「起業したいけど、何から始めればいいかわからない」
「自分にできるか不安で、一歩が踏み出せない」
そう感じたことはありませんか。
資金、集客、経営知識――。
一人で考え始めると、不安は尽きません。
もし、すでに成功している経営者のもとで学びながら起業できるとしたら。
佐賀で今まさに、その選択肢が生まれています。「佐賀社長プロジェクト」です。
これは、既存事業の「のれん分け」を通じて事業を広げたい経営者を「師匠」、これから社長を目指す人を「弟子」としてつなぐ取り組み。技術や経営ノウハウ、そして想いを引き継ぎながら、リスクを抑えて独立を目指せます。
今回は「佐賀社長プロジェクト」の仕掛け人と、実際にこの取り組みに「師匠」として参画している経営者に話を聞き、その実態を探ります。
「のれん分け」という選択肢――佐賀社長プロジェクトのはじまり
「佐賀社長プロジェクト」を手がけるのは、リコーとビープラストの2社です。
設立90年の歴史を持つテクノロジー企業と、地元に強いネットワークを持つサガテレビグループ企業。異なるバックグラウンドを持つ2社が、なぜこの事業を始めたのでしょう。
今回株式会社リコーの社内起業家として活動している西本崇政さん、株式会社ビープラストの水町光太郎さんに、立ち上げの経緯やプロジェクトにかける想いを聞きました。
はじめに「佐賀社長プロジェクト」を始められた経緯を聞かせてください。
水町さん -
ビープラストでは、事業の一環として「つぎのわ」という事業承継支援を手がけています。その中で、事業承継においてより重要なのは、会社を譲ることそのものよりも「譲る前の準備」にあるのではないかと感じるようになりました。
事業承継はあくまで最終的な結果に過ぎず、譲り先の選定や意思決定、引き継ぎに至るまでの準備が整っていなければ、承継はうまくいかないと実感したためです。
そうした中で、リコーさんがのれん分け支援に取り組まれていることを知り、この課題を解決できるのではないかと考え、ご相談させていただきました。
西本さん -
私は、リコーの社内起業テーマとして、黒字で事業が成り立っているにも関わらず後継者不在を理由に廃業せざるを得ない中小企業をなくしたいという思いから、「のれん分け支援プログラム」を立ち上げました。私自身、営業として現場に関わる中で、そうした状況を間近に見てきたことが、この取り組みの原点です。
一方で、これまでの展開は都内が中心で、地方への推進が課題でした。そのようなとき、佐賀に強いネットワークを持つビープラストさんから声をかけていただき、連携することでより実効性のある取り組みにできると感じたのです。
水町さん -
リコーさんは、佐賀と深いゆかりのある企業でもありますよね。佐賀を代表する実業家・市村清氏がリコーを創業し、その後、サガテレビの経営にも携わり会長を務められた経緯があります。
現在、私たちの親会社のサガテレビはリコーと同じリコー三愛グループに属しており、そうしたご縁も背景にあります。このつながりを活かし、地域に価値を生む取り組みができると考え、今回のプロジェクトに至りました。
そもそも、リコーではどのような流れで「のれん分け」という手法に着目されたのでしょうか。
西本さん -
今回の取り組みは、私がリコーの社内起業家プログラム「TRIBUS(トライバス)」に採択されたテーマです。私はこれまで、の中小企業の経営者の方々と向き合ってきました。その現場で目にして印象に強く残ったのは、事業承継における"後悔"です。長年育ててきた会社を売却したものの、「思っていた方向と違った」という声は忘れられません。
後継者がいない場合、第三者に売却する方法もありますが、限られた期間で相手に自社を十分に理解してもらうのは容易ではありません。そのため「よく知らない相手に託すくらいなら、黒字廃業を選ぶ」という経営者も多く、それを何とかしたいと考えました。
そこで重要だと感じたのが、譲る側と譲られる側の信頼関係をどう築くかという点です。これを前提にした仕組みとして着目したのが、江戸時代から続く「のれん分け」でした。
師匠と弟子が時間をかけて関係性を築いたうえで事業を任せて、広げていく。このかたちであれば、安心して任せられる人材が育ち、将来的に"後悔"のない事業承継が実現できると考えました。
事業承継の課題に対する新たな選択肢なのですね。これから、佐賀でどのようにプロジェクトを広げていきたいですか。
西本さん -
私は2024年にチームを立ち上げてスタートしました。はじめは無償トライアルとして仕組みづくりを進め、2025年11月からようやく有償トライアルというかたちで展開を始めています。
現在は、師匠として参画したい企業が集まり始めており、これから弟子となる方とのマッチングを進めていく段階です。今回の記事をきっかけに、佐賀で初めてのマッチングが生まれたら嬉しいですね。
この取り組みを通じて佐賀に新たな価値を生み出していきたいと考えています。リコーにとっても、創業者 市村清のゆかりの地である佐賀に、かたちとして残る取り組みを実現したいという思いがあります。そのうえで、佐賀で確かな事例をつくり、それをモデルとして全国へ展開していくことも見据えています。
水町さん -
佐賀県では、長く続いてきた店舗や飲食店でも後継者不足が進み、事業の継続が難しくなっているのが現状です。こうした課題に対する解決策の一つとして、この取り組みを広げていきたいと考えています。
一方で、のれん分けという仕組みは、弟子として起業する側にとってもリスクを抑えて挑戦できる点が大きな特徴です。新たな起業家を生み出し、地域の中で人や事業が循環していく状態の実現を目指しています。
まずは一つでも早く実績となる事例をつくり、それを次につなげていく。その積み重ねによって、佐賀に新しい流れが生まれていくと感じています。
現場で磨く力。「師匠」に聞く、仕事の魅力とやりがい
続いて、佐賀社長プロジェクトで「師匠」として参画している企業を紹介します。1981年の創業以来ビル清掃管理を手がけ、東京を中心に各地へ展開してきた株式会社ベネフィットです。
師匠として参画した背景や仕事の魅力、弟子として関わる価値について、代表取締役の金子剛さんに話を聞きました。
まずは、ベネフィットが手がけている事業について聞かせてください。
金子社長 -
オフィスビルや駅舎、商業施設、ホテル、飲食店、個人店舗など、さまざまな現場で清掃業務を行っています。お客様ごとに異なる課題やニーズに応じて、最適な清掃方法を提案し、清潔・快適・安心・安全を提供してきました。
おかげさまで多くのお客様から継続してご依頼をいただいており、現場ごとに求められる品質に応えながら、信頼を積み重ねてきています。
金子社長が清掃業の世界に入ったきっかけは何だったのでしょうか。
金子社長 -
この会社に17歳でアルバイトとして入り、現場に立ったのがきっかけです。当時は特別な理由があったわけではなく、単純にお金を稼ぎたくて始めました。
ただ、続けていくうちに、この仕事の面白さに気づきました。作業を終えて現場がきれいになると、言葉にできないような晴れやかな気持ちになる。汚れが落ちていく過程そのものにも楽しさがあり、大きな達成感を得られる仕事だと感じています。
さらに、対価をいただいているにもかかわらず、お客様から直接「ありがとう」と声をかけていただけることも、大きなやりがいの一つです。
この仕事を続けてきて、気づけば30年が経ちました。今でも現場に入ることがありますが、何度行っても楽しいと感じます。
清掃の仕事において、どのようなことを大切にされていますか。
金子社長 -
昼間はオフィスや施設の清掃が中心ですが、夜になると大型機械を使った駐車場や商業施設の床洗浄なども行っています。二つとして同じ現場はなく、難易度の高い案件もありますが、どんな依頼であってもできるだけ断らず「どうすれば実現できるか」を考えることを大切にしています。
都内を中心にしながらも、県外の案件やこれまで経験のない内容にも対応してきました。そうした積み重ねによって、対応できる領域は着実に広がってきたと感じています。
また、ベネフィットでは自然由来の洗剤を使用するなど、環境に配慮した作業を心がけています。清掃にはさまざまなやり方がありますが、従来の方法にとらわれず「より良い方法はないか」と常に見直す姿勢を大切にしています。一方で、新しい機械や洗剤が出てきた際には、まずは試してみる。そのうえで判断する柔軟さも欠かせないと考えています。
先代から引き継いだ想い。ベネフィットの人材育成と支援の仕組み
金子社長が二代目として会社を引き継がれた経緯について、聞かせてください。
金子社長 -
もともと先代社長のもとで、現場から経営に至るまでさまざまなことを教わってきました。その中で「いずれはお前が継ぐんだぞ」と言われていましたが、具体的に意識するようになったのは、先代が倒れて入院したタイミングです。その後、数年間の入院生活を経て亡くなり、私が会社を引き継ぐことになりました。
覚悟はしていたものの、多くの従業員の生活を支える立場としての責任の重さを、そのとき一気に実感したことを覚えています。
金子社長にも、師匠のような存在がいらっしゃったのですね。どのような教えが印象に残っていますか。
金子社長 -
先代は非常にパワフルな人で、現場でも多くの無理難題を課されてきました。たとえば、東京から広島まで車で道具を運んで作業をしたり、十分な情報がないまま急遽別の現場に入ったりと、正直大変なことも多かったですね。ただ、それを一つひとつ乗り越えていく中で、知らないうちにできることが増えていった実感があります。
印象に残っているのは「仕事は断らない」という姿勢です。お客様の困りごとに対して、まずはどうすれば実現できるかを考える。その考え方は今も自分の中に残っています。実際にやっていくうちに、「考えれば何とかなる」「やればできる」という感覚が身につき、仕事の幅も広がっていきました。
社長という立場になってからは、先代がどれだけ多くのものを背負っていたのかを改めて実感しています。同時に、重要なことをきちんと共有してくれていたことの意味にも気づきました。今は自分一人で抱え込まず、周囲に相談しながら判断していくことも大切にしています。
そんな金子社長率いるベネフィットが、今回「佐賀社長プロジェクト」に参画し、弟子を受け入れることになります。どのように仕事を教えてもらえるのでしょうか。
金子社長 -
座学と実践を組み合わせながら、現場で通用する力を身につけていただきます。
まず座学では、約15時間をかけて清掃業の基礎を学びます。道具や洗剤の正しい使い方や業務上の注意点、効率的な作業手順まで含めて理解を深めていきます。特に、環境負荷の低い自然由来の洗剤を選ぶ理由など、ベネフィットとして大切にしている考え方も学ぶのが特徴です。
そのうえで、私や先輩と一緒に現場に入りながら技術を身につけていきます。機械や道具の使い方は、実際に手を動かしながら覚えていきます。いきなり一人で現場を任されることはありません。お世話になっている店舗などにご協力いただき、練習の場として活用しながら実践的なトレーニングを積んでもらいます。
のれん分け後も、支援があるのでしょうか。
金子社長 -
はい、独立後も継続的なサポートを用意しています。大きくは、資材・設備、営業、経営の3つの側面で支援しています。
まず資材や設備面では、清掃用具や洗剤を特別価格で購入できるほか、高価な機械についても割引価格でレンタルできる仕組みがあるのが当社の特徴です。通常は50~60万円ほどかかる初期投資を抑えられるため、スタートのハードルを下げることができます。
営業や集客については、パートナーであるリコーと連携しながら支援を行います。これまでの実績から得られた営業ノウハウの共有に加え、チラシなどのツール面のサポート、仲間同士で仕事を紹介し合えるネットワークも整えています。
現場での対応や経営面で判断に迷った際に随時相談できる体制を整えている点も、安心していただけるポイントです。見積もりの考え方や収支計画などについて実務に即したアドバイスを行うなど、私の経験も踏まえた継続的なフォローを実施しています。
さらに、のれん分けといっても価格設定などに厳しい制約はなく、地域や状況に応じて柔軟に経営できる環境です。主体性を持って事業に取り組める点も、この仕組みの強みだと思います。
気になる費用と収益は?弟子になるというリアル
弟子になるために必要な準備はありますか。
金子社長 -
開業にあたっては、資金面の準備が必要になります。想定ケースとしての目安は、開業資金や設備投資、人件費や生活費に充てる半年分の運転資金を含めて、総額で620万円程度です。
内訳としては、自己資金で220万円を用意し、残りの400万円を金融機関からの借り入れでまかなうケースが一般的です。ただし、自宅を事務所として活用するなど、工夫次第でコストを抑えることも可能です。
不安な点があれば状況に応じてシミュレーションも行いますので、まずは気軽に相談していただければと思います。
弟子になった場合、どの程度の売上を目指すとよいのでしょうか。
金子社長 -
従業員を雇わず一人で開業する場合、まずは月100万円程度を現実的な目標としています。
目安としては、1日3~4万円の売上を積み上げていくイメージです。たとえば月20日稼働であれば60~80万円ほどになりますが、夜間の案件を受けたり、単価や作業効率を工夫したりすることで、さらに上を目指すことも可能です。
周囲からの紹介や信頼の積み重ねによって、独立後4~5カ月ほどで月200万円近くまで売上を伸ばしている例もあります。もちろん努力は必要ですが、その分きちんと結果につながる仕事だと思います。
どのような方がベネフィットの弟子に向いていると思いますか。
金子社長 -
大切なのは、主体性と前向きな姿勢です。受け身ではなく、自ら動いていく意識を持てる方が向いていると思います。清掃の技術だけでなく、自ら営業し、仕事をつくっていく力も求められます。
最初は、知り合いに紹介をお願いしたり、自ら動いて認知を広げたりしながら、少しずつ顧客を広げていく必要がありますが、特別な能力や資格が必要なわけではありません。意欲があれば、未経験からでも挑戦しやすい仕事です。
やりがいの大きい仕事だと感じました。最後に、ベネフィットへの弟子入りに興味を持たれた方へメッセージをお願いします。
金子社長 -
自分たちの作業によって現場がきれいになり、その結果に対して直接感謝の言葉をかけていただける仕事は、そう多くありません。やりがいがあり、前向きな気持ちになれる仕事だと思います。
私自身が大切にしているのは、何事にも興味を持つことです。新しい洗剤や清掃機械があれば、まずは使ってみる。使って、考えて、納得して、自分のものにしていく。その積み重ねが力になっていきます。
お客様からの難しいご相談に対しても、どうすればより良い対応ができるか考えること自体を楽しめる方であれば、この仕事はきっと面白いはずです。ぜひ一緒に取り組んでいけたら嬉しいです。
「師匠」がいれば、起業はひとりじゃない
「のれん分け」という仕組みは、事業を引き継ぐ側、引き継がれる側の双方にとって、新しい可能性を広げる選択肢です。
技術やノウハウだけでなく、人とのつながりや想いまで引き継ぎながら、次の世代へと事業をつないでいく。その循環が、地域の活力を生み出していきます。
少しでも興味を持たれた方は、まずは気軽にご相談ください。
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