真摯に耳を傾けて「気づき」を導く。悩める人の再ステップを笑顔で見届ける「こころの応援者」大森由希子さん

真摯に耳を傾けて「気づき」を導く。悩める人の再ステップを笑顔で見届ける「こころの応援者」大森由希子さん

「私の話を聞いてほしい...」

そんな切実な思いを抱える人が、仕事、家族、人間関係、恋愛など様々な悩みを秘めつつ、足を運ぶ場所があります。

佐賀市唐人2丁目にある、昭和の面影が残る木造の店舗を改装したレンタルスペースの一室。3階に上がり、「カジュアルカウンセリングきくみみ」の表札を掲げた扉を開くと、アンティークな床壁に囲まれた3畳間ほどのこじんまりとした小部屋が目の前に現れます。

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アロマの香りに包まれた空間に、小さめのテーブル、ソファ、本箱、観葉植物が丁寧に並んだ無駄のないシンプルな構成が、落ち着きと安心感をもたらします。そして笑顔を浮かべながら訪問者を迎えてくれるのが、このカウンセリングルームのオーナー、大森由希子さんです。

佐賀のメイン通りの一角でひっそりとカウンセリング業を営む大森さん。これまでの歩み、「きくみみ」の名称に込めた仕事への想い、そして将来の展望を、存分に語っていただきました。

お話を聞く専門店

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カウンセラーとして、そして経営者としての歩みを始めて、約半年が過ぎました。

先代経営者から受け継いだこのカウンセリングルームは、お客様からも驚かれるほどの狭さですが、その分対面距離が近いのでひとりひとりのお客様に真摯に向き合うことができます。

ただただ話を聞いてもらいたい、誰かに自分を認められたい、そんなときがありませんか?普段人には話しづらい「自分のこと」を吐き出す機会を提供するのが私の仕事で、ここは言わば「お話を聞く専門店」といったところ。病院での治療行為や専門的な心理療法の前段階として、気軽に立ち寄ってほしいですね。

特に専門的な資格があるわけではなく、カウンセリング業務経験が豊富なわけでもありません。そんな私がこの仕事に出会えたのは、数々の偶然と、かけがえのない人とのご縁がありました。

人と誠実に接してきた日々。でも、傷ついて...

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1983年9月に佐賀市東与賀町で生まれた私は、活発に動くことが好きでピアノを習っている、ごくごく普通の女の子でした。幼稚園の時の先生がとても優しくて大好きで、憧れの存在になったことが、今思えば私のキャリアの原点だったのかもしれません。元々おしゃべりで人の世話をすることに喜びを感じるタイプなのに加え、子どもが大好きだったこともあり、保育業界で働くことを夢見るようになったんですよね。

短大卒業後、佐賀市内で保育士として働き始めました。でも好奇心旺盛な私は、ご年配の方のお役にも立ちたいとの思いが芽生え、介護ヘルパーの資格を得て老人福祉施設に再就職。そこで看護師をしていた主人と出会い、27歳の時に結婚しました。

その後は保育士に戻り平々凡々な幸せな日々を送っていたのですが、職場での立場が上がるようになると、次第に人間関係に悩まされるようになりました。上司や後輩とのやりとりがうまくいかずぎくしゃくし、自分を奮い立たせて頑張ろうと焦っては疲れて、誰にも心を打ち明けられず孤独感も感じてしまい、精神的に追い込まれていったんです。

ついに心が限界に達し、言葉が出ない、歩行がおぼつかないといった身体症状にも襲われ、2年前に大好きだったはずの保育士の仕事を辞めることになりました。

私の人生を変えてくれた「きくみみ」との出会い

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心療内科を受診してみても、事務的な聞き取りが淡々と繰り返される印象で、薬をいっぱいもらうばかり。どんよりとしたままの心は晴れず、感情の整理がつかないままでした。そこで民間のカウンセリングを受けようと思い立ち、ネットで調べて去年の夏に足を運んだのが、「カジュアルカウンセリングきくみみ」だったんです。

緊張気味に訪ねた私を待ってくださっていたのは、カウンセラーの吉岡花梨(はなり)さん。看護師でもある吉岡さんは、諸外国のように気軽に悩み相談できる場が必要と考え、2023年10月にこのカウンセリングルームを開業されていました。

私は、これまでに起きたことをありのままに話し、今抱えている辛く苦しい心情を余すことなく吐き出しました。吉岡さんは「うんうん」と優しく頷きながら、私の話に真剣に耳を傾けておられました。これがいわゆる「傾聴」です。すると魔法にかかったように、私は話せば話すほど、傷ついていた心が癒されるような感覚になっていって...。気兼ねすることなく何でも話せる場所と、「聞く耳」を持ってくれる人との出会いで、私は変わりました。自分を見つめ直すことができ、心身の健康も取り戻せたのですから。

吉岡さんはとても気さくな方で、すっかり打ち解けた私は、世間話をする感覚で気軽に相談部屋を訪ねるようになっていました。すると今年に入り、吉岡さんから思いもよらぬお話をいただいたんです。

ご家族の事情で佐賀を離れることになり、このカウンセリングルームを引き継ぐカウンセラーとして、私を指名してくださって。「私でいいのかな...」と驚き戸惑いましたが、吉岡さんは「あなたは優しく強くて美しく、そして天性の傾聴力を持っている」のだと。嬉しい言葉をいただいた私は意を決し、2025年3月、「きくみみ」を引き継ぐことになりました。

真剣に傾聴すると、人は「気づく」ようになる

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このお店には、様々な悩みを抱えた人が来られます。話を伺ってみると、「完璧を求め過ぎた」「頑張りすぎた」「休みが不足していた」など、悩みの背景には何らかの「無理」が潜んでいることが分かってくるんですね。

でもそこで良かれと思ってアドバイスをすると、どうでしょうか。自分の欠点を見透かされたように受けとられたり、上から目線の物言いに捉えられがちで、拒絶感が沸いて逆効果になってしまうことがあります。たとえそれが正論でも、いや正論であればなおさら。

私の役目は、お客様の話を肯定的かつ共感的に聴く「傾聴」に徹すること。そして、悩みの原因から自分を苦しめてきた考え方や感情にいたるまで、自分自身で「気づいて」もらうこと。

当店では、お客様の心の中には、すでに答えや意志があると考えています。日々のストレスや考えごとに支配され、それらが見えなくなっているだけ。お客様が心地よくお話になるように聴くことに特化し、心の奥に眠っているご自身の答えを引き出します。

「気づき」を得たお客様は、顔がほころんだり口調が明るくなったりと、目に見える変化が現れます。そして笑顔を浮かべてお帰りなるのを、私もまた笑顔で見送っていると、「この仕事をして本当によかった」という喜びに包まれるんです。

相談中に泣くのもOK!涙って「キレイ」だから...

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話をお聴きしていると、お客様が喜怒哀楽を露わにする姿にふれます。感情が表に出るのはとても大事なことで、感情に理解を示し共感することで、お客様は「気づき」に着実に近づいていきます。

女性の中には、涙を流しながら切々と話し続ける方がいらっしゃいます。対して男性は人前で泣くことは憚れるのか、感情を抑制し、涙を堪えようとされます。もちろんそれは素敵なこと。でも私は、男性の方にも遠慮なく感情を吐露していただきたいので、泣きたいときには泣いてほしいって思います。

泣くことで気分がスッキリするとよく言われるように、心の中に潜んでいた濁りやモヤモヤを、外に流せます。傷ついた心を涙によって綺麗に洗浄できれば、次のステップへの準備に入れます。感情に蓋をして頑張ってきた自分を認め、泣くことを許してあげてほしい。

涙を流すことは「キレイ」なことなんです。

感情と素直に向き合うことは、自分自身を客観的に見つめるきっかけになります。自分を知ることで、自分が抱えていた悩みの正体を正確に捉えることができ、前に進むことができます。

幸せは、自分自身で決めるもの。この場所が、幸せへの本当の第一歩になればいいなと願っています。

傾聴の日々、その先を見つめて

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今でも手探り状態で勉強中の身ですが、私なりのやり方でこの相談部屋を盛り立てていこうと日々奮闘しています。

通常のカウンセリングに加え、無料でドリンクをサービスしたりマヤ暦をもとにした占いセラピーも提供するなど、ここに足を運んだ方に少しでもお喜びいただけるよう工夫を凝らしています。

将来の夢、ですか?今はコツコツと、自分にできることに精一杯取り組んでいる感じですね。このお店をこれからも続けて、悩めるお客様おひとりおひとりの言葉に丁寧に耳を傾けること。その繰り返しの中で、今後の展望が明確になっていくかもしれません。

今この瞬間にも、辛い思いをされている方がいらっしゃるはずです。

「こんな場所、あったらいいのに」

そんな声なき声を受け止める、私でいたいと思っています。

ご縁があって私に会ってくださった方々には、気づきを得て自分を見つめ新たな人生のステップを元気よく踏み出していただきたい、そう切に願います。

「こんな場所があって、本当によかった」

心の底からそう思っていただけるよう、私は今日も「きくみみ」を持ち続けます。

まとめ

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取材中、大森さんは終始笑顔を崩さず、凛とした姿勢にはきはきとした口調で応じてくださいました。

大森さんご自身が、心が安定した充実した日々を過ごされていると、インタビューを通して強く実感しました。様々な経験を乗り越えられ、自らの性格や雰囲気が最も活きて人を幸せにできる仕事に巡り合い、充実感に満ちた佇まいはさらに煌めきが増しておられるように思います。

相談者を優しく受け容れ、すべてを肯定する、まさに「こころの応援者」であり続ける大森さん。

このような人間性を持った方を「必要としている人」が必ずいる。大森さんと出会って、苦しみのステージから脱し、新たなスタートを力強く踏み出す人がひとり、またひとりと出てきたら、なんと素晴らしいことでしょう。

この記事が、悩める人たちと大森さんの橋渡しになればとの思いで、この度取材をさせていただきました。

今日もこのほんわかとした小部屋で、相談者の心にわずかでも確かな「光」が灯るべく、「きくみみ」の花が咲くことを願いつつ。

店舗名 カジュアルカウンセリング きくみみ佐賀店 代表:大森由希子
住所 佐賀県佐賀市唐人2-5-15まちなかオフィスTOJIN館3F
営業時間 11:00〜19:00
不定休 完全予約制のため
電話番号 080-3952-9228
公式サイト https://kikumimi-2023.com/
公式SNS

Instagram:@kikumimi_2023

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ライター

オカモト

フリーの物書き。佐賀市在住。これまで、ネットメディア記者、取材ライター、ウェブライター、コラムニスト、ブロガー、YouTubeシナ...

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