のどかな住宅街が広がる三養基郡基山町。
今日も子どもたちの元気な声が聞こえてくる、一般社団法人『ここてらす』の拠点があります。
「子どもたちが来るきっかけは、ご飯でもいいし、イベントでもいいし、誰かに会いに来るでもいい。いろんな人がこの場所に関わる入口をつくっているんです」
そう話してくれたのは、代表理事の入江航(いりえ わたる)さん。
ここてらすでは、定期的に手作りの夜ご飯を振舞っているほか、平日の昼間もお家や学校以外で過ごせる場所として、子どもたちに居場所を提供。
その他にも、レンタルスペースとしても貸し出されており、地域から集まったもので開くおゆずり会や季節のイベント、日替わり出店など、さまざまな催しが行われています。
多様な活動が交差する空間は、子どもたちが自分の居場所を形作っていけるような優しいきっかけに溢れていました。
否定しない。急かさない。肯定する。ただ、そこに在る支援。
ここてらすを訪れる人が感じる居心地の良さ。
その背景には、入江さん自身の飾らない姿がありました。
「子どもたちと接するとき、まずは、『否定しないこと』と『どんな感情も肯定すること』を一番大事にしています。関係性ができるまでは、自分の意見もあんまり伝えません。初めて来た子にも僕から一方的に話かけに行くことはなくて、むしろちょっとおどおどしてるくらいかもしれないです(笑)」
「もう一つ意識していることがあるとしたら、『あまり忙しそうにしないこと』かな。良くも悪くも飾らずに、子どもたちが『話しかけていいんだ』って思える余白を残すようにしています」
ありのままの自分を受け入れてもらえるような空間で、子どもたちは少しずつ、自分のなかの成長や安心を見つけていきます。
そんな子どもたちの姿を見守れることが、入江さんにとっても嬉しい瞬間なんだそうです。
「とても印象に残っているには、小学校3年生くらいのときに来てくれた子のことです。その子は当時かなり言葉遣いが悪くて、描く絵も雨や泣いている人ばかりでした。でも、ここてらすでよく放課後の時間を過ごすうちに、少しずつそのネガティブな表現が減って、言動に大きな変化が見られるようになったんです。それがどれだけここてらすのおかげかは分からないけど、事実としてそういう変化を側で見られたのはとても嬉しく感じました」
自分の居場所を探せる心地よさ
これほど多様な活動が広がる場所だからこそ、「目指す理想の姿」があるのではないか。
そう問いかけると、入江さんは「こういう場所にしたいという強い思いはないんです」と、等身大の言葉を返してくれました。
「この場所をどんな居場所にするか決めるのは、当事者である子どもたちだと思っているんです。ご飯を無料で食べられる場所だと思っている子もいるし、話を聞いてくれる人がいる場所だと思っている子もいる。家や学校外にも、ここに来られるという選択肢をつくっておく状態が大事なんじゃないかなと」
「それに、交流を通して、いろんな大人がいるって知ってほしいんです。生き方に『こうあるべき』という枠を持たない面白い大人たちと触れ合うなかで、進路の選択肢が広がったと言ってくれた子もいました。自分自身がこの場所との出会いで救われたように、生きることを楽しいと思える"余白"みたいなものをこの場所でつくっている気がします」
ここてらすが子どもたちに残しているもの。
それは、いろんな人と関わりながら過ごすなかで、ゆっくりと自分らしい生き方を見つけていける余白の時間なのかもしれません。
プロフィール
入江 航(いりえ わたる)
基山町出身。大学時代に地域活動と出会い、2019年に立ち上がった「ここてらす」の運営に参画。2021年に代表を引継ぎ、一般社団法人ここてらすを設立。こどもの居場所づくりや不登校支援、アウトリーチ活動に取り組む。現在は、地域の人や企業、行政と連携しながら、子どもたちが安心して過ごせる居場所と、多様な選択肢に出会える環境づくりに取り組んでいる。
SAGAローカリストアカデミー2026 概要
| 日時 | 2026年9月12日(土)13:00~17:00(予定)(受付開始 12:30~) |
|---|---|
| 場所 | 佐賀県庁 新館 地下1階・SAGACHIKA-サガチカ- (〒840-0041佐賀県佐賀市城内1丁目1-59) |
| 参加対象 | 50名(先着申し込み順) |
| 参加費 | 無料 |
| 参加ローカリスト | 入江航 / 大石絢子 / 久野裕子/ 山崎裕次郎 |
アカデミー終了後に、交流会も開催!
歴代ローカリストとも交流できるチャンス。 新たな人脈や面白いアイデアが生まれるかも?
(アカデミーと同会場で、アカデミー終了後に2時間程度開催予定)
※参加申し込みは公式LINE「SAGAローカリスト」の応募フォームからお願いします。
写真:合同会社Light gear 山本卓
取材・文:平野蒼