皆さん、こんにちは。北村朱里です。唐津に移住して3年目、少しはこのまちのことがわかってきたかも――そう思っていた矢先「名護屋城の茶室で、AI時代にこそ大切な"感性"を学べる会があるらしい」という情報をキャッチ。
なにそれ⁉やっぱり唐津には、まだまだ知らない世界がある......!ということで、さっそく潜入してきました。
非日常を感じる、名護屋城の茶室にやってきた
学びの会場は、名護屋城跡に隣接した「茶処 海月」。小高い場所にあり、非日常を感じさせてくれます。
勉強会を主催するのは、株式会社トライアングル。代表取締役の上田一弥さんが、自分と向き合って自分に価値を見出すことの大切さに気づいた経験から、こうした学びの場づくりを始めたのだそうです。
株式会社トライアングルとは
福岡に本拠を置き、プロファイリングを活用した企業研修、人材育成プログラム、経営者コミュニティの運営などを行う。企業連携型ベビーシッターサービスも展開。
まずはお茶の時間。唐津焼のお茶碗で八女のお茶が提供されました。背筋が自然と伸びます。そして、本当においしい。
参加者の多くは初対面のようでしたが、いつの間にか会話が弾み、まるで久しぶりに会った旧友のよう。それも、この環境が持つ特別な力なのかもしれません。
その後は、講師の山田航世先生によるワークショップ。唐津出身で、唐津に拠点を置くHealth&Tech株式会社の代表を務める、メンタルヘルスのプロです!
【海岸の瞑想会】唐津をもっと「攻め」のまちへ!瞑想がもたらす可能性と山田航世さんの想い|あおとあかの"唐津が知りたい!"vol.6
先生によると、学ぶ環境にもこだわっているそうで「名護屋城は、豊臣秀吉が全国統一の後、海外へ飛び出していくための拠点として築いたもの。そのエネルギーが今もここには満ちあふれていると、僕は感じているんです」と語ります。
最初のプログラムは「ブレスワーク」。"息をはく・吸う・止める"を規則的に繰り返すことで、心と体を整えるワークです。先生の穏やかな声に導かれながら、短い呼吸、長い呼吸を続け、最後には二分間、息を止めることにチャレンジ。
今この瞬間だけに意識を向けると、苦しさの中にも心地よさが混じるような、不思議な感覚が体の奥から湧き上がってきます。
終わったあとは、参加者の皆さんからこんな声が聞かれました。
「息を止めているのに心地よかった」
「体に血液が巡るのを感じた」
「自分の心の動きにフォーカスできた」
私自身も、呼吸を終えたあと、目の前の景色がさっきよりも鮮明に見えるような気がしました。
アート思考は、自分を知り人を知るツール
次は、庭園を望む次の間へと移動しました。ここでは一体、何をするのでしょう。
「ここに座って、しばらくの間、景色を見ていてください」
先生の言葉に従い、全員が静かに腰を下ろします。
しんとした空気の中で、動かず、話さず、ただ目の前の風景を見つめる時間。それは、すごく長くもあり、ほんの一瞬のようにも感じられました。
やがて先生が「どんなことを感じましたか」と問いかけると、庭の木々のこと、水辺の音のこと、自分の心の動きのことなど、参加者からさまざまな言葉が返ってきました。
そして次に、先生からの言葉。「今度は目を閉じて、耳に入る音を聞いていてください」
違うのは、目を閉じているということだけ。さっきまであんなにじっくり見ていた景色なのに、音だけを頼りにしてみると「ここには何があったっけ?」と、かえって想像がふくらみます。
やがて先生が問いかけます。「何が聞こえましたか?」参加者からは、庭を通り抜ける風の音、水の流れる音、剪定のハサミが鳴る音、室内の空調や衣擦れの音など、いろいろな答えがあがりました。
先生は一人ひとりの言葉に静かにうなずいた後、語りかけます。
「私たちは今、同じ空間に身を置き、同じ風景を見ています。なのに、出てくる感想は不思議といくつもありましたね。外の世界に対して感じることは、実は自分の内側の投影。その瞬間の心のありようが、見え方や感じ方に反映されるのです」
「自分の内側というのは、自分では気づきにくいもの。だからこそ"外"に目を向けることが大切なんです。そして、できれば"みんなで"見てほしい。並んだ視点の違いは、ただのズレではなく、それぞれの内側を照らし返すヒントになります。誰かが"穏やか"と言い、別の誰かが"ざわつく"と言う。その差分から、今の自分の深層心理が見えてくる。アート思考とは、風景を鑑賞する方法でありながら、自分を知るためのツールでもあるんです」
メンタルのプロが教える自信の持ち方、自己肯定感の上げ方
こうして静かな時間を過ごしていると、日々の忙しさの中で忘れかけていた"自分"という存在が、少しずつ取り戻されていくような気がします。
その中で、先生のこんな話が心に残りました。
「皆さん、"自信"ってなんだと思いますか?」
「"自己効力感"と"自己肯定感"という言葉を聞いたことがありますか。自己効力感とは、自分のスキルや能力に価値を感じられること。一方、自己肯定感は、自分の在り方や存在そのものを認められる力のことです。そして"自信"とは、この二つの掛け算でできています。どんなに自己効力感が高くても、自己肯定感がゼロであれば、自信はゼロのままなのです」
なるほど――。自信とは自己効力感のことだと思い込んでいたけれど、同時に自己肯定感もなければ、そもそも自信は成立しないのか。
では、その自己肯定感を高めるにはどうすればいいのだろう。
「自己肯定感を上げるひとつの方法は、"自分の意志で何かをする"ことです。周りを真似るのではなく、誰かの言いなりになるのでもなく、自分で決めて、自分でチャレンジすること。その結果がどうであれ、"自分の意志でやった"という経験そのものが、自分の存在を認めることにつながるのです。」
とはいえ、チャレンジにはやっぱり怖さもつきもの。
「本日行ったブレスワークなどの瞑想体験で活性化されるα波は、"チャレンジが怖くなくなる脳波"とも言われています。脳波が変わると、思考が変わる。思考が変われば行動が変わり、その先の結果もきっと変わっていくはずです」
"自信を持つ"とか"挑戦する"という言葉には、大きな力や覚悟が必要なイメージがありました。でも、こんなにも静かに、小さな一歩から始められるんだ。
参加者の表情にも、そんな希望の光が浮かんでいるように見えました。
さいごに
テクノロジーの進化、AIのアップデート、そして溢れる情報――。最新技術を使いこなすことももちろん大事ですが、その一方で、私たちは何か大事なものを忘れてしまいがちなのかもしれません。
自分は、他の誰でもない"自分"であると認めること。そして、それを誇り、自分らしい感性で世界を見つめ、自分だけの視点を周りと分かち合うこと。きっとそこから、互いの世界はまた広がっていくのだと思います。
自分の在り方を見つめ、それを素直に肯定できた、清々しい時間でした。今日感じた「私なりのアート思考」を、これからも大切にしていこう。
| イベント主催 | 株式会社トライアングル |
|---|---|
| 講師 | 山田航世氏(メンタルヘルストレーナー) |