「お店をオープンしたとき、外に綺麗な虹が見えたんです。開店するまで奇跡の連続だったんですが、未来はきっと明るい!って思いましたね」
明るく覇気のある元気な声で、そう語るのは、今回ご紹介する飲食店「ユキチャンキッチン」店主の秋吉由紀さん。取材中、窓の向こうの雨上がりの空に浮かんだ七色の虹を見つけ、「あの時と同じだ」と目を輝かせました。
「キッチンカーを購入し、3年前から地元のお祭りやイベントに出店してきました。実店舗を持つという夢を実現し、新たな人生のフェーズを楽しんでいます」
にこやかな表情を絶やさない秋吉さんの雰囲気そのままに、真新しいお店は、やさしくほんわかとした空気に包まれています。
ビルの2階の隠れ家的なお店
ユキチャンキッチンは、神埼市に本社を置く三愛オブリガス三神株式会社が運営するビル「Liv Style(リブスタイル)」内に店舗を構えています。
「住まいのショールーム」と銘打たれた同ビルの2階に上がると、こじんまりとしながらも温かみを感じさせる大衆食堂が目に入ってきます
2022年9月からキッチンカーを営業してきた秋吉さんが、面識があった三愛オブリガス三神の関係者から常設店出店の提案を受けたのは昨年末のこと。
「昨年12月22日にこのビルで開催されたクリスマスマルシェに出店すると好評を得て、その場でお誘いをいただいて」
営業に必要な許可申請など、開店のハードルは高かったそう。ところが周りの協力もあって、不思議にもあれよあれよという間に事が進み、今年の1月7日に営業開始できました。
偶然と幸運が重なって歩みを始めたこのお店に、秋吉さんは強いこだわりを見せています。
「みんなが笑顔になれるお店を目指すと同時に、お客さんには健康でいてもらいたいので、ヘルシーなメニューを心掛けているんです」
調理師としての豊富な経験を活かして秋吉さんが心を込めて届けるメニューには、大切なお客さんへの愛が溢れています。
キッチンカーから生まれたスイーツ!
お店の名物メニューでもあるイチゴクレープは、キッチンカーでも販売している定番だけあって、立ったまま頬張ることができるコーン型です。いちごの甘味が口の中でやさしく広がります。
手のひらにも乗るほどの、小さなかわいい器にふんわりと盛ったバニラアイスは、デザートにぴったり。
お友だちとわちゃわちゃおしゃべりしたいときにおススメなのはこちらのポテトセット!サクッとしてなおかつ濃すぎない味わいで、雑談も盛り上がりそうですね。
ヘルシーなドリンク&フード
軽く一杯、というときは、嬉野市のモリンガ園から取り寄せているモリンガティーがおすすめです。
食物繊維、マグネシウムなど100種類以上の健康・栄養成分が含まれているとされ、「奇跡の木」と呼ばれるモリンガ。その味わいは、渋みはあまり感じられず、すっきりとしたのどごしです。この一杯で、お昼のリラックスタイムを楽しむことができます。
ユキチャンキッチンで提供する日替わりランチです。
この日のランチは、牛肉炒めやエビフライといったお弁当の定番に加え、ひじきの煮物、れんこん、こんぶなどが添えられていました。
栄養のバランスを最大限に考慮した構成になっていて、お客さんの健康を気遣う秋吉さんのこだわりが凝縮された1品です。
ベースにあるのはこのオイル
調理に使用しているのは、「ナチュレオ」という天然ココナッツオイル。
トランス脂肪酸、コレステロールゼロ、植物性なのに酸化に強いのが特徴で、お腹にやさしい食用油です。
命と向き合った逆境の日々
秋吉さんの、お客さんの健康を願う思いの根底には、命と向き合い続けた壮絶な経験がありました。
2015年の夏、介護老人施設で調理師として働いていた秋吉さんに、胃がんと乳がんが見つかります。
「職場の定期健診では異常なしだったので、まさか、という思いでした」
懸命な治療の甲斐もあり小康状態が続いていたのですが、2022年、今度はがんが大腸に転移、主治医から「余命2ヶ月」と告げられました。
「平穏な生活を取り戻した矢先で、ショックはより大きかった...」
それでも秋吉さんは前向きに自分の人生を精一杯生きようと、自らに誓います。治療と向き合いながら、「やりたいことを懸命にやる」と決意。すると、命の期限とされた2ヶ月は過ぎ、がんと共存しながらの新たな人生が開けていきました。
夢は、実現する!
「最初にがんが見つかったころ、生きる希望を持ち続けるために始めたんです」
秋吉さんは1冊のノートに、「死ぬまでにやりたい100のこと」を書き記します。
自身の闘病や子どものアレルギーを通して食の大切さを実感し、栄養学を学び直そうと2020年4月、佐賀女子短期大学に入学。栄養士の資格を取得して翌々年の3月に無事卒業しました。
「栄養師(士)をとりたい」という、100のことリストの2番目を達成できたのです。
さらにがん転移が分かった2022年、やりたいことリストの第一番目に掲げた「自分の店を持ちたい」に向けて動きます。
「子どもたちの記憶の中に、前向きに生きる元気な母の姿を残したい」
体調に合わせて出店できるキッチンカー営業を目標に定め、持ち前の行動力を研ぎ澄ました秋吉さんは、キッチンカー選び、外装デザイン作成、メニュー開発といった課題を周囲の協力を得て乗り越え、ついに9月にキッチンカーを自宅に迎え入れたのです。

その後2年のキッチンカー営業を経て、三愛オブリガス三神株式会社との縁がつながり、念願の実店舗を開店。正真正銘の「自分の店」を手に入れることができ、「死ぬまでにやりたい100のこと」のトップに掲げた夢が見事に叶いました。
このお店と歩む未来
最高の夢を手にした秋吉さんの、今の想いは...
「がんと出会ったことで、不可能だと思っていたことが実現したのは不思議な感覚です。生きていれば、必ずいいこともあるんですね」
人生最大の逆境がもたらしてくれた大きな「ギフト」に感じ入り、瞳を煌めかせる秋吉さん。さらに、
「健康って、本当にありがたいことです。そして、ありきたりな言葉だけど、生きているだけで素晴らしい」
そうしみじみ語る秋吉さんが見据えるのは、このお店でこれから紡がれる新たな出会いです。
「すでにこの場所は、がん経験者が集い語り合う『がんサロン』が開かれるなど、私とご縁があった方々の憩いの場となっています。でも過去の私を全く知らない地元の人たちが、お子様からお年寄りまでいらっしゃるようになり、新たな交流の場になりつつあるんです」
飲食店経営者として新たなステージに立った秋吉さんは、夢の先にある未来に心躍らせています。
「これからもやることは変わらず、体と真摯に向き合いつつ、1日1日を大切に過ごしていきます。ゆったりとした空間でお客さんが飲食を楽しんでいただける場所であり続けるために、私自身も成長し、日々幸福に暮らすことが大事ですね。みなさんのお越しを、私は笑顔で待っています」
生きる喜びに溢れた秋吉さんと逢える場所。「ユキチャンキッチン」は、今日も元気に営業しています。
| 店舗名 | ユキチャンキッチン |
|---|---|
| 代表者 | 秋吉由紀 |
| 住所 | 佐賀県神崎郡吉野ヶ里町大曲3428-18 Liv Style 2F |
| 営業時間 | 11:00 〜 18:00 |
| 定休日 | [不定休]予約に合わせて対応 |
| 電話番号 | 080-2717-8763 |
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公式SNS |
Instagram:@qiujiyouji6 |
| 地図 |
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