昔ながらの商店街。車でそのまま通り過ぎていませんか?車を降りて歩いてみると、思わず立ち止まりたくなる出会いがありました。
この連載では、5回にわたり佐賀県内の商店街で働く「人」にスポットライトを当てて紹介していきます。2回目は鹿島です。
読み終わるころには、きっと「会いに行きたい!」と思うはず。
人に惹かれて、気づけばお気に入りの店が見つかる。そんな出会いが、あなたを待っています。
1. 三都屋
祐徳稲荷神社の参道を歩いていると、お菓子、雑貨に混じって木刀がずらりと並んでいるお店が目に飛び込んできました。
「この木刀売れてるのかな...?」正直そう思いながら、気になって中に入ってみると、木刀のイメージとはまるで違う、とてもきれいで上品なお母さんが迎えてくれました。
話を聞いてみると、なんと75歳。そうは思えないほど肌艶がよく、背筋もぴんと伸びています。
鹿島には、結婚を機に嫁いできたそうで、「商売をしているところに嫁ぐのは大変じゃなかったですか?」と聞くと、「最初は辛くて辛くて...。でも今は、毎日いろんなお客さんと話せて楽しいですよ。辛いことも、楽しみに変えて頑張ってます」と、穏やかに話してくださいました。
今も毎日お店に立っているそうで、働くことがお母さんの若さの秘訣なのかもしれません。
お店に並ぶ商品は、すべてお母さんチョイス。大小様々な木刀をはじめ、伸びる孫の手など、ちょっとクセのある商品もちらほら。
実は木刀は若い女性が護身用として購入することが多く、意外な売れ筋商品なのだそう。どれも「これ、面白いでしょ?」とお母さんが笑顔で教えてくれました。
| 店舗名 | 三都屋 |
|---|---|
| 住所 |
佐賀県鹿島市古枝甲1657-1 (MAP) |
| 営業時間 | 9:00~17:00 ※夜間は予約のみ |
| 定休日 | 不定休 |
| 電話番号 | 0954-62-2626 |
2. 井手商店
ふと視線を感じて振り返ると、こちらに向かって手招きしている男性の姿が...!これはもう、話を聞くしかない...と思い、伺ったのが井手商店。
お店に入ってまず目に入ったのは、ご主人そっくりのイラストが描かれた自動販売機。
「これって、ご主人ですよね...?」と聞いてみると、「そうです!デザイナーではないんですけど、絵が好きで。スマホのアプリでよく描いてるんです」と、少し照れながら教えてくれました。
そんなご主人は、井手商店の4代目。つるちゃんの愛称で親しまれ、Instagramの投稿も日々頑張ってるそうです。最近ではAIでハイクオリティな動画制作にも挑戦。どうやらクリエイティブがお好きな模様。
もともとは車関係の仕事をしていて、10年前に家業を継いだつるちゃん。ところが、当時はとても恥ずかしがり屋で、お客さんと話すのも緊張していたのだとか。今こうして気さくに話しかけてくれる姿からは、まったく想像がつきません。
「最初は本当に恥ずかしくて...。でも、祐徳稲荷神社は商売の神様でしょう。もう今は、お客さんと話すのが楽しくて。逆に、ときめいてますよ」そう笑って話すご主人の言葉が、なんとも印象的でした。
建物も歴史を感じさせる、レトロな雰囲気の看板の井手商店。実はここ、大正時代に創業し、100年以上せんべいを手づくりしている老舗。現在は、つるちゃんとお母さまが、ひとつひとつ丁寧に焼いているのだとか。
香ばしく焼き上げたせんべいに、新鮮な生姜を使った蜜をまぶした「生姜せんべい」は、祐徳稲荷神社で長年愛され続けてきた参道名物。また、「味噌せんべい」もロングセラー商品です。
先代から続く製法は変えていませんが、絵を描くのが好きなつるちゃんが、デザインやアイディアをプラスし、新しいせんべいも次々と生み出しています。
ちなみに祐徳稲荷神社にちなんだ「きつねの嫁入りクッキー」も販売中。このかわいいデザインを手がけたのも、もちろんつるちゃんです。
伝統を大切にしながら、"つるちゃんらしさ"が少しずつ加わっていく。そんな進化もまた、このお店の魅力のひとつです。
| 店舗名 | 井手商店 |
|---|---|
| 住所 |
佐賀県鹿島市古枝甲1685(MAP) |
| 営業時間 | 8:00〜17:00 |
| 定休日 | 不定休 |
| 電話番号 | 0954-62-2754 |
| 公式Instagram | @yutoku_senbei |
3. まつや土産品店
次に出会ったのは遠くからでも声が聞こえてくる、やたら元気なお母さん。
気になって立ち寄ったのが、まつや土産品店。佐賀弁全開で、こちらが圧倒されるほどいろいろなことを話してくれます。
最近の1番嬉しかったことを聞いてみると、「孫の成長やね。無事大きくなりよることが嬉しか〜!」と即答。その言い方も表情も、とってもチャーミング。
「あとは物価高が気になるばってん、いろんなクーポンを行政が出してくれるけんお客さんにおすすめしやすかね。これは本当に助かっとる〜。」と商売人らしい一面ものぞかせてくれました。
祐徳稲荷神社には海外の方も多く来られるそうで、「お母さんで英語で接客されるんです か?」と聞くと、「基本は『OK!』と『サンキュー!』だけしかしゃべれんとよ。最近はスマホの翻訳も使っているけど、佐賀弁で『よかね?』って言うても、ちゃんと訳してくれんしね。海外の人も『?』って顔しよるけん、なるべく標準語を話すごとしよるとよ」と、これまた佐賀弁で大笑いしながら教えてくれました。
そして、もうひとつ気になったのがレジ周り。「これ...レジですか?」と聞くと、「うちはじいちゃんの代から商売をしてて、これもじいちゃんの代から使いよるうちの玉手箱よ。これで間に合うくらいの商売しかしよらんし、さっと出せるけん、これでよかと〜」と、誇らしそう。
とはいえ、PayPayやスマホ決済にもちゃんと対応。「家業ば続けるには、時代に合わせて変わらんといかんもんね。最近は若い人、スマホ払いが多かけん」と新しいものも積極的に取り入れる姿勢は素晴らしい。
昔ながらのやり方を大切にしながら、必要なところはちゃんとアップデート。話しているだけで、元気をもらえる存在でした。
まつや土産品店では、柚子胡椒の製造・販売も行っていますが、その歴史はなんと"おじいさんの代"までさかのぼります。現在のご主人は三代目。柚子胡椒づくりそのものは、先代よりさらに前から続く家業なのだそう。
実はこの柚子胡椒、かつて鹿島を治めていた鍋島藩の藩主にも気に入られ御殿に納めていたというエピソードも残っています。
「最後の御殿様、つまり鍋島藩の最後の藩主の方が気に入っていたと聞いています」
そんな由緒ある味を今も変わらぬ製法で受け継ぎ、当時と同じように、一つひとつ手づくりで作り続けているのが、まつや土産品店の柚子胡椒です。
鍋島藩に愛された味を、今は私たちが、気軽に手に取れる。そう思うと、ひと瓶の重みも少し違って感じられます。
| 店舗名 | まつや土産品店 |
|---|---|
| 住所 |
佐賀県鹿島市古枝甲1655-3(MAP) |
| 営業時間 | 9:00~17:00 |
| 電話番号 | 0954-62-5450 |
4. 新油屋
路面に出ている、おいしそうな写真に惹かれて近づいてみると、出迎えてくれたご主人。カメラを向けた瞬間、すっと視線をそらして、
「いや、恥ずかしいんで...」と、小さくひと言。どうやら動画撮影はNGとのことでしたまだ正式な代替わりはしていないものの、ご主人が4代目になる予定なのだとか。
東京で3年間、和菓子屋さんに修行に出ていたそうで、その後、鹿島に戻って家業に入ったのだそうです。「最初から継ごうと思ってたんですか?」と聞くと、少し照れたように笑いながら、「いや、全然思ってなかったです。本当は大学行って、公務員とかかなって思ってたんですけど、途中で勉強が嫌になって...もういいやって」と、かなり正直。
「親から継げって言われたわけでもなくて、自分で決めましたね。どっちかっていうと消去法です」そう話しながらも、また少し照れたように視線を外すあたり、やっぱりちょっと恥ずかしがり屋です。
そんなご主人が作っているのが、代々受け継がれてきた稲荷ようかん。味も、製法も、基本は先代からそのまま。
細長い形の羊羹が特徴的で、地元では「糸切羊羹」って呼ばれることの方が多いそう。
誕生秘話について聞いてみると、「北海道に似た形の羊羹があって、先代がそれを見て"これ売れるな"って思ったんじゃないですかね。九州には当時あまりなかったみたいですと、淡々とした受け答え。あまり自分の話を大きく語るタイプではなさそうです。
ちなみに屋号に「油」とつく理由を聞くと、「昔はここ、旅館とか食堂してたらしくて...その前は油も扱ってたみたいです」と、また少し小声に。
「なので、羊羹なのに"油屋"なんです」と、どこか照れくさそうに教えてくれました。
強面だけど、実は恥ずかしがり屋。がっつり語るタイプではないけれど、話していると、じわじわ人柄が滲み出てくるご主人。
この人が作る羊羹なら、ちょっと食べてみたくなる。そんな不思議な安心感のある和菓子屋さんです。
| 店舗名 | 新油屋 |
|---|---|
| 住所 |
佐賀県鹿島市古枝甲1695-1 (MAP) |
| 営業時間 | 9:00~16:00 |
| 定休日 | 不定休 |
| 電話番号 | 0954-62-2084 |
5. ぴかそフレンズ
鹿島スカイロード商店街を歩いていると、思わず二度見してしまう名前のお店が目に入りました。
「ぴかそフレンズ」
......ぴかそ?フレンズ?これはもう、話を聞くしかないと思い、ふらっと入ってみると、 出てきたのは、どこか只者じゃない雰囲気のお父さん。話を聞くと、18歳で美容師になり、この道60年。福岡で10年ほど経験を積んだあと、実家の美容室にUターンしたそうです。
もともとの店名は「ピカソ美容室」。これはお父さんのお父さんがつけた名前なのだとか。
「ピカソのひらがなはね、もともとカタカナやったとですよ。でもカタカナやと、なんか硬か感じがしてね。それで、ひらがなにしたと。フレンズは要するにお客様と友だちみたいに仲良くせんばってことたい」と、独特の語り口で教えてくれました。
そんなお父さんの趣味は読書。「小説ばよく読みよったね〜。10代の頃から読んどるけん、もう1,000冊以上はいっとると思いますよ。ミステリーも何でも読みます」と、本の話になると急に饒舌。
「最近読んだ本で、これは良かった!みたいなのありますか?」と聞いてみると、「最近、読めてないんですよ」と、ぽつり。
忙しいんですね。なんて話していると、実はお父さん、鹿島市議会議員でもあるそうで美容師と議員、二足のわらじで鹿島のために活動中。
そんなお父さんが立つのが、ぴかそフレンズ。取材中も、次から次へとお客さんが来店。気づけば、お父さんの周りにはいつも誰かがいて、自然と会話が生まれていました。
名前の通り、なんだか友達に会いに来る場所みたいな美容室です。
| 店舗名 | 美容室ぴかそフレンズ |
|---|---|
| 住所 |
佐賀県鹿島市大字高津原3937−3(MAP) |
| 電話番号 | 0954-62--2965 |
6. クリーニング毎日屋
「シミ抜きで困った人の駆け込み寺があるらしい」そんな噂を聞いてやってきたのが、クリーニング毎日屋。
ご主人にシミ抜きについて聞いてみると、意外にも「食べこぼしが時間経って黄ばんだやつとかは、全然すぐ取れますよ」と、軽い調子で教えてくれました。
白いシャツが、時間が経って黄色くなるようなシミは、実はそこまで難しくないのだそう。逆に厄介なのがスミ汚れ。「触ってなければ落ちます」と、迷いのない口調。
スミは細かい粒子なので生地の奥に入り込みやすく、他店などで既に汚れ落としが行われていると、逆に取れにくいそうです。
「早い段階ならその定着を溶かして取れるんですけど、一度触られると中に入って、もう難しくなりますね」
話を聞いていると、シミ抜きはかなり科学的な作業。酸化反応を考えながら、過酸化水素などの薬品を組み合わせて使っているそうです。
「汚れを見てこれはこれだから、この薬品とこの薬品を使おう、って配合を考える感じですね」まるで理科の実験のよう...。学生時代、理科は得意だったんですか?と聞くと、「中学までは得意でした」と笑顔。シミ抜きは、まさに"実践の化学"でした。
"THE町のクリーニング屋さん"という店内なのですが、ふと横を見ると、どう見てもクリーニング屋には適していない大きな機械が目に入りました。
「これ、何ですか?」そう聞くと、店主さんはあっさりとひと言。
「靴の修理機械ですね」
え、靴?クリーニング屋で?と思って話を聞いてみると、どうやらご主人は革製品が大好きで、革製品のメンテナンスも行っているとか。
革製品のメンテナンスを行っているお店は様々ですが、ブランド価値を完璧に保ちたい人はメーカー修理へ。でも「この靴が好きだから、長く使いたい」人なら、こちらに修理をお願いすれば綺麗に直してくれます。
代表的なのは、かかとの修理やヒールのゴム交換。ピンヒールの先のゴム交換なんて、「クリーニング屋さんでやってるところ、ほとんどないですよ」と笑います。
でもご主人はあくまで、「完全に俺が好きでやっているので」とさらっと。
「古着好きのお客さんが来れば、古着の話をするし、コーヒーを差し入れしてくれる人もいて、そのまま世間話が始まることもよくありますよ。だから正直、儲からないんですよ」と笑いながらも、どこか楽しそう。
実はご主人は、商店街の理事長でもあり、商店街の未来についても本気で考えている人。
「結局、商店街が生き残るって、人が集まる場所になるしかないと思うんですよね。商店街で働いてる人の人柄とか、思いとか、そういうのが伝わる場所になればいいなって思ってます」
そう話す姿を見ているとご主人の思いに胸が熱くなりました。
| 店舗名 | クリーニング毎日屋 |
|---|---|
| 住所 |
佐賀県鹿島市高津原4244−19 (MAP) |
| 営業時間 | 7:30〜19:00 |
| 定休日 | 日曜 |
| 電話番号 | 0954-62-3720 |
7. YAWD
もうひと目見た瞬間から、どうしても気になってしまうのが、お店の方の髪型。
いわゆるドレッドヘアなのですが、「どうなってるんだろう...?」と目が離せません。もう 5〜6年くらいは今の髪型をキープしているらしく、「どうやって作ってるんですか?」と聞くと、「わざと絡めて、こういう感じにしてるんですよ」とのこと。
重くないですか?と聞けば、「めっちゃ重いですね」と即答。毎日洗えるけど、乾かすのがとにかく大変で、完全に乾くまで1時間くらいかかるのだとか。
「もう乾かすの諦めてますね。髪を髪で束ねてます」と、さらっと言うあたり...クセが強いです。
だったら切れば良いのにと思った取材班。新ヘアの提案をしてみるも「切らないですね」ときっぱり。
理由を聞くと、レゲエが好きで実際にジャマイカにも行ったことがあるそう。
「ジャマイカの人たちって、思想的に髪を切らない人も多くて。それに影響されましたね」ジャマイカの考え方やカルチャーに惹かれたのだとか。
ちなみに、店内にある大きなスピーカーも、レゲエ文化から来ているそうで、夜になるとジャマイカ音楽が流れることも。
客層も意外と幅広く、若者からおじさん、おばあちゃんまで、老若男女問わず集まるそうです。
以前はランチ営業もしていてコロナ禍で一度やめたものの、「また食べたい」という声が多く、今は夜に食事を出しているとのこと。
正直、最初は髪型に目がいきすぎて、何のお店か忘れかけていましたが、夜遅くまでお酒と料理が楽しめる素敵なお店です。
| 店舗名 | YAWD(ヤード) |
|---|---|
| 住所 |
佐賀県鹿島市高津原4304-4(MAP) |
| 営業時間 | 20:00〜2:00 |
| 定休日 | 木曜 |
| 電話番号 |
080-4310-8585 |
| 公式Instagram |
さいごに
今回の鹿島のまち歩き特集はいかがでしたか?
実は恥ずかしがり屋だったり、とにかく元気なお母さんがいたり。それぞれの人柄が、そのままお店の空気になっているのが印象的でした。
「何を買うか」よりも、「誰に会いに行くか」。そんな気持ちで歩いてみると、鹿島の商店街はもっと面白く見えてきます。
今回ご紹介した「祐徳観光商店連盟」と「鹿島スカイロード商店街振興組合」は、佐賀県が物価高騰対策を目的とした、「佐賀県プレミアム付商品券・クーポン券発行支援事業」に参加しています。