【佐賀のいいモノ】蔵で息づく"目には見えない"職人たち。自然の麹菌が生み出す香り豊かな醤油 - MONO SAGA #3

【佐賀のいいモノ】蔵で息づく"目には見えない"職人たち。自然の麹菌が生み出す香り豊かな醤油 - MONO SAGA #3

EDITORS SAGA編集部・中島が県内を巡りながら"佐賀のいいモノ"を紹介していく連載企画「MONO SAGA」。

第三弾のテーマは、料理の味を決める調味料「醤油」に注目。今回は、佐賀市にある丸秀醤油の「自然一醤油」をご紹介します。
フレッシュな香りと優しい甘さの秘密には、目には見えない麹菌たちの力がありました!

今回見つけた"佐賀のいいモノ"はコレ!
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丸大豆を原料に、2年間じっくりと発酵・熟成させた、天然醸造の醤油。

香り豊かで、やさしい甘みが特徴。素材の味を引き出す料理の名脇役です。

120年続く、佐賀唯一の天然醸造が生み出す醤油

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今回訪れたのは、佐賀市高木瀬にある「丸秀醤油」。明治34年(1901年)創業の、120年以上も続く老舗の醤油蔵です。
蔵に隣接する直売所「麹庵(こうじあん)」では、六代目の秀島健介さんが迎えてくれました。

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丸秀醤油 秀島健介さん

「丸秀醤油の特徴は、佐賀県で唯一、天然の酵母や乳酸菌を使って醤油を仕込んでいることです。機械化を進めた部分もありますが、基本的な作り方は創業当時と変わらない天然醸造にこだわっています。

一般的な醤油は短時間で大量生産するために培養菌を添加したり、人工的に温度管理を行ったりしますが、うちでは「蔵に住みついている菌」の力でじっくり発酵させています。」と秀島さん。

季節の温度変化に任せて、なんと2年もかけて醸造するそう!

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創業当初、醸造に使われていた道具が展示されています

「夏になると気温が上がって、菌が元気に動き出し、発酵が進みます。
冬になるとその活動がゆるやかになり、今度は発酵ではなく「熟成」の時期に入るんです。菌の動きは落ち着きますが、そのあいだに味がまろやかになっていきます。

うちでは、こうした季節の移り変わりに寄り添いながら、できるだけ自然の力に任せて醤油づくりをしています。」

醤油の魅力は「香り」にあり!菌が働く蔵を見学

実際に、醤油がつくられる蔵の中を見学させてもらいました!
中に入ると、まず圧倒されるのはその香り。ずらりと並ぶ巨大な桶から、ふわっと甘く香ばしい匂いが漂います。

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桶の高さはなんと約3メートル!

桶や天井、床などのあらゆる場所に菌が住みついているのだそう。

「目に見えない菌を相手にするのは難しいですが、そこが醤油づくりの醍醐味なんです。
慣れてくると、不思議と見えないものが"見えてくる"んですよ。今、菌にとっていい状態なのか、少し元気がないのか。そのあたりは感覚でわかりますし、「今日は菌が喜んで育っているな」と感じることもあります。」

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醤油の状態を見守る秀島さん

菌が活発に働くと、樽からポコポコと泡が出たり、特有の香りが立ち始めるそうです。その様子を見極めながら、時には桶を混ぜて、菌たちが心地よく動ける環境を整えていくのだそう。目には見えない菌の世界──奥が深いです...!

そして、丸秀醤油の最大の特徴は「香り」の豊かさ。時間をかけることで醸造が進み、複雑で厚みのある香りになっていくそうです。

醤油には約300種類もの香り成分が含まれており、バラやバニラ、コーヒーの香りまで含まれているとか。この桶の中に、そんな素敵すぎる香り成分がぎゅっと詰まっているとは...驚きでした!

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桶の表面には穀物がぎっしり。この下で醤油が熟成されます。

「自然一」という名前に込められたつくり手の想い

直売所「麹庵」には、醤油や味噌、ドレッシングなど、様々な商品が並んでいます。家庭用から一升瓶サイズまで種類が豊富に揃っており、訪れたときにも常連さんが次々に買い求めていました。

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醤油だけでもこの数。料理に合わせて使い分けができるそう。

中でも、私が今回見つけた"佐賀のいいモノ"はこちら!
看板商品の「自然一醤油(しぜんいちしょうゆ)」です。

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サイズは食卓で使える小瓶や、捨てやすいパックまで3種類

「自然一というのは仏教にある言葉で、自然が一番という意味ではなく、自然というのは万物一つだという考え方なんですよ。」と秀島さんが教えてくれました。

つまり、人の手で工業的に管理するのではなく、大豆や小麦といった農作物の力、そして自然の中で生きる菌の力を借りる──そんな自然との共生の思いが、この商品名には込められています。

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小さなサイズの商品も多く、試しやすいのも嬉しい!

九州の甘口の醤油も、丸秀醤油では米からつくった甘酒でやさしい甘みを加えています。これも、できるだけ自然に近い原料を使いたいという思いから生まれた工夫なのだそうです。

試してみた!素材を引き立てる名脇役の実力

丸秀醤油が大切にしているのは、醤油本来の役割である「素材の味を引き立てる」こと。
「醤油はあくまで料理の中の脇役、黒子役。主役である素材を美味しく食べるために醤油が味を引き出してあげるのが大切なんです」と秀島さんは話します。

そこで今回は、醤油をそのままと、火を入れた料理の両方で味わってみました!
まずは、「自然一醤油」の特徴がよくわかるというお刺身でいただきます。

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一般的な九州の醤油よりも甘さが控えめで、さっぱりとした印象。ひと口食べて思わず「おっ!」と声が出るほど、これまでの醤油のイメージとは違うフレッシュな風味です。お刺身そのもののうまみや甘みもしっかりと引き立っています。

そしてもう一品は、醤油を味の決め手に使った和風キッシュ。

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ほのかに香る醤油の風味が、パイ生地の香ばしさと絶妙にマッチしています!火を通してもその香ばしさと深みが失われず、きのこやレンコンなど素材の持つうまみがいっそう引き立っていました

ちなみに、こちらのキッシュメニューは、佐賀市のカフェ「こねくり家」で秋限定メニューとして登場中です。気になる方は、ぜひ足を運んでみてくださいね!

さいごに

今回丸秀醤油を訪れて感じたのは、静かな蔵の中で醤油づくりに真摯に向き合う蔵元の情熱と、麹菌たちへの深い愛情でした。

毎日の食卓で当たり前に使う醤油。
だからこそ、いつもの醤油にちょっとこだわってみることで、毎日の"美味しい"がより特別な時間に変わるのではないでしょうか。

これからも佐賀の"いいモノ"をお届けしていきますので、次回の「MONO SAGA」もお楽しみに!

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キッシュメニューはここで楽しめます!

店舗名 蔵元直売所 麹庵
住所 佐賀市高木瀬西6-11-9(佐賀大和工業団地)
営業時間 9:00〜17:00
定休日 土曜・日曜・祝日
電話番号 0952-30-1141
公式サイト https://shizen1.com/
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