ストライプから生まれる「新感覚もんぺ」 『JONAI SQUAREのMONPE』でお披露目!

ストライプから生まれる「新感覚もんぺ」 『JONAI SQUAREのMONPE』でお披露目!

「なんもなか(=なにもない)」が口癖の佐賀の人たちにこそ伝えたい、地元に眠る地域資源。

九州北部の筑後地域を中心に、地域のものづくりと文化を紹介する地域文化商社『うなぎの寝床』の視点で、佐賀周辺の魅力をお届けします。


もんぺになった姿を想像して、生地を一からデザイン!

前編の記事はこちら。

ついに5月20日(土)から今年の『JONAI SQUAREのMONPE』が、サガテレビ1階でスタートしました! サガテレビさんのCMでも流れているので、ご覧になっている方も多いのではないでしょうか?

CMでも登場している「新感覚のもんぺ」に気づいた方、いらっしゃるでしょうか......⁉「え、あれもんぺなの?」と思っていただけたのであれば、制作チームの狙いどおり!

昨年に引き続き、久留米絣の縞(ストライプ)を再解釈した、新しい織物・新しいもんぺについて考えようというプロジェクトで生まれた、3つの新作もんぺがお披露目されています。

今年も生地は、福岡県筑後市にある『久保かすり織物』さんとともに開発し、もんぺにしたときのデザインを佐賀チームの皆さんと一緒に、色の配色や縫製デザインなど、試行錯誤しながら制作してきました。

今回は、そんな3つの新作もんぺのインスピレーションや制作意図を、制作チームに取材してきました!

「久留米絣を身近に感じてもらって、履いてみてもらいたい!」

そんな思いがこもった、もんぺ開発裏話をどうぞ‼

「どことなく佐賀らしい」配色のグラデーションもんぺ

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まず最初にご紹介するのは、こちらの「SAGAグラデーション」もんぺ(勝手に命名しました)。
昨年も登場した、どことなく佐賀らしい配色で、自然と地元・佐賀を応援したくなってしまう(!)シリーズの第2弾です。

通常、久留米絣の産地で作られている縞模様は、小縞や大縞など種類は多々ありますが、パキッと色が分かれていることがほとんどです。「かつお縞」と呼ばれる伝統の縞模様は、藍染めの濃淡でグラデーションを表現する柄ですが、それでも縞ひとつひとつの色は分かれています。

そんな中で、今回挑戦したテーマが「縞の中のグラデーション」です。
大縞の中に、より小さな縞模様が入っており、それが細やかな色のグラデーションとなっているのです。

ピンク系と水色系の2色の色が織り上がっていますが、実はたて糸は同じ。たて糸に近づいてみてみると、濃い赤色からオレンジへと変わるグラデーションと、濃い青色から水色へと変わるグラデーションが入っているのがわかります。

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この繊細なたて糸に、水色系のよこ糸が入るパターンと、ピンク色のよこ糸が入るパターンで、2種類の織り上がりの生地を作ることができる、というわけです。

ただこの色合わせは、実はとても苦労したポイントでもあったよう。さまざまな色が入っているからこそ、織り上がるまで、どんな色合いとして見えるか、読めない部分もあるためです。
実際、写真で見るのと実物を見るのと、色の見え方はだいぶ異なりますし、明るい屋外と暗い室内でも見え方が違います。これもグラデーションならではの楽しみ方かもしれません!

こうして出来上がった生地を、もんぺというパターンにどう落とし込むのか?というのも、今年は制作チームがとても考えたところだったそう。結果的に水色グラデーションをベースに、前ポケットと左後ろにピンクグラデーションの生地が入るデザインとなりました!

一見とても派手に見えますが、履くと意外にスッと馴染む感じもあります。これももしかしたらグラデーションのなせる技かも⁉ 会場に行かれたら、まずは記念にぜひ試し履きしてみてもらいたい一本です!

イギリスのタータンチェックと、久留米絣の縞が出会ったもんぺ

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続きまして、紹介する新作もんぺは、「ブラックウォッチ再解釈」もんぺです。
「ブラックウォッチ」は、イギリス発祥のタータンチェックの中でも、伝統あるシックな柄として、ファッションの世界でも昔から愛されてきた柄です。

そもそもタータンチェックは、スコットランドの氏族(クラン)や地域ごとのアイデンティティを象徴して織られてきた生地で、日本の「家紋」にも近いと言われています。

これは久留米絣の産地である筑後地方をはじめとして、日本各地で織られてきた「縞」との共通点でもあります。縞も、各家ごとや各地域ごとの特徴があったといわれており「縞見本帳」と呼ばれる生地見本帖が各地に残っています。

そんな中で、ブラックウォッチ・タータンは、ミリタリータータンと呼ばれるジャンルの柄。1688年のイングランドで起こった名誉革命の反革命勢力の通称であるジャコバイトの動向を監視するハイランダー兵の独立グループのあだ名で、彼らが着用していたタータンがダークトーンだったため「ブラックウォッチ=黒い見張り番」と呼ばれるようになったのが由来です。

このタータンチェックはその後、ブラックウォッチに所属していた様々な氏族に採用され、もともとの濃紺・深緑・黒をベースとしたタータンに、独自のデザインが加えられ、現代に続いています。

今回のもんぺ開発では、ブラックウォッチタータンに黄色のストライプが入った生地がインスピレーションのもとになりました。このタータン柄を、「久留米絣の織元がつくる縞」で再解釈したら、どんな生地になるだろうか......? そんなテーマで、作られた生地がこちらです。

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色は地味めでわかりにくいかもしれませんが、実はとても手が込んだ縞模様となっており、 深緑と濃紺の縞模様の境目に、黒の縞が入っています。濃紺と深緑の色を、黒の線が引き締めている、ブラックウォッチタータンを、縞に落とし込んでいるのです。

そこにスッと入る、鮮やかな黄色の縞。この線をどこに持ってくるか、どれくらいの太さにするかも、制作チームのこだわりが詰まっています。もんぺになるとさらに、かっこいいアクセントとなって光っていますね!

イギリス発祥のブラックウォッチタータンと、久留米絣の伝統縞のコラボレーション。それが「もんぺ」というフォーマットに落とし込まれ、不思議と和洋折衷な印象も。どんなコーディネートで履くかで、印象も大きく変わりそうなもんぺです!

もんぺになって初めて完成!トラックパンツもんぺ!

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最後にご紹介するのは......「トラックパンツもんぺ」です!
え、トラックパンツなの?もんぺなの?と混乱してしまそうですが、トラックパンツからインスパイアされたもんぺなのです!

ご存知の通り「トラックパンツ」といえば、もともとは陸上競技などではかれるようになったスポーツウェアですが、最近はファッションアイテムとしても人気があります。横にストライプが入っているデザインが特徴となっています。

このトラックパンツデザインの久留米絣の縞をつくる......というのは、実は私たちにとっても発想の転換ができる、貴重な機会でした!

実は、久留米絣は今では珍しくなった、着物の反物幅である小幅(34cmほど)の織物です。糸を縛って模様を出す特殊な技法を使うため、昔ながらの織機でないと織ることができないためです。
必然的に、もんぺなどの洋服を作る時は、1枚では幅が足りないため、前後ろと2枚を縫い合わせて作ります。

つまり今回、トラックパンツの特徴であるストライプを横に表現するためには、2枚の生地を縫い合わせて模様を生み出す、という必要があったのです。

久留米絣の産地に関わっていると、どうしても生地だけでとして模様を見てしまうクセがついてきます。しかし、もんぺや服になったときに、初めて模様が完成する。そんな生地の作り方があっても面白い!ということに個人的に気づくことができました。

実際、織っているところを見てみると、紫のストライプが生地の端(耳と呼ばれます)にあることがわかると思います。縫い代も含めて、前後ろを縫い合わせると約6cmのストライプになるように計算して、『久保かすり織物』さんが織ってくださっています。

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「もんぺ」と意識しなくても、気軽に履くことができる一本になっています。初めてもんぺを手にする方にもぜひチャレンジしてみてもらいたいです!

『JONAI SQUAREのMONPE』は6月18日まで開催中!

糸を縛って染める「絣(かすり)」の技法を使わなくても、服としての面白いパターンを作ることができる......!! 今回は、そんなチャレンジをたくさんすることができた機会となりました。

生地はあくまでも「素材」であり、それを活かし楽しむのは、服を作る人たち、そしてそれを着る人たち。せっかく布を一から作ることができる技術と産地が残っているのだから、これからもっと色々な人のアイディアが入り、多様な楽しみ方が広がっていけるようにしなければ......とあらためて感じさせられました。

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皆さんにとっても、普段考えることがないかもしれませんが、布ができるまでや、服の可能性などについて、是非これを機会に知ってもらえるきっかけになれば嬉しいです。久留米絣の産地は佐賀からもすぐ近く!ぜひ身近に感じて、見にきてもらえたらと思います。

そのためにもまずは、現在開催中の『JONAI SQUAREのMONPE』へ是非お越しください!今回開発された3本も、ぜひ試着してみてくださいね。他にも、『うなぎの寝床』で作っている久留米絣のさまざまなもんぺが並んでいますよ!お待ちしています。

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イベント情報

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今年もたくさんのもんぺが、『JONAI SQUARE』に勢ぞろい!蒸し暑い夏に備えて、ぜひ今年の一本を探しにこられてくださいね。

イベント名 JONAI SQUAREのMONPE
日程 2023年5月20日(土)~6月18日(日)
場所 JONAI SQUARE(サガテレビ1F)

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うなぎの寝床
リサーチャー(広報企画)・通訳

渡邊 令

1989年東京都生まれ、ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス(LSE)社会人類学部卒業。その後福岡のポンプ会社で社長秘書を勤めた...

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