私たちが暮らす地域。その魅力は、文化や歴史、産業だけでなく、そこでの暮らしを楽しむ人々の想いによって作り出されています。佐賀県には、自分の"やりたい"ことを追い求め、人々を巻き込みながら、地域の魅力を高めている人達がいることを知っていますか?
そのような地域で暮らす人々を「ローカリスト」と呼び、連載でお知らせしてきました。
2019年10月に県西部地区のローカリストが集まり、参加者と共に地域づくりについて考える「ローカリストアカデミー 」(嬉野会場)を開催。
ローカリストとネクストローカリストたち(アカデミーの参加者たち)がアイディアを出し合い、地域づくりの第一歩を踏み出す活動「お試し地域づくり」を考え実際に"やってみる"ことに......
ローカリストによって地域の課題や活動の目的は様々。地域づくりに興味を持つネクストローカリストたちとローカリストの交流から生まれた佐賀県各地で広がる地域活動をお届けします。
唐津こどもの日
第7回目にご紹介するのは、「唐津モンテッソーリこどもの家」理事を務める伊藤寿賀子さんのお試し地域づくり活動「唐津こどもの日」。
「唐津モンテッソーリこどもの家」の理事を務め、地域の親子たちが集まる「teracco」の活動など幼児教育に携わっている伊藤さん。唐津の教育に自由な選択肢を広げたいという思いが今回の活動の軸となっています。
お試し地域づくり活動
ローカリストアカデミーでは「世界から選ばれる人材が育つ唐津に」をテーマに、唐津のこどもと親の選択肢を増やすにはどんな取り組みをすると良いかを話し合いました。
アカデミーの中では、子どもが興味関心を持ったことに集中できる「唐津こどもの日」を制定すると共に、大人がその環境をつくっていこうという流れに。
「子どもたちにいろいろな選択肢を持たせ、子どもの『選力』を向上させよう」
「大人は子どもがやりたいということには口を出さないというルールをつくろう」
など積極的に意見が出ていました。
「例えば子どもがアメリカに行きたいと言い出したら、実際に渡米するのは難しくても疑似的にアメリカを唐津につくってあげることはできるかもしれない。そんな風に子どもたちの要望をできるだけ叶えてあげられる日にしたい」という発表がとても印象的でした。
活動の様子
アカデミーで出たアイデアを受けて、ネクストローカリストたちと伊藤さんで「唐津こどもの日」を具体的にどのように作っていくかをお試し地域づくりでは話し合いました。
12月25日、話し合いの会場となったのは「シェアオフィス唐津.com」。唐津の人材育成を目的として活動している団体「さんもく」のメンバーや、子育て真っ最中のママさんを交えて企画を詰める話し合いが行われました。
話し合いを経てまとまった「唐津こどもの日」の企画は2020年5月2日(土)・3日(日)に開催される「Hana Marche(ハナマルシェ)」イベントの中でおこなわれます。
イベントの中で、スペースを分けて子どもたちの「インプット(知識や経験を得られる企画)」と「アウトプット(自由に表現ができる企画)」にそれぞれ特化してみてはどうかと意見が交わされました。
子どもたちの素朴な疑問に答えるブースや自由にお絵描きができるブースなどたくさんのアイデアが飛び交うなかで、佐賀大学医学部で学ぶネクストローカリストからは「医療ブースをつくって子どもたちに医療ってどういうものかを知ってもらいたい」という医大生ならではの意見も。
さらに、中学生や高校生にイベントを創り上げるところから参加してもらおうという試みも。
「唐津こどもの日」が「一緒にイベントを創り上げてくれる子どもたちにとっては目標を達成するゴールに、当日イベントに来てくれる子どもたちにとっては興味関心の幅が広がるスタートになればいいよね」という伊藤さんの言葉を聞いたネクストローカリストたちの顔にも笑顔の花が咲きました。
「Hana Marche」イベントでは、チームリーダーや当日スタッフとして活動してくれる中高生のボランティアスタッフも募集中です。
ネクストローカリストの声
お試し地域づくり活動「唐津こどもの日」に参加したネクストローカリストに活動の感想や今後やってみたいことについて聞いてみました。
高阪太夢さん(佐賀市在住) -
佐賀大学医学部で学んでいる学生ですが、大学で学ぶこと以外に地域の情勢なども知っておきたくて参加しました。医者が子どもや大人、高齢者まで病院の周りの地域全体と密接に関わる地域医療を志していきたいと考えているので、今回参加させてもらえてとても勉強になりました。
Hana Marcheで医療に関する謎や疑問を解決できるブースが実現したら、子どもたちに医療ってこういうものなんだということを教えたいです。医療従事者を目指すとまではいかなくても、医療に対して興味を持ってもらえたら嬉しいです。
石田祥代さん(唐津市在住) -
もともとモンテッソーリ教育に興味があって、唐津でモンテッソーリ教育(※1)をしている伊藤さんのことを知って参加しました。これから大人になっていく、未来につながる子どもたちを地域でバックアップするというとても素敵な活動に今回参加できて本当によかったです。
私も唐津で生まれ育って唐津のいいところをたくさん知っているので、子どもたちにも唐津の良さを伝えていけたらなと思います。
山下慶さん(佐賀市在住) -
地域に対して強い想いを抱いている大人の方と意見交換するという大学生活の中ではなかなか得られない経験ができてとてもよかったです。自分が今まで考えもしなかったことが話し合いの中でたくさん出てきて圧倒されました。
「子どもたちの選択肢を広げる」というのが今回のテーマでしたが、たくさんの人の様々な意見を聞くことで自分の視野も広がり、とても良い経験になりました。
(※1)モンテッソーリ教育:「自立していて、有能で、責任感と他人への思いやりがあり、生涯学び続ける姿勢を持った人間を育てる」ことを目的とした教育法
おわりに
去年からローカリストとしてこの事業に参加してきた伊藤さんは、イベントを1回開催して終わりにしてしまうのではなく、もっと唐津の人を巻き込んで活動が続いていくようなものにしていきたいと話してくれました。
どんな活動も「継続することが大事だが、それが一番難しい」と言われる中で、地域を巻き込んで当事者意識を持った人が増えていることを実感できた今回の活動。5月のHana Marche開催に向けてまだまだ活動は続いていきます。協力者の輪をどんどん広げていく「唐津こどもの日」のこの先がとても楽しみです。
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EDITORS SAGA編集部 中島ちひろ