地域の魅力はその土地で暮らす人たちの思いが混ざり合い、溶け込み、形成されています。
自分のために、家族のために、そして地域のために、何ができるのだろう。
「やりたい」と思い描いた夢は共感を呼び、一滴の雫が大きな波紋となって地域に、そして人の心に広がっていきます。
ローカリストと呼ばれる地域のプレイヤーは正解の無い地域づくりに挑戦している人々。
そんな彼らに出会える「SAGAローカリストアカデミー」が9月と10月に開催され、参加者と9名のローカリストたちが、各ローカリストが考える「お試し地域づくり活動」についてのワークショップを行いました。
そんなそれぞれのグループが行った「お試し地域づくり活動」のレポートをお届けします。
おさらい SAGAローカリストアカデミーとは?
「『やりたい』が『できる』に変わる地域を目指して」をコンセプトに、地域づくりを楽しむ「ローカリスト」たちと、地域づくりに関心がある、これから地域づくりに取り組もうと考える参加者「ネクストローカリスト」を繋ぐ出会いの場。
地域づくりの魅力を伝え、ローカリストがネクストローカリストと共にやりたいと考えた「お試し地域づくり活動」を具体的に実践するためのワークショップを行います。
アカデミー後には10月から翌年2月の5か月の間にそれぞれのチームが、ワークショップで組み立てた内容を実行に移します。
ローカリストがネクストローカリストと共にやりたいと考えた「お試し地域づくり活動」が実際に動き出しました。
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「うちやま百貨店」の賑わいを日常化したい
第6回目は、特定非営利活動法人 灯す屋で「うちやま百貨店」の企画運営をされている、佐々木元康さん。
有田町の重要伝統的建造物群保存地区の内山地区で開催される、まちなかマルシェ「うちやま百貨店」は、開催の度に多くの賑わいを生み出します。佐々木さん自身「うちやま百貨店」の集客力は想定を超えたもので内山地区のポテンシャルの高さを確認できたのだそう。また、回を重ねるごとに地域や近隣の人たちにも喜ばれるイベントとなり、多くの出店者との繋がりができたのだとか。
しかし、新型コロナウイルス感染症の影響で、企画していた「うちやま百貨店 2020年 春」の開催は中止となり、「うちやま百貨店 2020年 秋」の開催は新型コロナウイルス対策を十分に行った上での開催となりました。
そんな状況を受け、佐々木さんが考えたお試し地域づくり活動の内容は「コロナの現状を逆手に今までより面白いうちやま百貨店をつくる」こと。そして、以前から目標とされていた「うちやま百貨店」の賑わいを日常化すること、「空き家を活用する」流れを作ることを念頭にワークショップを進めました。
ワークショップでは「こんな街歩きイベントは嫌だ」をテーマに次々と意見を出した後、佐々木さんから「うちやま百貨店」の概要の説明がありました。
そこで決まったことは、実際に「うちやま百貨店」を体験し、後日オンラインミーティングで体験した感想を共有。その共有をもとに、継続できる形の「ミニうちやま百貨店(仮)」の企画を行い、実施すること。
その後、実施に向けてのミーティングを重ねることとなりました。
まずは実際に「うちやま百貨店」に参加してみよう
イベント企画を行うにあたって、大切なことの1つは、まず「うちやま百貨店」を知ってもらうこと。
ネクストローカリストはアカデミーの後の11月22日(日)と11月23日(月)に開催された「うちやま百貨店2020 秋」に運営スタッフ、そして来場者としての2つの目線で参加しました。
運営スタッフの体験では、今回新型コロナウイルス感染症対策のため設置された「関所」と呼ばれる検温所で、来場者の検温や検温済みを知らせるリストバンドの配布、イベントフライヤーの配布などを行いました。
感じた事をアウトプット。実際にイベントを計画してみよう
その後、3回に渡って行われたオンラインミーティングでは、アカデミーに参加したネクストローカリストと特定非営利活動法人 灯す屋にインターンシップをしている学生と共にイベントの企画を詰めていきました。
うちやま百貨店のいいところ、課題とは?
1回目のミーティングでは、「うちやま百貨店2020 秋」に参加して「良かったと感じたところ」や「課題に感じたところ」を最初に共有しました。
今回初めて置かれた「関所」や「アマビエミッケ」・「うらろじミッケ」などの参加者が体験するイベント、「うちやま百貨店オリジナルマスク」の販売、飛沫防止のためにレジ前に吊るされたシートに施した「レジ前おむかえアート」といった企画内容だけでなく、「ホームページ」や「公式SNS」などに対しての意見も共有し、合わせて体験して思いついた「おもしろアイデア」を出し合いました。
そこで出た意見の一部はこちら。
【良かったと感じたところ】
・屋外休憩所があった
・まちの人が喜んでくれた
・新型コロナウイルスの影響もあったが、まちの賑わいが戻った
・裏路地が迷路みたいで魅力的だった
【課題に感じたところ】
・「関所」の忙しさが疎らだった
・運営スタッフの負担が大きかった
・道路が危ない
・もっとスタッフも楽しみたかった
・地域の人たちとの関わりがもっと欲しかった
【おもしろアイデアなど】
・空き店舗を使って、DJブースを作る
・スタッフ&お客さんでおそろいのTシャツを着る
・音楽イベントを行う
・裏路地を活用する
月に1回、参加したいイベントとは?イベントのテーマを決めよう
次はお題に沿ったブレスト。お題は「毎月1日だけ、参加したいイベントってなに?どんなもの」。
集まった15人を2つのグループに分け、それぞれのグループ内でブレストを行います。
朝市や飲み歩きなどの意見が飛び交う中、気になる言葉を佐々木さんがピックアップ。ピックアップされた言葉を軸にテーマを決定していきます。
決定したテーマは「朝に開催される」「食べ歩きを楽しめる」「お酒も楽しめる」「定期開催を視野に入れる」「MEET UP!ARITAやちゃわん最中の販売などの別のイベントと併せて」の5つになりました。
イベントの今後を左右する?!イベントをネーミングしよう
次は大事なイベントのネーミングについて。
ネーミングを考える上でのルールは「うちやま"百貨店"」と切り分けること。
うちやまビュッフェやうちやまモーニングなどの意見が出る中、命名されたのは「うちやまブランチ」。
命名の理由はこちら。
① 10時~14時のブランチタイムに開催されるため
② 「土曜のお昼といえば」ということで「〇様のブランチ」をイメージ
③ うちやま百貨店の支店(ブランチ)であるため
④ まちを"ブラブラ"してほしい気持ちを込めて
4つの想いが込められたイベントの企画が本格的にスタートしました。
「うちやまブランチ」の希望と約束、そして目標
企画内容を本格的に固めていく前に、佐々木さんからのイベントを行う上での希望と約束、目標が発表されました。
【希 望】
1つ目は美味しいパンやコーヒーを飲みながら、移住者と地元の人たちが交流する「ARITA MEET UP!CAFÉ」を開催すること。2つ目は既存店や商店会と協力すること。最後に音楽を絡めたイベントを行うこと。
【約 束】
「春陽堂」を基点にし、関係者がやりたいことをやれる場にすること。出店者はもちろんのこと、運営も黒字経営が見込め、地域内の商店との連携ができること。そして通年出店へ繋がる仕組みをつくることが挙げられました。
【目 標】
「うちやま百貨店」以外で内山地区に楽しいイベントを催して集客し、1年以内に持続可能なイベントの開催・内山地区への出店の仕組みをつくり、3年以内に「うちやま百貨店」の賑わいを日常化すること。
この3つを基にまずは開催場所の「春陽堂」を中心に徒歩5分圏内に、活用を想定した店舗も4店舗と規模を小さくスタートするということになりました。
まず、イベント店舗の1つである「手塚商店」をイベントブースとし、前半に学生ネクストローカリストによるジャズバンドや嬉野ディスクジョッキー実業団による演奏、後半に「ARITA MEET UP!CAFÉ」を盛り込み、通常の「うちやま百貨店」にない、マルシェだけでなく楽しめるイベントの企画を行いました。
また、街を楽しんで周回してもらう企画として、内山地区のお店に隠された「合言葉」を探し、見つけた人には内山地区のお店や出店店舗で使える割引券をプレゼントする「あいことばミッケ」なども企画しました。
そして、イベント運営をする上で大事なイベントの広報活動は、SNSによる情報発信やWEBマガジンでの告知を行うこととなりました。
ネクストローカリストの声
アカデミーから参加されていたネクストローカリストの安藤さんに、今回のお試し地域づくり活動の参加理由と参加した感想をお伺いしました。
- 安藤さん
-
お試し地域づくり活動に参加しようと思ったきっかけは、なんとなく楽しそうと思ったからです。
大学進学を機に佐賀に移住して3年目となりますが、佐賀で行われている活動について何も知らないことに多少なりとも危機感等があったのかもしれません。また、コロナ禍という、例年と比較して、充実感が不足していたことも要因であるような気がします。
せっかく参加してみたから、全力で楽しんでやろうと思いました。
自分の中で大きく変わったと思えることはまだ実感していませんが、こういった体験の積み重ねが、いつか気づきのヒントになると思っています。
残念ながら、イベントの開催は延期となりましたが、イベントを開催するにあたって会議をしていく中で一つのイベントを成立させることの難しさを感じました。
ローカリストアカデミーで普段接する機会のない学生や大人の方達と一緒に、こうして地域での活動に少しでも関わる事ができた経験は、どこかで生きていくと思っています。
最後に
今回1月16日に開催予定だった「うちやまブランチ」は、都市圏での緊急事態宣言や県内での感染者の急激な増加もあり、延期を余儀なくされました。
しかし、ミーティングの中では「イベント延期」に対して「開催までバタバタの企画だったので、またしっかり企画を練る時間ができた」などポジティブな意見が多かったことが印象的でした。
実際のイベントを複数の視点で見て、体験することでわかる、いいところや課題。運営だからこそわかること、運営だからわからなかったことを見つめる機会となった今回のお試し地域づくり活動。
様々な視点で地域を見つめ直すこと、ネガティブなことをポジティブに転換することも、地域づくりをする上で大事なポイントとなるでしょう。
EDITORS SAGA編集部 相馬 千恵子