2026年春、佐賀大学に国立大学で初となるコスメティックサイエンス学環(仮称)が誕生します!
コスメ業界の未来を担う人材を育成する場として注目を集める、この新たな学びの環境。
「なぜ佐賀で? そして、なぜ国立大学が?」
そんな疑問を解き明かすべく、佐賀大学の教授陣や地元企業、佐賀県コスメティック産業推進室に直接お話を伺いました。
そこで見えてきたのは、驚くほど先進的な佐賀のコスメティック構想と、将来コスメ分野に進みたいと考えている人に大きなチャンスが到来しているという事実。
学生さんはもちろん、その保護者の方も必見です!
お話を伺った方
目次
1. コスメティックサイエンス学環とは?
2026年春にスタートする「コスメティックサイエンス学環(仮称)」(以下、コスメ学環)。
どんなことが学べるのでしょうか?そして"学環"とは何なのか?
佐賀大学の鯉川副学長からお話を伺います!
佐賀大学:鯉川副学長
理工学部教授、理学博士。コスメ学環では学環長に就任予定。優しい穏やかな話口調が魅力的。趣味はアクアリウム。
1-1. 化学や生物学だけじゃなく、幅広く学べるコスメ学環
編集部牛島 -
今日はよろしくお願いします!まずはコスメ学環ができた背景から教えてください。
鯉川副学長 -
化粧品は、多くの人が日常的に使用する、直接肌に触れる物質です。そのため、薬剤や食品添加物と同じように安全性や機能性を科学的に学ぶ必要があります。しかし、国内で化粧品を専門的に学べる教育機関は少なく、特に国立大学には専門の課程が存在していません。この現状を受け、佐賀大学ではコスメティックサイエンスを専門的に学べる教育組織を設立することにしました。
編集部牛島 -
国立大学で初めての取り組みなんですね!コスメ学環では具体的にどんなことが学べるのでしょうか?
鯉川副学長 -
基礎となるのは化学や生物学ですが、化粧品の研究や開発にはひとつの専門知識だけではなく、多角的な視点が必要です。そこでコスメ学環では、皮膚科学は医学部、パッケージデザインは芸術地域デザイン学部、マーケティングは経済学部といったように、複数の学部が連携しながら、化粧品に関わる幅広い知識を身につけられるカリキュラムを用意しています。
1-2. 「学環」と「学科」の違いとは?
編集部牛島 -
"学環"という名称ですが、学科とはどう違うのでしょうか。
鯉川副学長 -
通常、学科は特定の学部に属し、その学部の教授陣が授業や研究を行います。一方、学環は各学部から専門教員や研究設備、教室などを集めてつくられる新しい教育の仕組みです。佐賀大学では、理工学部、農学部、医学部、経済学部、芸術地域デザイン学部などと連携し、コスメ学環を運営していきます。
編集部牛島 -
まさに"オール佐賀大学"体制ですね!
鯉川副学長 -
そうですね。複数の分野を横断して学べるので、コスメティックに関わる知識を総合的に深められるのが、コスメ学環の大きな特徴です。
1-3. 文系でも大丈夫!反響が大きかったオープンキャンパス
2024年11月、佐賀大学ではコスメ学環について説明する「未来発見オープンデイ」を開催。
対面とオンラインを合わせて、北は北海道、南は沖縄まで、全国から300名以上が参加されました。反響はどうだったのでしょうか。
鯉川副学長 -
理系学部には男性の学生が多いのですが、コスメ学環のオープンデイでは女性の参加者が圧倒的に多かったですね。高い関心を寄せてもらっていることが印象的でした。
編集部牛島 -
やはりコスメ学環は「理系分野」になるのでしょうか?
鯉川副学長 -
はい、分野としては理系です。しかし文系からの進学を志す方からの問い合わせも多くあり、オープンデイでも"文系でも進学して大丈夫か"、"理系の学びについていけるか不安"という声をいただきました。でも、大丈夫です。大学院生がレポートや授業の疑問をサポートする「学習サポーター制度」があるので、数学や物理、医学の勉強でつまずいても気軽に相談でき、文系の方も安心して学べる環境が整っています。
2. 佐賀にしかできない? コスメ学環ができた理由
国立大学として初となるコスメ学環の誕生。その背景には、佐賀大学にコスメの学びに必要な学科が揃っていることに加え、「ここでしかできない理由」があるのだそうです。コスメ学環の中心的な存在となる徳留教授に、その理由を熱く語っていただきました。
佐賀大学:徳留教授
化粧品科学や皮膚科学などが専門。大手化粧品会社の研究職の経験を持つコスメ研究の第一人者。関東の大学で教鞭をとるも、佐賀県のコスメティック産業を推進する姿勢に魅力を感じ、2021年に佐賀大学(共同研究講座「化粧品科学講座」)に着任。気さくな人柄で学生から慕われる。趣味はドライブ。
2-1. 佐賀大学と佐賀県の類をみない連携
徳留教授 -
まずお伝えしたいのは、コスメ学環が設立できたのは"佐賀大学だからこそ"だということです。先ほどの話にもあったように、コスメ業界にはひとつの専門知識だけではなく、法律から化粧品のパッケージといったことまで、幅広い視点が必要です。
コスメ業界の勉強に必要な学科がしっかりあって、パッケージデザインのような専門的な分野まで学べる環境が整っている大学は、全国を探してもほとんどありません。
2021年から佐賀大学で共同研究講座「化粧品科学講座」を主宰する徳留教授。これまで教授として関東の2つの大学を経て、佐賀大学で教えるため佐賀県に移住されたのだそうです。その理由とは?
徳留教授 -
直感的におもしろそうだな、と(笑)。どうおもしろいのかというと、佐賀県は「コスメティック構想」を展開していて、全国の自治体で唯一コスメ産業の推進に取り組んでいますよね。自治体がコスメ産業を盛り上げようとバックアップしているなんて、実はすごいことなんですよ。しかも、産学官で連携して人材育成にも取り組んでいる。こんなことができるのは全国で佐賀県だけだと思います。
こうした佐賀県の「コスメティック構想」があることと、そこに国立大学である佐賀大学も大きく関わっていること。このことが、私が佐賀に来る大きな理由になりました。
徳留教授が評価する佐賀県の「コスメティック構想」とは?担当する佐賀県コスメティック産業推進室の東室長にお話を伺います。
2-2. 「コスメティック構想」の中で進める人材育成
佐賀県コスメティック産業推進室:東室長
産官学で連携しながらコスメティック構想を牽引。佐賀が「日本一コスメビジネスがしやすいまち」となるよう、さまざまな事業を推進中。
東室長 -
私たちが推進している「コスメティック構想」は、唐津市・玄海町を中心に、佐賀県や北部九州地域をコスメ産業の一大拠点にしようという取り組みです。2013年のスタート当初から産学官が連携し、佐賀大学や地元のコスメ企業とタッグを組んで進めてきました。
コスメ産業の集積や、自然由来のコスメ原料の開発・供給など、さまざまな取り組みが進行している「コスメティック構想」。中でも、研究開発と人材育成は特に重要なポイントです。
その人材育成の核となる存在として、佐賀県は化粧品分野における研究の第一人者である徳留教授に声をかけたのだそうです。
東室長 -
徳留先生には2021年から佐賀大学に特任教授として就任いただき、現在は教授として研究や教育の面で尽力していただいています。そして、その積み重ねが実を結び、2026年のコスメ学環設立につながりました。佐賀大学がこうした新たなチャレンジに踏み出してくださったことを、とても嬉しく、ありがたく思っています。
2-3. 人材育成のキーパーソン・徳留教授
編集部牛島 -
徳留教授は佐賀県からのオファーを初めて聞かれたとき、どう思われましたか?
徳留教授 -
佐賀には熱い人たちがいっぱいいるんですよね。みんな"おもしろいことをやろう"という気持ちがあって、取り組んでいる内容もすごく進んでいると思いました。関東では薬学部の教授をしていたのですが、佐賀大学ではより大きなスケールでコスメ業界の発展に関われると思ったんです。だから全部捨てて佐賀にやってきました(笑)。
編集部牛島 -
徳留教授がそこまでして佐賀に来られたこと自体が、佐賀大学と、佐賀のコスメティック構想のすごさを証明していますね。
東室長 -
徳留先生はもともとポーラの研究者としてご活躍され、その後は2つの大学で教鞭をとりながら、学生部長として企業と学生をつなぐお仕事もされてきました。企業とのつながりが非常に広く、研究分野も経皮吸収といった製品に近い領域を専門とされていて、業界のさまざまなことをご存じの方です。佐賀で共同研究が進んでいるのも、徳留先生に来ていただいたことが大きいと思っています。
編集部牛島 -
ちょっと話は逸れますが、徳留教授、佐賀での暮らしはいかがですか?
徳留教授 -
めちゃくちゃ楽しいですね。一番いいなと思うのは、やっぱり人がいいところ。そして、食べ物もおいしいし、気候もいい。関東にいたころの卒業生も3名ほど佐賀に来ているのですが、東京や埼玉で育った彼らも"佐賀はすごく暮らしやすい"と言っています。
受験生にとって、教授の人柄や進学後の暮らしは大切なポイント。佐賀大学のコスメ学環には徳留教授をはじめ、頼れる教授陣が揃い、佐賀は暮らしやすさも抜群。学びも生活も、どちらも充実しそうですね。
3. 地元産業界も大注目!コスメ学環への期待の声
さて、ここまでコスメ学環がどんなところなのか、設立の背景から学べることを伺ってきました。こうした佐賀大学の動きに対し、地元のコスメ企業はどんな期待を寄せているのでしょうか。「コスメティック構想」の推進に深く関わる、株式会社ブルームの山﨑社長にお伺いします。
株式会社ブルーム:山﨑社長
海外化粧品メーカーの輸入代行をはじめ、品質管理サービスや成分分析受託、薬機法関連の検査業務を担う株式会社ブルームの代表取締役。5つのコスメ関連企業が集積する「唐津コスメパーク」の中心的存在であり、産学官連携組織「ジャパン・コスメティックセンター(以下JCC)」の会長を務める。趣味は車とバイク。
3-1. コスメ企業が求める人材像とは?
山﨑社長 -
コスメ学環の誕生は、我々コスメ企業にとって喜ばしいニュースであり、大きな期待を寄せていますよ。日本だけじゃなく、世界中から学びに来られるでしょうからね。おそらくあと10年もすれば、佐賀はもっとインターナショナルな雰囲気になっていると思います。それくらい日本の化粧品というのは世界的に評価が高く、注目されているんです。そんな日本で、しかも国立大学でコスメティックを学べるなんて、世界中が期待しているでしょうね。
明るく軽快な語り口でコスメ学環への期待を語る山﨑社長。実は、山﨑社長は化粧品大国フランスの「コスメティックバレー」と長年交流があり、「コスメティック構想」誕生のきっかけをつくった立役者のおひとり。唐津市浜崎地区には、山﨑社長の会社を含め5つのコスメ関連企業が集まる「唐津コスメパーク」があり、コスメティック構想の中心拠点となっています。
唐津コスメパーク
山﨑社長 -
うちは成分分析の試験や検査を行う機関でもあるので、理工系や農学系の人材を基礎知識がある前提で採用しますが、実際に戦力になるまでには3年はかかります。一口に"コスメ業界"といっても、関連する学校教育や省庁の仕組みは縦割りで分断されていて、それがいろんな弊害を生んでいるんですよね。
コスメ学環の一番のメリットは、そうした縦割りの枠を超えて幅広い分野を学べること。そういう学びを受けた人材なら、即戦力として活躍できるまでの時間がぐっと短くなると思うので、企業としては大いに期待しています。
3-2. 気になる卒業後の就職は?
編集部牛島 -
学生さんにとって一番気になるのは、卒業後の「就職」についてだと思いますが、雇い手である企業サイドの状況はいかがですか?
山﨑社長 -
ありがたいことに、世界中のメーカーや企業から"佐賀・唐津に進出したい"という話がたくさんあります。企業が出てくるということは雇用が生まれるわけですね。世界中からコスメに興味を持った学生が佐賀大学に来て、それを受け入れる企業がどんどん佐賀に進出してきている。もうばっちりですよね。コスメ業界は女性が働きやすく、休みが多くて残業が少ないという、待遇の良さもぜひ学生さんにはアピールしたいところです。しかも、佐賀は通勤の負担が少なく、自然豊かな住環境も整っています。控え目に言っても最高だと思いますよ。
3-3. 佐賀がアジアのコスメ拠点へ!企業進出が増加
佐賀にコスメ企業の進出が増える理由は、もうひとつあるという山﨑社長。
山﨑社長 -
どうして佐賀で「コスメティック構想」を進めているのかといえば、佐賀はアジアのコスメ拠点になれるポテンシャルを持っているからなんですよね。アジアの各都市へのアクセスがよく、世界レベルの技術力がある。ヨーロッパで作られた化粧品のうち、1/3はアジアに送られていますが、船で送ると40日もかかり、コストも大きいんです。それが北部九州で製造できるようになれば、輸送は4日で済み、環境負荷やエネルギーコストも1/10程度に抑えられます。だからこそ、国内外の企業が佐賀に進出しようと注目しているんです。
佐賀がアジアのコスメ拠点となるよう、産学官が連携してコスメ産業の推進に取り組んでいるからこそ、関連企業の進出が活発化しているんですね。コスメ企業への就職は、佐賀にこそたくさんのチャンスが生まれていくと言っても過言ではなさそうです。
4. コスメ学環が目指す人材育成とは?
地元企業も大きな期待を寄せる佐賀大学のコスメ学環。そこではどんな人材育成に取り組む予定なのでしょうか。
鯉川副学長 -
化学物質を適正に評価できるスキルを持った人材の育成が必要不可欠だと思っています。コスメは子どもから高齢者まで、人体に触れるものです。ですから、しっかりと安全管理を行い、その物質について正しく理解したうえで、化粧品の開発に取り組むことが大切です。化粧品産業に限らず、どこへ行っても"化学物質を任せれば安心"と思われるような人材を育てたいと考えています。
徳留教授 -
化粧品って、本来は"効果があってはいけないもの"なんですよ。でも最近の化粧品って、使う側はやっぱり効果を期待しちゃいますよね。効果があるということは、身体に何かしら影響を与えている証拠。ということは、副作用のリスクだってゼロじゃないんです。
有効性ばかりに目が行きがちですが、本当に大事なのは安全性。どんなに効果があっても、使って肌が荒れたらダメなんです。だからこそ私たちは"化学物質から国民を守る"くらいの気概を持った人材を育てたいと思っています。
山﨑社長 -
大いに賛成ですね。日本では医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器が縦割りで区分されていて、化粧品の管理基準も医薬品並みに厳しいんですよ。日本製品は薬機法の厳しさをクリアした商品だからこそ、世界中で信頼されているんですよね。これこそが日本コスメがナンバーワンと言われる理由なんです。
化粧水や日焼け止めなど、今やコスメは私たちの日常生活に欠かせない存在。だからこそ、使う人が安心して手に取れる製品を生み出せる人材の育成は重要であり、そしてそのことが、世界に誇れる日本コスメのさらなる発展にもつながっていくんですね。
5. コスメ学環の今後の展望
それでは最後に、佐賀大学のコスメ学環の今後の展望について伺いましょう!
徳留教授 -
コスメ学環では座学だけでなく、企業へのインターンシップにも力を入れたいと考えています。実際に現場を経験することは、学びの大きな糧になります。例えばパッケージデザインに興味を持った学生が、現場でその重要性を実感すれば、より深く学びたいという意欲につながるはずです。佐賀には山﨑社長がいらっしゃる「唐津コスメパーク」をはじめ、関連企業が多くありますので、インターンシップを通して自分の適性や興味を見極めてもらいたいですね。
山﨑社長 -
やはり自分の目で見ることが大事ですからね。ネットで情報も探せますが、実際に現場に行って五感を使って感じると全然違いますから。現場でしか気づけないポイントが必ずあります。インターンシップは企業にとってもいいと思います。
鯉川副学長 -
コスメ学環では「コスメティック構想」の取り組みについても伝えていきたいですね。県だけでなく、さまざまな企業の方々にもご協力いただき、現場の実情や実践的な内容を講義に取り入れれば、学生たちの学びがより深まると思います。その際はみなさんにゲストスピーカーとしてぜひお話をいただけるとありがたいです。
東室長 -
確かに、地域で「コスメティック構想」に取り組んでいることを学生のみなさんにも伝えて、ここで学ぶことの意義をしっかりと感じてもらうのは大事ですね。地域全体で学生を育成していく仕組みにできたらと思います。
編集部牛島 -
なるほど。コスメ学環設立後も「コスメティック構想」との連携はしっかりと続いていくんですね。
東室長 -
これまでも共同研究などを通じて大学と連携してきましたが、今後はその取り組みをさらに進化させていきたいと思っています。地域でコスメを専門に学んだ人材が育っていくことで、研究開発分野の企業も進出しやすい環境が整っていきますし、さらに、研究者が増えることによって、佐賀県産の自然素材の活用がさらに広がると嬉しいです。そういった意味では、コスメ学環が「コスメティック構想」を押し上げてくれることを期待していますし、実現に向けて引き続き連携をしていきたいと思っています。
編集部牛島 -
最後に、コスメ業界に興味を持っている学生さん、そしてその保護者の方へメッセージをお願いします。
徳留教授 -
佐賀がこれからコスメ産業の中心になることは間違いないと思います。私が関わっている化粧品業界の団体でも佐賀の動きは注目されていて、「佐賀がなんかおもしろいことをやるだろう」ってみんな思っているんです。だったらもう、先に中心地に飛び込んだもん勝ちですよね。せっかくなら、この大きな流れに乗って、一緒にコスメの未来をつくる側になりましょう!
国立大学として初めてコスメに特化した学びを深められるこの学環は、まさに新時代の幕開け。地域をあげてコスメ産業を推進している佐賀だからこそ得られる、実践的で幅広い学びが詰まっていて、国内外から注目される理由がとてもよくわかりました!
佐賀大学では、次回2025年夏にオープンキャンパスが開催される予定です。興味のある方は、ぜひ参加してみてくださいね!
佐賀のすごさを語りだすと止まらないみなさん。熱いお話をありがとうございました!
施設名 |
佐賀大学 コスメティックサイエンス学環(仮称 設置構想中) |
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開設時期 |
2026年4月 |
入学定員 |
30名 |
設置場所 |
佐賀大学 本庄キャンパス |
公式サイト |