し、かつてのにぎわいを呼び戻そうというプロジェクトの一環として生まれたお店。運営は、プロジェクトの担い手として尽力してきた株式会社アミナコレクションが行います。
株式会社アミナコレクションとは...
1976年、唐津市出身の進藤幸彦さんが創業。フォークロアカルチャーをインスピレーションの拠り所とするアパレル、雑貨などのブランドを展開してきた。呼子朝市通りの再生プロジェクトは、2016年に他界された幸彦さんの遺志を引き継ぎ、息子で現社長のさわとさんが推進。戦後から途絶えていた「呼子くんち」の復活を遂げた。呼子に縁のある人や企業と手を結び「鯨の町興し事務局」を立ち上げ、町並み保全や古民家再生などの地域づくり事業を手がける。
提供:甚六果実店
歴史ある邸宅の重厚感を残した、心落ち着く空間。ここでどんなかき氷が味わえるのか、期待が高まります。
運ばれてきたのは、唐津の柑橘・甘夏を使ったかき氷。置かれた瞬間、目の前で果実をしぼったかのように爽やかな香りがぱあっと広がってきます。あおとあか、思わず「いい香り!」と声をあげてしまいました。
かき氷の頂点に君臨するのは、呼子名物「甘夏母ちゃんの夢甘夏ゼリー」。宝石のような輝きとプルプルの食感がお見事!
かき氷をスプーンですくって口に含むと、甘夏の果実をまるごとぎゅっと凝縮したようなみずみずしい酸味と自然な甘さ、ちょっぴりほろ苦さが広がりました。添えられている唐津産ほうじ茶シロップをかけると、ほんのり甘みと香ばしさが加わってやさしい味わいに。
氷はふわっふわで、ひんやりしているのにキーンとならない絶妙な温度。実は私は普段、冷たい物をあまりたくさん食べられないのですが、これはいくらでも食べたくなってしまいます!
そういえば、さっきお店の方から「驚きと発見のあるかき氷です」と聞きました。どういうことだろう。氷の山を掘り下げていくと......
氷の中から、氷ではないものが出現⁉ 食べ進めていくと、いくつもの新たな味や食感に出会います。どんなものが出てくるのかは敢えて秘密にしておきますので、ぜひ、あなた自身の五感で体験しに行ってくださいね。
プロデューサー・中野菜々子さんに聞く! かき氷のこだわりと誕生秘話
提供:甚六果実店
甚六果実店のかき氷をプロデュースしたのは、食のプロデューサーであり、新潟の人気店「団吉氷店」のオーナーでもある、中野菜々子さん。この日は呼子にいらっしゃっていて運良くお会いできました。これはお話を聞くしかない!
――これまでさまざまな食の商品開発やブランディングを手がけてきた中野さんが、ご自身のかき氷店を開いたきっかけを教えてください。
中野さん(以下、中野):私が生まれ育った土地で祖父母が営んでいた街の小さな酒屋が、あるとき閉業することになりまして。その味わいある空間を受け継ぎ、未来につなぎたいと思ったからです。
――なぜ「かき氷」だったのでしょう?
中野:私の故郷はおいしい果物が豊富に採れる環境ですが、それらを加工した商品を扱う店はあまりありませんでした。私、果物は生のままで食べるのがいちばんおいしいと思っていて。だから、お店をやるなら単に果物を使った食品ではなく「果物そのものの味を最大限に引き立てている」ものを提供したかったんです。
――それがかき氷だったというわけですね。たしかにさっきいただいたかき氷、甘夏そのものというか「甘夏よりも甘夏」という感じがしました。そんな中野さん、他にもかき氷店のプロデュースをたくさん......
中野:いえ、他のかき氷店を手がけたり、多店舗展開していったりするつもりはまったくありませんでした。レシピも門外不出、企業秘密で。
だけど今回「呼子のまちおこしのため、古民家を再生してここにしかないお店をつくりたいんだ」と、アミナコレクションの進藤さわとさんから熱心にお声がけいただいて、自分が故郷に出店を決めたときの想いが呼び起こされて。「ああ、この方たちとなら一緒に頑張りたい!」という気持ちになったんです。
――わあ、想いが共鳴した瞬間ですね。呼子でのかき氷開発はどのように進んで行ったのですか。
中野:まずは地元にどんな食材があるか、リサーチすることから始めました。唐津は年間を通して本当に果物が豊かですよね。特に柑橘類には感動しました。甘夏はもちろん、国内でもわずかしかないベルガモット農家も唐津にありますし。ハーブやお茶といった、果物の味を引き立てるのにぴったりな食材も豊富にあって。
――中野さんのお眼鏡にかなう食材がたくさん見つかったのですね。唐津、やっぱりすごいんだ! こうして唯一無二の「呼子のかき氷」が生まれたという。
中野:オープン時のメニューは、さきほど食べていただいた甘夏のほか、玄海町で唯一のメロン農家さんのメロンを使った「ライム薫るメロン」、佐賀が誇るブランド"いちごさん"の味をトンカ豆というスパイスで引き立てた「トンカ豆薫る苺」を用意しています。
提供:甚六果実店
見た目からして、とっても鮮やか。食べていくとまた驚きと発見がたくさんあるのだろうな。これからも季節に合わせたラインアップが飛び出すそうなので、気になる方はチェックしてくださいね。
店長・村田真希さんに聞く! 今の想いと、かき氷で描く呼子の未来
提供:甚六果実店
続いて、お店の運営を担う店長の村田真希さんにもお話を聞くことができました! いよいよオープンという今、どんな想いでいるのでしょうか。
――今回の開業に合わせて唐津に移住したという村田さん。出身はどちらなんですか?
村田さん(以下、村田):生まれは大阪で、その後は東京や海外で暮らし、航空関係の会社に勤めていました。仕事は楽しかったのですが、ふと将来を考えたとき「自分の力で生涯食べていくには、本当に好きなことで小さな事業に携わるのがいいのでは」と考えるようになったんです。
私は食べることが大好きだったので、自然と「飲食店がいいな」と思うようになり、そんなときにご縁があって、今回の出店のお話をいただきました。
――もともと佐賀や唐津には何かつながりがあったのですか?
村田:いえ、実はまったく......佐賀県に来たこともなかったですし、唐津という地名も「聞いたことはあるな」くらいで。
――そうなんですね! よくぞ移住を決められました。
村田:九州といえばおいしいものの宝庫ですから、もう楽しみで仕方なかったです。実際に住んでみると、唐津市内は意外と都会で、でも鳥のさえずりが聞こえたりしてのどかだし、呼子は海が近くてのんびりした雰囲気で。なにより、みんな良い人だし、何を食べてもおいしいんです!
――未知の土地に飛び込んだことが、村田さんに新たな幸せをもたらしたのですね。そうして開店準備を進めてきた村田さん。プレオープンにはたくさんの方が訪れたそうで。
村田:ありがたいことに、100数十名もの方に来ていただきました。私はもともとここでは「新参者」で、最初は知り合いも友だちも一人もいなくて。でも、開店に向けていろんな方と関わっているうちに、少しずつ顔を覚えてもらえるようになりました。
移住して以来、とにかくいいお店をオープンできるようにとただ必死だったのですが、プレオープンの日、唐津に来てからとてもお世話になっていた方が顔を出してくれて、その瞬間に涙があふれちゃって。ああ、やっとここから始まるんだという実感が、その時初めてわきました。
――ずっと頑張ってきたから......
村田:皆さんがあたたかい言葉をかけてくれて、かき氷をほおばって「おいしかったよ!」と笑顔で帰っていく姿を見て、本当に嬉しかったんです。
――甚六果実店、最高のスタートを切りましたね! これからどんなお店づくりをしていきたいですか?
村田:今の時代ってとても便利で、どこにいても何でもできるじゃないですか。だからこそ私たちは「ここにしかない体験」を生み出していきたいと思っていて。単なる食べ物ではなくて、ひとつのメニューの中にも味が変化する驚きがあったり、来るたびに新しいフレーバーに出会えたり、また行きたい!と心躍るような「感動コンテンツ」としてのかき氷を提供していきたいんです。
――楽しみです!
村田:かき氷ファンが全国にたくさんいて「ゴーラー」と呼ばれているんです。各地からゴーラーの皆さんがここをめざして集まってくるようになって、呼子が賑わって、関係人口が増えて、移住する人も増えるといいなと思っています。そのために日々、皆さんを笑顔でお迎えできるようこれからも頑張ります!
甚六果実店の皆さん、中野さん、村田さん、取材協力ありがとうございました!
想いのつまったかき氷が人の心を動かし、まちの熱量を生み出していく。呼子の未来図が少しずつ、でもたしかに輝きを増していくのを感じました。
店舗名 | 甚六果実店(じんろくかじつてん) |
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住所 | 佐賀県唐津市呼子町呼子3766 呼子・朝市通り 旧熊本邸 |
営業時間 | 9:00〜17:00 |
定休日 | 不定休 |
公式サイト (鯨乃町興) |
https://kujira-yobuko.com/ |
公式SNS | Instagram:@jinrokukajitsuten |
地図 |
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文章:北村朱里 撮影:平野蒼